陶芸家の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「陶芸家」とは
土とろくろを使って食器や壺などの焼き物を成形し、窯で焼き上げて作品として仕上げる。
陶芸家の仕事は、食器や花瓶、壺やオブジェなどの焼き物を作り出すことです。
焼きものにはさまざまな種類があり、土の種類や焼き方、焼く温度、釉薬を塗るか塗らないかなどを考えます。
また造形にも手びねり、型を使う方法、電動や手動のろくろを使う方法などがあり、陶芸家はこれらを駆使して自分の作風を見出し、作品を作り上げていきます。
資格や免許は必要ありませんが、高い技術やデザインセンスなどが求められる実力主義の世界です。
美術系の大学や陶芸を学べる学校に行くか陶芸家のところに弟子入りして働きながら学ぶことで、焼き物を作り上げる能力を磨いていきます。
多くの陶芸家は自営業であり、収入は売上によって大きく変わるので不安定です。
見習いにおいては毎月の収入が数万円ほどとなることも珍しくありませんが、一方で一流の陶芸家の作品は、ひとつ何十万円という値段がつくこともあります。
輸入製品などによって、焼き物の売上に影響が出ていますが、ネットショップなどで販売する陶芸家も増えてきており、アイデア次第で活躍のチャンスが広がっています。
「陶芸家」の仕事紹介
陶芸家の仕事内容
食器や花瓶などの焼き物を作る職人
自身の作風を生かして焼き物を作り出す
陶芸家は、食器や壺、花瓶やオブジェなどの焼き物を作り出す職業です。
作家として陶芸を生業にできる陶芸家はあまり多くなく、基本的には所属する窯元がメーカーなどから依頼を受けて、注文どおりの陶磁器を焼くことになります。
独立している陶芸家でも、メーカーや個人から注文を受け、依頼主の要望を聞きながら陶器を作る場合もあります。
芸術家と職人という両方の側面を持ち合わせた職業だといえるでしょう。
陶芸家の仕事の流れ
陶芸家の仕事は、陶磁器のデザインをするところから始まり、まずは大きさや形、色などのイメージを図面に描き起こしていきます。
この際に、どのような材料を使うか、どれくらいの工程が必要かを考えた上で、大まかな売値を決めてくことも大切です。
デザインが確定したら実際にろくろを回すなどして作陶し、形ができあがったら、土の中の水分を抜くために乾燥させます。
ここで乾燥させておかないと、窯で焼いたときに中の水分が膨張して器が割れてしまうことがあるため、手を抜くことができない工程です。
しっかりと乾燥させたら、一度素焼きをし、そこに下絵をつけたり、釉薬と呼ばれる薬をかけたりして、少しずつ完成品へと近づけ、最後に本焼きを行います。
完成した作品は、個展を開いて直接販売することもあれば、百貨店やインテリアショップ、雑貨店などへ出品して売り出すこともあります。
陶芸家になるには
資格よりも技術とセンスが求められる
陶芸を学び、全国の窯元で働く
陶芸家になるために必須となる資格や免許、学歴はありません。
資格や学歴よりも、焼き物を作り上げるための高い技術や芸術的なセンスが求められる実力主義の世界であり、実践に役立つ知識や技能を身につけることが大切です。
陶芸の知識と技術を習得する方法としては、美術系の大学や陶芸を学べる専門学校などに通うか、窯元へ就職してから実際の技術を身につけるという2つの道が一般的です。
あるいは、最近では少なくなったものの、憧れの陶芸家に弟子入りをして陶芸の技術を学ぶスタイルを選択する人もいます。
陶芸家として就職する際には全国の窯元が選択肢となりますが、職人を多く募集しているのは焼き物の名産地といわれる地域です。
大手の窯元では、経験者・未経験者を問わず定期的に求人を出しているところもあり、転職を考えている人にとっても門戸は広いといえるでしょう。
副業として働く人も少なくない
陶芸家になりたいものの、生計をたてる自信がないために、副業で陶芸家をする人もいます。
企業に就職して平日は働きながら、平日の夜や土日などの空いた時間を使って焼き物を制作し、販売するというスタイルです。
陶芸家は収入が不安定になりがちな職業ですが、副業であれば収入の心配はいりません。
しかし、副業の場合は思い通りに予定が組めないというデメリットがあります。
たとえ副業であっても、どれくらい陶芸に打ち込めるのかを事前にしっかりイメージした上で、仕事の量などを決める必要があります。
陶芸家の学校・学費
大学、専門学校、高校など陶芸が学べる学校は複数ある
陶芸家に学歴や特別な勉強は必要ありません。
ただし、陶芸を専門的に学びたい、陶芸だけでなくさまざまな芸術を学びたいという人には、芸術系の大学や専門学校で学ぶ方法があります。
陶芸を学べるところは美術系の大学や、民間の専門学校に多くあり、主に「工芸科」や「陶芸コース」などの名称で陶芸を学ぶことができます。
また知名度は低いものの県立の高校にも、陶芸を学ぶことができる学校があります。
「セラミック科」という名称が多く、主に工業高校に開設されており、セラミック・窯業・陶芸などに特化した勉強ができます。
早い段階から陶芸に興味を持ち、将来は絶対に陶芸家になると決めているような人の場合は、このような高校に進学するという選択もよいでしょう。
関連記事陶芸家になるためにはどんな学校に行けばいい?(大学・高校・専門学校)
陶芸家の資格・試験の難易度
資格よりも技術とセンスが求められる
陶芸家になるためには特別な資格や免許、学歴等は必要ありません。
焼き物を作り上げるための高い技術やデザインセンスなどが求められる実力主義の世界なので、とにかく実践的な能力を身につけることが大切です。
陶芸に関する資格としては、「陶磁器製造技能士」があります。
これは都道府県知事が実施する国家試験で合格をした人のことで、選択科目として「手ろくろ成形法」、「絵付け作業」、「原型製作法」があり、それぞれ1級、2級の認定を目指すことができます。
ただし、受験希望者が減少しているため、現在では3年ごとに実施されている「絵付け作業」以外は廃止、休止となっています。
今後の受験希望者の人数によっては「陶磁器製造技能検定試験」そのものが今後は廃止となる可能性があります。
陶芸家の給料・年収
焼き物作りだけで生計を立手られる人はごくわずか
安定した収入は望みにくい
陶芸家の収入は決して安定しているとはいえません。
手間をかけて作品を作ってもなかなか売り上げにつながらないのが現実で、この職業だけで生計を立てていくのには相当な実力や経営能力が必要です。
大手の窯元に社員として就職する場合は月15〜20万円程度の固定給を得ることも可能ですが、独立して働く場合は作品の売り上げによって収入が大きく変わるため不安定な生活となるでしょう。
年収にすると50万円〜300万円程度を稼いでいる人が多いようです。
師匠に弟子入りして修行をしている見習い陶芸家のなかには、住み込みの場合が多いものの、毎月の給与が5万円程度という厳しい待遇の下で働いている人も珍しくありません。
一方で、世の中に認められた腕前の陶芸家ともなれば、一つの作品に数十万円という高額な値段がつくこともあります。
副業で収入を得る人も
仕事の合間に陶芸教室を開いて講師をしたり陶芸体験のイベントを開いたりして、生徒から授業料や参加費をもらうという形で副収入を得ている人もいます。
また、どうしても生活が苦しいという場合は、陶芸とは関係のないアルバイトやパートをしたり、本業を持ったりしながら生活費の足しにしていることもあります。
陶芸家の仕事だけで生活をすることは非常にハードルの高いことなので、道半ばで挫折して他の職業に転職する人も少なくありません。
陶芸家を目指す場合は、収入が安定するまでどのように生活費を工面していくか、しっかりと考えておく必要があります。
陶芸家の現状と将来性・今後の見通し
陶芸家のあり方は今後も変化していく
かつてはどこの家庭にも当たり前のようにあった焼き物ですが、近年ではプラスチックなどの割れづらく安価な食器が流通するようになり、陶磁器の売り上げに影響を及ぼしています。
若い世代の人たちに焼き物の魅力をどのように伝えていくかということは、現在の陶芸家にとって大きな課題となっており、陶芸家のなかには売り上げが伸びず苦労している人は少なくありません。
一方で、陶芸家の働き方は大きく変わろうとしています。
制作過程に機械を取り入れることで力仕事を減らせるようになったり、ネットショップを活用することで店舗を持つ必要がなくなったりしています。
自分の感性とアイディアを使って新しいことに挑戦してみたいという人にとっては、さまざまな可能性に満ちた職業だといえるでしょう。
陶芸家の就職先・活躍の場
窯元へ就職するか自分の工房を持つ
陶芸家として働くには、窯元に就職するか、独立して自分で工房を持つかを選択するのが一般的です。
全国には数多くの窯元があり、伝統的な焼き物の産地では職人の募集もさかんにおこなわれています。
とくに地方では後継者不足などから未経験でも積極的に採用する傾向にあります。
窯元で経験を積んだ後に独立して自分の工房を開く人もいますが、焼き物作りだけで生計を立てるのは容易なことではありません。
作品づくりの合間に陶芸教室や陶芸の体験イベントを開き、講師として副収入を得ている人も少なくありません。
また、陶芸を学べる大学や専門学校で、知識や技術を教えながら作品を作り続けている人もいます。
陶芸家の1日
作品づくりが生活の一部になる人も多い
陶芸家は、工房の近くに住居を構えていることが多く、工房と自宅を頻繁に行き来するような生活を送る人も少なくありません。
焼き物はこまめに状態をチェックしながらタイミングを合わせて作業を進めることが大切で、常に焼きものや窯の状態を最優先に考えて生活することになるでしょう。
<陶芸家の1日>
陶芸家のやりがい、楽しさ
人々の生活に寄り添い喜びを与える仕事
陶芸家は、自分の作品を手に取った人へ幸せを届けたいという思いを持って仕事に向き合っています。
陶芸家が作り出す作品は、人々の人生や生活に寄り添い、毎日の暮らしに彩りを添えるものばかりです。
美しい花瓶や洗練された器があるだけで、花を飾ったり食事をしたりといった日常の風景が一瞬にして華やかなものへと変化します。
ときには「購入した器がとても良かったので他の作品もほしい」、「大切な人への贈り物にしたら喜んでもらえた」といった嬉しい声が届くこともあります。
自身の作品によって誰かが笑顔になったときに最もやりがいを感じる仕事だといえるでしょう。
また焼き物は何年でも何十年でも、何百年でも使うことができるため、自分の作品が世代を越えて長く大切に使われていくことも大きな魅力です。
陶芸家のつらいこと、大変なこと
技術やセンスだけでなく体力も必要
陶芸家というと芸術家やアーティストというイメージを持つ人もいますが、実際は力仕事が多いことが特徴です。
陶芸は、陶磁器の材料となる大量の土や焼き上げるための薬品を運ぶ作業から始まります。
土をこねる際も全身の力を使っての作業となりますし、作品を窯へ運んだり取り出したりするときも、繊細かつ重量のあるものを扱うため慎重に運ぶ必要があります。
そのため、腰を痛めてしまう陶芸家も少なくありません。
また、夏場は高温の窯を使用する作業が暑くてつらく、寒い冬には冷たい土を扱うのがつらいといった声も多く聞かれます。
寒さが厳しいと、土が凍ってしまったり、作品が凍ってしまったりすることもあるため、季節に合わせて自分のケアだけでなく作品のケアもしていかなくてはなりません。
陶芸家に向いている人・適性
芸術的なセンスと集中力を持つ人
陶芸家として成功するには、他の人には決して真似できない作品を作る必要があります。
自分が持つ芸術的なセンスと陶芸に関する知識を十分に発揮させて作品の細部までこだわり、デザインから作陶までをこなしていきます。
小さい頃から絵を描くのが好きだったという人や、何かを作り出すのが好きな人に向いている職業だといえます。
また、陶芸家の仕事は常に一対一で作品と向き合い続けなければいけないため、「一人で黙々と長時間作業をするのが苦ではない」というタイプの人も多いようです。
集中力があり、一つのことに没頭して作業ができる人にも適しており、自分の世界に入って雑念を振り払い、一心不乱に作業に没頭できる人こそ向いているといえるでしょう。
陶芸家志望動機・目指すきっかけ
センスを活かして何かを生み出したい
陶芸家を志望する人の多くは、美術や芸術作品に関心を持っています。
デザインから形成、焼き上げまで全ての工程を一人で仕上げる陶芸家は、まさにアーティストだといってよいでしょう。
自らのセンスと器用さを活かして何かを生み出したいと考える人にとっては自然と選択肢に入る職業です。
また、近年はカルチャースクールで行われている陶芸教室や、窯元で行われている陶芸体験などが人気を集めており、老若男女さまざまな人たちが陶芸を楽しんでいます。
趣味として陶芸教室に通ううちに本格的に陶芸家を目指すようになったという人も多くいます。
多くは「集中して作業をすることが楽しい」「自分の思い通りにデザインできる」などの喜びを感じられることが理由となるようです。
陶芸家の雇用形態・働き方
窯元の正社員から独立する人までさまざま
陶芸家の働き方は、主に窯元で社員として勤める方法と、独立して自分の工房を持つ方法の2通りに分けられます。
職人を募集している窯元は全国に存在しますが、雇用形態は正社員から契約社員、アルバイトまでさまざまです。
たとえ趣味だとしても陶芸の経験があったり、陶芸家としての経験があったりすれば、正社員として採用される可能性も高いでしょう。
未経験の場合は契約社員やアルバイト、または弟子入りという形で陶芸に関する知識や技術を習得していくケースも多く、一人前になるまでには時間がかかります。
独立して活動する陶芸家もたくさんいますが、自分の作品を売るだけで生計を立てられる人はほんの少数です。
そのため、本業を持ちながら副業として焼き物を作り、販売している陶芸家もいます。
陶芸家の勤務時間・休日・生活
制作中は焼き物を中心とした生活に
窯元に社員として就職するのであれば、一般的な会社員と同じような勤務になることもありますが、多くの陶芸家は焼き物の制作スケジュールに合わせた生活をしています。
作品を完成させる日から逆算して、デザインから焼き上げまでの日取りを決める必要があり、あらかじめおおまかなスケジュールを決めそれに沿って働きます。
とはいえ、芸術作品や質が求められる工芸品としての焼き物を制作する上では、思い通りに進まないこともたくさんあります。
考えていたものとは全く違うデザインを急に思いついたり、季節や天候の影響で土の状態が大きく変わったりするといったことは日常茶飯事です。
臨機応変に対応する必要があるため、作業が深夜にまで及ぶこともあれば、制作中は休みなしの生活になる場合もあります。
陶芸家の求人・就職状況・需要
需要はあり続け、後継者不足に悩む窯元も
多くの人は、まず陶芸の窯元に雇ってもらい見習社員やアルバイトとして働かせてもらいます。
焼きものの需要が減るにつれ、陶芸家を志す人は少なくなってきていますが、まったく需要は無くなることはありません。
窯元が多い地域によっては、若手の働き手が足りずに悩んでいるところもあり、地域の伝統を守っていたベテランの職人が続けてきた工房が、後継者不足のために閉鎖されてしまう事態も起きています。
ただし、多くの窯元が求めているのは即戦力として働ける人材や、育成することで長期的に活躍してくれることが見込める人材です。
未経験者を雇ってくれるところは少ないので、応募の際には条件をよく確認しましょう。
陶芸家の転職状況・未経験採用
未経験からの転職は修業期間が必要
陶芸家としての求人は窯元の多い地域などでよく見られます。
陶芸家には定年はなく、何歳からでも転向することが可能です。
ただし、まったくの未経験から転職を目指す際には、基礎を身に付けるまで修業が続くことを考慮しておきましょう。
未経験からの場合、数年は雑務に追われ、ろくろに触れないことも珍しくないため、こうした修業期間を乗り越える覚悟をアピールすることが求められます。
一方で、陶芸は芸術的な側面も強いため、これまで自分が生きてきた人生や経験は、創作活動をする上では感性やアイデアとして生かすことができるでしょう。
陶芸家に弟子入りするには
積極的に情報を集め行動を起こすことが大切
陶芸について勉強する場合、既に活躍している陶芸家のもとに弟子入りして直接指導を受けるというのもひとつの道です。
弟子入りをしたいのであれば、自分の理想とする陶芸家のもとを直接訪ねたり電話をかけたりして、弟子にしてもらいたいという思いをぶつけることからスタートします。
インターネットで弟子の募集をしている場合もありますし、公の場では募集をしていなくても交渉次第で受け入れてもらえる場合もあります。
広く弟子を募集していない陶芸家が大半であるため、弟子入りを希望する場合は、積極的に情報を集めたり行動したりすることが大切です。
修業期間は、まず雑用や身の回りの準備から始まり、工房や窯元での生活に慣れ、道具や土の扱い方ができるようになると、ようやく土やろくろに触ることを許されます。