弁理士と弁護士の違い

弁理士と弁護士の仕事内容の違い

弁理士・弁護士ともに、法律を取り扱う国家資格であり、また名称も似通っていますが、その業務内容や役割は異なっています。

弁理士は、特許法や意匠法といった知的財産法に精通した専門家であり、顧客から依頼を受けて、特許庁に対する知的財産の権利化手続きを代行することがおもな仕事です。

これに対し、弁護士が取り扱う範囲は知的財産だけにとどまらず、日常生活全般の争いごとを解決することが仕事であり、離婚、相続、民間取引、示談交渉、犯罪時の弁護など、業務内容は多岐にわたります。

おおまかには、弁理士は「特許庁における手続きのスペシャリスト」、弁護士は「紛争解決のスペシャリスト」といえるでしょう。

なお、訴訟を起こしたり、裁判で依頼者の代理人となって法廷で争うことは基本的に弁護士の仕事ですが、知的財産をめぐる訴訟については、弁護士と共同受任する条件で、弁理士も代理人となることが可能です。

現在、弁理士が単独で侵害訴訟の代理人を務められるよう法改正することも議論されており、知的財産という分野においては、弁理士と弁護士の仕事内容はより近似してくるものと想定されます。

弁護士の仕事

20代で正社員への就職・転職

20代で正社員への就職を目指す

「Re就活エージェント」は、第二新卒・既卒・フリーター・ニート向けサービス。20代未経験OKの求人が多数。

20代登録比率No.1

弁理士と弁護士のなる方法・資格の違い

弁理士になるには3種類の方法がありますが、最も一般的なのは弁理士試験に合格する方法です。

残りの2つは、司法試験を受けて弁護士資格を取得する方法と、特許庁に就職し、審査官または審判官として7年以上の実務経験を積む方法です。

しかし、司法試験は弁理士試験よりも難易度が高いこと、また特許庁の審査官になるまでには最低でも4年ほどかかり、資格を得るまで通算11年を要することを勘案すると、試験を受ける方法が最も近道です。

これに対し、弁護士になるには、司法試験を受ける以外の方法はありません。

司法試験を受けるには、まず4年制大学の法学部などに進学し、その後に法科大学院に進むことが必要です。

さらに、司法試験を突破した後にも、司法修習を受け、司法修習後の卒業試験に合格しなければなりません。

弁護士は、検察官、裁判官とあわせて3大法曹資格と呼ばれており、弁理士と比較すると、働きだすまでに数多くの条件をクリアしなければならないことが大きな違いといえます。

弁理士と弁護士の資格の難易度の違い

弁理士試験の合格率は、近年6%~7%前後という非常に低い水準で推移しています。

一発で合格できる人はまれで、平均3~4回ほどの受験を要する人が多いようです。

一方、司法試験の合格率は、受験生の出身法科大学院によってかなり差があるものの、全体を平均した合格率は25%前後です。

数字だけを単純に比較すると、弁理士試験のほうが難しいように見えますが、実際の難易度としては司法試験のほうが上とされています。

これは、弁理士試験は誰でも試験を受けられるのに対し、司法試験を受けられるのは、法科大学院で数年間みっちりと勉強してきた学生だけであるという、受験者の属性の差が大きく影響しています。

逆に考えれば、法科大学院でしっかりと法律の勉強だけに打ち込んできた人であっても、司法試験はおよそ4人に1人しか受からない難関だということです。

また、司法試験の前には、4年制大学の入試と法科大学院の院試という2つの関門もパスしなければならないことを考えると、弁護士のほうが弁理士よりかなりハードルが高いといえるでしょう。

20代で正社員への就職・転職

20代で正社員への就職を目指す

「Re就活エージェント」は、第二新卒・既卒・フリーター・ニート向けサービス。20代未経験OKの求人が多数。

20代登録比率No.1

弁理士と弁護士の学校・学費の違い

弁理士試験には学歴などの受験資格はありませんので、どこか特定の学校に通わなくても試験を受けることは可能です。

ただ、試験で問われる内容は非常に専門性が高いため、受験者は大卒者や院卒者が目立ちます。

これに対し、弁護士になるには、司法試験に受験資格が設けられている関係上、4年制大学に通った後、法科大学院まで進学することは必須条件です。

学部については、必ず法学部でなければならないというわけではありませんが、法学部に進んだほうが、ほかの学部と比べて法科大学院での勉強期間が1年短くすむというメリットがあります。

なお、どちらの試験も非常に難関ですので、大学や大学院に加えて、民間の資格学校や予備校にも通って「ダブルスクール」で合格を目指すケースが一般的です。

弁理士と弁護士の給料・待遇の違い

弁理士の年収は700万円~800万円前後が相場とされており、弁護士はそれよりもさらに高水準の800万円~1000万円前後が相場とされています。

勤め先によって差があるものの、どちらも難関資格であるぶん、一般的なサラリーマンを大きく上回る収入が期待できるといえます。

また、どちらも独立開業するとさらに高収入を得ることも可能で、弁理士の場合は年収1000万円、弁護士は年収1400万円前後が平均とされています。

ただし、弁理士・弁護士ともに、収入は実力との相関性が高く、実際の給料はかなり個人差が大きいことが特徴です。

開業弁護士のなかには、複数の大企業と顧問契約を締結し、年収数千万円~1億円を得ている人もいます。

開業弁理士についても、弁護士ほどではないものの、年収2000万円や3000万円を稼ぐことは可能であるようです。

しかし、独立開業にはリスクもあり、双方の資格とも、営業力が足りなければ勤務時代以下の収入しか得られないケースも珍しくなく、生活さえ成り立たず、廃業に追い込まれてしまう人もいます。

弁理士と弁護士はどっちがおすすめ?

弁理士と弁護士は、どちらも法律を扱う職業であるものの、弁理士は知的財産関係に特化したスペシャリストであり、弁護士は法律業務全般を幅広く手掛けるゼネラリストです。

したがって、性格的にひとつのことを突きつめるのが好きな人は弁理士が、さまざまなことに興味がある人は弁護士が、それぞれ向いているでしょう。

また、両者の大きな違いとして、弁理士は理系出身者が多く、弁護士は文系出身者が多いという点が挙げられます。

業務に求められる知識も、弁理士は最先端の科学技術や工業技術などである一方、弁護士は民法や刑法など、六法を中心とした数多くの法律です。

理系科目と文系科目、どちらのほうが得意であるかが、弁理士と弁護士、どちらに向いているかをある程度示唆しているといえるでしょう。

なお、資格制度上、弁護士資格があれば弁理士として登録することもできるため、双方の資格を掲げてダブルライセンスで働いている人もいます。