テキスタイルデザイナーになるには? 必要な資格はある?
ファッションの専門学校や美術大学を卒業
テキスタイルデザイナーをめざす人は、どのような準備をする必要があるのでしょうか。
まず、デザイナーというのは芸術的なセンスさえあれば誰もが就くことができる職業である一方で、色や図形に関する知識、正確なデッサンをする高い技術など、多くの専門知識が求められることを理解しておかなければいけません。
独学でデザイナーをめざす人もいますが、可能な限りはファッションやアパレルに関する専門学校に進学してデザインの勉強をしておくとよいでしょう。
被服科がある大学もありますし、芸術大学や美術大学の中にもデザインを学べる学部や学科があるので、このような大学に進学するのもひとつの方法です。
20代で正社員への就職・転職
テキスタイルデザイナーになるための学校(大学、専門学校)
ファッションを学べる専門学校
テキスタイルデザイナーをめざす人が進学することが多いのは、ファッションの専門学校です。
ファッションに関するデザインを総合的に学ぶことができ、生地や糸の種類、日本はもちろん世界各国のファッションの歴史、流通の仕組みまで幅広い知識が得られます。
また、実技指導ではデザイン画を描いたりミシンを使って縫製をしたりすることもできるので就職してから即戦力として働きやすいという特徴があります。
規模の大きい専門学校ではコースを細かく分けており、テキスタイル(生地)のデザインを専門とする「テキスタイルデザイン科」を設けているところもあります。
履修期間は三年で、一年目は染色と基本的な織りの専門的知識と技術を習得し、二年目は機器を使って演習を行うなかでデザインセンスを磨き、三年目は業界での実務経験を交えながら生産工程やコストについて学びます。
専門学校ならではの強みとしては、アパレル業界や企業との結びつきが強いので、インターンシップや企業とのコラボレーションなどに参加する機会ができることが挙げられるでしょう。
また、就職活動においても卒業生から話が聞けたり、学校への求人募集や講師の紹介を通して就職先を見つけられたりするケースもあるようです。
ファッションやデザインを学べる大学
専門学校以外の選択肢として、大学でもファッションやデザインの勉強ができます。
全国的に見ると数は多くありませんが、文化学園大学の「ファッションクリエイション学科」、大阪芸術大学の「工芸学科」、東京家政大学の「服飾美術学科」、共立女子大学の「被服学科」などのように、大学でも服飾やデザインのための学科を設けているところはあります。
大学の場合は履修期間が四年になり学費も高くなりますが、その分大卒の学歴ができるので就職先の選択肢が広がる可能性があります。
独学でテキスタイルデザイナーになれる?
技術と知識を身につけるために
テキスタイルデザイナーをめざす人の多くは、ファッションやデザインが学べる専門学校や芸術大学、美術大学などで勉強をしてから就職しています。
この分野でスペシャリストとして活躍するためには布や糸、生地に関する基本的な知識はもちろんのこと、色や模様を考えるセンス、デッサンの基礎的な技術、縫製の方法など様々な要素が必要となります。
学校に行くことでこのような知識や技術を効率的に身につけられることから、独学を選択する人は少数派です。
人によっては海外留学をして専門的にデザインを学んでから就職する人もいます。
独学でめざす人の場合は
もちろん、テキスタイルデザイナーをめざす人の多くが学校に進学しているからといって、独学では絶対にテキスタイルデザイナーになれないというわけではありません。
この業界はデザイナー自身のセンスが何よりものをいうので、極端にいえば学歴や資格が全くなくても実力さえあればデザイナーになることは可能でしょう。
ただしその場合は独学での猛勉強が必要です。
たくさんの本を読んで生地について学び、染色や織物の工房で体験をさせてもらいながら知識を吸収し、何千枚ものラフを書きながらデッサンやデザインを身体に叩き込むという努力をすれば、その先に道が開けるかもしれません。
実践から学ぶことも
近年では個人がネットショップを利用してハンドメイドの商品を販売することが非常に簡単になってきています。
どうしても独学でテキスタイルデザイナーになりたいという人は、まずは自分で商品を作ってみて、お客さんの反応を参考にしながら勉強を重ねるという方法を取ってみるのもよいでしょう。
また、デザインのコンテストやコンペの中には誰もが応募できるものもあるので、力作を作って挑戦してみるという手もあります。
もしも何らかの賞を受賞することができれば、独学といえども実力を証明する手立てができるので就職活動においては大きな意味をもつことでしょう。
20代で正社員への就職・転職
アパレルメーカーや繊維メーカーに就職
デザインの学校を卒業したら、テキスタイルデザイナーの求人がある企業に就職します。
アパレルメーカーやインテリアメーカー、繊維メーカーや素材メーカー、他にも生地問屋やデザイン事務所などさまざまな就職先があります。
ファッションのテキスタイルを作りたい人はアパレルメーカーに、家具や家電のテキスタイルを作りたい人はインテリアメーカーに就職というように、自分の携わりたい商品に合わせて就職先を探すとよいでしょう。
一人前になるまでの修行期間も
就職後は、すぐにテキスタイルデザイナーとして責任のある仕事を任されるわけではありません。
デザイナーという職業全般にいえることですが、この業界では、一人前になるまでの数年間は先輩の仕事を見ながらしっかりと基礎を身体に叩き込むことが大切だとされています。
デザインの基本はもちろんのこと、クライアントとの付き合い方や社内のデザイナー同士の人間関係、そして何よりも自社の扱う商品のコンセプトや客層を理解できるようになってから、一人前のデザイナーとして仕事が任されるようになります。
企業によっては採用後に試用期間を設けていたり非正規雇用でのスタートだったりすることもあるので注意が必要です。
テキスタイルアドバイザーの資格
テキスタイルデザイナーとして働くために特別に必要とされる資格や免許というのはありません。
デザイン業界で働く職種全般にいえることではありますが、芸術的なセンスや生地の加工技術こそが求められる仕事なので、資格よりも実力が重視される世界なのです。
服飾や生地などの衣料品に関する知識を証明するものとしては、TAとも呼ばれる「衣料管理士(テキスタイルアドバイザー)」があります。
これは一般社団法人である日本衣料管理協会が認定している民間資格のことで、ファッション用品やインテリア用品、雑貨などに使われている繊維商品を企画、生産におけるスペシャリストとして定義されています。
テキスタイルアドバイザーの取得方法
それでは、「衣料管理士(テキスタイルアドバイザー)」の資格を取得するにはどうすればよいのでしょうか。
まずは、この協会が認定した大学に進学し、「材料」「加工・整理」「企画・設計・生産」「流通・消費」という四つの専門分野について勉強する必要があります。
さらに、大学で43単位以上を取得すれば「一級衣料管理士」に、28単位以上を取得すれば「二級衣料管理士」になれます。
この際にひとつ注意しなければいけないのは、認定大学によって、カリキュラムや講師、演習室の面積、機械器具の整備状況に応じて取得できる階級が違うということです。
たとえば、「日本女子大学(被服学科)」「東京家政大学(服飾美術学科)」「共立女子大学(被服学科)」は一級衣料管理士の養成大学として認定されており、「聖徳大学短期大学部(総合文化学科)」や「九州女子大学(人間生活学科)」は二級衣料管理士の養成大学として認定されています。
一級と二級は勉強する範囲としては同じですが、深度に違いがあるとされています。
日本衣料協協会のホームページに認定大学の一覧があるので、どちらの資格の取得をめざすかを考えた上で進学先を決めるとよいでしょう。
テキスタイルデザイナーの志望動機、面接、自己PR
テキスタイルデザイナーの志望動機
テキスタイルデザイナーの志望動機を語るためには、自分がどのような商品を作りたいかを明確に表現することが大切です。
企業によって手掛けている商品が異なり「ファッション」「インテリア」「雑貨」とさまざまな分野に分かれているので、「レディスのブランドの生地作りに携わりたい」「椅子やソファなどの家具の生地を作りたい」というように具体的な商品名とやりたいことがリンクしているとよいでしょう。
また、ファッションデザイナーやインテリアデザイナーとテキスタイルデザイナーの違いとしては、商品を完成形に仕上げる役目をするのではなくベース部分のテキスタイル(生地)作りに携わるのが仕事になります。
「自分の作る生地がスタート地点となり、そこから多くの商品が生み出されていく過程を楽しみたい」という思いをPRできると、志望動機の説得力が増すのではないでしょうか。
自己PRの材料
テキスタイルデザイナーの就職試験では面接が行われます。
ここでは、面接でどのような自己PRをすればよいのかを考えます。
まず、アパレルやデザイン関係の専門学校を卒業した人の場合は、学内でのコンテストの実績や企業へのインターンシップ、留学の経験などを積極的にアピールするとよいでしょう。
即戦力となれる人材を求めている企業も多いので、演習や職場体験などの経験をプラスに受けとめる企業が多いようです。
大学時代に被服学科やデザイン学科で「衣料管理士(テキスタイルアドバイザー)」の資格に関する勉強をした人は、資格をアピールするとよいでしょう。
また、近年ハンドメイドの手芸品を販売できるネットショップやアプリが急増しているので、インターネットを経由して自分のハンドメイド商品を販売したことがあるという人もいるかもしれません。
編み物、織物、刺繍などの趣味があり、既に販売実績もある人の場合は、こうした実績も大きなアピール材料に繋がります。