市議会議員の年収・給料の平均は? 報酬・ボーナスについてもくわしく解説
税収が豊かな市では多く支払われる一方、人口の少ない市では少なくなりがちで、生活を支えるために他の仕事と兼業している人も少なくありません。
ここでは市議会議員の報酬や、自治体ごとの差について解説していきます。
市議会議員の平均年収・給料の統計データ
市議会議員の平均年収・月収・ボーナス【2023年】
人口別の統計データ
人口 | 平均月収 | 年収換算 |
50万人以上 | 72.6万円 | 1162万円 |
20万人~30万人 | 55.0万円 | 880万円 |
10万人~20万人 | 46.5万円 | 744万円 |
5万人未満 | 33.7万円 | 539万円 |
出典:全国市議会議長会 市議会議員定数・報酬に関する調査結果(令和5年12月31日現在)
全国市議会議長会のとりまとめたデータによると、令和5年12月31日現在、市議会議員の平均議員報酬は月額42.5万円と発表されています。
市議は、月々の議員報酬に加えて、民間企業のボーナスに該当する「期末手当」も支給されます。
期末手当を平均的な水準である月収4か月分とすると、市議の平均年収は約680万円という計算になります。
ただし、市議の議員報酬は自治体の規模、つまり人口に比例するため、実際の収入事情は、上記の通りかなりの差が生じています。
もっとも報酬が髙い京都市議では月収100万円近い一方、その5分の1、月収20万円ほどの市議もいるため、同じ市議でも収入事情はばらばらといえるでしょう。
市議会議員の手取りの平均月収・年収・ボーナス
市議の年収の全国平均をもとにして額面金額を計算すると、月収は42.5万円、ボーナスは170万円となります。
そこから、国民年金保険料、国民健康保険料、源泉所得税が引かれて、月の手取り金額は約33万円です。
同じようにボーナスについて計算すると、手取り金額は約136万円となります。
ボーナスはまだしも、月の手取りに関しては、そこまで高い水準とはいえません。
一般的な会社員であれば、社会保険料などは企業と折半になりますが、市議は全額自己負担となってしまうため、手取りが減ってしまうのです。
市議会議員の初任給はどれくらい?
市議会議員の給料は、基本的に就任当初からずっと変わらないため、上記の数字がそのまま初任給の金額です。
議長や副議長といった要職につけば、職務負担を考慮して約2割ほど議員報酬が増えますが、市議会議員は会社員のような年次昇給はありません。
むしろ、近年は財政状況が悪化している自治体が多いこともあって、議員報酬は年々削減されていく傾向にあります。
今後は一般的な仕事とは真逆で、初任給が1番高く、それから徐々に給料が右肩下がりに減っていくという可能性もあるかもしれません。
議長の年収は?
地方自治法により、議員の中から議長、副議長一人を選挙することになっており、議長は市議会を代表し、会議を主宰する立場となります。
基本的には選挙で決められますが、まれに立候補制を導入している自治体もあります。
議長や副議長といった要職につくと、職務負担を考慮して約2割ほど議員報酬が増える傾向にあります。
例として石川県金沢市議会の場合、議員の月額報酬は 700,000円であるのに対し、議長の月額報酬は 810,000円となっています。
また、埼玉県さいたま市議会の場合、議員の月額報酬が807,000円であるのに対し、議長の月額報酬は977,000円となっています。
期末手当なども加算して計算すると、議員の年収は13,545,494円、議長の年収は16,398,944円となります。
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市議会議員の福利厚生の特徴
市議会議員の福利厚生は、ほとんどないといえます。
市議に限った話ではなく、政治家は「個人事業主」という色合いが強く、組織からなんらかの恩恵を受けられる対象ではありません。
厚生年金にも加入できませんし、労災保険も適用されません。
選挙で負けるなどして辞職する際も、退職金は一切支給されませんし、失業手当ももらえません。
2011年までは退職年金制度がありましたが、市民からの厳しい声を受けて廃止されました。
さまざまなことに対する「備え」を自分でしなければならないのは、市議の大変なところのひとつといえるでしょう。
市議会議員の給料・年収の特徴
ここからは、市議会議員の給料・年収について、さらに詳しく特徴を説明します。
特徴1.実際に使えるお金はかなり少ない
市議会議員の収入事情の最大の特徴は、額面金額に対して、実際に自由に使えるお金がかなり少ないということです。
市議として活動するためには、議員事務所の家賃、水道光熱費、通信費、スタッフの人件費など、さまざまなお金がかかります。
市議は、税金などを差し引かれて手元に残ったお金から、これらの費用を支払わなければなりません。
そのうえ、4年に1度は必ず市議会議員選挙があり、選挙戦を戦うための資金も貯めておかなくてはなりません。
自身の将来のことを考えると、万一に備えて、退職金代わりとなるぶんのお金や老後の資金も貯めておきたいところです。
そうやって考えていくと、いくら額面の議員報酬が多くても、好きに使えるお金はごくわずかです。
特徴2.給料とは別に「政務活動費」が支給される
市議には、議員報酬とは別に、「政務活動費」が支給されます。
これは、議会・会派のための調査研究、移動、会議、広報などに使用できるものです。
政務活動費があることによって、市議は議員活動にかかる費用の一部を公費で賄うことができます。
ただし、使用する目的は厳密に定められているうえ、市の財政状況悪化によって、議員報酬と同様に削減される方向にあります。
自治体によっては月1万円~2万円というところもあり、市議として精いっぱい活動しようと思うと、まったく足りないという声も聞かれます。
不足分はポケットマネーで賄っているという声も多く聞かれるなど、市議の生計はますます厳しくなります。
特徴3.兼業による収入を得ている人が多い
ここまで見てきたとおり、市議会議員は決して金銭的に余裕のある職業ではありません。
とくに小さな自治体の場合、市議の収支はマイナスになってしまうこともあるなど、議員報酬だけでは生活できないというケースも散見されます。
それにもかかわらず、「市議=裕福」というようなイメージが根強くあるのは、市議の多くが兼業で働いており、複数の収入源をもっているからです。
公務員は副業禁止ですが、市議は例外的に兼業が許可されています。
全国市議会議長会の統計によれば、市議の兼業比率はおよそ50%ほどです。
具体的な兼業の内容としては、農業、林業、販売などの小売業、建設業、司法書士、行政書士、土地家屋調査士など、実に多種多様です。
これから市議を目指す人については、どんな兼業をして生活設計を立てていくかということについても、考えておいたほうがよいかもしれません。
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他の政治家の年収はどれくらい?
ここでは、市議会議員以外の代表的な政治家の年収について紹介します。
収入比較をするのに参考にしてください。
県議会議員(都道府県議会議員)の場合
県議会議員(都道府県議会議員)の給与は、月額平均約79万円、年収平均は1369万円です。
しかし市議同様に自治体によってかなりの開きがあり、70万円を割っている県議がいる一方、都議は100万円を超えています。
また、それに追加し政務活動費や費用弁償が支払われます。
国会議員の場合
国会議員の給料は、法律で月額129万4000円と規定されており、ボーナスを上乗せした議員の年間報酬は、衆議院議員が約1977万円、参議院議員が約2031万円です。
各議院の議長になると月に217万円、副議長は月158万4,000円となります。
また報酬とは別に、議員活動を円滑に行うための各種費用が支給され、初当選議員でも合計で年間3000万円以上の支給があるといわれます。
議員秘書の場合
議員秘書の給料は、公設秘書の場合、在職年数や年齢によって定められた等級別の給料が国から支払われます。
年収の目安は政策担当秘書でおよそ730万円~1,080万円、第一秘書はおよそ700万円~1,070万円、第二秘書はおよそ540万円~800万円ほどです。
その一方、私設秘書の場合は、国ではなく各議員の事務所から給料が支払われるため、年収300万円~400万円と公設秘書よりも低収入となることが多いようです。
市議会議員の年収の高い地域はどこ?
市議会議員定数・報酬に関する調査結果(令和5年12月31日現在)によると、市議会議員の年収が高い地域は、多くが政令指定都市です。
神奈川県横浜市では報酬年額1,635万円、兵庫県神戸市が1,590万円、広島県広島市は1,486万円となっています。
また、福岡市や北九州市、京都市なども年収が高めを推移しています。
なお、区議会議員になりますが、東京23区で最も報酬年額が高かったのは、 渋谷区の1,092万円で、続いて大田区の1,092万円、千代田区の1,082万円となっています。
一方で、北海道夕張市では月額報酬が18万円程度と、かなり低めとなっている地域もあります。
市議会議員の年収が安いともいわれる理由は?
総務省の資料によると、政令指定都市では月額報酬77万円余り、1000人以下の自治体では15万円余りと、市議会議員の報酬は自治体による格差が非常に大きいといえます。
これにより、市議会議員は年収が安いともいわれるのです。
市議会議員は選挙で落選してしまえば失職してしまいますし、ほかに収入源がなければ無収入になってしまいます。
安定した職業とはいえない立場であるのに、会社員のような社会保障もないため、年収が低いと感じながら活動している議員も多いようです。
近年では市議会議員のなり手不足もあり、若い世代でも議員を目指せるよう、議員報酬を引き上げるべきだという声もあります。
一方で、市民からはなかなか理解を得られないため、改善はむずかしいのが現状です。
市議会議員が収入を上げるためには?
市議会議員の議員報酬は条例によってあらかじめ決まっており、自分の努力ではどうすることもできません。
したがって、市議が収入を上げる方法としては、3つほどしかありません。
1つめは、再選を重ねてベテラン市議となり、議長や副議長などの役職者になることです。
平の議員報酬と議長報酬ではおよそ2割ほどの差がありますので、年収にして100万円単位のアップが期待できます。
2つめは、政令指定都市など、できる限り大きな自治体の市議になることです。
都道府県をまたいで別の市議になるのはハードルが高いとしても、同じ県内の地方都市から県庁所在地に移動するのは十分に考えられるプランです。
3つめは、兼業の仕事を、より割のいいものに変えることです。
ただ、兼業のほうに注力しすぎるのは市議としては本末転倒となるため、バランス感覚が重要になるでしょう。
「市議会議員の年収・給料」まとめ
市議会議員の年収や報酬は自治体によって大きく違います。
高額な収入を得ている市議会議員がいる一方で、報酬が著しく低かったり、政務活動費が支払われなかったりする市議会議員もいます。
報酬が少ない場合、市議自らが活動費を補わなくてはならないため、生活が厳しいと感じている市議会議員も多いようです。
若い世代が市議会に参加できるよう、報酬を引き上げする動きもありますが、現状ではなかなか市民の理解を得られていません。