芸者の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「芸者」とは
宴席の場で舞踊や音曲、鳴物などを余興で披露し、客をもてなす日本文化の継承者。
芸者とは、日本の伝統的な職業のひとつで、宴席の場で三味線や唄、舞などを披露し、お客さまをもてなす女性のことを意味します。
芸者になるには、まず「置屋」という場へ問い合わせをして面接を受け、女将に認められることが必要です。
特別な学歴や資格は必要ありませんが、基本的には15歳から18歳くらいまでにキャリアをスタートします。
見習い時代は給料が発生しない代わりに、衣食住にかかる費用は置屋に負担してもらえます。
一人前になり、多くの宴席に出ることで給料は上がり、お客さまからのチップもいただけます。
現代では、芸者のなり手が年々減少傾向にあり、同時に高齢化も進んでいます。
やや特殊な職業であり、芸者を長く続けていくのも決して簡単ではありませんが、日本の伝統芸能の担い手として貴重な存在であることは間違いありません。
「芸者」の仕事紹介
芸者の仕事内容
宴席の場で、踊りや演奏でお客さまをもてなす
芸者とは、宴席の余興で舞踊や音曲、鳴物などを披露し、お客さまをもてなす女性のことです。
芸者の歴史は古く、江戸時代中期頃にさかのぼります。
また、地方によって「芸子(げいこ)」や「芸妓(げいぎ)」とも呼ばれています。
芸者は、見習いの時期に舞や楽器などの修業をし、伝統的な踊りのほか、演奏では三味線、唄、浄瑠璃を中心に、笛や太鼓を演目に応じて使い分けます。
余興以外の時間は、お酌をしながらお客さまとコミュニケーションをとり、さりげなく宴席を進行します。
「接客業」としての要素も強い職業です。
伝統文化を世の中に伝えていく役割も担う
芸者は、人前で芸事を披露する以上、毎日の稽古を欠かしません。
また、芸者が対応する客層は幅広く、海外のお客さまをもてなす機会も多いため、語学力向上のための努力や、話題作りのための情報収集も仕事のうちです。
さらに、現代では「日本文化の継承者」として各種イベントや小中学校などの教育現場で講師をしたり、観光地における「観光大使」として各種PR活動に参加したりすることもあります。
芸者になるには
第一歩は「置屋」に所属すること
芸者になる方法は、一般的な企業に就職するのとは異なり、特殊です。
まずは、宴席に芸者を派遣して、衣食住の世話などもしてくれる「置屋(おきや)」と呼ばれる場所に所属する必要があります。
ホームページなどをチェックして自分で希望の置屋に問い合わせをし、面接の機会を作ってもらうのが原則です。
芸者には特別な学歴や資格は必要ありませんが、基本的には15歳から18歳くらいでキャリアをスタートする必要があるため、年齢制限には注意が必要です。
若い志願者の場合、本人のほか、保護者や芸事の師匠と、置屋の女将とが面接をすることもあります。
置屋では「見習い」からスタートする
置屋に女将に認めてもらうと、まずは「見習い」としてふさわしい所作や言葉遣い、着付けや化粧などを身に付けます。
たいていの場合、見習い中は住み込みで芸者の修業をします。給料は支給されませんが衣食住に困ることはありません。
成人の頃に見習い期間を終え、いよいよお客さまの前に立って芸を披露することになります。
最近では、人手不足の点から芸者を目指せる年齢はやや上がっていますが、置屋によって条件が異なるため、できるだけ早くに確認しておきましょう。
芸者の学校・学費
特別な学校には通わず、修業を積んで一人前を目指す
芸者になるにあたって、特別な学校に通う必要はありません。
「なるには」で説明した通り、置屋に所属し、見習いとして一から芸事の修業をしていくことになります。
早ければ中学校を卒業したタイミングで芸者の道を歩み始めるため、一般の高校や大学に通う人とは、まったく異なるキャリアを歩むことになります。
なお、芸者としてよいスタートを切るためには、幼い頃から日本舞踊、三味線や長唄などを積極的に習うのもよいでしょう。
芸者の資格・試験の難易度
試験はないが、芸を磨き続ける努力が必要
芸者になるにあたって、なにか特別な「資格」が求められることはありません。
ただし、芸者の第一歩である置屋の女将との面接は、一般企業の採用試験のようなもので、必ず突破しなければいけない試験といえます。
芸者の仕事は信頼関係で成り立つため、面接のアポイントをとるところから態度を見られ、面接当日も、厳しい修業期間を乗り越える覚悟や意思があるかどうかがチェックされます。
芸者になってから試験に追われることはありませんが、稽古の日々は続きます。
芸の道に進でいく以上は、日々自分のスキルを磨き続ける努力が欠かせません。
芸者の給料・年収
給料は「歩合制」が基本になる
芸者が所属する置屋では、給料について「歩合制」をとっているところが多いです。
1回の宴席でお客さまは一人の芸者に5万円ほど払い、そこから置屋がマージンとして看板料と諸費用を差し引くため、実際に芸者が手にする収入は時給2,000円~3,000円程度になります。
ちなみに、芸者の時給のことは「玉代」といいます。
ベテランの芸者になると、玉代が6,000円ほどになる人もいるとされ、スキルを積むことで月収20万円~30万円ほどは実現可能です。
福利厚生はないが、チップをもらえる
芸者は、一般企業で働く人のような福利厚生はほとんどありません。
ただし、宴席でお客さまから直接「チップ」をいただくことがあり、芸者によっては、チップが玉代よりも高い額になることもあるようです。
また、経験を積んだ芸者は置屋から独立する権利が与えられ、個人で仕事をしていく人もいます。
人気芸妓として宴席に呼ばれることが増えれば、収入アップが期待できます。
芸者の現状と将来性・今後の見通し
日本の伝統文化を大切に受け継ぐ貴重な存在
芸者は、最盛期には各花街に数百人、数千人単位で活躍していました。
しかしながら、現在、全国にいる芸者の数は五百数十名程度とされ、年々その数は減少しています。
一方、時代が移り変わるにつれて活躍の場は多様化しており、料亭の宴席以外でも、各種のイベントでの着付けやメイク、伝統芸能など技能指導の講師を務める機会も増えています。
また、海外で開催されるイベントで芸事を披露したり、観光に訪れた外国人をもてなしたりするケースも見られます。
芸者は特殊な職業ではありますが、今後も需要がまったくなくなることは考えにいです。
現役芸者の高齢化が進んでいる一面もあり、新たな場で活躍できる若い人材も求められています。
芸者の就職先・活躍の場
芸者は「置屋」に所属する
芸者は「置屋」に所属する必要があります。
置屋とは芸者を抱える家のことで、お座敷に所属している芸者を派遣する役割を担っており、芸能界でいう「芸能プロダクション(事務所)」と似たようなものです。
置屋の経営者は女将さんで、芸者は女将さんをお母さんと呼び、芸事に関連するさまざまなことを教わるのです。
芸者は出勤の際にまず置屋に立ち寄り、そこで諸連絡を受けると宴席の会場へ向かいます。
また、宴席での仕事が終わると再度置屋に立ち寄ってから帰宅します。
置屋は芸者の活動拠点でもあるのです。
芸者の1日
稽古から始まり、夜遅くまで働く
芸者は、その日の宴席で披露する演目の稽古を行うことから1日が始まります。
夕方になると着付けなど身なりを整え、宴席へと向かいます。
宴席は深夜にまで及ぶことも珍しくなく、生活はどうしても夜型になりがちです。
ここでは、仕事がある日の芸者のある1日の流れを紹介します。
芸者のやりがい、楽しさ
芸の道に邁進し、自分を磨き続ける喜び
芸者として活躍する人は、日本の伝統芸能を担う立場であることに誇りを持っています。
日本舞踊をはじめ、琴や三味線などの鳴物や長唄といった芸事を極めるために精進する生き方自体が、この仕事に就く大きなやりがいといえます。
また、お客さまの前で演目を披露する時の高揚感や、さまざまな人と関われることも魅力です。
自分の芸でお客さまが笑顔になってくるときに、やりがいを感じられます。
日本独自の各種礼節を熟知していることも、現代社会においては貴重といえるでしょう。
着付けや髪結いなどの身支度を素早く行えますし、和服での姿勢や所作、言葉遣いも美しくなります。
芸者のつらいこと、大変なこと
一人前になるまでの厳しさ、その後も芸を磨き続ける覚悟
芸者は、一人前になるまでの修業が厳しい世界です。
見習い期間には、日常生活とは異なる、慣れない慣習や環境の中で身に付けなければならないことも多く、つらいと感じる人は多いでしょう。
実際、一人前になる前にこの道を諦めてしまう人もいます。
また、一人前になった後も「芸の道に終わりなし」と言われるように、常に自分自身を磨き続けなくてはなりません。
とくに不得意な演目は厳しい稽古を継続的に続けることが求められ、芸者として生きていく強い覚悟と意思が必要です。
さらに、宴席ではお酌なども大切な仕事であり、多少のお酒はたしなみ、その時々で相手に合わせて気の利いた会話をすることに苦労する人もいるようです。
芸者に向いている人・適性
日本文化や、人をおもてなしすることが好きな人
芸者は江戸時代中期から続く日本の伝統的な職業であるため、「文化の継承者である」という意識を持つことが求められます。
また、現代では芸者は日本文化の象徴として、海外からも注目を集めています。
芸を通して国際交流の懸け橋となりたい人、語学や海外の文化に興味を持てる人にも適性があるといえます。
加えて、宴席ではたくさんのお客さまの前で芸事を披露したり、座敷をまわってお酌をしたりするため、人前に出ることや人と関わることの好きな人が向いているでしょう。
人当たりのよさや親しみやすさなども、芸者に必要な要素のひとつです。
芸者志望動機・目指すきっかけ
女将との面接でしっかりと動機をアピール
芸者の志望動機には、「テレビや映画で芸者が踊る姿を観て憧れた」「小さい頃から日本舞踊を習っていた」などがあります。
伝統文化や伝統芸能が好きで、自分もその道を究めていきたいという思いから、芸者の道を志す人が多いようです。
芸者の面接でも、志望動機は問われると考えておきましょう。
置屋は、一人の芸者志望者を一人前に育てるまでに、金銭面でもかなりの面倒を見ることになります。
「この子なら、厳しい修業期間をきちんと乗り越えられる」と思ってもらえるように、自分の志望動機をしっかりとアピールしてください。
芸者の雇用形態・働き方
見習いや新人の芸者は置屋に所属する
芸者にとって置屋は家、女将さんは母であり、稽古や宴席の会場に行く際にも、まずは置屋に顔を出すのが基本です。
また宴席後もよほどのことがない時は置屋に一度戻ってから帰宅します。
会社の「社員」のような身分ではありませんが、一人前になるまでは置屋に所属しなければ、芸者としての歩みを進めることもできません。
見習いの間は置屋に住み込んで生活することも多いため、芸者にとって文字通りの家であるといえます。
一人前になって認められると、置屋から独立して「自前芸者」として活動することができます。
芸者の勤務時間・休日・生活
夜型の生活スタイルとなる
芸者の活躍の場である宴席は夜間に行われるため、生活はどうしても夜型になってきます。
たとえば夕刻に置屋に出勤し、諸連絡を受け、宴席が行われる場所に出向いて勤務開始、という流れで、帰宅は深夜になることがほとんどです。
朝は比較的ゆっくりできますが、日中ものんびり休むわけではなく、稽古に励みます。
芸の道に生きる以上、稽古は生活の中心といっても過言ではないのです。
宴席での仕事である以上、飲酒の機会もやや多くなってくるため、自分で体調管理をきちんとしながら仕事に励むことが求められます。
芸者の求人・就職状況・需要
時代が進むにつれ需要は減り、後継者不足が深刻に
現在は、最盛期に比べると芸者の需要が減ってきています。
芸者を呼べるお座敷のある料亭が少なくなってきているためで、それにともなって芸者の数も減少傾向にあり、どの置屋でも後継者の確保に奔走しています。
裏を返すと、志願すれば目指しやすい職業になってきたともいえるでしょう。
芸者を目指す人は、入りたい置屋があれば、自分で直接問い合わせをして面接の機会を得るのが王道のルートです。
最近では置屋の求人情報もWeb上で閲覧することが可能になり、ハローワークに求人が出ていることもあります。
興味のある人は、ぜひ積極的に情報を入手してみましょう。
芸者の転職状況・未経験採用
年齢制限に気を付けることが必要
芸者になるにあたって、学歴・経験は不問であることがほとんどですから、転職で目指すことは可能です。
しかしながら、芸者への転身を考える際に一番気を付けたいのが「年齢制限」に関してです。
かつては中学卒業と同時に置屋へ入門し、見習い期間を経て、成人した時に一人前の芸者として認められるのが一般的でした。
現代では、芸者の後継者不足により、対象年齢を引き上げている置屋も増えています。
それでも20歳以上、最高でも25歳を超えると、経験がない限り、選択肢はかなり狭まります。
また芸者は結婚したら引退しなくてはいけないともいわれています。
こういった事情からも、義務教育を終えた人は、できるだけ早い段階で芸者の道を志すほうがよいでしょう。