舞妓に特有の言葉遣いは? よく使われる「京ことば」も解説
この言葉遣いは、華やかな着物や日本髪とともに、舞妓の魅力のひとつとされています。
舞妓たちは、京ことばを通じて相手への敬意を示し、上品で気品溢れるコミュニケーションを築いています。
この記事では、舞妓に特有の言葉遣いやその背景にある文化、京ことばの特徴などについて解説します。
花街の共通語「京ことば」
舞妓という職業をイメージするとき、華やかな着物や凛とした日本髪、おしろいと紅で華やかに彩られた化粧などの外見が思い浮かぶでしょう。
しかし、その美しい容姿だけでなく、上品で独特な日本情緒を感じさせる特別な言葉遣いも舞妓の魅力の一つです。
舞妓が使用する言葉は「京ことば」として知られています。
京ことばは一般的な関西弁とは異なり、特有の表現が多く見られ、京都出身者でも舞妓や芸妓以外の人々にはなじみのない言葉が使われます。
京ことばははんなりとした上品な表現が特徴であり、その柔らかなイントネーションが独自の魅力を持っています。
女性らしい話し方としても知られています。
舞妓たちは京都出身者である場合もあれば、そうでない場合もありますが、舞妓や芸妓としての仕事を通じて座敷に登場する際には、生まれ育った地域の方言ではなく、京ことばを使用することが求められます。
このため、舞妓の修行には京ことばの習得も含まれています。
京ことばは舞妓や芸妓たちにとって、まさに花街の共通語であり、その独特の言葉遣いが芸舞妓たちの世界を彩っています。
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耳触りの良さが特徴
京ことばの特徴は、なんと言ってもその優しい響きにあります。
一拍の語を長音化して発音することが多く、会話がゆったりとしたテンポで進みます。
例えば「絵」「気」「字」といった一拍の単語を発音する際に、「エー」「キー」「ジー」という風になります。
このような長音が会話の中で散りばめられることで、会話はゆったりとしたテンポになります。
これによって耳に心地よく響く音が生まれ、何ともまろやかで優しい印象を感じさせるのです。
相手への思いやりの心が原点
京ことばの本質は、相手を思いやる婉曲な表現にあります。
相手を不快にさせずに、直接的な表現を避け、含みを持たせたり、控えめに意味を伝える方法を重視します。
自分の意見や感情を露骨に示さず、相手に対して暗に意図を伝えることが京ことばの特徴です。
たとえば、来訪を歓迎する際に「おこしやす」と言うと歓迎している意味ですが、「おいでやす」と言うと歓迎していないことを意味します。
これは京ことばを知らない人には理解しづらいものですが、知っている人にはその真意が伝わる仕組みです。
京ことばは穏やかな表現でありつつ、自己主張を達成するための言葉と言え、相手に気を遣いつつも、自分の意見や感情を伝える巧妙な方法が特徴です。
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親しみやすい尊敬語
京ことばの根底には思いやりの精神があり、その思いやりは尊敬の表現にも現れています。
「~しはる」という尊敬の助動詞は広い範囲に使われ、子どもであっても使用されます。
これは相手を尊敬し、会話を和やかに長く続けようとする気持ちから生まれています。
また、尊敬の対象は人間に限らず、食べ物や物、自然の物にも「お」や「さん」をつけて尊敬の意を示す表現があります。
たとえば「お豆さん」「お芋さん」といった呼び方をします。
これは、京都の伝統的な敬意の文化を反映しています。
この思いやりに満ちた京ことばは、舞妓や芸妓がお座敷で客をもてなす際にも表れ、彼女たちの心の豊かさと思慮深さを象徴しています。
よく使われる京ことば
おいでやす・おこしやす
おいでやす・おこしやすは、お客さまを迎える際に使われる言葉です。
初めてのお客様には「おいでやす」、常連のお客様には「おこしやす」を用いることが一般的で、後者の「おこしやす」がよりていねいな表現とされています。
おおきに
「おおきに」は、感謝の気持ちを表す京ことばです。
語源は「大きに(大変、大いに)有り難し」とされており、舞妓さんが「ありがとう」という表現をあまり用いない特徴があります。
かんにんえ
「かんにんえ」は、謝罪や許しを求める際に使われる京ことばの一つです。
誤った行動や発言に対して、謝意や反省の気持ちを表す表現であり、「ごめんなさい」や「失礼しました」などといった意味合いが含まれます。
この言葉は「堪忍」から派生したものとされています。
おきばりやす
「おきばりやす」は、置屋の女将さんが舞妓を送り出す際にかける言葉で、舞妓に対して励ましや応援の意味を込めて使われます。
この言葉は、「精を出して頑張って」といった意味合いを持ち、舞妓がお客様に向けて舞を披露する際に、力強く舞を踊りながら観客を楽しませるようにというエールを送る言葉とされています。
舞妓に特有の言葉遣いは?のまとめ
舞妓特有の言葉遣いは、京ことばと呼ばれる独自の方言によって表現されます。
これは舞妓たちの繊細で気品あるコミュニケーションの一つであり、相手への敬意や思いやりを伝える重要な手段です。
やわらかいイントネーションや尊敬表現が特長で、控えめで間接的な言葉選びが魅力です。
舞妓たちは、こうした言葉づかいを通じて京都の伝統や文化を守りながら、おもてなしの心を大切にしています。