海運会社で働くには(大学学部・学歴)
海運会社社員になるまでの道のり
採用には3つのコースがある
海運会社社員になるためには、海運会社が行う採用試験に合格する必要があります。
海運会社の新卒採用試験は、「陸上職(事務系)」「陸上職(技術系)」「海上職」の大きく3つのコースで分けられるのが一般的です。
入社時にどのコースで採用されるかによって、たずさわる仕事が変わってきます。
<採用コースと仕事内容>
- 陸上職(事務系):営業、船舶の運航管理、もしくはバックオフィス業務となる財務・法務・企画・人事など
- 陸上職(技術系):新造船や改造船の計画・契約、船体・機関・電機設計の計画・立案、設計図の査定、建造監督、技術研究開発・調査など
- 海上職:航海士、機関士、船員など
管理やデスワーク系の仕事をしたいのであれば陸上職(事務系)、技術を用いたテクニカルな仕事をしたいのであれば陸上職(技術系)、船に乗り込み船舶を動かす仕事をしたい場合は「海上職」での採用を目指す形となります。
なるための道のりや進路
この3つのコースどれを目指すかによって、進むべき道のりも変わってきます。
<コース別の進路の例>
- 陸上職(事務系):4年制大学に進学するのが一般的。新卒採用では全学部が対象のため、学部や学科は問われない
- 陸上職(技術系):4年制大学の「理系」の学部学科に進学するのが一般的
- 海上職:「船員教育機関」に該当する大学・高専(高等専門学校)・専門学校に進学するのが一般的
陸上職(事務系)の場合は、出身学部学科は問われないため、どのような大学に進学しても基本的には問題ありません。
対して、陸上職(技術系)の採用は理系出身のみで制限されることがあり、海上職の採用は船員教育機関出身のみで制限されることもあるため、採用条件を満たすためには該当する学校に進学しておく必要があります。
ただし海運会社によっては、陸上職(技術系)や海上職であっても、出身学校や学部・学科は一切関係なしに採用する会社もあります。
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海運会社の求人の状況
採用枠はあまり多くない
海運業界は、市場規模自体は大きいものの、昔から少ない人数でビジネスを動かしている業界であり、大手であっても従業員数は1000人以下の会社がほとんどです。
そのため、大手であっても新卒採用の人数は毎年50人程度であり、他の業界から比べると採用枠は少なめです。
それこそ中小の海運会社では、毎年数名程度しか新卒社員を採用しない会社もあります。
大手3社の人気が高い
「日本郵船」「商船三井」「川崎汽船」の3社は、「三大海運会社」とも呼ばれ、巨大なシェアと業績を誇っています。
この3社は海運会社の中でも採用倍率が特に高く、有名大学の学生なども多数応募してくるため、就職は狭き門となります。
一方で、国内にはこの3社以外にもたくさんの海運会社があり、中小の海運会社などにはなかなか人が集まらず採用倍率が低めの企業も少なくはありません。
昨今は、少子高齢化などの影響により、海運業界を目指す若者も減ってきているため、大手のみにこだわらなければ就職しやすい状況です。
求人は景気にも左右される
世界を相手にビジネスを行う海運業界は、景気や世界経済の動向に左右されやすい業界です。
直近では、2009年に起きた「リーマンショック」により多くの海運会社が打撃を受け、求人数も急激に減る状況に陥りました。
米中貿易摩擦の激化、イギリスのEU離脱、そして新型コロナウィルスの蔓延など、まだまだ景気を脅かす要素は存在するため、今後も景気悪化により求人数が減る可能性もあります。
海運会社で働くための学部・学歴
陸上職(事務系)志望が通う学校
陸上職(事務系)の採用では、特に学部学科の制限はないため、文系理系問わず、どのような大学に通っても問題ありません。
たとえば経済学部や法学部出身で、陸上職(事務系)に採用される人も少なくありません。
陸上職(技術系)志望が通う学校
「陸上職(技術職)」の採用では、理系の専門知識を必要とする仕事が多いため、採用の段階で理系学生に限定されることが多いです。
そのため、採用条件を満たす上では、理系の大学(もしくは高専など)に進学する必要があります。
学部としては、とくに電気・機械・船舶工学などを専攻した人が活躍しています。
学費は、国立大学の場合は年間約53万円、私立大学の場合は年間約150万円(理系学部は文系よりもやや高め)が目安になります。
海上職志望が通う学校
航海士や機関士といった海上職として働くには、「海技士」の国家資格が必要となります。
そのため、海上職を目指す学生の多くは「船員教育機関」に該当する海洋系海技系の大学・高専・専門学校にて、海技士資格を目指すための教育を受けてから就職しています。
学費は、船員教育機関のほとんどは国立であるため、大学、専門学校問わず年間約53万円が目安です。
なお大手の海運会社などでは、「自社養成コース」を設置し、船舶職員候補生として入社後に一から育成する会社もあります。
自社養成コースで採用される場合は、特に出身学校や学部に制限はなく、文系学生などでも応募は可能です。
学歴について
陸上職(事務系)や陸上職(技術系)の採用においては、4年制大学もしくは大学院卒業(見込み)の人を対象者としている会社が多いです。
大手の海運会社では特にその傾向が強く、専門学校卒や短大卒では応募ができない会社もあります。
そのため、将来の会社選びの選択肢を広げる意味では、4年制大学に進学しておくとよいでしょう。
また卒業学歴によって初任給額(基本給)が変わる会社もあり、たとえば専門学校卒と4年制大学卒では初任給に1~2万円程度差がつくことがあります。
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海運会社社員に必要な資格やスキルはある?
海運会社の採用と資格について
海運会社の採用試験は、「陸上職(事務系)」「陸上職(技術系)」「海上職」の大きく3つのコースで分けられるのが一般的であり、コースごとに求められる資格が変わります。
<採用コース別の仕事内容と必要資格>
- 陸上職(事務系):営業や運航管理、総務、経理、広報など、事務系の総合職、資格は不要
- 陸上職(技術系):船の新技術開発や造船など、技術系の総合職、資格は不要
- 海上職:航海士、機関士といった船に乗り込んで働く専門職、「海技士」の国家資格が必要
このように陸上職では資格は不要となりますが、海上職においては「海技士」の国家資格が必要となります。
海技士資格の所持者もしくは特定の学校にて養成教育を受けてきた人でないと、海上職として採用しない海運会社もあります。
入社後に取得する資格やキャリアップについて
陸上職の場合は、入社後においても必ず取得しなければならない資格というのは特にありません。
自己啓発や知識を深めるため、ビジネス系の資格や技術系の資格などを自主的に取得する人もいます。
しかし資格を取得したからといって、昇進が早くなったり、資格手当などが支給されることは、陸上職の場合ほとんどありません。
一方、海上職では、キャリアアップをする上でも「海技士」の国家資格が関係していきます。
将来的に船長や機関長などの上位職に昇進していくためには、「1級海技士」や「2級海技士」といった上位資格が必要になることがあり、入社後も資格勉強が求められます。
海運会社の陸上職に求められる資格
陸上職は資格不要
陸上職の場合、必須となる資格や免許はありません。
採用においても、特定の資格が条件として設定されていることは基本的にありません。
陸上職(事務系)は人物重視の採用となることが多く、陸上職(技術系)は学生時代の専攻分野や技術知識を重視した採用となることが多いでしょう。
ただし陸上職(技術系)においては、資格は問われないものの、学生時代に専攻した技術分野などで制限されることがあり、理系学部出身でないと選考に応募できない会社もあります。
英語系の資格は生きる
海運会社では、グローバルに事業を展開する会社も多いため、英語力が問われます。
職種問わず、メール、電話、書類作成などで英語を使う機会が多く、特に英語のリーディングとライティングの能力を発揮する場面は多いです。
さらに営業職や海上職においては、実際に対面で外国人と接する機会も多いため、スピーキングの力も求められます。
入社時に必ずしも英語力が必須となるわけではないものの、英語力があることに越したことはありません。
そのため、「TOIEC」や「TOEFL」といった英語系の資格試験のスコアはアピール材料となり、高スコア所持者は選考時の評価が高まることもあります。
海運会社の海上職に求められる資格
海上職は海技士資格が必要
海上職として働くうえでは、「海技士」の国家資格が必要となります。
海技士試験を受験するためには、乗船履歴などの「受験資格」を満たす必要がありますが、船員教育機関に該当する学校に通うことで、在学中に受験資格を満たすことが可能となります。
そのため海上職を目指す学生の多くは、船員教育機関に該当する学校に進学し、海技士資格取得に向けた教育を受けた上で就職するのが一般的です。
海上職の採用試験では、「船員教育機関に該当する学校で養成教育を受けてきた人」、「〇級海技士資格所持者のみ」などの条件を掲げている会社もあります。
ただし海運会社の中には、未資格者を採用し、自社養成コースにて入社後に一から育てていく会社もあります。
海技士資格について
海技士は、海上や船上で仕事をする人に向けた国家資格です。
「海技士(航海)」「海技士(機関)」「海技士(通信)」「海技士(電子通信)」の大きく4タイプに分けられています。
たとえば航海士を目指すのであれば、「海技士(航海)」の資格を取得する必要があります。
また、1級~6級海技士といった級によるレベル分けも存在し、海上での業務の幅を広げるためには、より上位の級の取得が必要となります。
海技士の資格はだれでもが受験できるわけではなく、受験するには乗船履歴などの「受験資格」が必要となります。
なお、前述した船員教育機関に該当する学校で養成教育を受けると、学校での乗船実習が乗船履歴としてカウントされるため、学生のうちに3級海技士などの資格を取得することも可能です。
加えて、船員教育機関に該当する学校で養成教育を受けことで、海技士試験の筆記試験免除が受けられるメリットもあります。
学校に通わず海上職や海技士資格を目指すには
大手の海運会社の中には、海技士の自社養成コースを用意し、船舶職員候補生として入社後に一から育成する会社もあります。
自社養成コースで採用される場合は、特に出身学校や出身学部に制限はありません。
たとえば文系学部出身で、自社養成コースとして採用され、入社後に海技士資格を取得する人もいます。
さらにもう一つ、「船員(甲板部員)」として採用され資格を目指すルートもあります。
航海士や機関士といった専門職として働くためには海技士の資格が必要となりますが、一般的な船員(甲板部員)として船上で働くのであれば資格は必須ではありません。
船員であれば未経験採用を行っている海運会社もあります。
まずは船員として働きながら乗船履歴を積み、受験資格を満たすことができたら海技士試験に挑戦するという方法も検討するとよいでしょう。
海運会社社員に向いている人
海運会社社員に向いている人の性格的特徴としては、次のようなものが挙げられます。
<海運会社社員に向いている性格・適性>
- 船や海が好きな人
- 経済や世界情勢などに興味のある人
- 世界を舞台にした仕事がしたい人、スケールの大きい仕事がしたい人
- 英語を用いて仕事がしたい人、異文化コミュニケーションが得意な人
- 長い航海に耐えられる、忍耐力・体力・集中力・チームワークなどがある人(海上職の場合)
船や海と密接に関わる仕事であるため、それらに興味関心のある人が活躍しやすい環境でもあります。
「幼いころから船が大好きで海運会社に就職した」という人も少なくありません。
仕事柄、海外と関わることも多いため、世界を舞台にしてグローバルに活躍したい人や異文化コミュニケーションが得意な人もこの業界に向いています。
海運会社社員のキャリアプラン・キャリア
入社後のキャリアの歩み方
海運会社の場合、ジョブローテーション制を採用している会社が多いです。
入社後は適性や希望をふまえ、最初に配属となる部署が決まります。
その後は、数年間おきに各部署を転々とし、さまざまな仕事を経験しながら幅広い能力を身に付けていきます。
たとえば陸上職(事務系)であれば、営業、経理、総務など、同じ事務系の仕事でジョブローテーションが行われるのが基本です。
ただし、会社によってはコースを越えたジョブローテーションが行われることもあり、海上職から営業に異動できる会社もあります。
その先のキャリアプラン
20~30代のうちはジョブローテーションを繰り返しながらさまざまな部署で経験を重ね、その後は課長や部長といった「管理職」に昇進していくのが一般的です。
人によっては、営業一筋でキャリアを重ねたり、技術職のエキスパートを目指す人もいます。
海上職においては、船長・機関長・通信長などの上位職を目指すことも一つのキャリアプランとなりますが、それには2級海技士や1級海技士といった上位の国家資格が必要になることもあります。
海運会社社員は高卒から目指せる?
大手の海運会社の場合
東証一部などに上場している大手の海運会社の場合、新卒採用では4年制大学もしくは大学院卒業(見込み)の人を対象者としていることが多く、高卒で入社することは難しいでしょう。
ただし、中途採用(キャリア採用)であれば、学歴よりも職務経験のほうが重視されます。
そのため、まずは一度高卒で入社できる海運会社に勤め、経験を積んでから、大手への転職に挑戦することは可能です。
中小の海運会社の場合
中小の海運会社では大手ほど学歴に厳しくなく、中には「学歴不問」、「高卒可」などの条件で採用活動を行っている会社もあり、そのような会社であれば高卒であっても入社は可能です。
昨今は、少子高齢化などの影響により、人手不足に陥っている中小の海運会社もあります。
都市圏以外はとくに人手不足が深刻化しているため、会社規模や勤務地をより好みしなければ、高卒でも入社できるチャンスはあります。
海運会社への転職を検討するなら、転職エージェントに相談してみよう
未経験や中途で海運会社を目指す場合には、転職エージェントに登録しておくのもおすすめです。
海運分野に強い転職アドバイザーから、業界情報を聞くことができたり、海運会社の「非公開求人」の情報を得ることができます。
まだ転職するか迷っている、そもそも海運会社が自分に合っているか不安という段階でも、専門家のアドバイスを聞くことでキャリア選択の幅を広げることができます。
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