建設コンサルタントの仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「建設コンサルタント」とは
ダムや道路などを造る際に、事前調査や事業計画を作成してクライアントをサポートする。
建設コンサルタントは、建設業全般に関するアドバイザーとしての役割を果たします。
ダムや発電所、道路や橋などを造る際に、事前調査や事業計画の作成を行いながらクライアントを総合的にサポートするのが主な仕事です。
建物を設計する建築士や現場作業を行う土木作業員などとは異なり、建築物の規模や構造を計算して企画を立案したり、地盤調査や地質調査を行ったり、工期を計算してスケジュールを組むのが仕事です。
建築コンサルタントになるには、建築や測量など関連性の高い知識を備えた理系学生が中心です
専門性の高い職業であり、一般的な職業に比べると給料は高めの水準になっています。
厚生労働省の平成31年賃金構造基本統計調査によると、国家資格である「技術士」の平均年収は46.6歳でおよそ673万円です。
近年ではインフラの老朽化による再工事やメンテンナンス事業などが急増しており、建設コンサルタントの需要が高い状況が続いています。
防災への取り組みや都市計画を支えるスペシャリストとして、これからの時代ますますの活躍が望まれることでしょう。
「建設コンサルタント」の仕事紹介
建設コンサルタントの仕事内容
大規模建築における調査や計画策定を担当し、クライアントをサポートする
建設に関するアドバイザリー業務が中心
建設コンサルタントは、インフラ設備や大規模建築などの工事を行う際に、工事の発注者であるクライアントに対して、建設に関するさまざまなアドバイスを行う仕事です。
たとえば地方自治体が新たにダムをつくることを計画し、その公共工事をゼネコンに発注しようとしているとします。
しかし、地方自治体の担当者は、あくまで行政を専門とする公務員であり、建設や工事のプロではありません。
そこで、建設コンサルタントは、役所に代わって、どんな規模のダムをつくるか、予算や工期はどれくらいか、周辺環境にどんな影響が生じるかといったことを調査し、事業計画を作成したり、助言を行ったりします。
「建設」という名称は付いているものの、実際に建設作業を手掛けるわけではありません。
高度な専門知識をもって働く
建設コンサルタントには、「河川・砂防および海岸」「港湾および空港」「電力土木」「道路」「造園」など、全部で21種類もの部門があり、それぞれに異なった知識やスキルが求められる専門性の高い仕事です。
戦前は、国の公共事業に関する企画や設計は、すべて内務省が直轄して行っていましたが、行政職員では建設会社社員と対等に渡り合うことができませんでした。
そのため高度な専門知識をもち、なおかつ中立な立場からアドバイスするために誕生したのが建設コンサルタントという職業です。
建設のプロとして、クライアントや国民の利益を守ることが求められています。
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建設コンサルタントになるには
基本的には専門知識や関連職種の経験が求められる
新卒の場合は建築や土木などの知識が必要
建設コンサルタントになるには、コンサルティング業務を手掛けている企業や研究所、シンクタンクなどの採用試験を受け、合格することが必要です。
建設コンサルタントの仕事は非常に専門性が高いため、採用対象となるのは、基本的にその企業の事業に関する学問を修めた人に限られます。
たとえば土木系の建設コンサルタント会社であれば、4年制大学の土木工学部や大学院の土木研究科、土木系の専門学校などを卒業することが条件となります。
ただし、一部大手企業では、文系学生などでも選考にエントリーできるケースがあります。
なお、中小以下の企業については、学歴要件がとくに定められておらず、誰でも採用試験を受けられるところも一部あります。
建築コンサルタントとして一人前になるには
一人前の建設コンサルタントになるには、数年単位の長い時間をかけて、専門知識を学びつつ、コツコツと実務経験を積み上げていかなければなりません。
現場で仕事の流れや段取りを覚えつつ、自主的な勉強にも励んで、技術士やRCCMなどの資格取得を目指します。
経験を積むにつれ、コンサルティングに関する責任を負う「管理技術者」となって、リーダーとして第一線で働けるようになります。
その後は、役職者への昇進を目指したり、環境の変化や待遇の改善を求めて転職したり、独立してフリーランスになったりと、さまざまな働き方をすることができます。
建設コンサルタントの学校・学費
理系の大学や高専に進学するのが有利
建設コンサルタントは非常に専門性の高い仕事であるため、就職する前に大学や高等専門学校で必要な知識をある程度身につけておくことが求められます。
建設コンサルタントの登録部門は、「道路」や「トンネル」「鋼構造及びコンクリート」「都市計画及び地方計画」「造園」など、全部で21種類もあります。
オーソドックスな進路としては、土木や建築、設計などを学べる専門学校や大学などがあげられますが、希望によっては、地学系や環境系、電気電子系、機械系の学部・学科を選ぶケースもあります。
いずれの学歴にも該当しない場合は、それぞれの企業が推奨する関連資格を取得するなど、独学である程度勉強しないと就職は難しいといえるでしょう。
建設コンサルタントの資格・試験の難易度
代表的な国家資格と民間資格がある
建設コンサルタント会社では、働きだした後も資格取得が奨励されるケースが多く、代表的なものとして「技術士」と「RCCM(シビルコンサルティングマネージャ)」の2つが挙げられます。
「技術士」は国家試験に合格して登録した人に与えられる技術者の国家資格で、科学技術に関する専門応用能力が必要な計画や調査、研究や設計を行えることを証明するものです。
「RCCM」は一般社団法人である建設コンサルタンツ協会が認定する民間資格で、試験においては、建設事業の計画や調査、立案や助言に関する専門知識が問われます。
いずれも学歴に応じて一定の実務経験が必要となる難関資格ですが、取得できれば建設コンサルタントとして大きなキヤリアアップとなるでしょう。
建設コンサルタントの給料・年収
一般的サラリーマンよりも高給をのぞむことができる
専門職であるため高給が見込める
建設コンサルタントは建設業ではなくサービス業として位置づけられていますが、土木や建築に関する幅広い知識と技術が必要とされる専門性の高い職業です。
業界全体として給与水準は高くなる傾向にあります。
建設コンサルタントの平均年収は600万円~650万円となっており、専門性に見合った高い給与水準にあるといえます。
基本的には勤続年数に従って徐々に昇給していき、30代で500万円を超え、最大年収となる50代では750万円前後に達します。
大手コンサルタント会社やゼネコンの管理職は、年収1000万円を超えることもあるようです。
資格を取得し経験を積むことで給料アップ
企業や個人によって給与にはかなり差があり、「技術士」や「RCCM」の資格を取得して客観的にスキルを証明できれば、より高給を得やすいでしょう。
建設コンサルタント企業で技術士として働く人の多くは、高等専門学校や理系の大学で専門知識を得てから就職をし、実際の業務に携わりながら資格の取得を目指します。
技術士などの資格には取得要件があり、簡単には手にすることができない資格であるだけに、技術士となった時点で手当てがつく企業も多いようです。
さらに「トンネル」「道路」「下水道」など専門分野でのスペシャリストとしての実績を積むことで昇格や昇給することがあります。
転職のさかんな業界でもあるので、自分の実力次第では高収入をめざすことができるのが魅力です。
建設コンサルタントの現状と将来性・今後の見通し
安定性はあるが、続けるには努力が必須
近年は公共事業数の増加に加えて、大規模建築物や都市開発案件も多く、建設コンサルタントの需要は非常に高水準で推移しています。
幅広い専門知識だけでなく、予算や工期を組み立てる計画性、依頼主の要望を引き出すコミュニケーション力など、多数のスキルが問われる難易度の高い職業ですが、安定性は十分にあるといえます。
ただ、常に最先端の知識・スキルを習得することが求められるため、建設コンサルタントとして活躍するには継続的な努力が必要不可欠です。
近年では地震や台風などによる災害復旧工事が急増しており、今後は防災への取り組みや都市計画を支えるスペシャリストとして活躍の場が広がっていくと考えられます。
建設コンサルタントの就職先・活躍の場
就職先は登録部門を参考に選ぶとよい
建築コンサルタントの就職先としては、専門のコンサルタント会社をはじめ、研究所、シンクタンクなどがあります。
建設コンサルタント業務は国土交通省への登録制となっていますが、扱う業務は全21種類に区分けされており、同じ建設コンサルタント会社でも、事業内容は登録区分によって大きく異なります。
全国にはおよそ4000もの建設コンサルタント会社があり、事業規模も得意とする仕事もさまざまです。
まずは自分がどのような仕事をしたいかをある程度絞り、「道路」「鉄道」「トンネル」「電力土木」「造園」など、登録部門によって、自身の希望する仕事を行っている会社を就職候補先にするとよいでしょう。
建設コンサルタントの1日
クライアントの都合に合わせて働くためスケジュールは流動的
建設コンサルタントの仕事は、道路や橋、ダム、上下水道といったインフラ関連の公共事業が中心であり、それらの工事をサポートすることが役割です。
このため、建設コンサルタントは、工事の工程や納期、クライアントである国や地方自治体の役場担当者のスケジュールなどに合わせて働きます。
役所関係の仕事は予算や締め切りが厳密に定まっており、それに間に合わせるために遅くまで残業することもよくあります。
<オフィスで働く建設コンサルタントの1日>
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建設コンサルタントのやりがい、楽しさ
人々の生活を支える公共性の高い仕事であること
建設コンサルタントは、官公庁や地方自治体を依頼主とした、ダムや防波堤建設のような大規模事業を手掛ける機会が多くあります。
地震や台風などの自然災害が多い日本にとって、人々の暮らしを守る社会基盤整備事業は非常に重要です。
河川や橋、道路工事のような小規模な事業も、豊かで便利な生活を作る上では欠かせないものです。
建設コンサルタントの仕事はいずれも社会的な貢献度が高く、大きなやりがいを持って仕事に取り組めるでしょう。
また、自分が設計したものが、多くの人の手による長年の工事を経て完成し、その実物を実際に目にしたときには、大きな感動が得られます。
手掛けた構造物が後世にわたって残り続けることも、建設コンサルタントのやりがいです。
建設コンサルタントのつらいこと、大変なこと
納期が決まっているためスケジュールに追われやすい
建設コンサルタントの手掛ける案件は国や地方自治体からの依頼が多いため、予算や工期が厳密に定められていることが一般的です。
しかし、事業が大規模になれば、それだけ予期せぬトラブルやアクシデントが発生する頻度も高く、大幅な計画の変更を迫られるケースも珍しくありません。
このため、連日深夜まで残業し、休日返上で働いて遅れを挽回しなければならないときもあり、建設コンサルタントの仕事は激務になりがちです。
とくに震災や水害に伴う災害復旧工事では、地域の人々の生活を一刻も早く取り戻すため、タイトなスケジュールを求められるようです。
また設計や施工に不備があれば多大な損害と迷惑をかけることになる、プレッシャーの大きい仕事であることもこの仕事の大変なところです。
建設コンサルタントに向いている人・適性
専門知識を持ち、論理的思考力と洞察力のある人
建設コンサルタントは、事前調査などによって計画の問題点を洗い出したり、構造上の欠陥を指摘したりしてクライアントに対しアドバイスすることが役割です。
建築や防災、都市計画などについての広範な知識が求められることはもちろん、ミスを見逃さない鋭い観察眼が必要になります。
日常生活のなかで、論理的にものごとを考えるのが得意な人や、観察力や洞察力に自信のある人は、建設コンサルタントとしての資質があるでしょう。
また、建設コンサルタントは工事や設計に関することはもちろん、政治にも法律にも経済にも詳しくなければなりませんし、各種資格も取得する必要があります。
ベテランになってからも、最新の工法や資材、法改正に対応するため、学ぶことが好きな人が向いています。
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建設コンサルタント志望動機・目指すきっかけ
社会的意義の高さに魅力を覚える人が多い
建設コンサルタントを志望するのは、その仕事の公共性の高さや社会的意義に魅力を感じ、専門知識を生かして社会貢献したいという人が多いようです。
普段はあまり表に出る職業とはいえないかもしれませんが、地震や水害などの有事の際は、行政の復旧工事などで被災者のために尽力します。
そうした働きをメディアで目にしたり、あるいは被災者として助けられたりした経験が、建設コンサルタントを目指すきっかけとなった人もいます。
また、大学や高専で地学などを学んだ人が、専門知識を生かせる職業として選択するケースや、自分が手掛けた橋やダムなど大きなものが、後世に残る「ものづくり」に魅力を感じて進路を選んだという人もいます。
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建設コンサルタントの雇用形態・働き方
専門職であることから非正規雇用は少ない
建設コンサルタントは、多くがコンサルタント会社に正社員として勤めています。
専門的な仕事であることから非正規雇用は少なく、経験を積みフリーランスとして活躍する人もいます。
建設コンサルタントの働き方の特徴としては、就職する前はもちろん、働きだした後もずっと勉強し続けなくてはならないことが挙げられます。
技術者の継続教育の必要性は「CPD」という言葉で広く認知されており、自身が専門とする技術領域はもちろん、幅広い分野のスキルを習得することが奨励されています。
ときに長時間勤務が連続する激務のなかにあって、勉強時間を確保することは簡単ではありませんが、求められる社会的責任の重さを自覚し、最新の情報や技術の取得に励み続けることが必要です。
建設コンサルタントの勤務時間・休日・生活
クライアントの依頼内容次第では長時間残業や休日出勤も
建築コンサルタントの勤務時間は、勤め先によって異なりますが、おおむね9:00~18:00前後に設定されており、休日についても土日が休みの週休二日制となっているところが一般的です。
ただし、コンサルタントという職業全般に共通していることではありますが、クライアントから任された業務を確実にこなす必要があるため、定時になれば帰れるというわけではありません。
大規模な案件を抱えているときや、作業がうまく進捗しないときには、深夜残業や休日出勤をしなければならないケースもあります。
建設業界全体として働き方改革が進められつつありますが、1人に割り当てられる仕事量の多さや公共の建築物を造る責任の重さなどを踏まえると、どうしても長時間労働になりがちなようです。
建設コンサルタントの求人・就職状況・需要
建設コンサルタント業界は活況で需要も多い
近年は東日本大震災をはじめとする大地震や異常気象による水害など、全国各地で自然災害が相次いでおり、復旧工事関係の公共事業が増加しています。
これに伴って建設コンサルタントの需要も増えており、各企業は求人に対して非常に積極的で、多くの採用情報が見つけられるでしょう。
中長期的にみても、防災への取り組みや都市計画の事業を支えるスペシャリストである建設コンサルタントは、安定した需要が継続すると思われます。
道路やトンネル、ダム、水道といったインフラ設備は人々の生活に不可欠であり、公共事業が今後なくなることはあり得ません。
建築業界全体としては、就職希望者が少ない傾向にあるため、これから目指す人にとっては、チャンスが大きくなっているでしょう。
建設コンサルタントの転職状況・未経験採用
関連業界やコンサルタントの職務経験者は転職しやすい
建設コンサルタントの需要が高まっている一方、専門性を備えた人材数は限られているため、各企業は関連業界も含めて転職者を広く募集しています。
建設コンサルタント業務自体が未経験でも、設計事務所や建設会社、測量士事務所、シンクタンクなどで働いていた経験のある人は、転職することは困難ではないでしょう。
またITコンサルや経営コンサルなど、別業界のコンサルティング会社での職務経験も、仕事の進め方やクライアントへの対応の仕方、分析スキルなどは、そのまま生かせるシーンが多いでしょう。
大手コンサルタント会社などではまったくの未経験者でも対象としているケースがありますが、人材の育成にはかなりの時間を要するため、できる限り若いうちに転職する必要があります。