漫画編集者の仕事内容・なり方や必要な資格・給料を解説
漫画編集者の仕事内容
漫画家をサポートしつつ各分野をマネジメント
漫画編集者は、漫画の制作において漫画家さんをサポートし、その原稿が掲載された雑誌・書籍などが本として発売されるまでを管理する仕事です。
どうしても漫画家のサポートのイメージが強くなりますが、表紙の装丁などの印刷物としての体裁を整えたり、印刷所とのスケジュール管理、本の販売促進案の企画立案など、その業務は多岐に渡ります。
また漫画の内容にに間違いがないかの校閲・校正も担当することが多く、本の内容に対するクレーム対応も担当編集者の業務となります。
漫画編集者のタイプはおおよそ二つのタイプに分けることができると言われています。
一つ目は、漫画の内容に対する指示は、クオリティアップへ向けて最低限の指針を示すにとどめ、漫画家のサポートに徹する編集者。
二つ目は、ストーリー展開などを含めて漫画家を引っ張っていくタイプです。
どちらのタイプにも優秀な漫画編集種が存在しますので、どちらが正しいということはありません。
これは担当する漫画家との相性になってきます。そのため、漫画編集者が正反対の評価をうけることが珍しいことではありません。
さらに、漫画編集者の大切な仕事のひとつが、新人漫画家の発掘です。
自社で開催しているコンテストや持ち込み、各イベントなどに足を運んで新しい漫画家を探すことが定番でしたが、近年ではインターネット上で漫画を公開している人も多く、インターネットの巡回も新人漫画家発掘の手段となっています。
20代で正社員への就職・転職
漫画編集者の就職先、活躍の場
出版社や編集プロダクションが活躍の場
漫画編集者として働ける場所は、出版社と編集プロダクションです。
漫画家をサポートして、ともに作品を生み出しいていくという基本的な業務は同じですが、出版社と編集プロダクションではその仕事が細部で変わります。
編集プロダクションは出版社から「漫画の編集」を委託されるため、より仕事の内容が狭義(漫画のサポートに特化するなど)となります。
一方、出版社は予算管理や出版計画などに応じた企画の立案、販売促進計画の作成など幅広い業務に対応していくことになります。
現場志向であれば編集プロダクション、企画立案や販促などのプロジェクトの根幹から携わりたいと考えるならば出版社での勤務が理想となります。
また近年では、電子書籍市場が拡大したことでフリーランスの漫画編集者の需要が増えつつあります。
今後フリーの漫画編集者もメジャーな職種となっていく可能性も高くなっています。
漫画編集者の1日
スケジュールによって大きく変化
編集者の仕事はルーチンワークで対応できる業務はほとんどなく、スケジュールに応じて毎日異なる業務に対応することになります。
特にスケジュールの最終段階のひとつ「校了日」に至っては、作業が徹夜に及ぶこともあります。
最近では改善されてきていますが、クリエイティブな現場はどうしても時間感覚が多少ずれてしまうことは知っておいた方がいいと思います。
ここでは、出版社勤務の漫画編集者の制作序盤と後半のタイムスケジュールを紹介していきます。
制作後半
20代で正社員への就職・転職
漫画編集者になるには
資格よりも熱意と努力が大切
漫画編者になるには、出版社や編集プロダクションに就職する必要があります。
いまや大手出版社は、新卒で就職するには最も困難な人気企業。
大手出版社で漫画編集者として活躍することは狭き門であることを覚悟しておく必要があるでしょう。
また、編集というと文系のイメージもありますが、文系の学部出身者が特別多いことはありません。
「出版・編集コース」のような専門の学部を持つ大正大学なども存在していますが、編集者には資格や免許が必要ありませんし、学歴に影響されないといわれています。
また、中小出版社や編集プロダクションは新卒の募集はほとんどない状況ですが、その代わりとして中途採用が活発です。
年齢が若い人ならば未経験者でも採用されることもありますし、近年はかなり少なくなってきていますが、編集プロダクションのような最前線の現場では、学生時代のアルバイトからそのまま就職するというケースもなくもありません。
そして、近年頭角を現しているのが、インターネットメディアでの漫画編集者の存在です。
紙媒体にこだわらないのであればネット漫画編集者も選択肢に入ってくることになりそうです。
漫画編集者の学校・学歴・学費
漫画に特化した専門学校はない
漫画編集者になるために必要な学歴や資格はありません。
学歴が重視されることもないので、特に有利となる大学や学部も存在しないことになります。
ですが大手出版社の就職実績としては、東京大学や早稲田、慶応、MARCHなどが多いです。
これは、学歴というよりは筆記試験を突破するためのレベルが高いためで、常に勉強する姿勢で日々を過ごしていけば地力がついて筆記試験突破の可能性は高くなっていくのではないでしょうか。
また、特に大手出版社は東京に集中しているので、アルバイトなどで職場体験の機会を得る可能性が存在する在京の大学が有利とも言えます。
日本エディタースクールなどの専門学校も存在していますが、会社や大学と両立できるような通信や夜間講座が中心ですし、漫画の編集に特化したコースはまだ存在していません。
総合的な編集の講座で、費用は15万円ほど(日本エディタースクール編集コース一括納入の場合)となっています。
漫画編集者志望でも出版の一般的なルールを知っていることは新卒、未経験からの中途採用では少なからずアドバンテージになるでしょう。
漫画編集者の資格・試験の難易度
漫画編集者に資格は必要なし
漫画編集者として働くために必要な国家資格は存在しません。
印刷に関わる流れなどの編集者としての「テンプレート業務」以外の漫画家とのやり取りや関係性の構築などの「編集者としたのスタイル」は習うものではなく先輩の姿から学んだり、自ら探し出していくことが多くなっています。
専門学校で習ったことをそのまま当てはめていける状況のほうが少ないくらいです。
より現場に近い編集プロダクションの中途採用などでは学歴よりも漫画への情熱や各ジャンルの突出した知識などが重視される傾向もあります。
漫画編集者の給料・年収
実力主義でありながらも職場によって左右される
編集者の平均的な年収は、400万円程度だといわれています。
漫画編集者もこのカテゴリに含まれますが、大手出版社とその他では給与面の差があるとしか言えません。
同じ年代でも1000万円を超える年収の人がいる反面、300万円に満たない人もいます。
人気作・ヒット作を生み出すことができるば昇給のチャンスがある実力重視の現場とも言えますが、中小出版社や編集プロダクションなどではどんなにヒット作を手がけていたとしてもそれが正当に給与に反映されるかは厳しいことが多くなっています。
漫画家と二人三脚でヒット作を生み出していく楽しさや新人漫画家と人気作家への階段を上っていく充実感など、漫画編集者でしから喜びも多い職種です。
給与が重要という志向だったり、「漫画編集者としての仕事が好き」でなければ続けることが難しい職種でもあります。
漫画編集者のやりがい、楽しさ、魅力
ともに作品を生み出し成長する実感
漫画編集者のやりがいは、サポートする漫画がヒットしたり、新人漫画家がヒット作家へと育っていく姿を間近に見ることできる点です。
これ以外にも、漫画家だけでなくデザイナーや印刷関係者など、さまざまな人と関わり合いながら、作品を作り出す一体感や達成感も漫画編集者のやりがいのひとつです。
待遇面で他業種から特に優れている点を探すのは難しいですが、作品を社会に送り出すお手伝いができる特別な職業でもあります。
また、出版に関わるルールや、作品によっては専門的な分野の取材もできるので、思わぬ裏側も知識として身につけることもできます
漫画編集者のつらいこと、大変なこと
業務内容が幅広く、覚えることも多い
漫画編集者のつらい部分は、仕事時間が一定ではない上、繁忙期にはプライベートの時間を確保することもままならなくなることです。
担当する作品数によっては、何ヶ月もプライベートのスケジュールが確保できないということも珍しくありません。
もちろん、こういった時期には休日出勤も増えますので体力的にも厳しくなります。
また、基本的にすべての業務が対人関係が基本となることから、どうしても「人間関係に悩む」場面も出てきます。
漫画編集者がその職を辞する場合、勤務時間の問題や体調不良、人間関係に疲れての退職が多いようです。
漫画編集者に向いている人・適正
求められるのはコミニケーション能力
漫画編集者に求められる能力は、漫画への情熱や奇抜な発想力、何にでも興味を持つ貪欲な好奇心などクリエイティブな要素が浮かんでくるかと思います。
もちろん、それらの能力も大切なのですが、漫画家・デザイナー・印刷所などの複数の取引先と同時進行でやり取りをしつつ、作業を停滞させないマネジメント能力も同じくらい重要です。
そして、複数の現場を取り持つなかでどうしても「待つ」時間がでてきます。
この「待つ」ことを上手に消化できることも漫画編集者にとって大切な資質となります。
また、高いコミュニケーション能力も求められます。
漫画を作るためには、さまざまな業種との連携が必要な上、時には取材が必要になる場合もあります。
取材先の選定し許可をもらい、日程のアポイントを入れる…取材先との交渉を行うのも漫画編集者になるからです。
そしてなにより、漫画のクオリティアップのためには漫画さんとのディスカッションは必須です。
原稿のどこが問題なのか、どう修正すればどういう効果を生むのかを適切に伝えることもコミュニケーション能力の一つです。
人と関わることが好き、人と協力して物を作るのが好き、そういった人が向いている職業が漫画編集者です。
漫画編集者の志望動機・目指すきっかけ
漫画で人生が変わったという実感を持つ人が多い
漫画編集者を目指すきっかけの人は、「漫画好き」であることが多いです。
今や漫画は日本を代表する文化の一つです。
国民的人気作品をきっかけに漫画編集者を目指す人もいれば、知る人も知るマニアックな名作に惹かれて漫画編集者を目指す人もいます。
最近では、漫画編集者や校閲者など出版関連職をモチーフとしたドラマが放送されたこともあり、注目されやすい職業になっています。
漫画によって自分の人生が変わったという実感が、漫画に携わりたいと漫画編集者を目指すきっかけになったという声をよく現場で聞くことができます。
漫画編集者の勤務時間・休日・生活
雇用形態によって勤務スタイルはさまざま
漫画編集者の勤務時間は、出版社・編集プロダクションともに定時に設定されている場合が多いですが、実情としては勤務時間が一定になっているわけではありません。
制作のタイミングによっては、残業をせずに帰社できる場合もありますが、制作が大詰めになってくると業務時間自体に囚われることができなくなってしまいます。
最悪の場合は、会社に泊り込むケースも出てきたり、スケジュール次第では、休日出勤の必要もあります。
勤務時間があまりにも流動的なので、なし崩し的にフレックスタイム制になってしまっている現場も多く、生活スタイルが昼夜逆転している漫画編集者もすくなくありません。
漫画編集者の就職状況・需要
新卒は狭き門、現場によっては中途採用は活発
漫画編集者の新卒での求人数は、多いとは言えません。
新卒の編集者を募集している企業は大手出版社くらいで中小出版社は新卒を取ることはめったにありませんし、大手出版社の新卒入社実績も20人程度と応募者数からするとかなり高い倍率となっています。
逆に中小出版社、編集プロダクションの場合は、新卒ではなく中途採用を募集しているところが多くなります。
また、これまで出版に関わっていなかった企業がインターネットで読む漫画のための編集者を募集していることもあるので、視野を広げていくと新しい需要を発見できるかもしれません。
漫画編集者の転職状況・未経験採用
未経験は若いうちに転職を
同業種からの転職は活発ですが、異業種からは未経験で転職するのは厳しというのが現実です。
中途採用は中小の出版社と編集プロダクションが中心となります。
中途採用で異業種から就職するケースでは、やはり年齢が若い場合が圧倒的です。逆に経験者であれば中高年でも受け入れている状況があります。
他業種からどうしても漫画編集者への転職を考えているのでしたら、前述している会社に勤めながら専門学校などで編集の勉強してみるのもいいかもしれません。
漫画編集者の雇用形態・働き方
契約・アルバイトの場合は契約に注意
労働形態は、基本的に正社員になります。
ですが、大手出版社などでは中途採用やアルバイト経由での契約社員も多く存在していますので、契約・アルバイト・正社員とさまざまな働き方が可能となっています。
勤務時間が多くなることからアルバイトの方が給与面で優位になる場合もありますが、アルバイトや契約社員は契約によっては会社内のインセンティブが適用されないことがありますので注意が必要です。
漫画編集者の将来性・今後の見通し
電子書籍のシェア拡大で可能性は拡大
インターネットの普及とともに苦戦をしいられている出版業界。
漫画というジャンルも年々数字が落ちてきている状況です。
漫画を発表する場所が雑誌など紙媒体である必要がなくなったことで、漫画編集者不要論を唱える人もいますが、現役漫画家からは作品をつくるためのパートナーである漫画編集者の存在を否定する声を聞くことはほとんどありません。
さらにこれからは電子書籍の市場がどんどん広がっていくことが予想されます。
これからの漫画編集者は、今までの雑誌を中心とした漫画の市場展開にとらわれないアイデアで作品の認知度を広げていく企画力が必要になってくると考えられます。