建設コンサルタントの仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介
この記事では、建設コンサルタントの仕事内容や役割について、わかりやすく説明しています。
代表的な企業の特徴も紹介しているので、ぜひ就職先探しなどの際にお役立てください。
建設コンサルタントの仕事とは
建設コンサルタントは、インフラ設備や大規模建築などの工事を行う際に、工事の発注者であるクライアントに対して、建設に関するさまざまなアドバイスを行う仕事です。
たとえば地方自治体が新たにダムをつくることを計画し、その公共工事をゼネコンに発注しようとしているとします。
しかし、地方自治体の担当者は、あくまで行政を専門とする公務員であり、建設や工事のプロではありません。
そこで、建設コンサルタントは、役所に代わって、どんな規模のダムをつくるか、予算や工期はどれくらいか、周辺環境にどんな影響が生じるかといったことを調査し、事業計画を作成したり、助言を行ったりします。
「建設」という名称は付いているものの、コンサルタント自身が実際に建設作業を手掛けるわけではありません。
工事に関する調査や設計、施工管理などを行い、サポート役として事業を円滑に進めることが建設コンサルタントの役割です。
建設コンサルタントには、「河川・砂防および海岸」「港湾および空港」「電力土木」「道路」「造園」など、全部で21種類もの部門があり、それぞれに異なった知識やスキルが求められる専門性の高い仕事です。
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建設コンサルタントの業務の内容
ここからは、建設コンサルタントの具体的な業務内容を、4つに分けて紹介します。
計画業務
計画業務とは、クライアントが予定している工事概要について、本当に事業化できるのかを検討したり、問題点を洗い出したりして、具体的な予算や工期に落とし込んでいくことです。
クライアントが抱える課題をヒアリングし、それを解決するための最適なプランを立案するなど、完全にゼロから工事を企画し、プレゼンすることもあります。
調査業務
調査業務とは、大掛かりなインフラ設備などの工事を実施する前に、工事予定地とその周辺に関する情報を収集することです。
現地の地盤の固さや土壌汚染の有無、工事によって周辺住民が受ける騒音や振動のレベル、周辺の生態系に与える影響といったことを調べます。
その調査結果に基づいて、建造予定の建物の耐震機能を決めたり、周辺住民に迷惑がかからない施工方法に変更するなど、事業計画を策定します。
設計業務
設計業務とは、事業化が決定された後、どんな建造物をつくるかを示した図面を作成することです。
建設コンサルタント自身が図面を引く場合もありますが、設計事務所など外部業者への設計発注計画を立てたり、建築士が引いた図面を監修する場合もあります。
住宅や店舗、オフィスビルといった建物を設計するのは建築士の仕事です。
一方、道路やトンネル、ダム、橋、上下水道、港といったインフラについては、建設コンサルタントが設計するケースが一般的です。
管理業務
管理業務とは、工事完了後、当初の計画通りにインフラ設備が稼働しているかデータを取り、定期的なメンテナンスや修繕を提案することです。
インフラ関連の設備は人々の利用頻度が高く消耗が激しいため、安全かつ安心に設備を維持するためには、日々の点検が非常に重要です。
建設コンサルタントの役割
建設コンサルタントの役割は、工事の発注者であるクライアントをあらゆる面からサポートすることです。
かつて第二次世界大戦前までは、国の公共事業に関する企画や設計は、すべて内務省という組織が直轄して行っていました。
しかし、行政職員ではどうしても知識の面で本職の建設会社社員と対等に渡り合うことができず、なかなか計画が進まなかったり、予算を大きくオーバーするといった事例が相次ぎました。
高度な専門知識を持ち、なおかつ中立な立場からアドバイスしてくれる第三者の必要性が増し、そこで誕生したのが建設コンサルタントという職業です。
戦後からすでに80年近くが過ぎようとしていますが、今も昔も変わらず建設のプロとして、クライアントの利益を守ること、つまりは国民の利益を守ることが、建設コンサルタントの使命です。
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建設コンサルタントの仕事の流れ
ここでは、建設コンサルタントが携わるプロジェクトの大まかな流れを紹介します。
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1.依頼~ヒアリング
建設コンサルタントの仕事は、国や地方自治体からコンサルタントの依頼を受けるところから始まります。行政が企画した工事内容をヒアリングし、需要予測や整備効果を検討します。
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2.企画・プレゼンテーション
周辺住民へ意向を伺ったりしながら問題点や改善点を洗い出し、ブラッシュアップした事業計画を発注元にプレゼンします。 -
3.事業化決定
承認が得られ、事業化が決定したら建設予定地を調査し、土地の形状や地盤の固さ、周辺環境などのデータを収集します。それに基づいて設計作業を行い、できあがった図面を行政担当者に再びプレゼンします。
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4.施工管理
プレゼンが通り、工事を担当する建設業者が決まったら、建設コンサルタントは工事現場で施工管理を行います。 -
5.完工
完工したら建設コンサルタントの仕事はひと段落となります。ただし、その後も維持点検などで定期的に携わるケースが多いです。
これら一連の仕事は規模が大きいこともあって、かかる時間も非常に長く、企画立案から完成まで10年以上を要することもあります。
建設コンサルタントにはどんな種類がある?
建設コンサルタントを営む企業は、国土交通省に登録することが義務付けられています。
その登録部門は、「道路」や「トンネル」「鉄道」「都市計画及び地方計画」「土質及び基礎」「造園」「廃棄物」「建設環境」など、全部で21種類あります。
ひとくちに建設コンサルタント会社といっても、登録している部門によって、実際の仕事内容はさまざまです。
建設コンサルタントを目指す人は、自分の希望する業務に合致した免許を登録している会社を探し出し、就職試験を受けることになります。
以下、事業系統別にそれぞれの業務内容や特徴を紹介します。
土木系の建設コンサルタント
土木系の建設コンサルタント会社は、「道路」「上水道及び工業用水道」「下水道」「河川、砂防及び海岸・海洋」「農業土木」「森林土木」「水産土木」などで登録されている企業が挙げられます。
森を切り開いて道路を通したり、上下水道などのインフラ配管を敷設したり、津波対策用に護岸を整備するなどの工事が土木系です。
穴を掘ったり埋めたり、地面を均したりする「土」に関する仕事がメインとなります。
建設コンサルタントのなかでは最もオーソドックスな部類に入り、手掛ける仕事のほとんどは官公庁や自治体関連の公共事業です。
アスファルト敷設工事やトンネル掘削工事、河川の護岸整備工事などでは、建設コンサルタントが作成した工事計画に基づいて、土木作業員が実際の作業を手掛けます。
土木作業員というと、いわゆる「ガテン系」の力仕事ばかりをイメージするかもしれませんが、近年はブルドーザーやクレーンなどの重機を操縦するオペレーターとしての仕事が中心となっています。
建築系の建設コンサルタント
建築系の建設コンサルタント会社は、登録部門としては「トンネル」「鋼構造及びコンクリート」「施工計画、施工設備及び積算」「港湾及び空港」などが該当します。
橋やダム、港といった大きな建造物の工事を企画し、設計や施工管理を行うことが、主な仕事です。
公共案件だけでなく、たとえばマンション管理会社から依頼を受けて大規模修繕を計画する、解体業者から依頼を受けて周囲の振動や騒音被害を予測するなど、民間企業の案件も多くなります。
なお、建設会社と建設コンサルタントの仕事は似通っている部分もありますが、あくまで工事を行う主体は建設会社であり、それをサポートするのが建設コンサルタントです。
専門系の建設コンサルタント
専門系の建設コンサルタント会社では、「鉄道」や「機械」「電気電子」「地質」などの登録部門が挙げられます。
たとえば電鉄会社の子会社で、グループで建設する鉄道や駅の工事を手掛ける、電力会社の子会社で、発電所の建設や維持管理に携わるなど、一部の業務に特化している点が特徴的です。
また、大規模なインフラ工事などの際に、周囲の生態系にどのような影響が生じるか、大気汚染や土砂崩れのリスクがないかなどを調べる「環境系」と呼ばれる建設コンサルタント会社もあります。
建設コンサルタントは独立して働ける?
建設コンサルタントは、「建設」という名称が付いているものの、主な仕事はアドバイザリー業務であり、業種分類としても、建設業ではなくサービス業に属しています。
必要なのは資本ではなく専門知識やスキルであり、パソコンとひと通りの専門ソフトがあれば、自宅で仕事をすることもできます。
そういった仕事の特性上、建設コンサルタントは独立しやすい部類に入る職業といえるでしょう。
ただし、請け負うことのできる案件の規模は、企業に勤める場合よりも小さくなりがちで、調査業務だけ、企画業務だけなど、部分的にしか請け負えない可能性も高まります。
また、全国には4000を超える建設コンサルタント業者があり、競争は激しく、仕事を安定的に獲得することは簡単ではありません。
そのため、独立するならば、受注につながる人脈や、建築士や測量士などの資格は必須でしょう。
建設コンサルタントの勤務先・有名な企業
国土交通省に登録されている建設コンサルタント会社は、全国におよそ4000社ほどあり、事業規模も大小さまざまです。
そのなかで大手というと、「日本工営」「オリエンタルコンサルタンツ(ACKグループ持株会社)」「建設技術研究所」「応用地質」「長大」の5社が挙げられます。
この5社はいずれも売上高300億円を超える事業規模をもつ独立系の建設コンサルタントであり、業界を代表する大企業といえます。
以下では、有名な大手の建設コンサルタント会社について、その事業概要をご紹介します。
大手の建設コンサルタント会社
日本工営
日本工営は、1946年に創業した老舗の建設コンサルタント会社で、戦後の復興を支えてきた大会社です。
売上高は連結で約1100億円、単体でも約700億円と、圧倒的業界トップを誇り、コンサルタント事業だけでなく、電力エンジニアリングやエネルギー事業、不動産事業など、幅広い事業を展開しています。
近年は日本国内を飛び出して、海外へと活躍の場を拡げています。
オリエンタルコンサルタンツ
オリエンタルコンサルタンツは、行政、福祉、教育など、分野を問わずにさまざまな案件を手掛ける総合建設コンサルタント会社です。
2006年に組織再編によってACKという会社の完全持株会社となりましたので、単体の業績は不明ですが、グループ合算の売上高は約630億円と、日本工営に次ぐ第2位となっています。
他社のコンサルタントを手掛ける一方、自らが資金調達して事業主となり、太陽光発電や観光、農業といったビジネスも手掛けている点が大きな特徴です。
建設技術研究所
建設技術研究所は、売上高約620億円と2位の座をオリエンタルコンサルタンツと争う、業界屈指の建設コンサルタント会社です。
建設技術研究所は、元々国家組織から独立した組織であるという経緯もあって、事業の半分以上を国土交通省が発注する公的インフラ案件で占められている点が特徴です。
とくに河川分野においては技術的な強みをもち、長年にわたってシェアトップの座を維持しています。
応用地質
応用地質は、その社名の通り、地質調査に特徴をもつ建設コンサルタント会社であり、近年の売上高は500億円前後です。
インフラ・メンテナンス、防災・減災、環境、資源・エネルギーという4つのセグメントで事業を展開していますが、いずれも得意の地質工学を駆使したコンサルを行っています。
相次ぐ大型台風や集中豪雨といった水災によって土砂崩れが多発している昨今においては、非常に社会的需要が大きく、伸びしろのある事業といえます。
長大
長大は、売上高300億円超の業界第5位の建設コンサルタント会社です。
長大の1番の強みは橋梁工事であり、レインボーブリッジや明石海峡大橋、瀬戸大橋をはじめ、豊富な実績を誇ります。
なかでも明石海峡大橋は、世界最大の吊橋として現在でもギネスレコードに認定されています。
長大の橋梁技術は海外からも高い評価を集めており、アジア圏を中心に世界各国でプロジェクトが同時進行しています。
JR東日本コンサルタンツ
JR東日本コンサルタンツは、東日本旅客鉄道の完全子会社でありながら、単独の売上高が250億円弱あり、5大建設コンサルタント会社に次ぐ事業規模を誇る大企業です。
駅や路線、鉄道用橋梁の設計や施工技術、周辺の騒音調査など、鉄道技術に関するコンサルタントを主体としています。
社員のほどんどはJR東日本からの出向社員であり、プロパー社員の新卒採用は毎年10名前後となっています。
サンコーコンサルタント
サンコーコンサルタントは、日本コークス工業という、旧三井鉱山の技術陣を集めて創設された会社であり、売上高70億円ほどの中堅建設コンサルタントです。
その来歴からもわかるように、道路、河川、上下水道などの土木設計や地質調査など、「地下」に関する技術に強みがあります。
応用地質と同じように、近年は全国で多発する豪雨被害に対する対策工事関連の事業が目立ちます。
独立系以外の建設コンサルタント
独立系以外の大手建設コンサルタントとしては、「東電設計」や「中電技術コンサルタント」、「西日本技術開発」などの電力会社傘下の企業があります。
同じように、電鉄会社系列の「JR東日本コンサルタンツ」や「小田急エンジニアリング」、鉱山会社系列の「サンコーコンサルタント」や「住鉱資源開発」といった会社もあります。
グループ企業の場合は、独立系のように広範な仕事を手掛けるのではなく、インフラ事業や電鉄事業など、親会社の事業分野に特化した専門的な仕事を手掛ける点が特徴です。
建設コンサルタントと関連した職業「建築士」
建築士は、住宅や店舗、ビルなど、さまざまな建築物を設計したり、工事現場を監督したりする仕事です。
橋やダムといった巨大インフラ設備については、基本的に建設コンサルタントが設計を手掛けますが、発電所などの建物の場合は、建築士が設計を担当することもあります。
建築士になるためには、建築系の大学や専門学校などで建築学を学ぶなどして、国家資格を取得することが必要です。
「建設コンサルタントの仕事」まとめ
建設コンサルタントは、インフラ設備や大規模建築などの工事を行う際に、工事の発注者であるクライアントに対し、専門的知見を生かしたアドバイスを行う専門家です。
自身が建築工事を直接行うわけではありませんが、目的に沿った、安全性の高い建築物をつくるにあたり、非常に重要な役割を担います。
日本国内に建設コンサルティング事業を展開する会社は4000社ほどあり、独立して活躍する人もいます。