産業カウンセラーになるには
産業カウンセラーになるまでの道のり
産業領域で活躍するカウンセラーになる方法はひとつではありませんが、「産業カウンセラー」という呼称を用いて働くには、「一般社団法人 日本産業カウンセラー協会」が認定する「産業カウンセラー」の資格を取得する必要があります。
その後、産業カウンセラーを募集する企業等の求人へ応募し、採用されることで、産業カウンセラーとしてのキャリアをスタートします。
ただし、カウンセリングの仕事全般にいえることですが、実務未経験者を対象とする求人はさほど多くありません。
非常勤やパートとして勤務して経験を積んでいったり、産業カウンセラー以外の心理系資格(「臨床心理士」など)まであわせて取得し、専門知識を深めていったりするなかで、正社員や常勤で働ける場所を見つける人も多いのが現実です。
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産業カウンセラーの資格・難易度
産業カウンセラーに資格は必要?
産業領域で働くカウンセラーは、医師や弁護士のように国家試験に合格して免許や資格を取得しなければ就けない職業ではありません。
資格がなくてもカウンセリング業務に携わることは、不可能ではないのです。(ただし、「産業カウンセラー」の呼称を使用できるのは、産業カウンセラー資格を取得した人のみです)
しかしながら、産業カウンセラーの仕事をするには、カウンセリングスキルはもちろんのこと、労働現場の実態やよくある課題、キャリア形成、メンタルヘルスなど、多様な専門知識を身につけていなくてはなりません。
したがって、基礎的な知識を習得するためにも「産業カウンセラー」の資格を目指すのは必須と考えておいたほうがよいでしょう。
資格試験には受験資格がある
日本産業カウンセラー協会が認定する産業カウンセラー資格は、大きく2種類あります。
・産業カウンセラー
・シニア産業カウンセラー(産業カウンセラーの上位資格)
それぞれ、該当する資格試験を受験し、合格して日本産業カウンセラー協会に登録することで「産業カウンセラー」という呼称で活動できるようになります。
産業カウンセラー試験の受験資格として、以下のいずれかを満たす必要があります。
・産業カウンセラー養成講座を受講すること
・大学院研究科において心理学や人間科学等を修了し、所定の科目で必要な単位数を取得していること
産業カウンセラー養成講座は、受講開始時点で「満20歳以上」であれば受講可能で、学歴に制限はありません。
「6か月コース」と「10か月コース」があり、通学とe-Learning、ホームワークなどの方法で、産業カウンセラーに求められる知識とスキルを習得していきます。
なお、シニア産業カウンセラーは、産業カウンセラーを取得している人のみ受験可能です。
産業カウンセラー試験の受験資格についての詳細は、以下のページから詳しく確認できます。
産業カウンセラーになるための学校の種類
産業カウンセラー資格試験を目指す人の多くが、「産業カウンセラー養成講座」を受講するルートによって、受験資格を得ています。
この養成講座は「20歳以上」という年齢制限以外に大きな受験要件がないため、どのような学校で学んできた人でも、産業カウンセラーになれるチャンスがあります。
なお、以前は養成講座を受講せずとも、心理系や人間科学系などの大学卒の人で、所定の科目を修得していれば資格試験が受けられました。
しかし、現在では「学士(四年制大学卒)」の受験制度は撤廃されており、大学院で心理学や人間科学等の専門的な勉強をしている人でなければ、受験資格としては認められないものに変わっています。
先に挙げた通り、養成講座ルートで産業カウンセラー資格を取得することも可能ですから、大学院へ進むことが必須ではありません。
とはいえ大学、大学院で心理学を専門的に学ぶことで、現場に出たときにも役立つ知識・スキルが身につき、さらに産業カウンセラー以外の資格取得まで目指せる可能性も広がります。
こういった特徴も踏まえて、どのルートで産業カウンセラーを目指すか考えるとよいでしょう。
産業カウンセラーになるための学校(大学・養成講座・通信講座)
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産業カウンセラーに向いている人
人の悩みに寄り添える人
産業カウンセラーは、カウンセリングの場で相談者と1対1で向き合って、相手の不安や悩みを聞きます。
誰でも他人に自分の悩みや問題を話すのは勇気がいることです。
相談者に信頼してもらえなければ本当の思いを引き出すことはなかなかできず、カウンセリングも成功しません。
そのため、産業カウンセラーは困っている人、悩んでいる人に心から寄り添い、本気で助けたいと思える人に向いている仕事です。
信念をもって仕事に向き合える人
産業カウンセラーのもとに寄せられる相談には、簡単に解決させるのが難しいものも含まれます。
企業内で働く場合、ときには会社と相談者の板挟みになることもあるかもしれません。
そんなとき、正しい解決方法を探るためには、客観的かつ冷静な視点を忘れず、プロのカウンセラーしての立場を貫くことです。
すぐに私情をはさんでしまうようだと、産業カウンセラーの仕事を続けるのは難しいかもしれません。
傾聴スキルとメンタルヘルスの専門知識
産業カウンセラーに求められるスキルはさまざまなものがありますが、とくに「傾聴」のスキルと、「メンタルヘルス」の専門知識は不可欠です。
傾聴は、相談者の話にしっかりと耳を傾けることで、カウンセラーにとっては最重要といえるスキルです。
また職場で起こりうる問題や、働く人のストレスケアなどに関する知識も、しっかりと習得しておくことが大切です。
産業カウンセラーのキャリアプラン・キャリアパス
産業カウンセラーとして現場で働き始めたら、さまざまなケースに対応しながら経験を積んでいきます。
学校や講座で学んだことと現実の問題では異なる部分も多いため、あらゆる経験が財産になるといっても過言ではありません。
産業カウンセラーは企業などへ正社員として就職して働く人がいる一方、非常勤で他の職場を掛け持ちしたり、独立して働いたりする人もいます。
独立する場合、自分の相談所を開設して仕事に悩む人からの相談を受け付けたり、企業に出向いてカウンセリングや社内のコミュニケーションを活発にするための研修をしたりするのが一般的ですが、それ以外にも講演活動や本の執筆など、多様な活躍の仕方が考えられます。
また産業領域だけではなく、教育やキャリアなど知識を広げていくことで、より多くの人のカウンセリングに携わることも可能です。
産業カウンセラーを目指せる年齢は?
産業カウンセラーになるにあたって年齢制限はありません。
専門性が重視される職業であることから、年齢が若いほうが有利ということもさほどありません。
むしろ社会経験を積むことでより多くの人の多様な悩みを理解しやすくなる面もあるでしょう。
ただし、産業カウンセラーは非常勤の求人が多く、その場合は給料や待遇面でやや不安が残ります。
若いうちに実務経験を積んでおかないと、年齢が上がってからも安定した働き方ができない可能性があります。