スポーツトレーナーの仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「スポーツトレーナー」とは
スポーツ選手を身体面からサポート。トレーニング指導やコンディショニングなどを行う。
スポーツトレーナーとは、スポーツ選手が最高のコンディションで試合や大会に臨めるように、身体面を中心としたトレーニング指導やサポートを行う人のことです。
仕事内容は、大きく分けて3つあります。
(1)運動能力やパフォーマンス力を高めるためのトレーニング指導
(2)スポーツ障害や外傷の予防と応急措置、リハビリ
(3)試合や大会に向けたコンディショニング
スポーツトレーナーは、サッカーや野球のような著名なスポーツのほか、あらゆるスポーツで需要があります。
選手の活躍を裏方の一人として支える専門職として人気が高まっている一方、トレーナーとして求められるレベルも上がっており、確かな知識と技術の習得が不可欠です。
「スポーツトレーナー」の仕事紹介
スポーツトレーナーの仕事内容
スポーツ選手の身体面をケアし、サポートする
スポーツトレーナーは、スポーツ選手がコンディションを保ち、最高のパフォーマンスを発揮できるように、身体面からサポートする仕事です。
具体的な仕事内容は、下記のようなものがあります。
・日常的なトレーニング指導
・ケガや故障の予防と応急措置
・コンディション調整、リハビリ
スポーツトレーナーは、サッカーや野球などをはじめ、あらゆる種類のスポーツに対応します。
スポーツでは「心・技・体」が重要視されますが、そのうち「体」の部分をサポートするのがスポーツトレーナーです。
スタッフの一員としてチーム作りにも関わる
プロ野球チームやJリーグなどでは、チームに所属し、専属で働くスポーツトレーナーもいます。
選手一人ひとりの体の特徴やコンディションをよく把握し、最適なコンディションやトレーニングメニューを考えていくことが求められます。
また、選手の「体」を中心にサポートしながらも、競技に取り組む姿勢やモチベーションアップのための「心」のケアにも携わりながら、チーム全体の力をアップさせるように努めます。
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スポーツトレーナーになるには
人体の構造や機能について学校で学ぶ
スポーツトレーナーになるには、人間の体の構造や機能、トレーニング理論などの知識習得が必要です。
なるための代表的なルートは2つあります。
(1)スポーツトレーナーを養成する専門学校や大学の体育系学部を卒業する
(2)柔道整復師や鍼灸師、あん摩指圧マッサージ師、理学療法士を養成する専門学校を卒業する
1のルートでは、日本体育協会の「アスレティックトレーナー」や「ジャパン・アスレチック・トレーナーズ協会(JATAC)」などの資格取得を目指せます。
2のルートでは、人間の体について学ぶと同時に、整体院や治療院などで働くうえで役立つ医療系の国家資格が取得できます。
いずれにしても、どこかの学校でスポーツトレーナーに必要な知識を身につけないと、就職は難しいと考えておいたほうがよいでしょう。
トレーナーとして経験を積める就職先を探す
スポーツトレーナーとしての公募は非常に少なく、とくにプロスポーツチームなどでは、実績や人脈がなければ、なかなか思うように就職でない場合があります。
そのため、まずはスポーツジムや治療院に就職し、経験を積む人が大半です。
そのような場では、一般のお客さまのケガや腰痛や膝痛・肩痛などにも対応するため、スポーツトレーナーとしても役立つことが多く学べます。
スポーツトレーナーの学校・学費
専門学校や大学でスポーツトレーナーの勉強をする
スポーツトレーナーを目指す人の進学先には、まず、スポーツ専門学校や体育系学部のある大学が挙げられます。
このような学校で、スポーツトレーナーになるためのカリキュラムが用意されているところを選択するとよいでしょう。
人間の体とその機能、基礎医学、栄養学、トレーニング、テーピング法、スポーツ障害や外傷、救急措置法、マッサージ理論と実技、一般整形疾患など、幅広い知識を基礎から学べます。
すでに現場で活躍している先輩も多く、現役トレーナーと身近に接することができるのもメリットです。
医療系の専門学校に通う道も
上記のほか、柔道整復師や鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、理学療法士を養成する専門学校を卒業して、それらの国家資格を取得する道もあります。
これらは、直接的にスポーツトレーナーの資格ではないものの、医療系の国家資格として権威がありますし、活躍の場も多彩です。
また、そうした学校で身につけた知識や技術も、トレーナーとしての業務に役立つ部分はおおいにあります。
選択する学校によって、学費や取得を目指せる資格の種類も異なるため、将来どのような活躍をしたいのかをイメージして進学先を決めるとよいでしょう。
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スポーツトレーナーの資格・試験の難易度
仕事に関連するさまざまな資格がある
スポーツトレーナーになるため、必須とされる資格はありません。
ただ、この仕事にはいくつかの民間資格があり、多くの人が知識・技術の向上や、その証明のために、資格取得を目指しています。
代表的な資格の一部は「公認アスレティックトレーナー制度」と「認定アスレチックトレーナー:JATAC-ATC」です。
このような資格は、各団体が認定する大学や専門学校、養成講座を卒業することで取得を目指せます。
資格があれば就職が確約されるわけではないですが、専門性を向上させるため、キャリアのひとつの通過点として資格取得も考えていくとよいでしょう。
国際的なスポーツトレーナーの資格も
上記のほか、世界最高峰のトレーナー資格である「NATA 認定アスレティックトレーナー」は、アメリカの指定校を卒業することで受験資格が得られます。
海外留学をしなくてはならない分、ハードルはやや高めですが、業界内での認知度は高いものです。
海外で活躍したいなど、本格的にスポーツトレーナーを目指す人は検討の価値がある資格といえます。
スポーツトレーナーの給料・年収
経験とともに年収も増加
専門職であるスポーツトレーナーは、経験を積むごとに対応できる業務の幅が広がり、収入も上がっていく傾向です。
平均年収は460万円~650万円ほどがボリュームゾーンと考えられますが、新人時代はもう少し低めの年収になるでしょう。
プロチームや選手専属のトレーナーとして契約する場合、給料は「年俸制」が基本です。
初年度は300万円ほどが相場ですが、長く働くほど信頼も積み上がり、金額はアップします。
ただ、チームの成績が悪かったり、選手からの評判が悪かったりすると、年俸が減額されたり解雇されることもあります。
一方、トレーニング理論に精通している人や、スポーツ傷害の対応力のある人は、よりよい条件で契約オファーを受けることもあります。
実力次第で収入は大きく変わる
プロチームなどと契約できるトレーナーはごくわずかで、現実的には、スポーツジムや整体院などに勤務する人が多くを占めます。
その場合、経験年数が浅いうちは年収300万円ほどにとどまることもあります。
キャリアを積み重ね、独立したり、多くのチームと契約を結べるようになったりすれば、収入を大きく増やすことも可能です。
スポーツトレーナーにとって、収入の行方は実力次第といえるでしょう。
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スポーツトレーナーの現状と将来性・今後の見通し
確かな知識と技術を身につけた人材が求められている
近年、スポーツトレーナーの認知度は高まり、この仕事を志望する学生も増えています。
ただし、まだ日本では活躍の場がさほど多くありません。
スポーツトレーナーの分野は、アメリカやカナダのほうが進んでいるため、海外留学によって国際的な資格を取り、プロチームで経験を積み、帰国後にスキルを武器に即戦力として働く人も増えています。
これからスポーツトレーナーを目指す人にとっては、レベルの高い争いが待ち受けていると考えておいたほうがよいでしょう。
ただし、高齢化が進む現在、医療や介護、福祉領域で活躍するスポーツトレーナーのニーズも高まることが予想されています。
新しい知識や技術を積極的に習得し、行動力をもって活躍の場を広げていこうとする気概が大切といえそうです。
スポーツトレーナーの就職先・活躍の場
スポーツ選手やチームのスタッフとして働く
スポーツトレーナーは、プロ野球やJリーグなどのスポーツチームのスタッフとして働きます。
プロ野球では、1チームにつき10人前後のトレーナーが所属しています。
サッカーのJリーグや、バスケットボールのbjリーグなどでも、各チームに数人のトレーナーがいます。
このほか、企業のスポーツチーム、 全国のクラブチーム、あるいは大学や高校などの強豪校のチームでも、スポーツトレーナーは活躍できます。
ただし、アマチュアチームの多くは専属スタッフを雇うほどの金銭的な余裕がないことから、必要な時のみ、単発で派遣トレーナーと契約するのが一般的です。
普段は整体院やスポーツジムなどに勤務し、派遣トレーナーとして活躍する人もいます。
スポーツトレーナーの1日
チームや選手のスケジュールに合わせて行動する
スポーツトレーナーの1日は、担当するチームの予定や、選手の練習や試合スケジュールによって変わってきます。
すべてチームの一員として行動するため、休憩や休日は、チームのスケジュールに合わせて取ります。
ここでは、プロ野球チームのトレーナーとして働く人のある1日を紹介します。
スポーツトレーナーのやりがい、楽しさ
選手に頼られ、チームの一員として活躍できる
スポーツトレーナーの大きな魅力のひとつは、チームスタッフの一員として、自分もチーム作りに参加できることでしょう。
自身が行ったトレーニングのアドバイスや指導によって、個々の選手のパフォーマンスが向上すれば、チーム戦術も戦略も変わります。
スポーツトレーナーとして身につけた知識・技術を駆使して選手をサポートし、チーム全体が強くなれば、これほど喜ばしいことはありません。
また、この仕事では選手から頼られるため、苦労はありつつも、その点にやりがいを感じている人も多いです。
ケガをした選手、不調だった選手のパフォーマンスが改善すると、自分のことのようにうれしい気持ちになります。
スポーツトレーナーのつらいこと、大変なこと
選手から信頼を得ることの難しさ
ケガをしていたり、体の状態がよくない選手には、リハビリやコンディション調整のモチベーションを上げるための声掛けが重要です。
ナーバスになっている選手にどのような声をかければよいのか、ときには悩んでしまうこともあるかもしれません。
また、スポーツトレーナーとして全力を尽くしていくためには、まず、なによりも選手から信頼されることが重要です。
スポーツトレーナーの仕事の成果は、選手やチームの成績にも大きく影響していくからこそ、責任重大です。
また、この仕事はある意味、自分を犠牲にしてでも相手に尽くすものでもあるため、忙しいときには体力的にも精神的にもきついと感じることもあるかもしれません。
スポーツトレーナーに向いている人・適性
スポーツを裏方として支える熱意がある人
スポーツトレーナーに向いているのは、スポーツが好きなことは前提として、その裏方として縁の下の力持ちになれる人です。
主役はあくまでも選手ですから、常に相手の体や心の状態を考え、冷静にサポートできる人が向いています。
また、トレーナーには高いコミュニケーション能力も必要です。
選手がケガなどで調子の悪いときや成績を上げられないときには、相手の状況や性格、コミュニケーション能力などを考慮したうえでの対応が求められます。
トレーナーとして必要な知識・技術は、やる気さえあればいくらでも学べます。
それ以上に、どんなときでも常に相手のことを考え行動できる人こそが、スポーツトレーナーに向いているといえるでしょう。
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スポーツトレーナー志望動機・目指すきっかけ
スポーツを経験したことのある人が多い
スポーツトレーナーを目指す人の多くが、「もともとスポーツが好きだから」という思いを抱いています。
ただし、スポーツトレーナーとして働くには、スポーツに興味があるだけでなく「スポーツ選手を支えたい」という献身的な気持ちも不可欠です。
たとえば学生時代にスポーツに打ち込んでいて、残念ながらケガなどで選手を続けられなくなった人などが、次は選手を支える役割に回ることを決意するケースも多いです。
本格的にスポーツに取り組んだ経験がある人なら、一度や二度はスポーツトレーナーにお世話になった経験があるでしょう。
トレーナーが身近な存在であることや、自分自身が支えてもらった経験などから、この仕事を目指す人が多いようです。
プレーはできなくても、スタッフとして選手を支えながらスポーツに深く関われるのは、スポーツを愛する人にとっての喜びになります。
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スポーツトレーナーの雇用形態・働き方
プロチームの専属スタッフになれる人は少ない
プロスポーツ界でスポーツトレーナーとして働く場合は、1年ごとの契約になるのが一般的です。
高倍率を突破してプロチームのスポーツトレーナーになったとしても、成果を上げられなければ契約を打ち切られてしまうこともあるなど、競争は厳しい世界です。
ただし、このような働き方ができるトレーナーはごくわずかで、大半の人は、スポーツジムや整体院などに所属し、社会人や大学、高校のチームに派遣されて仕事をします。
試合日など必要なときだけの活動となりますが、それ以外の日は、所属先のジムや整体院などで働けます。
その他、スポーツトレーナー専門の派遣会社に登録し、スポーツに関わる幅広い仕事をしている人もいます。
スポーツトレーナーの勤務時間・休日・生活
選手やチームのスケジュールに左右される
スポーツトレーナーの勤務時間と休日は、チームに所属する場合、そのチームのスケジュールによって決まります。
週末に試合があることが多いため、シーズン中の土日はまず休めません。
また、突発的なケガやトラブルがあれば、事情に応じて対応しなければならず、予定通りに事が進まないことも多いです。
選手が合宿やキャンプに入れば、24時間付きっ切りでサポートしなければならないため、自分が休む間もなく選手のことを気遣わなければなりません。
一方、スポーツジムや整体院などに所属してい働く場合は、基本的に、各施設の営業時間に合わせて勤務します。
ある程度、規則正しい時間で働けますが、試合に帯同する場合などは長時間勤務になることもあります。
スポーツトレーナーの求人・就職状況・需要
プロチーム専属契約の求人はあまり表に出ない
現状、日本国内ではスポーツトレーナーとしての働き口が限られています。
野球やサッカーなどのプロチームでもあっても、契約するトレーナーの人数は限られており、専属契約の公募はほとんどありません。
欠員ができても、ほとんどが人脈によって補充されます。
経験豊富なベテランの応募が殺到するため、若い人が入りこむ余地はほとんどないのが現状です。
したがって、新たにスポーツトレーナーを目指す若手人材は、まずスポーツジムや整体院などに就職して経験を積むのが一般的なルートとなっています。
それと同時に、できるだけ多くの人と関わり、自分をアピールしていくことも大切です。
スポーツトレーナーの採用は、信頼できる人を選びたいという思いから知人からの紹介が多いため、業界でのコネクションづくりにも力を入れましょう。
関連記事スポーツトレーナーの求人・就職状況・就職先選びのポイント
スポーツトレーナーの転職状況・未経験採用
異業種からの転職のハードルは高め
スポーツトレーナーになるために必須の学歴や資格などはないため、そういった点では、多くの人に転職もチャンスがあるといえます。
ただし、実際にこの仕事に就くとなれば、人の体に関する専門的な知識をはじめ、コンディション調整やトレーニングなどに関する技術も求められます。
まったくの未経験で、スポーツにもあまり関わってこなかった人の場合、まずはスポーツ専門学校などで基礎的なことを学ばない限り、転職は厳しいと考えておく必要があります。
なお、スポーツトレーナーは一定のニーズはあるものの、求人はさほど多くないのが実情です。
まずは比較的活躍の場が多い「理学療法士」など医療系の国家資格を取得し、治療院などに勤務しながらスポーツトレーナーとしての専門知識を身につけ、経験を積む道も検討してみてもよいでしょう。
スポーツトレーナーに理学療法士の資格は必要?
資格は必須ではないが仕事には役立つ
スポーツトレーナーと関連した職業に「理学療法士」があります。
両者の専門領域や役割は重なっているところもありますが、スポーツトレーナーが「スポーツ選手に特化」して身体面をサポートするのに対し、理学療法士はケガや病気が原因で身体の動作がうまく行えない「あらゆる人」に対して訓練をします。
それぞれの仕事に別の資格がありますが、スポーツトレーナーとして働くうえでも、理学療法士として勉強することや資格は生かせます。
理学療法士が身につける「運動療法」と「物理療法」の知識や技術は、選手のパフォーマンスを向上させるための指導を行ううえで役立ちます。
トレーナーに理学療法士資格は必須ではないものの、余裕があれば勉強しておいてまったく損はありません。
スポーツトレーナーは何歳まで働ける?
体力面の問題をクリアできれば年齢は関係ない
スポーツトレーナーは、とくに年齢制限がある職業ではありません。
仕事に対する熱意があり、働ける場も見つかれば、何歳になっても働き続けられます。
とはいえ、現実的にはさまざまな厳しさが出てきます。
一番の問題は体力的なことでしょう。
チームに所属する場合には、遠征や合宿に帯同する必要がありますし、大会前から大会終了まで選手に密着して活動しなければなりません。
拘束時間も長くなりやすく、不規則な生活になることもあるため、人によっては年齢を重ねるごとに、体力面で厳しいと感じてきます。
実際、現役のスポーツトレーナーのほとんどは20代から30代で、40代を超えると徐々に割合が減っていきます。
とはいえ、体力の有無は個人差が非常に大きいですし、むしろキャリアを重ねたベテラントレーナーは、チームにとって貴重な存在になることも多いです。
気力体力ともに充実していれば、歳を重ねてからもムリのない範囲で仕事ができるでしょう。