スポーツトレーナーになるには
スポーツトレーナーになるまでの道のり
スポーツトレーナーになるための代表的なルートは、2つあり、一つは、スポーツトレーナーを養成する専門学校や大学の体育系学部を卒業して、日本体育協会の「アスレティックトレーナー」や「ジャパン・アスレチック・トレーナーズ協会(JATAC)」などの資格を取得するケースです。
もう一つは、柔道整復師や鍼灸師、あん摩指圧マッサージ師、理学療法士を養成する専門学校を卒業して、それらの国家資格を取得するケースです。
しかし、いずれかの資格を取得したからといって、すぐにスポーツトレーナーとして働くことは難しく、公募もほとんどないと考える方がいいでしょう。
採用は、実績と人脈が大きなポイントとなるため、スポーツジムや治療院、整体院、鍼灸院などに就職して、それぞれの施設で勤務しながら経験を積む一方、大学や高校などへスポーツトレーナーとして派遣され活躍することが最も一般的なルートとなっています。
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スポーツトレーナーになるための学校の種類
スポーツ系の大学や専門学校
スポーツトレーナーを目指す人の進学先としては、スポーツトレーナーの養成を目的とした専門学校、体育系の学部のある大学があります。
こうした専門学校や大学は、すでに現場で活躍している先輩も多く、現役トレーナーと身近に接することができるのもメリットです。
大学に進学した場合は、どこかの部に学生トレーナーとして入部することも可能です。
海外留学でキャリアを積む
近年は海外留学で資格を取り、海外でキャリアを積む人も増えています。
スポーツトレーナーの分野は、日本よりアメリカやカナダの方がはるかに進んでいるため、アメリカの大学などで勉強して資格を取得し、それぞれの州で認定されれば、プロからアマチュアのチームはもちろん、地域のスポーツ団体やスポーツジム・企業・病院など就職先は豊富です。
自身の腕を磨いてステップアップしながら、プロチームで経験を積み、帰国後即戦力として働く人も増えつつあります。
スポーツトレーナーになるために勉強すること
スポーツトレーナーの勉強
専門学校や大学で勉強するのは、人間の体とその機能を始め、基礎医学・栄養学・トレーニング・テーピング法・スポーツ障害や外傷・救急措置法・マッサージ理論と実技・一般整形疾患などとなっています。
身体に関する知識はもちろんですが、実際のトレーニングやテーピング、救急措置法など実践的な内容も多いのが特徴です。
最新のトレーニング情報
スポーツトレーナーは、日々の勉強がとても大切です。
体を鍛えることは、スポーツ選手だけでなく一般の人にも関心の高いテーマです。
医学だけでなくトレーニング法や体のケア方法も、常に進歩していますし、向上心の強い選手や指導者ほど、最新の情報を求めています。
質問されたときに、的確な対応ができなければ、信頼を失いかねないため、インターネットや雑誌、テレビ番組などをチェックし、最新の情報の中から的確なものだけを取捨て選択しトレーニングに取り入れていく必要があります。
正しい情報を見抜き伝える
選手の中には、昔ながらの迷信を信じていたり、誤解したりしている人もいます。
医学や科学の進歩により、新たな知見によって対処法が変わるケースもあるため、常に最先端の情報を入手し、的確な治療を行えるようにしておくことが大切です。
そして、誤った情報を持っている選手に対しても、きちんと説明できるように勉強することがスポーツトレーナーの役割でもあります。
スポーツトレーナーになるためにはどんな学校に行けばいい?(大学・専門学校)
スポーツトレーナーに向いている人
スポーツトレーナーに向いているのは、裏方として縁の下の力持ちになれる人です。
主役は選手なので、常に相手の体や心の状態を考え冷静にサポートできる人が向いています。
またスポーツトレーナーには、高いコミュニケーション能力も必要です。
選手がケガなどで調子の悪いときや成績を上げられないときでも、相手の状況や性格、コミュニケーション能力などを考えた上での対応が求められるため、どんなときでも常に相手のことを考え行動できる人こそが、スポーツトレーナーに向いているといえるでしょう。
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スポーツトレーナーのキャリアプラン・キャリアパス
プロスポーツ界でスポーツトレーナーとして働く場合は、1年ごとに契約し、年俸という形で給料が支払われることがほとんどです。
高倍率を潜り抜けてスポーツトレーナーになったとしても、成果を上げられなければ契約を打ち切られてしまうこともあり、長く続けるのは難しい仕事でもあります。
そのため、スポーツトレーナーとして長く働く人は少なく、年齢を重ねると後進を育てる指導者となったり、パーソナルトレーナーに転身したりします。
スポーツトレーナーに必要な資格はある?
スポーツトレーナーになるために必要な国家資格はありません。
しかし、人間の体の構造や機能、トレーニング理論などの専門知識が必要であるため、医療系の専門学校や大学の体育系学部で学び、「アスレティックトレーナー」や「ジャパン・アスレチック・トレーナーズ協会(JATAC)」などの資格を取得している人が多くなっています。
そのほか、スポーツトレーナーは試合や練習中に起きるケガや腰痛や膝痛・肩痛といったスポーツ傷害に対応するため、柔道整復師や鍼灸師、あん摩指圧マッサージ師といった医療系の国家資格を持っている人も多くいます。
スポーツトレーナーの資格①日本体育協会・公認アスレティックトレーナー
- すでにトレーナなら養成講座の受講と検定試験合格で取得可能
- 養成講座受講には体育協会などの推薦が必要
- 一から受験するには専門学校等の卒業が必要
公認アスレティックトレーナーは、すでにトレーナーとしては活動している人については 養成講座を受講し、検定試験に合格すれば認められます。
ただし、養成講座を受講するには、各都道府県の体育協会や、各スポーツの協会の推薦が必要になります。
また、これからアスレティックトレーナーになりたいという人が取得するには、日本協会認定の専門学校や大学を卒業し、検定試験に合格する必要があります。
スポーツトレーナーの資格②認定アスレチックトレーナー:JATAC-ATC
- 「ジャパン・アスレチック・トレーナーズ協会」が認定する資格
- スポーツ障害の予防が目的
- 取得には国家資格や専門学校卒業が必要
「ジャパン・アスレチック・トレーナーズ協会」は、1995年に柔道整復師の団体が中心となって設立されました。
スポーツ障害の悪化を防ぎ、スポーツ障害の予防を積極的に行うことで、スポーツ活動の発展に寄与する団体です。
資格の取得には、以下のいずれかが必要です。
【認定アスレチックトレーナー受験資格を得るには】
- 医療系国家資格をもち、スポーツ科学の専門科目の単位を取得
- 指定の専門学校や 大学、大学院を卒業し、指定の臨床医療系科目の単位を取得
認定アスレチッ ク・トレーナー:JATAC-ATC
認定アスレチックトレーナーの受験資格を得るには、専門学校などで勉強する必要があります。
スポーツトレーナーの資格③NATA 認定アスレティックトレーナー
- アメリカの指定校を卒業すると受験資格を得られる
- 世界最高峰のトレーナー資格の一つ
- アメリカのプロスポーツトレーナーとして働くことができる
全米アスレティックトレーナーズ協会(NATA)」の公認資格、「NATA認定アスレティックトレーナー」はアメリカのスポーツトレーナーの95%が取得していると言われる資格です。
NATA認定アスレティックトレーナーの資格を取るには、アメリカに留学する必要があります。
【NATA認定アスレティックトレーナー資格を取るには】
- 全米に約350校ある指定された大学・大学院を卒業
- 在学中に700時間程度のインターンシップが必須
- 英語の認定試験に合格
資格取得へのハードルは高いですが、その分アメリカを含むグローバルに活躍できる可能性があります。
日本国内でNATA認定アスレティックトレーナー資格を持っている場合は、欧米系選手とコミュニケーションが取りやすいため重宝されることもあります。
NATA認定アスレティックトレーナー
スポーツトレーナーの資格④柔道整復師(国家資格)
【柔道整復師(国家資格)】
- ケガに対して手術をせず治療をする国家資格
- 取得には専門学校等で3年以上勉強が必要
柔道整復師は骨折・脱臼・打撲・捻挫などのケガを、手術をしない施術で治療する専門家です。
柔道整復師の資格を持っていると、解剖学や生理学など、身体の構造や働きなどの知識をスポーツトレーナーとして役立てることができます。
受験資格を得るには、専門学校や柔道整復師養成施設等で最低3年間以上のカリキュラムを受講する必要があります。
柔道整復師
スポーツトレーナーの資格⑤あん摩マッサージ指圧師(国家資格)
- マッサージで怪我の防止や疲労軽減をする専門家
- 取得には専門学校等で3年以上勉強が必要
あん摩マッサージ指圧師は、多くのスポーツトレーナーが取得している資格の一つです。
国家資格を持たずにマッサージを行うことは法律で禁じられているからです。
専門知識に基づいたマッサージを通して、怪我防止や疲労軽減、パフォーマンスの向上を期待できます。
国家試験は年に一度実施され、受験資格は厚生労働省か文部科学省が認定した専門学校に3年以上通い卒業または卒業見込みである必要があります。
あん摩マッサージ指圧師
スポーツトレーナーの資格⑥鍼灸師(国家資格)
- 「はり師」と「きゅう師」の2つの国家資格を持つ人のこと
- ツボを刺激して疲労や痛みなどの症状を軽減
- 取得には専門学校等で3年以上勉強が必要
鍼灸師は、全身にあるツボに鍼(はり)やお灸を使って、疲労や痛みを軽減させることができ、施術は鍼灸師か医師だけが行うことができます。
柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師が筋肉や骨、筋などへの施術であるのに対し、鍼灸師は東洋医学に基づくツボを刺激するのが特徴です。
鍼灸師の資格は、あん摩マッサージ指圧師資格と一緒に資格を取得する人も少なくありません。
受験資格を得るには専門学校などで3年以上の勉強が必要です。
スポーツトレーナーの資格の難易度は?独学は可能?
資格の難易度は様々ですが、民間資格の中には独学が可能なものもあります。
医療系などの国家資格を取得したい場合、専門学校や大学で学んだうえ国家試験に合格した人のみ取得可能になります。
通学にかかる時間や、お金は大きく変動する場合があるため余裕を持って計画を立てるようにしましょう。
この章では、独学が可能な以下の3つの資格を紹介します。
- NESTA-PFT 全米エクササイズ
- NSCAーCPT NSCAジャパン 日本ストレングス
- JATI-ATI
独学での学習は参考書やセミナーから情報を仕入れることがほとんどです。
どの資格を取得したいかを明確にして、取得方法や期間などの計画を立てましょう。
独学が可能なスポーツトレーナー資格①NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会)
- NESTA(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会)認定資格
- 資格取得にかかる費用は10~20万円
アメリカだけではなく、日本でも認知度が比較的高い資格です。
資格取得の試験の受験資格は複数の条件をクリアする必要があります。
【NESTA-PFTの受験資格を得るには】
- NESTA JAPAN等からPFTテキストを購入
- 心肺蘇生法やAEDの講習を受ける
- パーソナルトレーナー等の実務経験もしくは専門学校卒業
- 実務経験なしの場合はセミナー等参加で代替可
資格取得までに必要なテキストは約5万円から6万円前後、セミナーやWEB講座は11万円から17万円前後になります。
試験は約5万円ほどの費用がかかります。
独学が可能なスポーツトレーナー資格②NSCAーCPT(日本ストレングス&コンディショニング協会)
- 受験資格はNSCAジャパン会員入会と心肺蘇生やAEDの知識を有すること
- 試験はテストセンターのパソコンで実施、結果は翌日に出る
- 受験にかかる費用は10万円程度
資格取得にはNSCAジャパンの会員に入会し、高校を卒業して18歳以上であり、心肺蘇生のCPRやAEDの認定者であることが最低条件です。
試験はテストセンターのパソコンで行い、結果も翌日には確認できます。
教材費約5万円、受験料約5万円で取得できるため、比較的手軽と言えます。
独学が可能なスポーツトレーナー資格③JATI-ATI(日本トレーニング指導者協会)
- 2006年創設の新しい資格
- スポーツ選手・一般人双方を対象にトレーニング指導を行う専門家
- 取得に必要な費用は6万円程度
競技スポーツ分野において、選手の体力強化や傷害予防を目的としたトレーニング指導を行う専門家です。
資格を取得するためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。
【JATI-ATIの受験資格を得るには】
- JATI会員になること
- 毎年8月頃に開催される4日間の講習会に参加
- 試験を受けて合格すること
他の団体が発行する資格をすでに持っている場合は講習会が免除になることもあります。
詳しくは団体ホームページにて確認しましょう。
教材を購入しても約3万円程度、試験は受験料が3万円と費用は抑えられているのも特徴です。
スポーツトレーナーの資格は働きながら取得可能な講座もある
数は多くないですが、働きながら受講可能な講座を開いている学校もあります。
夜間のみの通学や、Web講座受講などが社会人には人気です。
スポーツトレーナーになるには資格が必須ではないので、スポーツジムなどで経験を積みながら複数の資格取得を目指す人も多いです。
自分が進みたいトレーナーの方向性を見極めて、資格取得の勉強を始めましょう。
スポーツトレーナーの働き方の種類とその特徴
スポーツトレーナーの雇用形態
プロスポーツ界でスポーツトレーナーとして働く場合は1年ごとに契約し、年俸という形で給料が支払われることがほとんどです。
高倍率を潜り抜けてスポーツトレーナーになったとしても、成果を上げられなければ契約を打ち切られてしまうこともあり、長く続けるのは難しい仕事でもあります。
また、さまざまな学校や企業チームに派遣され仕事をする場合は、正社員だけでなく派遣社員や契約社員、仕事を掛け持ちしながら働くこともあります。
正社員のスポーツトレーナー
プロスポーツチームのスポーツトレーナーの場合
スポーツトレーナーは、基本的に1年単位の契約となります。
チームの成績が悪かったり、選手からの評判が悪かったりすると、解雇されることもあります。
その一方、トレーニング理論に精通している人や、スポーツ傷害に対する対応力のある人は、より良い条件で契約オファーを受けることもあります。
また、スポンサーのつく選手の場合、裏方スタッフの一員として専属契約を結ぶケースもあります。
実業団のスポーツトレーナーとして働く場合は、企業に正社員として雇用されることもあります。
スポーツジムや整体院に所属の場合
プロチームや一流選手と専属契約できるスポーツトレーナーは、ほんの一握りです。
社会人や大学、高校のチームと契約するスポーツトレーナーの多くは、スポーツジムや整体院などの所属先から派遣されて仕事をしています。
平日はスポーツジムや整体院に勤務し、週末にスポーツトレーナーとして大学や高校のチームを担当する人もいます。
企業で正社員としてスポーツトレーナーとして働く場合、年俸制のように経済的・将来的に不安定な生活を送る心配はないため、より安定した環境で働けるといえるでしょう。
派遣のスポーツトレーナー
スポーツトレーナー専門の派遣会社もあります。
派遣として働く場合は、派遣会社に登録し知識やスキル・経験と照らし合わせ、依頼のあったチームや部活、個人等に派遣されそれぞれに指導を行います。
必ずしもスポーツトレーナーとしての仕事だけではなく、会員制スポーツクラブや個人に対するパーソナルトレーニングやスポーツ・健康に関する講演やセミナー、チーム・個人でのレッスン、スポーツトレーナーの養成や指導など幅広いジャンルの仕事を請け負うことが多いようです。
派遣で経験を積み、プロスポーツチームや選手との契約を目指すスポーツトレーナーも少なくありません。
アルバイト・パートのスポーツトレーナー
アルバイト・パートとして働くスポーツトレーナーはほとんどいません。
専門性をもって働く仕事のため、多くの場合が年俸制の契約か正社員として働いています。
ただし、専門学校や体育大学などスポーツの知識を学んでいる学生がスポーツジムやフィットネスクラブなどでアルバイトとして働くことがあります。
スポーツトレーナーの補佐的な仕事を担当し、スポーツトレーナーとして一人前になるための下積み期間ともいえます。
スポーツトレーナーを目指せる年齢は?
スポーツトレーナーは長く続けられる仕事ではありません。
しかし経験を積まなければ仕事に就くことができないため、スポーツトレーナーとして活躍できる期間は他の職業に比べると圧倒的に短くなります。
スポーツトレーナーとして活躍する人の平均は30代で、多くの人が40代から50代になると一線を退きます。
スポーツトレーナーを目指すのであれば出来るだけ早いうちから経験を積み、チャンスを待つことが重要です。