男性でも助産師になれる? 海外の状況は?
男性でも助産師になれる?
助産師は、妊娠、出産から出産後のケア、育児の指導まで、女性の出産まわりを広くサポートします。
産婦人科医には男性医師が大勢いますが、残念ながら、現在の日本では助産師は女性のみなることができる職業となっています。
そのため、助産師国家試験の受験資格も女性にのみ与えられており、男性は助産師国家資格を受験することすら不可となっています。
日本において、助産師が女性しか就くことができない最大の理由は、「お産」という特殊な状況に、医師ではない男性が関わることへの女性の抵抗感や反対意見が多いためと考えられています。
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法改正で男女区別のない名称に変更
平成14年(2002)3月施行の「保健婦助産婦看護婦法の一部を改正する法律」により、保健婦・助産婦・看護婦の名称が、男女の区別のない現名称である「看護師」「准看護師」「保健師」「助産師」へと変更されました。
この変更は、男女の雇用機会均等の考え方に基づき、女性にしか就くことができない仕事という印象を与える職業名はふさわしくないという見解から起きた改正です。
しかし、その後に看護師や保健師は男性も活躍できるようになったものの、助産師のみ、いまだに女性限定の仕事とされています。
日本助産婦協会では産科で働く男性医師の増加や男女平等の時代背景などを踏まえたうえで、助産師業界への男性の参入を進めていきたいとしていますが、なかなか議論が進まないのが現状です。
たびたび具体的な議論が行われていますが、妊産婦本人が出産の際、助産師の性別を選択する自由がないことなどの理由からも、見送られています。
なお、法律上、産科において助産を行うことを許されているのは、産科の医師および助産師の免許を持つ者のみとされています。
助産師には医療行為が認められていませんが、助産という意味合いでは一般的に、産科医師と助産師の業務の内容が大きく異なるわけではありません。
それにもかかわらず、男性は産科の医師になることはできて、助産師になることはできないことに疑問を抱く人は少なくないといえます。
一方で、女性の医師や助産師に診察や問診をしてもらったり、助産してもらったほうが安心して出産できると考える女性も多いことは事実です。
現段階では日本国内で男性助産師は認められていないものの、これからの医療業界やなりゆきなどを考えると男性助産師が誕生する可能性はあるといえるでしょう。
海外の男性助産師の状況
アメリカの男性助産師
アメリカには少数ではありますが、助産師として働く男性がいます。
ある統計では、アメリカで働く助産師のうち男性助産師は約1%とも言われており、決して多くはありません。
ただ、分娩の現場だけでなく、行政に関わる医療政策や医学研究などの分野でも専門家として活躍が見られるようです。
また、医療現場における人材の多様性を反映させるため、積極的に男性助産師を教育している機関もあるようです。
アメリカで助産師免許を取得するためには、まず看護師免許を取得する必要があります。
その後、大学院の助産師コースで2年学ぶか、1年の認定校コースで学ぶかどちらかを選択します。
もし看護師免許を取得していない場合、大学院の助産師コースで3年学んだあと、アメリカ助産師協会の資格試験にパスする、というルートもあります。
アメリカでの出産は、妊婦やその家族がそれぞれ独自のスタイルでこだわりをもってプランニングするケースが多いです。
それぞれの環境や分娩スタイルなど、希望や状況に合わせたバースプランがあり、それに沿う助産師の全面的なサポートは必要不可欠となります。
その場面において、男性助産師のニーズや活躍する状況が、しっかりあるという点がアメリカにおける男性助産師を取り巻く状況といえます。
イギリスの男性助産師
イギリスで男性助産師が現場で働き始めたのは、1980年代前半とされています。
イギリスは世界に先駆けていち早く男性助産師を導入した、革新国といえます。
当時、日本と同じように女性助産師や妊産婦たちからの大きな反対運動があったにもかかわらず、時のイギリス政府は最終的に男性助産師の現場参入を認可しました。
男女性差別禁止法に基づき、当時のイギリスでは医療現場をはじめとするあらゆる職業において、性差を超えて平等な雇用機会を提言、推進する働きかけが大きかったといえます。
しかしながら、40年近くたった現在、現場で働いている男性助産師は1%にも満たないままとの統計が出ているようです。
導入当初から、ほとんど男性助産師の数が増えていないとも言われており、イギリスでも、出産の現場においては男性助産師のニーズは他の国同様、決して多くはないという見方ができるでしょう。
また、移民の多いイギリスにおいて、宗教的な理由から男性助産師を選ばないとする考え方も一つの主流であることも男性助産師のニーズが高まらない要因のひとつといえます。