半導体設計の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「半導体設計」とは

半導体設計の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

あらゆる電子機器に組み込まれている半導体集積回路を設計する

半導体設計とは「半導体集積回路」を設計する仕事です。

そもそも「半導体」とは物質の名前であり、電気を通す「導体」と電気をまったく通さない「絶縁体」の中間の性質を持つものです。

このように本来はある物質を示す言葉ですが、現在一般的に半導体というと「半導体集積回路」のことを指します。

半導体集積回路(以下、半導体)は機器のなかでも中心的な役割を担い、私たちの身近にあるさまざまな製品で使われています。

たとえばエアコンの温度調節を行う温度センサーや、パソコンを動かすCPUも半導体です。

そのほかスマートフォン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、LED電球などにも半導体は欠かない存在です。

またモノだけではなく、電車の運行や銀行ATM、電気・ガス・水道などのインフラ制御にも使われており、現代の生活は半導体なしには成り立たないといえるでしょう。

今後もあらゆる機器が高度化するなかで、半導体設計の需要はますます高まっていくと予想されています。

ただし業界全体的に人手不足の傾向があり、新卒・中途問わずに採用活動は活発に行われている状況です。

業務には電気・電子系の知識が必須となりますが、近年は人手不足の事情から「知識不問」で採用を行う企業も一部出てきています。

「半導体設計」の仕事紹介

半導体設計の仕事内容

専門ツールを使いながら半導体の論理設計やレイアウト設計などを行う

半導体は家電やスマートフォン、パソコンなど私たちの身近にあるさまざまなものに使用されており、どの設計に携わるのかで仕事内容も異なります。

とはいえ大まかなプロセスは共通しており、まずはどんな処理が必要な製品なのかを把握し、次にそれを実現するための回路ロジックを設計、最後に設計した回路をチップに組み込むレイアウトを決めていくのが基本的な流れです。

それぞれの業務フローを詳しくみていきましょう。

仕様書作成

まずはクライアントが必要としている仕様を把握し、「どんな半導体を作ればそれが実現できるのか」を考え仕様書に落とし込みます。

その際には、製作にかかるコストや期間などにも注意しなければなりません。

論理設計

作成した仕様書をもとに、「VHDL」や「Verilog-HDL」などのハードウェア記述言語(デジタル回路を設計するためのコンピュータ言語)で処理を記述します。

記述後は、記述内容に間違いがないか動作チェックも行います。

論理合成

「EDA(電子設計自動化ツール)」を使って、論理設計した内容を実際に半導体で使う部品に変換します。

半導体によって、数千個~数万個もの部品が必要になることもあります。

レイアウト設計

論理合成によって必要な部品が判明したら、それらの部品をどのように配置・配線していくかを設計します。

半導体の構造を理解し、不具合の起こらないレイアウトを心がけていく必要があります。

半導体設計になるには

電気工学や電子工学を学び、半導体設計に特化した企業に就職する

半導体設計では電気や電子に関する高度な専門スキルが求められるため、まずは大学・専門学校などで電気工学や電子工学を学ぶのが一般的です。

実際の求人でも「電気・電子系の知識がある人」といった応募資格が設けられているケースが多くみられます。

また電気工学・電子工学以外にも、数学や物理など理系の知識を持っている人も重宝されます。

就職先としては半導体設計に特化したサービスを行う企業がメインです。

企業によっては「半導体エンジニア」と呼ばれることもありますが、業務内容は半導体設計と同じです。

なお半導体エンジニアになるのに必須の資格はありません。

入社時点では高度な技術力を求めていない企業も多く、そういった企業では入社後の研修で実践的なスキルを習得できます。

ただし半導体に関わる最新情報は英語圏発の場合が多いため、最低限の英語スキルは必要不可欠となるでしょう。

日本語のみではアクセスできる情報量が極端に少なくなってしまうため、英語のニュースやドキュメントを読み解ける能力を身につけなければなりません。

応募条件に「TOEIC500点以上」などの基準を設けている企業もあり、基準が設けられていない場合であっても英語力は面接時の大きなアピール材料になります。

半導体設計の学校・学費

電気・電子系の大学や専門学校などに通うのが一般的

半導体設計として就職を目指すには、まずは電気・電子系の大学や短期大学、専門学校などに通って仕事に必要な知識を身につけるのが一般的です。

電気・電子系以外にも、数学や物理を専攻してきた人が半導体設計に就職するケースもあります。

必要になる学費はどの進路を選ぶかによって大きく異なりますが、電気・電子系の大学に進む場合なら初年度で150万円〜180万円くらいが相場となるでしょう。

ただし最近では知識不問で募集をかけている企業も少しずつ増えてきているため、文系出身者にもチャンスのある仕事となっています。

半導体設計の資格・試験の難易度

持っていれば就職時に有利に働く資格も

半導体エンジニアになるために必須な資格はありませんが、持っていれば就職時に有利に働く資格が存在します。

たとえば半導体に関する一定の知識を有していることを認定する「半導体技術者検定」を取得すれば、採用面接の場で一つのアピール材料として使えます。

参考:SECC 半導体技術者検定

また半導体設計の仕事では英語ニュースやドキュメントを読み解ける能力が求められるため、TOEIC[ub/]のスコアを上げておくのもよいでしょう。

参考:IIBC TOEIC Program

これらは受験資格もとくにありませんので、就職や転職を目指す際にはチャレンジしてみるのをおすすめします。

半導体設計の給料・年収

外資系企業のなかには年収1,000万円以上の高額オファーを提示する企業も

求人サービスなどの調査データから、半導体設計の平均年収は600万円程度になると考えられます。

ただし全体の給与幅は広く、就職先企業や本人のスキル・経験などによって大きな差があるでしょう。

加えて、半導体設計の平均年収は属する業界によっても大きな差があります。

たとえば家電・通信機器系の半導体設計よりも、精密・医療用機器系の半導体設計のほうが年収相場は高い傾向がみられます。

今属している業界の平均年収がそれほど高くない場合は、別業界の半導体設計に転職することで年収アップのチャンスがあるでしょう。

とくに世界トップクラスの外資系企業のなかには、日本に半導体の開発拠点を設けて半導体エンジニアを採用している企業もあり、実力のある人には年収1,000万円以上の高額なオファーを提示することもあります。

なお半導体設計のキャリアプランとしては、原材料の選定から製造方法の選定までを行う「プロセスエンジニア」を経て、上流工程である「設計」を担当するケースが一般的です。

設計を担当するようになるとさらに高度な知識・スキルが求められるため、このようなキャリアアップにともない年収も上げられるでしょう。

半導体設計の平均年収・月収・ボーナス

半導体設計の平均年収_2023

厚生労働省の令和5年度賃金構造基本統計調査によると、半導体設計の平均年収は、43.3歳で688万円ほどとなっています。

・平均年齢:43.3歳
・勤続年数:15.9年
・労働時間/月:160時間/月
・超過労働:16時間/月
・月額給与:434,500円
・年間賞与:1,667,600円
・平均年収:6,881,600円

出典:厚生労働省「令和5年度 賃金構造基本統計調査」
半導体設計の年収の推移_r5

※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。

半導体設計の勤務先の規模別の年収(令和5年度)

半導体設計の年収は、勤務先の規模が大きくなるとやや高くなる傾向があります。

10〜99人規模の事業所に勤める半導体設計の平均年収は580万円、100〜999人規模は620万円、1,000人以上の規模では742万円、10人以上規模の事業所平均は688万円となっています。

半導体設計の年収(規模別)_r5

上記グラフの基タイトルは「電気・電子・電気通信技術者(通信ネットワーク技術者を除く)」で回路設計、電子工事施工管理技士など他職業を含むデータです。

賃金構造基本統計調査より作成。本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。

半導体設計の勤務先の年齢別の年収(令和5年度)

半導体設計の年収を年齢別に見ると、年齢の上昇にしたがって、年収も上がっています。最も年収が高い世代は、50~54歳の841万円です。

全年代の平均年収は688万円となっています。

半導体設計の年収(年齢別)_r5

上記グラフの基タイトルは「電気・電子・電気通信技術者(通信ネットワーク技術者を除く)」で回路設計、電子工事施工管理技士など他職業を含むデータです。

 

半導体設計の現状と将来性・今後の見通し

海外企業との競争のなか、生き残りをかけて戦っている状況

近年は中国・台湾・韓国などの近隣国が、半導体分野において急激な発展を見せています。

そのなかで日本の半導体業界も生き残りをかけて戦っている状況ですが、独自の強みを持たない半導体メーカーは海外企業に買収されるケースも実際に起こっています。

就職先を選ぶ際には、尖った独自コンセプトを持つ半導体企業を選ぶことが重要です。

なお業界全体でみれば半導体業界には安定した需要があり、あらゆる電気製品に半導体技術が積極的に使われている以上、半導体設計は今後もなくてはならない仕事といえるでしょう。

半導体設計の就職先・活躍の場

求人が多いのは、半導体設計に特化したサービスを行う企業

半導体設計の代表的な就職先としては、半導体設計に特化したサービスを行う企業が挙げられます。

業界全体的に人手不足の傾向があり、正社員だけでなく契約社員やアルバイトの求人も数多く見つかるでしょう。

なお近年では自動車メーカーやIT企業など幅広い業種で「半導体の内製化」を図る動きがみられ、それらの企業でも半導体エンジニアが採用される可能性があります。

半導体設計の経験・スキルを持った人材なら、さまざまな選択肢がある状況といえるでしょう。

半導体設計の1日

最新情報を収集しながら半導体設計を進める

半導体設計の1日の流れは、就職先企業や担当する業務内容などによって大きく変わります。

ここでは、半導体メーカーで「論理設計」を担当する半導体設計の1日を紹介します。

8:30 出勤
少し早めに出勤して、クライアントや関係者からのメールに目を通します。
9:00 朝礼
会社全体で朝礼を行い、1日の予定や業務の進捗状況について共有します。
9:10 半導体の論理設計
仕様書をもとに、ハードウェア記述言語(VHDLやVerilog-HDLなど)で処理を記述していきます。
12:00 休憩
1時間の昼休憩です。社外にランチに出かけることもあります。
13:00 半導体設計に関わる情報収集
必要に応じて英語圏の記事も検索し、業務に必要な最新情報を取り入れます。
14:00 半導体の論理設計・動作確認
再び半導体の論理設計を進めます。記述内容にミスがないか、動作確認も随時行います。
18:00退勤
トラブルがなければ退勤時間で帰宅します。業務の進捗状況によっては残業もあります。

半導体設計のやりがい、楽しさ

自分の専門知識を生かしてものづくりに携われること

半導体設計にはものづくりの楽しさがあります。

自分の専門知識を生かして現物を目の前で作れる仕事には独特の面白さがあり、とくに理系出身者は楽しんで取り組めるでしょう。

半導体設計は最初は頭を悩ませますが、一つひとつ要素を決定していくうちにほかの要素も連鎖的に決まっていき、それはパズルのピースをはめていく感覚に似ています。

また半導体はスマートフォンや冷蔵庫など私たちの身近にあるさまざまなモノに使われており、自分の仕事が形として残るところにやりがいを感じる人も多くいます。

半導体設計のつらいこと、大変なこと

非常に精密なものを取り扱う仕事であり、一つのミスも許されないこと

半導体設計の仕事に納期はつきもので、他部署と連携をとりながらスピーディーに仕事を進めなければならない部分は大変さがあるでしょう。

また非常に精密なものを取り扱う仕事であり、一つのミスも許されません

万が一自分の手がけた半導体にミスがあった場合、その半導体を使って製品を作るメーカー側に大きな迷惑をかけてしまうことになります。

迅速かつ細心の注意を払いながら設計を進めなければならず、プレッシャーの大きい仕事といえるでしょう。

半導体設計に向いている人・適性

物事を多角的に考えられる人

半導体設計の仕事では、予想通りの結果にならなかったりトラブルが発生したりするのは日常茶飯事です。

その際には「トラブルの原因はなにか」「どうすればうまくいくのか」といった点をさまざまな視点から考察していくことが求められます。

物事を多角的に考えられる人が半導体設計には向いているでしょう。

また半導体の業界は他社との競争が激しく、新技術の開発なども次々と行われています。

そのなかで半導体設計として活躍するには、つねに新しい知識を吸収していく姿勢が必要不可欠といえます。

半導体設計志望動機・目指すきっかけ

業務を通じて専門スキルを高めていきたい

半導体設計で働く人の多くは「ものづくりに興味がある」「専門知識を生かした仕事がしたい」などの理由が就職のきっかけです。

また業務を通じて専門スキルをどんどん高めていける仕事であるため、「手に職をつけられる仕事がしたい」と考え半導体設計を目指す人もいます。

なお一口に半導体設計と言っても、会社によって主力とする製品や一人あたりの担当領域は大きく異なります。

各企業の違いをしっかりと分析し、自分がどんなキャリアを歩んでいきたいのかを明確にしたうえで就職先を選定していきましょう。

半導体設計の雇用形態・働き方

派遣社員やアルバイトの求人も多く出されている

半導体設計は正社員以外にも、派遣社員やアルバイトの求人も多く出されています。

人手が足りていない会社も多いため、さまざまな雇用形態での募集を見つけられるでしょう。

ただし派遣社員やアルバイトとして働く場合も、応募資格には「CAD経験者」「産業用装置の機械設計実務経験者」といった条件が課されていることがほとんどです。

時給では2,000円以上の求人も多く、一般的なアルバイトに比べて高い収入が得やすいでしょう。

半導体設計の上流工程を担当したい場合は、正社員での採用を狙うとよいでしょう。

半導体設計の勤務時間・休日・生活

案件の状況次第で残業や休日出勤もある

半導体設計の勤務時間は9:00〜18:00前後に設定している企業が多く、実働は8時間程度になるでしょう。

休日は土日・祝日、そのほか年末年始休暇や夏期休暇、年次有給休暇なども用意されているのが一般的です。

このように勤務スケジュールは基本的には安定していますが、案件の状況しだいで残業が続いてしまうことも珍しくありません

自社で設計した半導体にミスやトラブルがあった際には、休日を返上して問題解決にあたらなければならない場合もあります。

半導体設計の求人・就職状況・需要

求人数は多く、会社によって求められるスキルや業務内容はさまざま

大手転職サイトなどを使えば半導体設計の求人はたくさん見つけられるでしょう。

ただし求人によって「電気・電子系の知識がある人」「CAD実務経験者」など応募条件はさまざまであるため、応募時にはそれらの条件をクリアしているか注意しましょう。

さらに仕事の種類も会社によって大きな差があり、家電の半導体設計を担当する場合もあれば、医療用機器の半導体設計を担当する場合もあります。

求められるスキルや業務内容によって給料面にも差がでますのでよく確認しておきましょう。

半導体設計の転職状況・未経験採用

業界全体として人手不足の傾向があり、転職市場は活発

半導体設計は転職市場も活発です。

その背景には、IT技術の向上によって半導体の用途が広がってきていることが挙げられるでしょう。

以前は携帯電話やスマートフォンの生産に大きく業績が左右されていましたが、近年はAIやIOT、データセンター、車載半導体などにも半導体が積極的に活用されるようになりました。

そのほか医療やヘルスケア分野でも半導体需要が高まっているなど、半導体メーカーの収益源は拡大している状況です。

今後も5Gや自動運転技術などさまざまな領域でIT技術が進化していくと考えられ、それにともない半導体業界も安定的な成長が見込まれています。

また半導体専門企業以外にも、電機メーカーの半導体部門や自動車メーカー、IT企業などでも半導体エンジニアを採用する企業が出てきています。

業界全体として人手不足の傾向があり、企業によって応募条件は異なるものの、半導体設計の求人を見つけること自体は難しくないでしょう。

なお最近では、知識・経験など一切不問で採用する企業もみられるようになりました。

未経験での転職を狙う場合は第二新卒などの若い年代のほうが有利に働くため、早めに行動していくとよいでしょう。