漁師になるには? 必要な資金や資格、漁業権の取得方法について解説
しかし、沿岸部で小型船の漁師として個人で仕事をしていくためには、小型船舶操縦士免許や海上特殊無線技士免許の取得、商売をするための漁業権が必要です。
この記事では、漁師になるために必要なこと・資金について解説します。
漁師になるまでの道のり
大型船で出ていくような沖合・遠洋漁業の乗組員になるのであれば、個人として特別な資格は必要ありません。
各地の漁業協同組合(漁協)の乗組員として雇用されれば、すぐにカツオやマグロを獲る漁師として働きはじめられます。
遠洋漁業の乗組員の募集は、各地の漁業協同組合(漁協)などで行われているので、インターネットなどで求人情報を調べてみるとよいでしょう。
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漁師の資格・難易度
漁師として必要な免許
沿岸部で小型船の漁師として個人で仕事をしていくためには、いくつかの免許や権利が必要になります。
たとえば、「小型船舶操縦士免許」という20トン未満の小型の船を操縦できるようになる免許です。
- 海域内のルール
- 気象の知識
- 救助の方法
この試験に合格することで船を安全に操縦できるとみなされ免許を与えられます。
免許がなければ自分で船を動かせないため、個人事業主として船をもって働きたい人にとっては、小型船舶操縦士の免許は必須と言える免許でしょう。
また、海に出れば同じ漁業者との情報交換が非常に重要になるので、連絡を取り合うための海上無線の技術も欠かせないため、漁師になるためには「海上特殊無線技士免許」を取得することも大切です。
漁業権
漁に出るためには「漁業権」も必要です。
海はみんなのものではありますが、乱獲を防止したり漁業者の最低限の利益を守ったりするために、商売として漁ができるのは「漁業権」がある人だけです。
この「漁業権」は、各地の漁協に加盟して売り上げの一部等を支払うことで取得できます。
漁協によって取得方法は若干違いがあるため、漁師を目指すのであれば、まずは近くの漁協に問い合わせて情報収集してみましょう。
漁師になるための学校の種類
漁師として働くために、学歴が問われることはまずありません。
しかし、最近では漁師になるための勉強をしながらも高校卒業の学歴は持っておきたいと考える人も増えており、中学卒業後に「水産高校」へ進学する道があります。
- 水産業に関する技術や知識
- 漁業の経営や船の操縦
- 潜水について
ただし、水産を専門に勉強していなくても、漁師を目指すことは十分に可能です。
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漁師の雇用形態
多くは個人事業主として働く
沿岸漁業に多く見られるような家族規模での漁業は、基本的に自営業とみなされ、個人事業主として働きます。
家族の一人が漁業経営者とされ、それ以外の家族は漁業従事者として扱われます。
自営業で漁師を行う場合は、漁具や船などをすべて自分でそろえなければならないため莫大な費用が掛かるものの、魚が取れた分だけ収入につながるため、仕事をすればした分だけ自分の収入が増えるという魅力があります。
会社に雇用される場合も
漁協や漁業会社に雇用され、サラリーマンと同じような形態で働くこともできます。
沖合漁業や遠洋漁業では、大型船舶を所有する水産会社に雇用されて漁に出るというスタイルが一般的です。
会社に雇用されて働く場合、会社の船や漁具を操業に使えるので、
- 漁師がはじめてという人
- 転職で漁師を目指す人
でもはじめやすいというメリットがあります。
ただし、一般的な漁師とは違い固定給のため、安定した生活を得られる一方で、どれだけ働いてもどれだけ魚が獲れたとしても基本的には定められた金額しかもらうことはできません。
アルバイト・パートの漁師
漁師の短期アルバイト
「漁師の仕事に興味があるので、少しでも現場で働いてみたい」という人たちに人気なのが、漁師のもとでの短期間アルバイトです。
時給や日給で雇われることが多く、期間は数日だけのものから数ヶ月単位のものまでさまざまです。
漁業は年間を通して仕事量に波があるものの、とくに忙しくなるのは魚の旬の時期で、
- 仕掛けを用意する
- 網を引くのを手伝う
- 釣った魚を選別する
といった際にたくさんの人手が必要になるので、この時期の短期アルバイトというのが一番多いようです。
アルバイトをする場合、特別な資格や免許は必要ありません。
「船酔いしない人」「体力がある人」という条件のところも多いので、とくに漁業の経験がなくても雇ってもらうことが可能です。
基本的に時給はそれほど高くありませんが、漁師の仕事を間近に見るという貴重な経験ができます。
転職前のアルバイトは大切
漁師のアルバイトは、漁師への転職を考えている人にとって、重要な経験になります。
漁師への転職は船や漁具の準備で多額の資金がかかるため、転職してから「やっぱり漁師には向いていなかった」といっても遅いのです。
適性を見極めるためにも、転職前にアルバイトをして仕事内容を知ることが大切です。
さらに漁師のアルバイトには、その土地の漁師の人たちとの関係作りのきっかけができるというメリットがあります。
農業の場合は、自分の土地を買って農作物を作り独自に販売すればだれでも新規参入ができるものの、漁業で新規参入する場合は漁業協同組合に加盟して、「漁業権」を取得しなければ漁に出られないのです。
そのため漁師への転職をめざす場合は、漁協の人たちとの信頼関係を作ることが非常に大切です。
アルバイトを通して早めにその土地の漁師の人たちになじめれば、転職の相談に乗ってもらったり、漁協への仲間入りを応援してもらえたりと、よりスムーズに転職を実現させられるでしょう。
漁師に向いている人
ほとんどの漁師は、一日の多くの時間を船の上で過ごすことになります。
船は漁師にとって大事な職場であるため、そこで長時間過ごすことを心地よく感じられる人が漁師には向いています。
自然の中で思いきり体を動かしたいという思いが強い人であれば、漁師の仕事を楽しめるでしょう。
また、漁師は大自然を舞台に活躍する仕事であるため、気象学をはじめとする自然のしくみなどにも興味をもち、進んで知識を身につけようとすることも重要な要素となってきます。
漁師を目指せる年齢は?
漁師になるためには、学歴や試験は必要ありません。
年齢制限があるわけではないので、中学を卒業したばかりの16歳であっても、定年退職をしたばかりの60歳であっても、基本的には自分の意志次第でいつでも漁師になれるのです。
漁師になるための資金
漁の種類で異なる「必要資金」
漁師は、大きく分けると以下の2つがあります。
- 大型船の乗組員となって世界各地の海で漁をする「遠洋漁業」の漁師
- 沿岸部で日帰りの漁をする「沿岸漁業」の漁師
遠洋漁業の漁師になる場合
遠洋漁業の漁師になる場合、個人で船を操縦するわけではないので、船を用意したり操縦の免許を取得したりする必要はありません。
網や縄などの漁具も自分で用意する必要はないので、基本的には特別な資金がなくても体ひとつで飛び込むことが可能です。
沿岸漁業の漁師になる場合
沿岸漁業の漁師になる場合は、個人で小型船を操縦して漁に出ることになります。
漁師をしていた両親や祖父母から船を受け継げるという人はよいですが、新たに参入する場合は船を用意するのに500万円から1000万円程度かかります。
この他に、網や仕掛けなどの漁具を揃えるのにも数十万円は必要ですし、漁業協同組合で漁業権を獲得することも必要になってきます。
新規参入者には援助制度も
このように漁師の新規参入には多額の資金が必要になりますが、漁師の高齢化が問題になっている近年では、各地の漁協で新規参入者を援助したり独立支援をしたりする制度ができています。
- 中古の船や漁具を格安で譲ってもらえる
- 住宅を提供してもらえる
こうしたさまざまな補助が受けられるので、新規参入をめざす人はこうした制度をうまく利用することが大切です。
資格取得の費用
道具以外にも、小型船を操縦するためには「小型船舶操縦士免許」という20トン未満の小型の船を操縦できるようになる免許が必要です。
- 海域内のルール
- 救助の方法
- 船舶の構造
- 距離や速力の測り方
- コンパスの使い方
- 天気図など気象の知識
についてで、試験に合格することで免許を取得できます。
受験の費用が20,000円~30,000円ほどかかります。(級によって金額は異なる)
さらに、海で同じ漁業者との情報交換をするために必要な「海上特殊無線技士免許」を取得するためには、受験費用が8,000円~15,000円ほどかかります。
漁師になるには?のまとめ
沖合・遠洋漁業の乗組員になるのであれば、個人として特別な資格は必要ありません。
沿岸部で小型船の漁師として個人で仕事をしていくためには、「小型船舶操縦士免許」「海上特殊無線技士免許」「漁業権」が求められます。
新規参入者には援助制度が設けられていることも多いため、まずは漁業協同組合などに問い合わせたり、インターネットで調べてみたりするとよいでしょう。