海上保安官の潜水士になるには
潜水士は水中作業に従事するための国家資格
「潜水士」とは、海中などで何かしらの仕事(作業)に携わるための国家資格を有している人のことです。
潜水士の資格を持つ人は、建設会社で水中掘削を担当する人、海洋調査員、ダイビングインストラクター、水族館の水槽メンテナスなど、業種は問わず、さまざまな活躍をしています。
潜水士試験の受験資格はとくにありません。
受験科目は「潜水業務」「送気、潜降及び浮上」「高気圧障害」「関係法令」の4科目の筆記試験のみで、合格率も80%前後と、国家資格としては比較的高めです。
なお、海上保安庁で潜水士として活躍したい場合は、前提として海上保安官にならなければいけません。
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海上保安官としての潜水士の仕事
海上保安官の潜水士は、海難現場で救助活動を行います。
かつて映画の『海猿』でも話題になった職種ですが、現実の世界では、想像の何倍も過酷な現場が待っています。
海上保安庁の潜水士は、全国に22隻存在している潜水指定を受けた巡視船艇で業務を行っています。
具体的な仕事内容は、転覆や沈没した船舶に取り残された人の救出や、海上で行方不明になった人の捜索です。
そうした状況下での救助活動は困難を極めるのはもちろん、大きな危険も伴うため、潜水士は高度な救助スキルが要求されます。
ほかにもヘリコプターでの吊り上げ救助も行いますし、主計科職員として隊員の食事を用意することもあります。
ちなみに『海猿』は、潜水士からさらに選抜された海難救助のスペシャリストである「特殊救難隊」がモデルとなっています。
海上保安官の潜水士になるには
まずは海上保安官として経験を積む
海上保安庁で潜水士になるには、まず海上保安大学校や海上保安学校を卒業し、海上保安官になることが大前提です。
海上保安官として任官されたあとに、巡視船艇乗組員として一定期間勤務を行い経験を積み、本人の希望や適性、水泳能力(一呼吸により約23mの水平素潜りができ、約300mの水泳ができること)、健康状態を見極めた上で、潜水研修の研修生として年2回選抜されます。
年齢制限が設けられており、研修実施年度の4月1日時点で30歳以下でなければ潜水士には選抜されません。
潜水士としての研修を受ける
研修生に選抜されたあとは約2カ月間、潜水研修が行われます。
潜水研修は海上保安大学校で寮生活をしながら行われ、潜水学や潜水医学といった座学、潜水実習に取り組みます。
とくに潜水実習は厳しく、プールでは基本的な潜水技術を修得し、転覆船内実習では水中にある模型船で捜査・救助の実習を行います。
ここまでの研修が終われば、潜水技術・知識・適性を見極める「潜水能力検定」が実施されます。
さらに実習が進むと実際の海に出て、機器の取扱いや夜間訓練、実践的な海洋実習で技術を習得していきます。
こうした潜水研修を修了し、潜水士資格を無事取得すると潜水指定船に配属され、ようやく潜水士として任命されます。
海上保安庁の潜水士は、海上保安官の1%程度しかおらず、とても狭き門といえます。