女性の海運会社社員のキャリアパス・結婚後の生活

女性の海運会社社員の現状

まだまだ男性が中心

海運会社は昔から男性が多く、男性社会、体育会系気質が根づいた業界といわれています。

今現在においても男性が多い状況は変わってはおらず、女性社員は少数派です。

とくに海上職(船員)においては女性が少なく、国土交通省の調べによれば、海運業に従事する船員29,827人中、女性船員は708人となっており、全体の2.4%に過ぎない状況のようです(平成28年時点)。

参考:国土交通省 女性船員の活躍促進に向けた女性の視点による提案

男性が多い理由としては、「船や機械に興味をもつのが男性のほうが多い」、「海外勤務なども多いため出産や育児のある女性には敬遠されやすい」などが関係しているようです。

なお、男性比率が高いのはあくまで総合職の話であり、一般職(一般事務など)は女性からの人気も高く、一般職のほとんどが女性という職場もあります。

女性も増えてきている

女性の中にも海運業界に興味をもつ人は一定数います。

働き方や価値観が多様化したこともあり、「英語力を生かしてグローバルに活躍したい」、「数か月以上のまとまった休みが取れる船員生活が魅力的」などの理由で、海運業界にひかれる女性も増えています。

国も海運業での女性不足を課題と考え、女性向けの労働環境やキャリアパスの整備、女性の求職者と海運会社を結び付つる求人支援など、さまざまな対策が検討されています。

ひと昔前から比べると、女性の活躍しやすい環境が着々と整ってきているため、今後は「海運業界は男性」というイメージは徐々に薄れていくかもしれません。

参考:国土交通省 海事局 日本船舶及び船員の確保に関する基本方針の変更等について

女性の海運会社社員の強み・弱み

女性の強み

<女性ならではの強みやメリット>
・女性の長所でもあるコミュニケーション力や気配りの力が生きる
・細かな仕事も多く、女性の丁寧さや正確さが役立つ
・ジョブローテーションでさまざまな仕事を経験する上で、女性のほうが臨機応変に適応しやすい
・男性中心の業界である分、女性というだけで個性がでる

海運会社で働くと、取引先企業、外部業者、自社の各部署などさまざまな相手とコミュニケーションをとることになり、時には国籍・文化・価値観さえ違う相手とやりとりをすることもあります。

一般的に女性のほうが男性よりもコミュニケーション力は高いといわれており、そのような女性ならではの応対力や気配りが生きる場面も多いです。

また、海運ビジネスでは億単位の大金が動くため、手続き事務関連の仕事では細かなミスも許されません。

技術職や海上職においても、大雑把な仕事は一つ間違えば命にかかわることもあります。

間違いのない精度の高い仕事が求められる業界のため、女性ならではの「正確さ」や「丁寧さ」もこの業界で働く上で強みとなるでしょう。

女性の弱み

<女性ならではの弱みやデメリット>
・酒付き合い、ゴルフ接待なども多く、女性だと入り込みにくい
・機械に苦手意識をもつ女性も多く、技術知識面で男性に劣りやすい
・女性の場合、体力や身体能力の面で男性に劣るため、厳しい航海では弱点となる(海上職)
・女性向けの道具、作業服、トイレなどが十分整備されていないことがある(技術職、海上職)

男性の多い海運業界では、酒付き合い、ゴルフ接待などが多いため、そのような男性特有の価値観やノリに馴染めずない女性社員も少なくありません。

海上職においては、実際に船に乗り込み24時間3交代制の勤務を行うため、不規則な生活になりやすいです。

また、船上での肉体労働も発生し、航海中は休日なしで働き続けることもあるため、女性の場合は体力や身体能力の面で壁にぶちあたることもあります。

女性社員の結婚後の働き方・雇用形態

海運業界の場合、結婚をしたからといって雇用形態などが変わることは基本的にはありません。

正社員で採用された人であれば、結婚後もそのまま正社員としてのキャリアを歩むことができます。

実際に、結婚後も海外赴任などをし、キャリアウーマンとして活躍する女性社員もいます。

ただし海運業界では結婚を機に寿退社したり、結婚後しばらくして退社していく社員も少なくありません。

退職の理由としては、「将来の育児や家事との両立が不安」、「海外への転勤や出張などが不安」、「何週間も船上生活が続き、子どもと顔を合わせられないため(海上職)」などが目立ちます。

また、海運会社の総合職同士で社内結婚をすると、夫と妻それぞれが世界各国に転勤となることもあるため、ともに暮らすのであればどちらかが譲歩せざるをえないでしょう。

海運会社社員は子育てしながら働ける?

子育てと両立させる女性もいる

近年は、女性の働き方支援に積極的な海運会社も増えてきています。

「フレックスタイム」「時短勤務」「企業内保育所」などの制度が利用できる会社も多く、実際に小さな子どもを抱えながら、仕事と子育てを両立させている正社員の女性もいます。

海運会社で働くには、海外への転勤が多いことが大きな課題となりますが、海運業界は収入水準が高いこともあり、旦那さんや子どものほうが奥さんの海外転勤に帯同するというケースもあります。

後述するように、海運会社における子育てとの両立は決して簡単ではありませんが、実際に両立させている人がいるのも事実です。

子育ての弊害要素

海運業界というのはやや特殊な業界のため、子育てをするうえで弊害となる要素もあります。

<海運業界での子育て弊害要素>
・世界各国の支店・事業所への海外転勤や出張が多い
・国内支店間での転勤や出張なども多い
・米国クリスマス商戦前などの輸送量の多くなる繁忙期には、長時間残業や休日出勤も発生することがある
・航海中は何週間、何カ月もの間、陸に戻れないこともある(海上職)
・「海技士」の資格勉強と子育てを両立しなければならない(海上職)
など

海運会社では海外への転勤や出張が多く、長い間海外生活が続くこともあるため、子どもと顔を合わせられない状況となることもあります。

海上職においては、航海中は船上で過ごすことになり、長距離航海では数か月もの間、陸には戻れないこともあります。

一緒に連れていくことは難しいため、その間は夫や両親などに子育てを頼まなければなりません。

もちろん、子育て中の女性に対しては、転勤や勤務形態について配慮がなされることが多いですが、海運業界では人手不足に陥っている会社もあるため、必ずしも特別扱いされるとは限りません。

海運会社社員は女性が一生働ける仕事?

年齢的なハンデは受けにくい

海運業界というのは、ファッション業界のように若い女性の感性やセンスなどが問われる業界ではなく、どちらかというと長年培った経験や知識が強みとなる業界のため、年齢的なハンデはキツクありません。

また年齢を重ねると、課長や部長といった管理職に昇進し、人をマネジメントする仕事を任されることが多いため、年配者でも身体に無理なく働くことができます。

60~65歳を定年としている会社が多く、定年まで勤めあげ、その後は現役時代の蓄えをもとにゆったりとした老後生活をおくる人もいます。

また、近年は「定年後再雇用」を行う海運会社もあり、やる気や能力しだいでは定年後も働き続けることも可能です。

海上職は年配者では難しいことも

海上職の場合は、交代制の不規則勤務や船上での肉体労働も多いため、50代60代になってその生活を続けるのはハードです。

一般的には年齢を重ねると、船長や機関長といった船上の管理職、もしくは陸上の管理職に昇進していくことが多いです。

もしも年配者になっても船員として現場仕事を続ける場合には、ハードな船上生活に耐えられるだけの身体作りをし、健康管理にも徹底的に気を配る必要があります。