国会議員の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「国会議員」とは
日本国民を代表して法案の提出や審議、法律の制定を行い、より良い社会づくりを目指す。
国会議員の主な仕事は、 「法律をつくること」をはじめ、予算の決議、条約の容認、総理大臣の指名など、国家運営に重要な決定をくだすこと です。
地元選挙区の代表として、地元企業や住民の声を聞き、政府に届けることも国会議員の役割です。
国会議員になるための条件は、日本国民であり、衆議院議員の場合は25歳以上、参議院議員の場合は30歳以上であることで、基本的には誰でも選挙に立候補することができます。
典型的な「国会議員への道」は、まずは、市議会議員などの地方議員、官僚、議員秘書のいずれかの職業に就き、経験を積んでから出馬し、選挙に当選するというものです。
1年間の議員報酬は2000万円前後ですが、これとは別に各種費用などが支給されるため、国会議員一人当たりにかかる年間経費は約7500万円ともいわれます。
かつては地元にどれだけ利益をもたらしたかが評価対象でしたが、近年は国全体を考えた政策立案力、法案提案力がある議員を評価しようという流れが強くなっています。
「国会議員」の仕事紹介
国会議員の仕事内容
最も重要な仕事は「法律をつくること」
法律を作るためのさまざまな仕事
国会議員とは国の立法府である「国会」に所属する議員です。
国会を支える国会議員の仕事は、予算の決議や外国との条約の承認、総理大臣の指名、政策立案など多岐にわたります。
国会は、「立法府」と呼ばれる法律をつくる機関であり、そのなかでも最も重要な仕事は「法律をつくること」です。
具体的には、 法案(法律案)の提出、所属する委員会や本会議での法案の審議、法律の制定 といったことが挙げられます。
また、資料を読み込んだり、担当する業務に関係する施設・地域を視察したり、勉強会へ参加したり、あるいは専門家からレクチャーを受けるなどして、必要な知識を学ぶことも重要な仕事です。
さらに、内閣総理大臣を選出することも国会議員の大切な仕事です。
憲法第67条には「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で指名する。」とされており、国会議員の中から内閣総理大臣を選出します。
地元選挙区と政府の橋渡し役
それぞれの地元選挙区の代表として、地元企業や住民の声を聞き、政府に届けることも国会議員の役割の一つです。
ただ資料を集めて読み込むだけでなく、各地に視察に出向き、リアルな状況を肌身で感じ取ります。
国会議員になるには
立候補は誰でもできるが、当選するには地盤が必要
国会議員になるために特別な資格は必要なく、 日本国民であり、かつ25歳以上ならば衆議院選挙に、30歳以上ならば参議院選挙に立候補することができ、当選すれば議員になる ことができます。
国政選挙では、住民票がどこあってもどの選挙区からでも立候補できるため、どの選挙区から出馬するかを決める必要があります。
その後、供託金(選挙に立候補するときに一時的に預けておくお金)を預け、手続きをして選挙の届け出を出し受理されれば、選挙運動が始められます。
小選挙区では300万円、比例代表では600万円を法務局に預託する必要があり、参議院選挙の場合には6000万円もの選挙資金が必要といわれています。
実際に選挙を勝ち抜くためには、こうした資金をはじめ、前職における実績や人脈など、数多くの要素が必要になります。
このため、市議会議員などの地方議員や官僚を経て国会議員になる人や、議員秘書として政界での経験を積んだ後に立候補して国会議員になる人が多くなっています。
そのほかの道としては、松下政経塾、一新塾、市川房枝記念会などで政治や政策について専門的に学んだり、政党主催の政治塾で立候補のためのノウハウを学んだりする方法があります。
また、自分の政策や考えをしっかりともち、人々にそれをアピールし、多くの人々からの信頼や支持を得ることができなくては、国会議員にはなれません。
選挙で落選すれば無職になってしまうリスクが高い職業でもあるため、国政に対する強い意志や覚悟は必要不可欠です。
国会議員の学校・学費
高学歴でなくても国会議員にはなれる
国会議員というと、多くは東京大学をはじめとする一流大学出身者が多いイメージを持つ人も多いでしょう。
たしかに 現役議員の最終学歴を見ると、有名大学や難関大学出身者の割合は高いですが、これは「官僚」から転身する人が多い ことが理由のひとつです。
国会議員は学歴、経歴不問の職業であり、もちろん地方大学卒や高卒の議員も大勢活躍しています。
ただし、実際の業務においては、法律をはじめとする専門知識が必要になるため、大学の法学部や政治経済学部などで学んでおくことが望ましいでしょう。
また、近年は政界においてもグローバル化していく流れがより一層強まっており、国際政治経済学部や国際関係学科などの国際系の学部・学科も、検討すべき進路のひとつです。
国会議員の資格・試験の難易度
年齢以外に資格要件はないが、供託金が必要
国会議員になるために特別な資格や学歴、経歴は不要です。
衆議院選挙・参議院選挙に出馬するためにはそれぞれ年齢制限があるだけで、ほかに必要な資格や経歴は一切ありません。
衆議院議員の条件は 日本国民で満25歳以上であること、参議院議員も同様日本国民で満30歳以上であること です。
基本的にこの条件を満たせば、国会議員になることのできる権利「被選挙権」を手にできます。
なお、過去に犯罪で処罰されるなど、被選挙権を失う条件はいくつかあり、これに該当する人は立候補することができません。
注意したいのは、立候補する際には供託金が必要になることです。
供託金とは、法務局に一時的に預けるお金で、選挙で一定の得票数を得られなかった場合、没収されてしまいます。
国会議員の給料・年収
国で定められ年間3000万円以上の支給がある
「歳費」と呼ばれる国会議員の給料は、法律で月額129万4000円と規定されています。
これにボーナスを上乗せした議員の年間報酬は、衆議院議員が約1977万円、参議院議員が約2031万円です。
これは 初当選の新人議員でも、ベテラン議員でも変わりません 。
各議院の議長になると月に217万円、副議長は月158万4,000円支給されます。
また報酬とは別に、月額100万円の文書通信交通滞在費など、議員活動を円滑に行うための各種費用が支給されます。
さらに国会議員の公務用JR無料パス、無料航空券などが用意されており、初当選議員でも合計で年間3000万円以上の支給を受けるようです。
こうした国会議員の歳費や各種手当てについては、「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」などにより決められています。
そのため大きな仕事をしたからといって給料がアップしたり、逆に不祥事を起こしたために減額したりということは基本的にはありません。
このように1人の国会議員には、多額な税金が使われています。
ただし、私設秘書の給与や事務所運営費など、個人で負担しなければならない費用も多数あるため、自腹で負担する部分も多く、年収すべてを自由に使えるわけではありません。
一方で、国会議員の高額な収入は国民からしばしば批判にさらされています。
その金額に合った仕事をしているのかどうかという妥当性を常に国民からみられているという自覚を持たなくてはならないでしょう。
国会議員の現状と将来性・今後の見通し
インターネットでの情報発信など新しい活躍の仕方が広がる
議員の年間経費には厳しい目が向けられる
国会議員一人当たりにかかる年間経費は、約7500万円といわれており、日本の財政状態を考えると厳しいと言わざるを得ません。
近年は、とくに議員定数の是正や一人当たりの年間経費を削減すべきという声が根強いです。
また不祥事や「炎上」などが相次ぎ、 政治家に対して不信感を抱く国民が増えている ため、これまで以上にその使い方と活動の結果がチェックされ、より厳しい目が向けられると考えられます。
インターネットを使った情報発信
近年は国会議員もホームページやブログ、FB、Twitterなどを通じて、直接国民とやりとりをする機会が増えています。
各国の首脳がTwitterで直接国民に情報を発信しているのに比べると、日本の国会議員はこうしたインターネット上での情報発信には遅れをとっていると言わざるを得ません。
一方で、災害時にTwitterなどリアルタイムで情報を更新し、多くの人の支持を得た国会議員もいます。
特に新型コロナウイルス対応では、衆議院議員の河野太郎が多くの情報をいち早く発信したことで話題となりました。
また、同じく衆議院議員の山田太郎は「表現の自由と通信の秘密」に専門性を持ち、とくに若い世代を中心に支持を集めています。
これまでは地元と永田町を行き来し現場の声を拾うのが一般的でしたが、今後はこうした インターネットを利用して多くの人と交流することで、声を救い上げていく 議員も増えていくと考えられています。
国会議員の就職先・活躍の場
国会の会期中か閉会中かで活躍の場は異なる
国会議員には、衆議院議員と参議院議員の2種類があります。
具体的な勤務先としては、国会会期中であれば所属する衆参どちらかの本会議、またそれぞれの常任委員会・特別委員会がメインとなります。
国会での議論は、東京都千代田区永田町にある国会議事堂で行われ 、左側が衆議院、右側が参議院の建物です。
国会議事堂の近くには議員会館があり、国会議員ごとに事務室が設けられています。
閉会中は地元選挙区に帰って活動することが一般的です。
報告会を開催したり、支援者を回ったり、イベントに出席したり、あるいは業界団体や省庁関係者と会合したりして、地元での交流を深めます。
閉会中のこうした活動は選挙対策も兼ねているため、非常に重要度の高い仕事といえます。
国会議員の1日
会期中・閉会中に関わらず多忙な毎日を過ごす
国会議員は24時間365日休みなしといわれるほど多忙で、会期中・閉会中に関わらず、スケジュールはぎっしり詰まっていることがほとんどです。
また、多くの議員は、地元選挙区との良好な関係づくりを重視しており、地元の人達と交流する機会を日常的につくっています。
議員本来の仕事がおろそかにならないようバランスを取りながら、日々の業務をこなしています。
<ある国会議員の1日>
国会議員のやりがい、楽しさ
国会議員だけに許された「法律をつくる」仕事
日本は法治国家であり、国家におけるすべての決定や判断は、国家が定めた法律に基づいて行われます。
国会議員の仕事はその法律をつくることであり、また法律をつくることは国会議員のみに許された仕事です。
圧倒的な影響力をもって 国を動かし、社会を変え、人々の生活をよりよくしていくことには、非常に大きなやりがい と魅力があるといえるでしょう。
また、国会議員は、多くの人々からの支持により選出され国の仕事をさせてもらっています。
自分の後ろには多くの支えてくれる人がいる、自分は頼られる存在であると考えると、その人たちのために恩返しをしなくてはと使命感をもって働いている人が大半です。
国会議員のつらいこと、大変なこと
選挙に落選すれば無職・無収入になってしまう
議員にとって最もつらいのは選挙で落選することです。
苦労を重ねて選挙に当選し、国会議員となっても、衆議院議員は4年間、参議院議員は6年間の任期を終えれば、あるいは任期中でも解散されれば、また厳しい選挙戦を勝ち抜かなければなりません。
落選してしまえば、自らの主張が有権者に届かなかったもどかしさ、これまでの活動をすべて否定されたような悔しさを感じ、精神的にきつい状態を経験する人も少なくありません。
さらに国会議員という 社会的地位を失うだけでなく、一気に無職・無収入になってしまう 上、退職金もなく、雇っていた秘書の再就職先も探さなければなりません。
社会的にも経済的にも大打撃となりますので、非常に高いリスクを負っているといえます。
国会議員に向いている人・適性
国会議員としての情熱と高い倫理観を持ち合わせた人
国会議員は連日のハードスケジュールをこなしながら、国家運営を左右する重要な数々の判断を下し、同時に自身の研鑽にも努めなくてはなりません。
厳しい仕事に高いモチベーションを持って取り組み続けるためには、 国民の生活を豊かにしたい、社会をよりよくしたいという、政治家としての情熱 が何よりも重要になります。
国民の代表であるということを常に意識し、目標をもって仕事に取り組める、責任感の強い人は、国会議員の適性があるといえるでしょう。
また、国会議員は、国のあり方を決める重要な立場にあります。
近年はちょっとした発言や言動が標的となりいわゆる「炎上」するなどし、国民の信頼を失って失職するケースもあるため、高い倫理観を持つ人が向いています。
関連記事国会議員に向いている人とは? 適性や必要な能力を紹介
国会議員志望動機・目指すきっかけ
強い志望動機がなくては勤まらない
国会議員を志望するのは、 国のために尽力したいという高い意識があり、有権者に訴えたい主張をもった人 です。
きっかけはさまざまで、親が政治家でその地盤を継ぐ人もいれば、官僚として中央官庁で働いていた人もいますし、企業などで働いた経歴を生かして政界に飛び込んでくる人もいます。
地方議員には特に郷土愛が強い傾向にあり、「地域が抱える問題を国で解決したい」という気もちから立候補する人も少なくありません。
どんなルートにせよ、国会議員を目指す人は、高いリスクを背負い、激務であることを覚悟して、それでもなお自身の掲げる主義主張のため、選挙に出馬します。
国会議員になるには、明確な動機と、断固たる決意が必要といえるでしょう。
国会議員の雇用形態・働き方
政治の世界でも働き方改革が進んでいる
国会議員は長時間労働が当たり前の世界であり、国のために働くという業務の特性上 「労働時間を減らす」こと自体がタブー視される風潮があり、働き方改革が進みにくい 組織といえます。
しかし民間企業における「働き方改革」が声高に叫ばれる昨今、国会議員の働き方も時代に合わせて多様化することが求められています。
女性議員の活躍はその最たるものですが、現状の日本の女性議員比率は、諸外国と比較しても圧倒的に低水準にあります。
出産や育児に関する休暇制度が整えられつつあり、今後、国会議員を目指す女性にとっては、従来に比べると雇用環境は改善されていくと考えられます。
海外から取り残されないためにも、女性国会議員の台頭が望まれます。
国会議員の勤務時間・休日・生活
365日仕事があり、休日はないといっても過言ではない
国会議員は公務員の立場となりますが、ほかの一般的な公務員のように就業時間や休日の定めはなく、一切を本人の裁量に任されています。
活動の仕方は議員次第であるため、各議員によって時間の使い方や休日の取り方は違います。
国会議員の仕事は、国の将来に関わる重大な判断を下さねばならない局面が多々あります。
正しい判断をするためには、日頃の勉強や情報収集が不可欠ですので、国会議員は多忙な仕事の合間を縫って、勉強会へ参加したり、業界関係者と交流したりして、自身の知見を深めなければなりません。
このため、たとえ休日であっても、家族と団らんしたり、レジャーにあてたりする時間はほとんどなく、多くの議員は実質的に休みなしで働き続けるようです。
国会議員の求人・就職状況・需要
議員定数は削減されていく見通し
公職選挙法により、衆議院議員の定数は465人、参議院議員の定数は242人と定められています。
これは、人口比からするとOECD(経済協力開発機構)加盟国の中でもワーストを争うほど低い数字となっており非常に狭き門です。
一方、 コスト削減のために定数を減らすべきだという論争も たびたび起こっています。
過去の法改正をみれば、昭和60年頃から一貫して定数は削減の方向にあり、今後も地方の選挙区を中心として、さらなる定数削減が実施される可能性が高まっています。
衆議院選挙・参議院選挙の当選確率(立候補者に占める当選者の割合)は、近年2倍前後で推移していますが、定数が減少していけば、倍率はより高まっていくかもしれません。
国会議員の転職状況・未経験採用
政治塾に通うなどして政治について学び、道を拓く
国会議員になるためには、資金力や人脈など、非常に多くのものを高いレベルで備えなくてはならないため、いきなり国会議員になるよりも、 他の職を経てから国会議員になる人が大半 です。
地方議員や議員秘書など、元から政治の世界にいた人もいますが、民間から国会議員になった人、いうなれば政界未経験者も決して少なくはありません。
タレントなどの特異人材を除けば、企業に勤めながら、松下政経塾をはじめとした民間の政治塾や、あるいは各政党が主催する政治塾に通って、政治について学ぶ道が一般的です。
ただし、国会議員になるためには必ず選挙に当選しなくてはならないため、どれだけやる気があり資金があったとしても、国民から支持されなくては職に就くことはできません。
国会議員に定年はある?
定年については議論されつつも制度は形骸化している
日本人の平均寿命が伸びつつある昨今、国会議員の定年に対する考え方の議論がされるようになっています。
自民党では、昭和58年以降、参院選比例代表候補の条件を内規で「任期満了日に原則として満70歳未満」としています。
しかしながら、特例を認めており、2019年には内規で定めた「定年」を超える現職議員を公認したことで議論となりました。
自民党では、近年、 衆院選の比例代表候補に適用する「73歳定年制」が議論 となっています。
ベテラン勢は廃止を求める一方で、若手議員からは世代交代を望む声が根強くあり、党内でも意見がわかれているところです。
なお、諸外国では国政選挙の候補者について年齢の上限を設けないところが多く、世界でも定年制を適用している国は限られています。
総理大臣の給料・年収
総理大臣の月給は約200万円
日本の最高権力者である総理大臣は特別職の国家公務員です。
給与は「特別職の職員の給与に関する法律」で決められていて、一般職の国家公務員の給与改定に従ってその都度改定されます。
法律で定められているものであるため、 初任給も長年勤めた場合も金額は変わりません 。
2020年4月現在の総理大臣の月給は201万円で、これに月給の20%(東京都特別区)に当たる「地域手当」が40万2,000円加わった約4,032万円が支給されます。
総理の年収は、月給12カ月分に期末手当(年間3.35月分)×2回分を加えた約4032万円になります。
日本の総理大臣は諸外国の首相と比べると低いと言われることもありますが、給料は国民の税金から支払われており、国の経済状況や税制度によって給料が変動することもあります。