1級ファイナンシャル・プランニング技能検定の難易度・合格率
FP2級からのステップアップとして専門性をさらに高めたい人や、将来的に独立・開業を目指す人などが取得しています。
この記事では、FP1級取得を目指す人が受験する、1級ファイナンシャル・プランニング技能検定の内容や難易度・合格率、勉強方法などについて詳しく解説しています。
・1級FP技能士は数あるFP系資格の中で「上級レベル」
・合格率は学科試験が10%程度、実技試験は80~90%と大きな差がある
・「CFP」資格を取得していると実技試験のみ受けることが可能
1級ファイナンシャル・プランニング技能士資格とは
1級ファイナンシャル・プランニング技能士とはどんな資格?
1級ファイナンシャル・プランニング技能士とは、ファイナンシャルプランナーとしての技能を評価する国家検定「1級ファイナンシャル・プランニング技能検定」を受験し、合格することによって得られる資格です。
ファイナンシャル・プランニング技能士は、難易度がやさしい方から3級・2級・1級の3種類があり、そのうち1級は「上級レベル」で、プロフェッショナルなFPとしての能力を証明することができます。
FPとして独立・開業したり、金融関連の専門的な講演や記事執筆をしたりする人などの多くはFP1級を取得しています。
1級ファイナンシャル・プランニング技能士資格取得のメリットは?
1級ファイナンシャル・プランニング技能士は、FPの資格の中では最も難易度が高いため、この資格を取得した人は、FPとしての高い専門性や経験を備えているものとして高く評価されやすいです。
金融業界でFPとしての専門性を強みに活躍していきたい人、また独立・開業を目指す人にもおすすめの資格となっています。
もちろん誰でも資格を取るだけで活躍できるわけではありませんが、FP1級のような上級レベルの資格を持っていることは、お客様からの信頼を得る上でも役立ちます。
また、1級ファイナンシャル・プランニング技能士と同等レベルの資格として、日本FP協会が認定する「CFP」があります。
CFPは2年ごとに資格更新が必要ですが、FP1級は資格の更新制度がないため、一度取得すれば一生有効であることもFP1級を取得するメリットといえます。
1級ファイナンシャル・プランニング技能検定の出題内容・形式
1級ファイナンシャル・プランニング技能検定は「学科試験」と「実技試験」で構成されており、1級FP取得のためには「実技試験」に合格する必要があります。
実技試験には受験資格が定められていて、それを満たす条件の一つが学科試験合格となっています。
学科試験は「金融財政事情研究会(通称:きんざい)」という団体が、実技試験は「日本FP協会(通称:FP協会)」という団体と「きんざい」が、異なる科目で実施しています。
学科試験
1級ファイナンシャル・プランニング技能検定の学科試験は、「きんざい」によって年3回(5月・9月・翌1月)実施されています。
また、学科試験は「基礎編」と「応用編」に分かれており、午前と午後に分かれて2時間半ずつ試験が実施されます
基礎編は四答択一の50問で、応用編は記述式の筆記試験で5題、100点ずつの200点満点で合格基準は120点以上です。
一般的に基礎編よりも応用編のほうが難易度が低いといわれているため、午前中の基礎編で失敗しても焦らず、午後の応用編に挑みましょう。
実務試験
1級ファイナンシャル・プランニング技能検定はの実技試験は、きんざいとFP協会が実施しています。
実技試験を受けることができるのは学科試験合格者(※それ以外の受験資格もあり)となっており、合格した学科試験の試験日の翌々年度までに行われる実技試験を受験できます。
きんざいの実技試験は例年、学科試験の合格発表後6カ月以内に行われ、FP協会の実技試験は年に一度、9月に行われています。
実技試験は口頭試問形式で、資産相談業務(きんざい)と資産設計提案業務(FP協会)から1科目を選択し、面接は異なる設例課題に基づいて2回行われます。
1回あたり100点満点の合計200点で、こちらも合計120点以上で合格となります。
設例はそれぞれ面接開始の約15分前に渡され、一人あたりの面接時間は約12分となっています。
<資産相談業務の実技試験の項目>
「関連業法との関係及び職業上の倫理を踏まえたファイナンシャル・プランニング」「顧客のニーズおよび問題点の把握」「問題解決策の検討・分析」「顧客の立場に立った対応」
<資産設計提案業務の実技試験の項目>
「関連業法との関係及び職業上の倫理を踏まえたファイナンシャル・プランニング」「顧客データの収集と目標の明確化」「顧客のファイナンス状況の分析と評価」「プランの検討・作成と提示」
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1級ファイナンシャル・プランニング技能検定の受験資格は?
1級ファイナンシャル・プランニング技能検定の受験資格は、やや複雑なものとなっており、学科試験・実技試験それぞれに受験資格が定められています。
- 2級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得し、かつFP業務に関しての1年以上の実務経験
- FP業務についての5年以上の実務経験
- FP1級学科試験合格者(ただし学科合格日の翌々年度末までの有効期限あり)
- 日本FP協会の「CFP認定者」
- 日本FP協会の「CFP資格審査試験の合格者」
- きんざいの「FP養成コース」修了者+実務経験1年以上
上記をご覧いただいたらわかる通り、つまり「CFP」の資格保有者は学科試験を受ける必要がなく、いきなり実技試験に進むことができます。
最終的に実技試験に合格することによってFP1級を取得することが可能です。
CFPを持っていない人などは、まず1級FPの学科試験から挑戦し、その合格によって実技試験の受験資格を得て、実技試験の合格を目指す流れが一般的となっています。
1級ファイナンシャル・プランニング技能検定の難易度は高い?
1級ファイナンシャル・プランニング技能検定の合格率は10%程度(学科)
1級ファイナンシャル・プランニング技能検定は、学科試験は「きんざい(金融財政情報研究会)」のみ、実技試験は「きんざい」と「FP協会(日本FP協会)」で実施されています。
学科試験の合格率は10~20%程度、実技試験の合格率は80~90%程度です。
参考までに、最近の試験の合格率推移をご紹介します。
学科試験
<きんざいのみ>
2022年5月実施:9.39%、2022年1月実施:6.67%、2021年9月実施13.03%
実技試験
<きんざい>
2022年6月実施:85.98%、2022年2月実施:85.88%、2021年9月10月実施:85.16%
<FP協会>
2021年9月実施:93.8%、2020年9月実施:97.7%、2019年9月実施:93.0%
上記の数字からもわかる通り、1級ファイナンシャル・プランニング技能検定は、学科試験の合格率が非常に低い一方、実技試験は8~9割以上の人が合格していることが特徴です。
出典:金融財政事情研究会(きんざい) 試験結果
出典:日本FP協会 FP技能士の取得者数 及び 試験結果データ
1級ファイナンシャル・プランニング技能検定の合格率が低い理由は?
1級ファイナンシャル・プランニング技能検定は、FP2級・3級の試験と比べると、だいぶ難易度が高いものとなっています。
合格率が低い主な理由は、以下の通りです。
- 対策しづらい問題が多く出題される(とくに学科試験の基礎編)
- 学ばなくてはならない知識量が多い
- 教材の数や種類が限られている
FP1級の試験において最も大変といわれるのは、学科試験の基礎編です。
他の資格試験では、基本的な知識を押さえた上で過去問をきちんと繰り返して傾向をつかんでおけば、十分に合格ラインには達することができるものが多いです。
FP2級の試験も同様です。
しかし、FP1級の学科試験(基礎編)では、参考書や過去問題とはまったく異なるような問題が出ることも珍しくなく、その点でつまづいてしまう受験者が一定数いると言われています。
また、覚えなくてはならない知識も非常に多いため、まとまった勉強時間を確保してしっかり勉強に取り組んでいかなくてはなりません。
さらに、FP1級はFP2級と比較すると圧倒的に受験者が少ないこともあって(5分の1~4分の1程度)、1級向けの教材(テキスト)があまり多くありません。
自分できちんと情報を集め、選別して試験対策を進めていかないと、なかなか合格にたどり着かないのもFP1級の難しさとなっています。
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1級ファイナンシャル・プランニング技能検定の勉強時間・勉強方法
1級ファイナンシャル・プランニング技能検定の勉強方法の種類
1級ファイナンシャル・プランニング技能検定の勉強方法としては、「独学」「通信講座」「予備校・スクール(通学制)」の3種類が挙げられます。
ただし、多数の市販教材や講座が提供されている2級や3級FPの試験とは異なり、1級に対応した教材や講座はあまり数が多くありません。
1級は受験者が少ないことがその理由だといわれていますが、それでも難易度が高めの試験であるだけに、自分に合う勉強方法を早く見つけることが重要です。
いずれにしても継続的に勉強を続ける姿勢が不可欠となりますが、市販のテキストを使っての独学だけでは不安という人は、通信講座や通学制の講座を受けるのもよいでしょう。
大手資格スクールの「LEC東京リーガルマインド」や「資格の学校TAC」は、どちらもFP1級の講座を提供しています。
そのほか「山田コンサルティンググループ」や試験実施団体の「きんざい」にも、FP1級の対策講座があります。
費用は総合講座で8~15万円ほどと幅がありますが、学習方法や教材、カリキュラム、サポート体制などをよく比較して選んでください。
1級ファイナンシャル・プランニング技能検定の勉強時間は約600時間・勉強期間は半年
1級ファイナンシャル・プランニング技能検定合格のためには、2級FPの2倍となる600時間ほどの勉強時間が必要だといわれています。
平均して1日に3時間ほど勉強するとしても、半年程度はかかる計算です。
難易度も2級FPよりだいぶ上がるため、目標の受験時期を想定し、余裕を持って学習計画を立てていきましょう。
なるべく最短での合格を目指したい場合には、スクールや通信講座を利用する方法も考えてみるとよいでしょう。
1級ファイナンシャル・プランニング技能検定合格は独学で可能?
可能ではあるが、対策は難しい
1級ファイナンシャル・プランニング技能検定は、独学で合格を目指すことも可能ではあるものの、やや厳しい道のりになると考えておいた方がよいでしょう。
というのも、FP1級は試験範囲が広く、3級・2級の試験対策よりも確実に時間がかかり、出題内容も難しいからです。
また、市販の教材(参考書・問題集など)もあまり多く出ていないため、自分に合う教材が見つかるとは限りません。
金融関連の専門知識が豊富にある人、勉強することが得意な人など独学で合格している人もいますが、あまり自信がない人に向けては、独学は積極的におすすめできる方法とはいえません。
幅広い知識と応用力を身につけて確実に合格を目指すのなら、Webなどで学べる通信講座の受講、もしくはスクールに通学することを考えてみるとよいでしょう。
先に紹介した通り、1級FPは講座自体の数も3級・2級に比べると限られているものの、わかりやすくまとめられた教材を使いながら講義を受けられること、また最新の試験情報を楽に入手できることなどは、講座を利用するメリットです。
独学合格を目指すためのポイント
「FP1級にどうしても独学で合格したい!」と考える場合には、なるべく2級合格から間を空けずに挑戦することをおすすめします。
2級と1級は難易度こそ違えど試験範囲は同じであるため、2級の勉強で習得した知識をそのまま生かして1級の勉強をすれば、非常に効率的だからです。
また、先にCFPを取得し、1級の「学科免除」の恩恵を受ける方法を選ぶのもよいでしょう。
CFPも難易度は1級と同等といわれていますが、CFPには「科目別合格制度」があるため、全6科目のうち1科目~数科目ずつコツコツ合格を目指していくことができます。
1級の学科試験は難易度が高いため、まずCFPを取ることで学科を免除し、実技のみの受験で結果的にスムーズにFP1級に合格できる人もいます。
1級ファイナンシャル・プランニング技能検定の難易度まとめ
1級ファイナンシャル・プランニング技能検定は、学科試験と実技試験とでは合格率に大きな差があるのが特徴です。
とくに「学科試験の基礎編」が最も難しいと言われているため、ご自身に合う勉強方法を見つけて、十分な対策をした上で試験に臨んでください。
先に「CFP」資格を取得するなどの方法によって、学科試験免除で実技試験のみ受験することも可能です。