溶接工の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「溶接工」とは
ものづくりの現場で、複数の材料を接合して新たな部品や製品を作り出すスペシャリスト
溶接工は、複数の材料(金属など)に対して「熱」や「圧力」を加えることで、それらをつなぐ加工を手掛けるスペシャリストです。
「溶加材」と呼ばれる、溶かして使う接着剤を使用することもあります。
溶接の技術は、建物や自動車、家具、貴金属など、さまざまな「ものづくり」の場で活用されています。
溶接工は専門性の高い職業であるため、まず工業高校や専門学校、職業訓練校などで溶接の基礎的な知識・技術を身につけてから、建設会社や自動車メーカーなどに技術者として就職するのが一般的です。
また、溶接業務に携わるには、基本的に「溶接技能者」の資格取得も必要です。
溶接技能者は、扱う材質や溶接の手法によって細かく資格が分かれているため、仕事に就いてからも日々勉強や訓練を続けなくてはなりません。
昨今では、溶接でも「ロボット」が活用されるようになり、単純作業は人の手をかけずに済むケースが増えています。
しかしながら、仕上げや細かな加工などで人の手が必要な場面もまだまだあり、若い人材が求められています。
「溶接工」の仕事紹介
溶接工の仕事内容
複数の材料に熱や圧力を加えて接合する技術者
溶接工とは、複数の材料(おもに金属)に熱や圧力などを加えて、それらをつなげる加工をする技術者です。
溶接には、電気を使って溶接をする「アーク溶接」や、燃焼ガスを使って高温の炎で溶接する「ガス溶接」といったさまざまな種類があります。
また溶接は、ヨーロッパでは紀元前3000年頃の青銅器から、日本では弥生時代の銅鐸から溶接の跡があることが確認されているほどの伝統的な技術です。
溶接工が手掛ける製品は、自動車や船、家具、時計、アクセサリーなど多岐にわたり、ときには建築中の高層ビルや水中で作業をすることもあります。
溶接工はさまざまな場で専門性を発揮する/h4>
「ものを溶かしてくっつける」という溶接の作業は、単純に思えるかもしれません。
しかし、十分な強度があって見た目も美しい溶接加工をするためには、非常に高度な技術が求められます。
なお、ひとことで「溶接工」といっても、水中専門の溶接工、配管専門の溶接工、構造物やタンクが専門の溶接工、造船など船専門の溶接工など、それぞれが異なる専門性をもっています。
経験年数を重ね、少しずつスキルアップを目指す職人的な要素もある職業です。
経験を重ねた熟練の溶接工は、より難易度の高い仕事に携われるようになります。
溶接工になるには
職業訓練校などで溶接を学んでから就職する人が多い
溶接工には、機材や材質に関する専門知識、そして火や電気、圧力を安全に取り扱いながら溶接作業を行うための高い技術力が求められます。
素人が簡単に仕事を始められるようなものではないため、きちんと教育や訓練を受ける必要があります。
溶接の学習は、工業高校や専門学校の「溶接技術科」、また社会人であれば「職業訓練校」の「溶接系コース」で学ぶ人が多いです。
加えて「溶接技能者」の資格取得を目指し、建設会社や自動車メーカーなど溶接工の求人が出ている企業への就職を目指すのが代表的なルートといえます。
資格がなくても「見習い」としての就職は可能ですが、資格を取れば確かな知識・技術があることを証明でき、実務でも役立ちます。
技術や資格を習得している人は歓迎されやすい
近年、溶接工は高齢化が進んでおり、若い人材はとくに歓迎される傾向があります。
10代や20代前半の若い新卒者であれば、未経験で採用される可能性もあるでしょう。
しかし、一般的には年齢よりも経験や実力が重視されるため、「職業訓練校を卒業した」「資格を取得した」「数年間の就業経験がある」などの条件が揃っている人が即戦力として採用されやすいです。
実務に就いてからも溶接技術の向上のため、必要に応じて、より高度な溶接の資格取得を目指していきます。
溶接工の学校・学費
技術習得に対する意欲があれば、学歴不問で働ける
溶接工は決して高い学歴を問われる仕事ではなく、高卒の人も多く活躍しています。
中卒での就職も不可能ではありませんが、高卒であるほうが就職先の選択肢は増えるでしょう。
年齢が若ければ、未経験で就職をし、見習いとして働きながら溶接の資格取得を目指すことも可能ですが、できるだけ早いうちに溶接技術を学ぶなら、工業高校への進学を検討してもよいでしょう。
専門学校の一部でも溶接を学べるところはありますが、数はあまり多くありません。
社会人から溶接工になる人などは、公共の職業訓練校に通って溶接の勉強をし、就職や転職を目指していく人もいます。
職業訓練では、テキスト代などを除けば授業料無料で技術を学べるために人気があります。
溶接工の資格・試験の難易度
「ガス溶接」と「アーク溶接」の資格が代表的
溶接工の仕事に関連する代表的な資格として「ガス溶接」と「アーク溶接」があります。
溶接工になりたいと考えている場合は、まず最低限、この2種類の資格を取得しておいたほうがよいとされています。
これらの資格試験の難易度は決して難しいものではなく、どちらも決められた時間の講習などを受け、試験をクリアすれば取得可能です。
公共職業訓練校で溶接技術を学び、先に資格を取得することで少しでも有利に就職活動を進めようとする人もいます。
経験を積むと、より高度な資格取得を目指せる
溶接工には、「ガス溶接」と「アーク溶接」以外にも、さまざまな専門的な資格があります。
たとえば「半自動溶接」「ステンレス鋼溶接」「チタン溶接」「プラスチック溶接」「銀ろう付」「すみ肉溶接」「基礎杭溶接」「石油工業溶接」など多岐にわたります。
いきなりすべてを取得するのは難しいため、業務経験を積みながら、必要に応じてステップアップを目指すのが一般的です。
「溶接管理技術者」の資格を得ると、現場の管理や技術者に対する指導などのスキルを備えていることを証明できます。
溶接工の給料・年収
業務の専門性や危険性なども考慮される
厚生労働省の平成30年賃金構造基本統計調査によると、溶接工の平均年収は、40.8歳で437万円ほどとなっています。
溶接工は、特別な技術を要する専門職であるため、一般的な事務職に比べると、給料はやや高めの水準となっているようです。
また、業務では火や熱などを日常的に扱うため、危険とも隣り合わせです。
このような事情が考慮され、基本給とは別で「危険手当」が支給される職場も多くなっています。
技術力を要する仕事ができる人は高い収入を得やすい
溶接工が収入を上げるためには、実務経験を積んでベテランの技術者になることが一番です。
溶接といってもさまざまな業務があり、高所での作業や水中作業など、より難易度が高くリスクのある仕事ができる人ほど給料が高くなる傾向があります。
新人時代はそこまで収入が高くなくても、経験年数が増えるにつれて徐々に収入はアップします。
専門的な資格をいくつも取得したり、十分な実力があると認められたりすれば、高待遇で採用される可能性が高まります。
溶接工の現状と将来性・今後の見通し
業務の一部は機械化されているが、熟練溶接工の手は必要
製造業の現場では機械化が進み、溶接の作業にもロボットを導入する企業が増えています。
しかし、設計・組み立てにおける図面の考案や検討、また特殊な材料に関する知識を駆使した加工や美的センスを用いた仕上げなど、経験を積み重ねた溶接工にしかできないことも多々あります。
そのため、将来的にこの職業が完全になくなる可能性は低いと考えられます。
しかし、一朝一夕で熟練になれるわけではないため、いかに専門性を磨き続ける努力をするかが強く問われてきます。
体力や熱意のある若手が求められている
現在、溶接工として活躍している人はベテラン世代が多く、徐々に引退する人が増えています。
今後、人材をどう集めるかは、多くの企業にとって最優先で取り組むべき課題のひとつです。
とくに溶接工は一人前になるまでに時間がかかるため、各社は体力と技術のある若手の溶接工の採用に力を入れています。
最近では現場で汗をかきながら働く仕事を敬遠する若者も少なくないため、より働きやすい環境づくりを整備する企業も増えつつあるようです。
溶接に興味のある若い人にとっては、チャンスが大きいといえるでしょう。
溶接工の就職先・活躍の場
建設や自動車メーカーを中心に、幅広い場で活躍
溶接工のおもな就職先は、建設会社や自動車メーカー、あるいはその子会社となります。
これらの企業では多くの溶接工が必要とされています。
基本的には工場や建築現場での作業となり、チームを組んで他の溶接工たちとも協力しながら、自分の担当業務を集中して進めます。
経験豊富で、専門的かつ高度な技術を持ち合わせた溶接工は、水中や高層ビルといった難易度の高い場所で作業をすることもあります。
若手の溶接工は就職して働く人がほとんどですが、ベテランになると独立して自分で町工場を立ち上げたり、派遣の溶接工として、さまざまな職場を転々とするような働き方をする人もいます。
溶接工の1日
休憩をこまめにとりながら、1日集中して作業を進める
工場や建築現場などで働く溶接工の一般的なスケジュールは、8時くらいに出勤し、17時から18時くらいには作業を終了するパターンです。
大規模な工場では、機械の稼働時間に合わせて始業と終業がしっかりと決められていることが多い一方、小さな鉄工所では、自分の作業が終了するまでは仕事を続けることもあります。
ここでは、建設系企業で働く溶接工のある1日の例を紹介します。
溶接工のやりがい、楽しさ
技術を磨けば磨くほど難しい仕事に携われる
溶接は、熱や圧力を使って材料を繋ぎ合わせるという単純な作業のように思えるかもしれませんが、実際には高度な技術を習得しなくてはなりません。
一つひとつの作業過程で、溶接工の実力によって仕上がりに大きな差が出るため、熟練の溶接工はどの職場でも重宝されます。
さまざまな専門資格を取得し、より難易度の高い溶接ができるようになることは、溶接工にとっての永遠の目標です。
自分が得た技術を使って、さまざまな「ものづくり」に携われることを、やりがいに感じている人が多くいます。
溶接工はさまざまな分野で必要とされており、手に職をつけてしまえば仕事に困ることはまずありません。
技術の習得に前向きであれば、溶接の仕事を楽しむことができるでしょう。
溶接工のつらいこと、大変なこと
危険な作業も多く、集中力を要する
溶接工の仕事は、常に危険との隣り合わせです。
4000度以上の高熱になる機器を扱う溶接作業では火傷を起こす可能性も高いですし、強烈な火花で視力が悪くなる可能性もあります。
溶接をする際には専用の溶接マスクや手袋などを身につけて万全な態勢を取ってはいますが、ちょっとした不注意やミスによって、怪我をしてしまうことがあります。
怪我のリスクを低くするためには、確かな知識と技術を身につけることはもちろん、勤務中は油断することなく、集中力を保ち続けなくてはなりません。
技術を学ぶことの大変さもありますが、安全に留意して日々の仕事をやり遂げる、強い精神力が求められることも大変な一面です。
溶接工に向いている人・適性
肉体労働を苦にせず、慎重な性格の人
溶接工はハードな肉体労働をする職業です。
溶接の過程では「鋼材」と呼ばれる金属の板を切断する作業や、その断面をハンマーで叩く作業があり、重くて大きいものを扱わなければいけません。
また、仕事中は立ちっぱなし、あるいはかがんだ姿勢を保つこと多く、空調の効かない工場で溶接の際の熱を浴びながら作業をすることもあります。
朝から晩まで汗をかきながら働くことになるため、身体を動かすことが好きで、体力には自信があるという人のほうが向いています。
同時に、火や電気や圧力、ガスといった危険物を取り扱うことから、慎重に、確実に物事を進められるタイプの人に適しているといえるでしょう。
溶接工志望動機・目指すきっかけ
手に職をつけて、技術者として長く働きたい
溶接工の志望動機として多いのは「手に職をつけたい」という考え方です。
溶接の仕事は需要が高く、高度な技術を身につけることができれば、さまざまな会社で重宝されるうえに比較的よい給料が期待できます。
また、溶接工はライン作業のように機械のスピードに合わせて、次々と製品を作るといった仕事ではありません。
技術者として、年齢が高くなっても第一線で活躍しやすい点に魅力を感じ、若いうちから溶接工となり、スキルアップを目指そうとする人もいるようです。
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溶接工の雇用形態・働き方
正社員としての雇用が中心だが、非正規雇用もある
溶接工は、とくに建設会社や自動車メーカーに「正社員」として雇用され、キャリアをスタートさせる人が多くなっています。
危険をともなう業務に従事することから、少しでも働きやすいよう、労働環境の整備や手当の充実に力を入れる企業も目立ちます。
ただし、未経験から現場に入る場には、一人前になるまでは見習いの「契約社員」として採用されることもあります。
また、季節や時期によって業務量に大きな波がある職場では、人手がほしいときにだけ雇われる「派遣社員」や「アルバイト」の採用もあります。
経験を積めば独立・開業することも可能です。
しかし、溶接業だけで独立するのは難しいとされ、他の技術系の仕事もあわせて請け負い、溶接スキルを生かす人が多いようです。
溶接工の勤務時間・休日・生活
現場のスケジュールによって変わってくる
溶接工の勤務時間や休日、生活スタイルは、勤務する会社や配属先によって変わります。
一般的には、朝8時ごろに始業し、17時や18時をメドに作業を終了することが多くなるでしょう。
建設会社や自動車メーカーなどではとくに就業時間の管理が厳しく、過度な残業や休日出勤もほとんどありません。
ただし、現場仕事の宿命でもありますが、溶接工には「納期を守る」という責任があります。
納期に間に合わない状況に陥ったときには、遅くまで残ってでも仕事をやり遂げなくてはなりません。
溶接工の求人・就職状況・需要
求人は多いが、知識や技術を持つ人が優遇されやすい
溶接工は人手不足の状況であり、新規の求人は多く出されています。
この仕事の求人を探すのであれば、製造業や建設業、造船業などに携わる企業の求人票をチェックするとよいでしょう。
溶接はものづくりを行う過程で非常に重要な作業ですから、自動車や船舶、橋や建物、アクセサリーや家具家電などさまざまな製品の生産工場が溶接工を募集しています。
ただし、専門性の高い職業のため、「やる気があるものの未経験」であると、経験者と同時に応募があった際には書類審査で落とされてしまう可能性も否定できません。
公共の職業訓練校で溶接の基礎的なスキルを学んできた人や、溶接の資格を取得している人は歓迎されることが多いです。
溶接工の転職状況・未経験採用
若い人は未経験で「見習い」として採用されることもある
溶接工には専門的な知識や技術が求められるため、完全な未経験からの就職はやや難しいとされています。
しかし、最近では人手不足の企業が多く、未経験者でも意欲さえあれば「見習い」のような形で採用し、積極的に自社で育成しようとする動きが強まっています。
とくに年齢が若ければ採用されやすく、入社後に社内で教育を受けながら技術力を高め、資格取得を目指せる機会が増えているようです。
ただし、より有利に転職をしたいのであれば、公共の職業訓練校で溶接について学んでおいたほうがよいでしょう。
いずれにせよ、溶接工は地道に勉強や訓練を積み、技術力を磨くしかありません。