プラントエンジニアの仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「プラントエンジニア」とは
製品製造を行う工場設備の設計や建設、メンテナンスに携わる仕事
プラントエンジニアとは、原材料や製品の製造を行うプラント(工場設備)の設計や建設、メンテナンスなどを行う人のことです。
プラントにはさまざまな種類があり、たとえば火力・水力発電を行う「発電プラント」、医薬品やプラスチック生産を行う「産業プラント」、下水処理や海水の淡水化を行う「水処理プラント」などがあります。
これらの設備においてプラントエンジニアは、新しいプラントの建設や稼働中のプラントの維持管理などに携わります。
プラントはいずれも大規模な施設であるため、一人のプラントエンジニアがすべての工程を任されるわけではありません。
機械・科学・土木・電気などあらゆる分野に精通したプラントエンジニアが存在し、そうした人たちと協力しながら仕事を進めていきます。
近年は海外でのプラント需要が伸びているため、「グローバルに活躍したい」と考える人にもおすすめの職業といえるでしょう。
なおプラントエンジニアは専門知識が必要な仕事であることから、基本的には「大学の理工学部」もしくは「機械系の高等専門学校」を卒業していることが応募の前提条件となっています。
「プラントエンジニア」の仕事紹介
プラントエンジニアの仕事内容
膨大な種類の装置を組み合わせてプラントを安定稼働させる
そもそもプラントとは、工業活動に必要な素材や資源を作り出す工場設備や生産設備全般を指します。
電気・ガス・水などのエネルギー分野のプラントや、ガソリン・プラスチックなどの石油化学製品を製造するプラント、そのほかにも食品や医薬品などに関するプラントなどその種類はさまざまです。
これらの設備において電気設備・配管・制御システムといった膨大な種類の装置を組み合わせ、プラントを安定稼働させていくことを「プラントエンジニアリング」と呼びます。
そのプラントエンジニアリングを担当する技術者がプラントエンジニアです。
プラントエンジニアと一口に言っても、以下のように所属する業界によって業務内容は大きく異なります。
・機械系プラントエンジニア:プラント全体を設計・構築し、さらに工場に設置する機械の設計や開発も行う
・電気系プラントエンジニア:プラントへ電力を供給するシステムを作る
・土木系プラントエンジニア:プラントに付随する施設や道路の設計・施工を行う
・化学系プラントエンジニア:石油や鉱物などの原料を製品にするためのプロセスを構築する
所属企業によってプラントの企画段階から建設、保守管理までを一括して請け負う場合もあれば、それらの工程の一部のみを担当する場合もあります。
プラントエンジニアになるには
大学の理工学部を卒業していることが応募の前提条件
プラントエンジニアは専門的な知識と技術を必要とする職種です。
そのため基本的には、機械系、化学系、土木・建築系、電気・制御系、情報・システム系などの大学の理工学部を卒業していること、もしくは機械系の高等専門学校を卒業していることが応募の前提条件です。
企業によっては「工業高校出身者も応募可」としている場合もありますが、上記の条件に比べれば数は少ないでしょう。
プラントエンジニアの代表的な就職先には、プラントメーカーやプラント設計会社・施行会社などが挙げられます。
プラントは作る生産物によってさまざまな種類があり、それぞれの業界・職場によって求められる知識やスキルは異なります。
「プラントエンジニアとしてどの業界で働きたいのか」「どんな仕事に携わりたいのか」といった点をよく考えたうえで進学先を選ぶとよいでしょう。
また資格に関しては、プラントエンジニアになるために必須の資格というものはありません。
ただし持っていれば就職時に有利な資格は存在します。
たとえば、設計や製図を行うときに使用するツール「CAD」の技量を認定する建築CAD検定や、海外勤務の機会が増えてきていることからTOEICのスコアなどもアピール材料として使えます。
こちらも職場によって重宝される資格が異なるため、理想とする就職先を考えながら取得すべき資格を検討していきましょう。
プラントエンジニアの学校・学費
大卒・高専卒以上の学歴が求められる
大手のプラントエンジニアリング企業を目指す場合には、基本的には大卒・高専卒以上の学歴が求められます。
とくに機械工学や材料化学、土木建築、電気工学などの理工学部出身の人が数多く活躍している業界です。
専門性が求められる仕事であることから、大学院を卒業しているプラントエンジニアも少なくありません。
理工学部の大学にかかる学費は初年度で150万円〜180万円くらいが相場であり、文系の学部に比べて少し高くなります。
土木系プラントエンジニアを目指すなら「建築学部」、電気系プラントエンジニアを目指すなら「電気工学部」など、希望する分野と合致する学部を選んでいきましょう。
プラントエンジニアの資格・試験の難易度
求められる資格は職場や専門領域によって異なる
プラントエンジニアを目指す際に求められる資格は、就職先の職場や業界によって大きく異なります。
ここでは、プラントエンジニアへの就職に役立つ代表的な資格をいくつか紹介します。
建築CAD検定
建築CAD検定は「一般社団法人全国建築CAD連盟」が実施する、「CAD」を使った建築用図面を描く技量を測る試験です。
CADとは設計図面を作成するときに使うコンピュータソフトのことで、図面の読解を行う際にもCADの知識は必要になるでしょう。
試験は准1級・2級・3級・4級と分かれており、いずれも受験資格はありません(4級は高校での団体受験のみ)。
機械設計技術者試験
機械設計技術者試験は「一般社団法人日本機械設計工業会」が実施しています。
機械設計技術者の技術力を総合的に認定する試験であり、とくに機械系プラントエンジニアへの就職を考えている人におすすめです。
試験は1級〜3級まであり、3級であれば実務経験に関係なく誰でも受けられます。
電気工事施工管理技士
電気系プラントエンジニアへの就職を目指すなら、「一般財団法人建設業振興基金」の実施する電気工事施工管理技士が役立つでしょう。
こちらは国家資格であり、資格取得によってプラント建設に必要な「電気工事における施工計画の作成」「電気工事の監督業」などを行えるようになります。
試験は1級と2級があり、実務経験や指定の免許などがなければ受験できません。
土木施工管理技士
土木施工管理技士は「一般社団法人全国建設研修センター」が実施する国家資格の一つです。
公共工事の主任技術者または監理技術者になるために必須の資格であり、土木系プラントエンジニアを目指す人におすすめです。
試験は1級と2級に分かれ、それぞれ実務経験や学歴などの受験資格が指定されています。
プラントエンジニアの給料・年収
業界全体的に年収は高め
求人サービスなどの調査データによると、プラントエンジニアの平均年収は500万円〜700万円程度になると考えられます。
大企業であれば年収800万円以上、なかには年収1,000万円以上のプラントエンジニアもいます。
このようにプラントエンジニアの年収は高めと言えますが、その理由の一つが専門的な知識・スキルの求められる仕事だからです。
食品・医薬品・石油・電気などプラントで取り扱うものによって必要な知識は異なり、多くの人は大学の理工学部などで基礎を身につけてから就職します。
またプラントは24時間稼働するものもあり、シフトを組んで不規則なスケジュールで働いたり、プラント工場のある地域へ長期出張を任されたりするケースもあります。
専門知識だけでなく体力や精神力も求められる仕事であるため、他業界と比べても給料が高額になるケースが多いのです。
なお日本国内ではプラントを建設できる場所は限られているため、近年は海外での受注も増えてきており、それにともない海外赴任を任されるプラントエンジニアも少なくないでしょう。
海外プロジェクトに参加する場合は、海外赴任手当などによってさらに給料は上がりますが、英語などの外国語スキルや現地環境への対応力が必要になります。
プラントエンジニアの平均年収・月収・ボーナス
厚生労働省の令和5年度賃金構造基本統計調査によると、プラントエンジニアの平均年収は、41.6歳で612万円ほどとなっています。
・平均年齢:41.6歳
・勤続年数:14.3年
・労働時間/月: 165時間/月
・超過労働: 16時間/月
・月額給与:394,300円
・年間賞与:1,392,800円
・平均年収:6,124,400円
出典:厚生労働省「令和5年度 賃金構造基本統計調査」
※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。
プラントエンジニアの勤務先の規模別の年収(令和5年度)
プラントエンジニアの年収は、勤務先の規模が大きくなるとやや高くなる傾向があります。
10〜99人規模の事業所に勤めるプラントエンジニアの平均年収は501万円、100〜999人規模は580万円、1,000人以上の規模では671万円、10人以上規模の事業所平均は612万円となっています。
上記グラフの基タイトルは「機械技術者」で機械設計など他職業を含むデータです。
※賃金構造基本統計調査より作成。本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。
プラントエンジニアの勤務先の年齢別の年収(令和5年度)
プラントエンジニアの年収を年齢別に見ると、年齢の上昇にしたがって、年収も上がっています。最も年収が高い世代は、55~59歳の770万円です。
全年代の平均年収は612万円となっています。
上記グラフの基タイトルは「機械技術者」で機械設計など他職業を含むデータです。
プラントエンジニアの現状と将来性・今後の見通し
海外で活躍できる人材へのニーズが高まっている
日本は土地面積が狭いことから、プラントの建設数には限界がきていると言われています。
そのためプラントの新設に関わる仕事よりも、すでにできあがっている施設のメンテナンスや改修業務に関わるプラントエンジニアが多くなっています。
一方海外については、発展途上国である東南アジアや南米、石油資源が豊富な中東などでプラントの建設需要が次々と生まれている状況です。
こうした国々からプラント業務を請け負う日本企業も増えてきているため、今後は海外で活躍できるプラントエンジニアへのニーズがさらに高まっていくでしょう。
プラントエンジニアの就職先・活躍の場
代表的な就職先は、プラントメーカーやプラント設計会社・施行会社
プラントエンジニアの代表的な就職先としてまず挙げられるのがプラントメーカーです。
プラントメーカーとはプラントの設備や機械を製造する会社のことで、プラントの設計から製造、運用保守までを一貫して担当している会社も珍しくありません。
またプラント設計会社や施行会社も、プラントエンジニアの就職先の一つです。
これらはプラントメーカーからプラント構築の依頼を受注し、会社によってプロジェクト全体を一括で請け負う場合と、一部の工程だけを請け負う場合に分かれます。
そのほか、本来はプラントメーカーへの発注者であるエネルギー企業や化学メーカー、重工メーカーなどが自社で「プラントエンジニアリング事業部」を設けているケースもあり、そこで活躍するプラントエンジニアも少なくありません。
このようにプラントエンジニアの就職先は多岐にわたりますが、これに加えて所属する業界についてもさまざまな選択肢があります。
代表的なものとしては、食品工場や製薬工場などの「産業分野」、石油精製工場や発電所などの「化学・エネルギー分野」、水道・ゴミ処理施設などの「環境分野」といった業界が挙げられるでしょう。
それぞれの就職先で求められる知識も大きく異なるため、大学の専攻を選ぶ段階から「どんなプラントエンジニアを目指したいのか」をしっかり考えておく必要があるでしょう。
プラントエンジニアの1日
他分野の技術者と情報交換しながらプロジェクトを進める
プラントエンジニアの1日は、所属する会社の種類や業界などによって大きく変わります。
ここでは、プラントメーカーで働く機械系プラントエンジニアの1日を紹介します。
プラントエンジニアのやりがい、楽しさ
社会に貢献している実感を得られやすいこと
プラントエンジニアが手がけるプラントにはさまざまな種類がありますが、たとえば発電所や石油精製工場、ゴミ処理施設などは人々の生活に欠かせない重要なインフラです。
世の中に欠かせないプラント事業を通して「社会に貢献している実感」を得られやすく、その部分に多くのプラントエンジニアがやりがいを感じています。
また一つのプラントを立ち上げるにあたっては計画から建設まで長期間を要し、関わる人員も多い大規模プロジェクトとなります。
多くの困難を乗り越えてプラントが動き出したときは、日常では味わえない大きなやりがいを感じられるでしょう。
プラントエンジニアのつらいこと、大変なこと
ワークライフバランスがとれない時期もあること
プラント建設のプロジェクトが決定すれば、クライアントの納期に間に合わせるために書類や図面の作成、必要な機器の購入などを迅速に進めなければなりません。
建設工事が始まれば天候によって工事ができない日もありますが、その場合は別の日に埋め合わせをする必要があるでしょう。
このように多忙な日々が続き、なかなかワークライフバランスのとれない時期があることも覚悟しなければなりません。
また建設場所が自宅から離れている場合は現地に常駐して仕事にあたるケースもあり、慣れない土地での生活を長期間求められることもあるでしょう。
プラントエンジニアに向いている人・適性
手に職をつけたいと考える人
プラントエンジニアは専門的な知識・スキルの求められる仕事であり、就職後も自分が担当する領域について勉強し続けていく姿勢が求められます。
その分、知識と現場経験の備わったプラントエンジニアはさまざまな会社から重宝される存在となるため、手に職をつけたいと考える人にはおすすめの仕事です。
このように職人気質の人はプラントエンジニアに向いていますが、一方でコミュニケーション力も必須となります。
プラントの建設・管理は多くの関係者と協力しながら行うため、コミュニケーションがうまく取れていないと設置ミスや事故発生の原因となってしまうこともあります。
プラントエンジニア志望動機・目指すきっかけ
大規模プロジェクトに携わりたい
プラントエンジニアは産業分野やエネルギー分野において、巨大な工場設備を作り上げていく仕事です。
そのため「大規模プロジェクトに携わりたい」「地図に残るような大きな仕事をしたい」といった理由でプラントエンジニアを目指す人が多くみられます。
また「グローバルな舞台で働きたい」と考え、海外赴任のあるプラント企業を希望する人もいます。
海外でのプラント業務は発展途上国の経済発展につながるケースもあるため、世界規模で人々の生活をより良くしたいと考える人にも向いている仕事でしょう。
プラントエンジニアの雇用形態・働き方
正社員での雇用がもっとも多い
プラントエンジニアの雇用形態については正社員がもっとも多く、その次に契約社員が多い状況です。
プラント建設はどれも大規模プロジェクトで長期間を要し、また一つのミスが重大事故につながる可能性のある仕事です。
そのため必要な人員は社員という立場で雇い、信頼できる従業員で業務を進めたいと多くの企業は考えています。
アルバイトやパートを募集しているプラント企業もありますが、その場合は警備や車両誘導、一般事務などがメイン業務となります。
プラントエンジニアの勤務時間・休日・生活
残業や休日出勤が続くタイミングもある
プラントエンジニアの勤務時間は企業によってまちまちですが、多くは8:00〜18:00の時間帯で実働8時間程度となります。
休日は土日祝日が休みの「完全週休2日制」をとっている企業が多く、一般的には有給休暇や夏期休暇、年末年始休暇なども設けられています。
ただしプラントエンジニアはクライアントありきの仕事であるため、納期が迫っている時期には長時間労働が必要なタイミングもあるでしょう。
残業や休日出勤も珍しくない業界であり、体力がなければ続けることの難しい仕事です。
プラントエンジニアの求人・就職状況・需要
求人は年間を通して出回っている
プラントは耐用年数(その資産が利用に耐える年数)が決まっているため、一定期間を過ぎたプラントは建て替えなければなりません。
さらに「定期修理」と呼ばれる、一定期間プラントの操業をすべて停止し、集中的に点検と修理を行わなければならないルールも法律によって定められています。
こうした建て替えや定期修理の際には多くのプラントエンジニアが必要となるため、求人は年間を通して出回っている状況です。
プラントに関わる職種は需要の底堅い仕事といえるでしょう。
プラントエンジニアの転職状況・未経験採用
中途募集は経験者採用が中心
プラントエンジニアの中途募集は「経験者採用」が中心です。
プラントエンジニアの業務に必要な専門知識・技術は習得に時間がかかるため、「基本的なスキルの備わっている人材を採りたい」と思うのは自然でしょう。
ただしなかには未経験者を採用し、社内研修で育てていくという方針の企業もあります。
その場合は前職に関係なく転職が可能ですが、多くは「理学部卒や工学部を卒業していること」といった応募条件が設けられています。