シェフの仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「シェフ」とは
厨房の指揮官として、メニュー考案やコックの指導・教育、料理のプロデュース等に携わる。
厨房での全責任を負う、指揮官のような役割を担っているのがシェフです。
調理をするだけではなく、部下の教育・指導、メニューの構成、食材の調達など多くの仕事を担当します。
厨房で働く人には階級があり、シェフは働くコックたちを束ね、全責任を負うトップの料理人であるため、まずは一人前のコックになる必要があります。
シェフになるまでは、個人差はありますが、概ね10年程度修行を積まなければなりません。
コックとしての初任給は約17〜18万円程度、シェフになることができれば、年収700万程度となることもあります。
独立して成功すればさらに高収入も可能です。
コックを含め、シェフの仕事は体力的にも精神的にもハードなうえ、最初は待遇もさほど期待できないため、料理に対する情熱を持ち続けることが何より大切です。
近年は食の提供の仕方も多様化しており、ただ「おいしい」だけではなく、どういった食を提供するかが重要視される時代へと変わってきています。
オリジナリティを出しながらも、価値のあるメニューを作る必要があるといえるでしょう。
「シェフ」の仕事紹介
シェフの仕事内容
コックを率いて厨房の全責任を負うトップの料理人
コックたちを束ね、調理場のトップとなる人
シェフとは、レストランなど洋食を扱う厨房で料理を作る人のことです。
厨房で働く人には階級があり、シェフは働くコックたちを束ね、全責任を負うトップの料理人のことを指します。
注文された料理を見て厨房に調理の手順や指示を出し、部下の味付けのチェックや教育・指導するといった指揮官のような役割を担っています。
また、コースメニューの構成を考えたり、新しいメニューを開発したりといった、メニュー・料理の全体的なプロデュースも行います。
ときには食の大切さを伝える講習会を開いたりアドバイスを行ったりすることもあります。
利益を出すことも大きな仕事
シェフの大切な仕事は食材の仕入れや選択、調達を限られた予算内で行い、厨房全体の益を出すことです。
食材の仕入れや選択、調達もシェフの腕の見せどころで、どこのどんな食材を、いくらで仕入れてどのようにして使うかはシェフのセンスや世界観が如実に表れるポイントでもあります。
実際、シェフの作る料理により売上が上がったり、店に注目が集まったりすることも多いです。
大規模なホテルやレストランになれば管理責任者としての職務のほうがメインになることもあります。
料理で自分の世界観を表現できる一方、厨房のトップとして大きな責任が課せられるため、厳しい面もありますがそれだけやりがいも大きいといえるでしょう。
シェフになるには
コックからはじまり、一人前になるには長い修業が必要
まずはコックからキャリアをスタートする
シェフを目指す前に、まず一人前のコックにならなくてはなりません。
シェフになるまでは、個人差はありますが、一般的に10年程度といわれています。
未経験からお店で見習いとして働くほか、調理師専門学校などで学び、技術や知識を身に付けてから就職する人もいます。
どちらにせよ下積みの間は、皿洗いや掃除などをしながら、調理の段取りや衛生管理などを学び、シェフの許可を得てやっと包丁を握ることができるようになります。
コックとして一人前になったあと、シェフになれるかどうかは、自分の努力次第です。
シェフになるにはさまざまな道がある
厨房で腕を上げていけば、さらにスキルアップするために、別の店舗へ移ったり、修行のために海外に渡って有名店でスキルを磨いたりします。
自分がどのようなシェフになりたいか、イメージをしっかりと思い描き、ただ仕事に追われるのではなく、何事も吸収していく姿勢が大切です。
一人前のコックとなった場合は、「スーシェフ」として厨房の調理の指揮をとります。
シェフは店に一人のため、シェフがすでにいる店では、そのポジションがあくまで待つ必要があります。
なかにはヘッドハンティングをされ、シェフとして他店に移る人もいます。
また、多くの料理人は自分の店を持つという夢を持っており、自分で店を構えることができれば、オーナーシェフとして腕をふるう、やりがいのある働き方ができるといえるでしょう。
シェフの学校・学費
未経験から修業をするか、調理師専門学校で学ぶ
シェフを目指す場合、店に飛び込みで未経験から修業するパターンと、調理師を養成する学校で調理の基礎を学んでから修業するパターンがあります。
料理人やコックになるために学歴は必要ないため、中卒や高卒で現場に飛び込み、シェフとなっている人もいます。
一方で、最近は就職の間口の広さや調理師資格を効率的に取得できることに魅力を感じ、高校卒業後、調理系の短大や専門学校に進学する人も多くなっています。
現在では高校卒業後に専門学校に入学するか、短期大学を選択し、卒業と同時に調理師免許を取得して就職する道が一般的です。
学校によってカリキュラムや専門が異なるので、進学する場合は自分がどんなコックになりたいかをしっかりと考えた上で学校選びをしましょう。
シェフの資格・試験の難易度
必須ではないが調理師免許があると有利
シェフになるために特別な資格は必要ありませんが、調理の仕事を志す人は調理師免許を持っていると、さまざまな場面で有利になります。
調理師学校を卒業している場合は、試験を受けなくても申請をするだけで資格を得ることができます。
たとえ学校に通ってなくても、飲食店で下積みをしている人は、就業経験が2年以上あれば受験資格を得ることができます。
飲食店に就職したいときや、自分でお店を持ちたいときなど、さまざまな場面で調理師免許は役に立つでしょう。
ただし、調理の仕事は資格をもっているだけで成功できるものではないため、あくまでも自分の基本的な知識・スキルを証明するものとして考えておくことが大切です。
シェフの給料・年収
厨房のトップ・シェフになれば高収入を見込めることも
高収入を得るまでには長い時間がかかる
一般的に、飲食業界は給料が低めと言われています。
20代前半でコックになった場合、初任給は約17~18万円程度です。
シェフになるには料理人やコックとして長年の厳しい修行が必要であり、その時代は決して高いとはいえない収入で生活していく覚悟が必要です。
しかし厨房のトップ・シェフになれば、店舗の業態や規模にもよりますが年収は360~700万円ほどとなることもあります。
三ツ星レストランのような人気店で働くことができたり、自身の飲食店がメディアで特集されるようになったりと、人気が出てお店の売り上げが増えれば、更に年収が増えるでしょう。
ただし、シェフは調理以外にも部下の教育や利益のチェックなど雑務もしなければならないため、年収の割には長時間労働になりやすい傾向にあります。
勤務先や実力によって大きな違いが
シェフの給料は、実力や知名度、勤務先、ポジションなどによって大きく変わってきます。
雇われて働く場合、勤務先の企業が大きいほど収入は安定しやすく、定期的な賞与の支給や昇給などの制度が用意されていることが多いです。
個人経営の飲食店では、給料や待遇に関しては店の経営状況によって異なります。
経験を積み、他の店へシェフとして引き抜かれるようなことがあると、それまでよりも給料や待遇の条件がよいかたちで働けるケースも多いです。
なお、シェフは管理職の立場でマネジメント業務を担うこともあるため、職場によっては役職手当のようなものが加算されることもあります。
関連記事シェフの年収・給料はどれくらい? 初任給やボーナス、統計データも解説
シェフの現状と将来性・今後の見通し
「おいしい」だけではない食の価値を
近年、中食(惣菜)市場は著しい成長をとげており、ホテルなども、ホテル独自の惣菜などを販売するケースが増え、有名シェフ監修の料理キットなどを販売するレストランもでてきています。
今後はお客さまに店にきてもらうのではなく、家で美味しい料理を食べてもらうためのサービス拡大に力を入れる企業が増加していく可能性があります。
また、食の安心・安全や食育が叫ばれ、食の大切さが見直されつつあります。
スローフードといった新しい食の提供の仕方も登場し、ただ「おいしい」だけではなく、どういった食を提供するかが重要視される時代へと変わってきています。
消費者からのさまざまな食に対するニーズをとらえて、価値のあるメニューを作る必要があるといえるでしょう。
シェフの就職先・活躍の場
洋食を提供するさまざまな場所で活躍する
シェフが活躍するのは、主に洋食を提供する場所で、実にさまざまな就職先があります。
料理に直接携わる職場としては、ホテルの料理部門、レストラン、カフェなどの飲食店のほか、結婚式場などのイベント会場、ケータリングサービスなどです。
独立して自分の店を開き、オーナーシェフとして経営者とシェフの仕事を掛け持ちしている人も少なくありません。
経験を積んだベテランのシェフなら、食品メーカーなどで行われる商品開発にアドバイザーとして参加したり、スポーツ選手の食事管理をしたりと、専門的な知識を生かした働き方をすることもできます。
また、後進を育てるために料理教室を開いたり、調理師学校の講師を務めたりする人も多くいます。
シェフの1日
1日の多くを厨房で過ごす
シェフの1日の流れは、ホテルや個人店、ケータリングなど、勤務先や業態によって異なってきます。
一般的には営業開始の1、2時間前に出勤し、営業終了後の1時間後くらいに退勤するパターンが多いです。
一般のレストランなどでは夜勤は普通ありませんが、ルームサービスなどの関係で24時間稼働しなければならないホテルなどの場合は、シフト制を組んでいることもあります。
<レストラン勤務のシェフの1日>
シェフのやりがい、楽しさ
自分の作りたい料理を作り、お客さまに提供する喜び
コックは、基本的にあらかじめレシピがあるものを指示されたとおりにつくります。
しかしコックのトップ、シェフにまで上り詰めることができれば、さまざまなことができるようになります。
お店の新メニューを開発したり、コースメニューの構成を考えたりと、店の顔として活躍することができます。
もちろん厨房の指揮権をとることもできるので、自分が思うような料理を、自分の思い通りに作ることができます。
シェフにとってこれ以上に喜びを感じることはないでしょう。
また、食は全世界共通のものであるため、腕さえあればどこでも開業をすることができますし、海外で働くことも可能です。
活躍の場は自分次第であり、自分の腕の活かし方次第で多種多様な働き方ができるといえるでしょう。
シェフのつらいこと、大変なこと
料理以外にもさまざまな仕事をこなさなくてはならない
シェフは厨房の責任者であるため、料理の指揮はもちろんのことマネージメントも任されます。
自由に料理ができる反面、メニューの利益率やお店の売り上げも考えなくてはならず、料理以外のさまざまな仕事にも目を光らせなくてはいけないのです。
美味しいだけでなく、常に原価を意識し、利益を出していく必要あり、思うように厨房の指揮がとれなかったり、コストと味の板挟みになったりすれば、辛く感じられることも多いでしょう。
また後輩の指導・育成もシェフの仕事のひとつです。
手が抜けないのはもちろんですが、指導方法を誤れば後輩が店を去ってしまったり、なかなか後進が育たなかったりといったこともあり得ます。
料理以外の面でも気を配ることが多く、常に苦労の絶えない仕事です。
シェフに向いている人・適性
一人前になっても常に向上心を持って仕事ができる人
シェフになったといっても、料理の技術や知識が完成するわけではありません。
料理の世界は常に進化し続けています。
トレンドも毎年変わるため、新しい情報を仕入れたり知識や技術を学んだりと、常に自身の料理をブラッシュアップしていかなければなりません。
厨房のトップだからといってあぐらをかいていると、あっという間に後輩に追い越されたり、客に飽きられたりしてしまいます。
いつまでも料理や食への興味をなくすことなく、好奇心や向上心をもって常に探求を続ける人こそがシェフに向いているといえるでしょう。
また、下積み期間には皿洗い・掃除などの雑用から働き始め、包丁すら握らせてもらえないことも多いです。
上下関係も厳しい職場が多いため、シェフになるには忍耐力が必要といえます。
シェフ志望動機・目指すきっかけ
「料理が好き」「料理で人を喜ばせたい」という強い思い
「料理が好き」「自分の料理で人を喜ばせたい」「食べることが好きで食に関する仕事がしたい」という思いからシェフを目指す人が多いようです。
また、家族や親せきが飲食店を経営していて、そこで働いたりお店を継いだりするためにシェフを目指すという人もいます。
ただしシェフになるには、料理人としての技術やセンスを身につけるために、何年もの修行に耐えなければいけません。
給料も駆け出しのころは少なく、休みもなく体力勝負の世界です。
どんなにつらくても、それに負けない「料理が好き」という気持ちや「絶対シェフになりたい」といった熱い思いと覚悟がなければ、修業を続け料理人として一人前になるのは難しいでしょう。
シェフの雇用形態・働き方
企業や店舗に雇用されるか、独立して店舗を構えるか
シェフの雇用形態には、企業や店舗から正社員として雇用されるパターンと、独立開業してオーナーシェフになるパターンがあります。
大企業や有名店に勤める場合は、給料や待遇も安定していますが、シェフになったとしても自由度が少ないことが多く、「もっと自分のカラーを出して働きたい」という人もいます。
一方、独立開業する場合は、料理人だけでなく経営者としてのセンスも求められます。
どんなに料理がうまくても、しっかりとお店全体をマネージメントし、利益を上げることができなければ、お店はつぶれてしまいます。
シェフとしてどのように働きたいか、自分に合った働き方を考える必要があるといえます。
シェフの勤務時間・休日・生活
業務が多くどうしても長時間労働になりがち
シェフの勤務時間は業態や経験年数によって異なります。
シフトを組んで交替で働く場合では、2交代制や深夜を含めた3交代制が目立ちます。
毎日決まった時間に出勤する場合は、昼のみ、夜のみなど勤務先の営業時間によって大きく変わってきます。
個人店で下積みを始める場合は、作業量が多いため、早朝から深夜まで長時間拘束される傾向があります。
最初のうちは、完全に休める日は月に数日あるかないか、といったかなり厳しい状況のところもあります。
シェフになってからも、料理人の人数が少ないところは、代わりがいないので休みに融通がきかないという傾向があります。
どうしても厨房全体をチェックしなければならない仕事上、お店の定休日のみが自分の休みというシェフが多いようです。
シェフの求人・就職状況・需要
入れ替わりが激しく求人は多く見られる
外食産業は全体的にはやや減少傾向にあるものの、入れ替わりの激しい世界でもあるので、厨房で働く人は常に需要はある状況です。
求人サイトを見ても、正社員としての求人が多く見られます。
シェフの働く場はさまざまですから、働きたい業態を狙って応募するとよいでしょう。
ただし、誰でもいきなりシェフになれるわけではありませんので、しっかりとお店の特性や仕事の流れを覚えて、経験を積んでからシェフとして働き始めることになります。
また在籍している店の常連客から、コネクションを通じて引き抜きされる場合もあるなど、人づてで職場を見つけることも多くあります。
他の店へ食べに行ったり、同業または他業種のシェフと交流を持ったりするなど、アンテナを広げて人脈を増やすことも大切でしょう。
シェフの転職状況・未経験採用
年齢制限もなくスキルアップや待遇を求めた転職は多い
シェフ、またはコックに転職するにあたって年齢は関係ありません。
未経験でも採用してくれる飲食店も多く、思い立ったら誰でもいつでも料理の道を目指すことはできます。
ただし、料理人の世界はその店にどれだけ先に入ったかで上下関係が決まるため、先輩が自分より年下である場合もあります。
こうした過酷な状況でも、長期間の修業を耐えられる強い覚悟が必要です。
入れ替わりの激しい業界なので、飲食店から別な飲食店へと転職する人は非常に多く、経験者は優遇される傾向にあります。
ときには優秀なシェフがスキルアップやより良い待遇を求めて転職をするケースも見られますが、この場合は他の飲食業からの引き抜きやヘッドハンティングなどであるケースが多いです。
スーシェフの役割
シェフを補佐する副料理長の役割
スーシェフとは、厨房の2番シェフ、または副料理長のことを指します。
シェフは自ら腕を振るうイメージがありますが、多くの料理人が働く厨房の場合、シェフは現場を仕切り、味の確認や料理の出来栄えを確認するのみで、実際に料理をすることはあまりありません。
一方、実際に厨房で腕を振るうのは2番シェフであるスーシェフが一般的です。
自ら料理をするだけでなく、出来が遅い料理人を手伝ったり、厨房内の料理ができる速さをコントロールしたりすることも大切な役割です。
シェフが不在のときは代わりに現場の指揮をとるため、スーシェフの期間はシェフになるための修業期間ともいえる重要な期間です。