海運会社の現状と将来性

海運会社の現状

リーマンショックを底に回復中

この50年ほど、経済の急速な発展による海運業の成長スピードは目覚ましいものがあり、世界中で運ばれる貨物の約97%を海運がになうほど、巨大なマーケットに成長しました。

ただし、海運業界は2009年に起きた「リーマンショック」により大きな打撃を受け、ここ10年程度は低迷期にあります。

最悪の状況からは抜け出し、緩やかな回復傾向にあるものの、リーマンショック前の業績水準にはいまだ戻っておらず、先行き不透明感はぬぐえません。

景気の変動に影響されやすい

海外諸国と貿易を行うことでビジネスを成り立たせる海運業は、世界経済や景気の変動により、会社の業績が左右されます。

好景気には業績を伸ばす企業が多いですが、ひとたび不況ムードが世界を包めば、一気に厳しい状況に追い込まれます。

「リーマンショック」時には、国内外の数多くの海運会社が打撃を受け、未だその傷は十分に癒えていない状況です。

米中貿易摩擦の激化、イギリスのEU離脱、新型コロナウィルスの蔓延など、海運会社は現在および今後の世界経済に左右されるでしょう。

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海運会社の需要

社会に必要不可欠なものであり、一定の需要がある

石油や石炭、非金属鉱物、金属、セメント、化学薬品、自動車など、ありとあらゆるものを各地へと輸送する海運は、私たちの生活になくてはならない業界です。

海運がストップすると世の中の物資が回らなくなってしまいます。

輸送手段は海運だけでなく、トラックでの「陸運」や飛行機での「空運」も存在しますが、輸送効率など理由から今後もシェアが逆転するというのは考えにくいでしょう。

ただし、景気の変動などの影響により、一時的に需要や業績が上下することはあります。

求人のニーズ

多くの海運会社では、新卒学生を対象とした「新卒採用」を行っています。

海運業界の市場規模自体は大きいものの、労働人口は少なく、メーカーや商社などに比べると新卒採用人数も少なめです。

新卒採用人数の目安として、大手の海運会社でも毎年50人程度、中小の海運会社では毎年数名程度しか採用していない会社もあります。

傾向として、「日本郵船」「商船三井」「川崎汽船」の大手3社に特に人気が集中しており、この3社への就職は狭き門となっています。

既卒者を対象とした「中途採用(キャリア採用)」を行っている会社もありますが、中途採用の採用時期は不定期であり、若干名であることが多いです。

求められる人材

海運会社の多くは、世界を相手にグローバルな事業を展開しています。

大手の海運会社は、海外へ物資を輸送する「外航海運」を強みとしており、海外メーカーなどと電話やメールでやりとりをする機会も多めです。

海外相手にビジネスができる人、異文化コミュニケーションが得意な人、語学力のある人が好まれる傾向にあります。

技術系の職種においては、技術知識やスキルが重視されるでしょう。

陸上職(技術系)の新卒採用では、理系学生のみを対象とする会社も多く、とくに学生時代に電気・機械・船舶工学などを専攻した人が好まれる傾向です。

海運会社の将来性

新たな需要の誕生

近年、アメリカでは「シェールガス」を格安で増産して各国に輸出しています。

シェールガスは新たなエネルギー資源として注目され、今後は世界的に輸送需要が増えるといわれており、海運会社にとってはプラス材料です。

近年はアジアやアフリカなどの新興国で人口拡大や産業の発展が進んでおり、それにともなった輸送需要も増えています。

新興国は新たな巨大マーケットともいえ、新興国相手に外航海運を行う海運会社も近年増えてきています。

人手不足の問題

海運業界では、少子高齢化や人口減少などの影響も受け、人手不足が着々と進んでいます。

とくに航海士や機関士といった海上職(船員)、技術系の職種、造船系の職種などでは、人手不足が深刻化している状況であり、募集をしても求人が埋まらない会社もあります。

国や海事関係団体などが協力して、若者へのPR活動や育成支援などを進めていますが、まだまだ十分な効果は得られていないようです。

こうした労働力不足の課題を解決するため、「IT技術」を船の運航や工場での造船作業に導入し、システムによって自動化を図る取り組みも進められています。

環境規制の強化

近年の海運業界では、窒素・硫黄酸化物(N O x、S O x)、温室効果ガス(GHG)などに対してさまざまな環境規制が設定され、規制は年々強化されています。

こうした規制に対応すべく、燃料の変更、スクラバー(排ガス洗浄装置)の追加設置、もしくは基準を満たした新型船舶への買い替え等が必要になり、それには多大なコストがかかります。

今後も船舶に対する環境規制は厳しくなると予想され、多くの旧型船舶を所有する海運会社にとっては大きな負担です。

業界の再編も進む

海運業界では、海運会社同士のM&A(合併、買収)も進んでいます。

日本郵船・商船三井・川崎汽船の国内最大手3社が、共同出資によるコンテナ船事業「OCEN NETWORK EXPRESS社(ONE)」を設立したことで注目が集まっています。

背景には、コンテナ船の運賃低下にともなう収益の悪化や、海外の大手海運会社のM&Aが相次ぎコンテナ船市場のシェア争いが激しくなったことなどが関係しています。

海運業界の勢力図は刻刻と変わっているため、今後も生き残りをかけたM&Aが増える可能性が高いでしょう。

事業を多角化する動きも

海運事業は景気変動に左右されやすいリスクがあるため、景気に影響されにくい別事業に力を入れる海運会社も増えていています。

たとえば「日本郵船」は、物流事業や陸運事業に注力しており、陸上での取扱量も年々拡大させています。

「商船三井」は、海洋事業やLNG事業を今後の成長事業とし、事業の多角化を進めています。

そのように資本力のある大手の海運会社ほど、事業の多角化に積極的な傾向が見られます。

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海運会社社員の今後の活躍の場

海運会社で働くと、語学力や国際的なビジネス力も磨かれ、世界経済にも詳しくなります。

現在は海運業界に限らず、さまざまな業界の会社でグローバルに活躍できる能力が求められる時代のため、海運会社で積んだ経験は将来的に別業界に転職する場合にも武器となるでしょう。

とくに商社やメーカーなど、海外と取引の多い企業に転職する場合には強みとなります。

もちろん、同じ海運業界内で転職をする場合にも、海運会社で働いた経験を生かせます。

海運業界では人手不足が進んでいることもあり、経験のある人材は喉から手が出るほど欲しがる会社も多いため、経験さえ積めばより待遇のよい海運会社へのキャリアアップ転職も比較的しやすい状況です。