アイリストの需要・現状と将来性
アイリストの現状
市場規模は現在進行形で拡大中
かつてアイメイクといえば、ビューラーでまつ毛をあげたり、マスカラを用いてまつ毛を太く長く見せたりすることをさしていました。
しかし「女性の目元をよりはっきりとさせたい」「毎日のメイク時間を短縮したい」というニーズを背景に、まつ毛に人工の毛を植毛する「まつ毛エクステ」や「つけまつ毛」、まつ毛を薬剤でカールさせる「まつ毛パーマ」が爆発的な人気を誇るようになりました。
その流行にともない、目元ケアのプロフェッショナルである「アイリスト」という職業が誕生しました。
アイリストになるためには美容師免許が必要ですが、そのことを厚生労働省が定めたのが平成20年ということからも分かるように、アイリストの業界は歴史が浅く、市場開拓が進んでいる真っ最中です。
2016年度の美容業界全体の市場規模は2兆1,575億円とされていますが、そのなかでアイラッシュサロンの市場規模は約1,500億円といわれています。
はるかに歴史が古いエステの市場規模が3600億円であることからも、その爆発的な伸び率がわかります。
その伸び率を背景に、新規サロンオープンや既存美容サロンでアイラッシュコーナーの新設などが続き、アイリストは慢性的な人材不足状態です。
健康被害トラブル数増加
まつ毛美容ブームを背景に若い女性を中心に人気があるまつ毛エクステやまつ毛パーマですが、健康被害トラブルも増加しています。
まつ毛エクステやまつ毛パーマは「目」に近い部分に施術を行うため、アイリストの技術不足、不衛生な用具管理により、お客さまの目が腫れたり、視力が低下したりする恐れがあります。
アイリストとして施術するためには美容師資格が必須ですが、なかには無免許のスタッフが施術を行うサロンも存在しているようです。
また、アイリストが慢性的に不足しているため、サロンによっては研修も行わず、技術水準が低いアイリストを現場デビューさせることもあります。
まつ毛エクステや、まつ毛パーマで健康トラブルが増加すると、サロンで施術を受けることを敬遠するお客さまもいます。
また、現状ではアイラッシュサロンを利用したことがある女性は約1割程度と少なく、アイラッシュメニュー未経験の潜在的ユーザーを掘り起こすことで、さらに成長が見込めるとされている業界です。
そのためには、アイラッシュサロンやアイリストが一定水準の技術、衛生水準を保ち、お客さまが安心して足を運べるようにすることが課題です。
20代で正社員への就職・転職
アイリストの需要
アイラッシュサロンの数は増加しているほか、最近はネイルサロンで、ネイルをしてもらいながら、まつ毛の施術も同時にできるというようなところも増えつつあります。
今後は、トータルビューティーの一環として、アイリストを採用するところも増えてくると考えられます。
業界全体で慢性的にアイリストが不足しているため、美容師免許を取得すれば、就職には困らないでしょう。
一方、まつ毛美容ブームをうけ、アイラッシュサロンが増加し、サロン間の競争も熾烈になり、低価格で付け放題サービスをウリとするところもあります。
価格競争が激化していくなかでアイリストの賃金を抑えるサロンもあり、回転率をあげて施術・接客をしないといけない割に給料は低いという場合もあります。
昇給や歩合給、自分が理想とする施術スタイルがとれるかなどを見ながら、サロン選びは慎重に行う必要があります。
アイリストの将来性
まつ毛エクステや、まつ毛パーマは女性の簡単に綺麗な目元を手にいれたいというニーズをとらえ、新しいスタイルのメイク法として人気があります。
現在進行中で市場規模も拡大しており、今後の成長も期待できる業界です。
しかし、一方で将来性に関しては楽観視できないという見方もあります。
女性の美容やメイクの流行は、時代とともに大きく移り変わるもので、とくにその時代の人気モデルやタレントのメイク、新しいメイク方法の台頭により、大きな影響を受けたり、煽りをうけたりすることがあります。
現在は、まつ毛のエクステやパーマで目元を目立たせて大きくぱっちりと見せることが若い女性を中心に流行していますが、もし近い将来に状況が一転して「ナチュラルメイク」が流行した場合、目元のメイクやケアに力を入れる人が一気に減ってしまう可能性も否定はできません。
看護や介護、金融などの業界とは異なり、流行の煽りを受けて短期間で市場が一気に変化するのが、アパレルや美容業界の特徴です。
時代を見極めながら、アイリストとしての技術の習得を極めるのか、新たな流行に合うような施術メニューを考案し続けていくのか、あるいはヘアメイクやネイルなど他の技術も磨いてマルチに活躍できるようにするのか、自分自身でしっかり判断することが大切です。
時代のニーズに合ったもの、人々が求める新しい要望に沿った商品やサービス、プランを提案し続けていくことができる人が、アイリストとして活躍していけるでしょう。
20代で正社員への就職・転職
アイリストの今後の活躍の場
男性客へのサービス拡大
現在は圧倒的に女性客が多いアイラッシュサロンですが、都心では男性専用のアイラッシュサロンもオープンしています。
強いカールにすることで親しみやしく、反対にカーブを減らしキリッとさせるなど、目元を変えることで印象を変えられることから、タレントや経営者などに広まりつつあります。
スキンケアやネイルケアが次第に男性にも浸透したように、今後より多くの男性が目元ケアに興味を抱くでしょう。
ボリューム感を重視しがちな女性に対し、男性は目元ケアにあえて「つけていない」感じを大切にします。
また、男性客は女性客に比べメイクや美容の知識が少なく、より丁寧かつ論理的なカウンセリングが求められます。
目元ケアにとりくむ男性客は、経済的ゆとりがあることが多く、一度施術を気に入ってもらうことでリピーターとなり、サロンの売上アップに寄与します。
男性ニーズを掴んだカウンセリング、提案を行うことで、他のサロンと差別化ができ、新規顧客開拓がしやすいというメリットもあります。
海外でも活躍できる
細やかな作業を得意とし、真面目で集中力の高い日本人の気質もあり、日本人アイリストの技術力は世界トップクラスとして海外でも評価されています。
海外支店をもつ日本の大手サロンや日本人経営の現地サロンも増えており、活躍の場を海外に移すアイリストも少なからずいます。
アイリストは何歳まで働ける?
アイリストの年齢層は?
アイリストは若い人に人気がある職業で、実際現場で活躍しているのは20~30代の若手女性が中心といわれています。
一方、最近では、40代でも現役のアイリストとして活躍する人もいます。
美容師と違い、アイリストは座ったまま施術を行うため、肉体的には比較的辛くないという声もあります。
アイリストが職業として一般的になってきたのは比較的最近で、働くうえで年齢の上限はないため、現在活躍する若手アイリストが今後引き続き長く働いていくことは十分に考えられます。
アイリストを続けるうえで加齢が与える影響
老眼
お客さまの目元にミリ単位の細かい調整を行いながら、まつ毛エクステやまつ毛パーマを施すアイリストにとって、視力の低下は死活問題です。
なかでも加齢によりはじまる老眼は、近くのものが見えづらくなるほか、小さいものに焦点を合わせると目が疲れてしまいます。
老眼のはじまりは個人差がありますが、目を酷使するアイリストのなかには30代から老眼の症状が始まる人も多くいます。
視力低下、老眼の進行により、アイリストを辞めざるをえないということもあります。
アイリストとして年齢を重ねても長く働くためには、早いうちから目のケアをしっかりしていくことが肝心です。
食生活に気をつけるほか、目が疲れてしまった時は、目を上下に動かしたり、ぐるぐる回したりする目の体操、目頭を指圧するマッサージも有効です。
また老眼を感じた時は、拡大鏡を使用したり、施術専用の老眼鏡を作ったりすることで対応できます。
肉体的な問題
アイリストは座って施術を行うため、美容師などと比べて体力的には比較的楽とされています。
しかし、施術は座ったまま前傾姿勢をとり続けるため、慢性的な腰痛、肩こりはアイリストの職業病とされています。
湿布やサポーター、マッサージで痛みや違和感をケアしながら働くアイリストも多いです。
一般的には加齢にともない、肉体的な問題も悪化する傾向にあり、疲労回復も遅くなるため、肉体的な辛さを原因に現場を離れるアイリストも珍しくありません。
世代のギャップ
アイリストは40代で活躍する人もいるものの、アイラッシュサロンで働くアイリストは、20~30代の若手が中心です。
また、まつ毛エクステやまつ毛パーマを楽しむお客さまの大部分も20代や30代です。
加齢に伴い、同僚やお客さまとの間に世代間ギャップが生まれ、居心地の悪さを感じてしまう人もいるようです。
さらに、サロンによっては40歳以上のアイリストがいないところもあります。
そうなると、自分が将来アイリストとして長く活躍する姿が想像できないため、モチベーションが低下することもあるでしょう。
アイリストとして長く活躍するためには、日々変化する美容トレンドに敏感であり続けることに加え、自分の目指すアイリスト像をしっかり持ち続けることが肝心です。
年齢に応じたアイリストの働き方
アイリストは、さまざまな働き方ができる仕事で、年齢を重ねても自分に合った働き方を選べばやりがいを持って活躍できます。
ここでは、年齢に応じた代表的なアイリストの働き方を紹介します。
アイラッシュサロンに勤務する場合
アイラッシュサロンの求人では、「年齢不問」というものも多いです。
技術職のため、結婚や出産で一度職場を辞めても、別のサロンに復職しやすく、生涯アイリストとして活躍することも不可能ではないでしょう。
一方、同僚のアイリストやお客さまは20代から30代前半が多いため、40代以降になると世代間でのギャップを強く感じるほか、視力の衰えなどで現場の仕事が苦になることもあります。
そのため、店長や副店長に昇格したあとは、施術から離れ、後進アイリストの技術指導、シフト管理、サロンの売上管理をするサロン内の管理職として働くこともあります。
何店舗もサロンを構える会社なら、地域マネージャーとして複数店舗を同時に管理し、会社の経営に携わるアイリストもいます。
そのような立場になると、アイリストの技術だけでなく、調整能力やマネジメント能力、対人スキルが求められます。
責任を伴う大変さはありますが、現場のアイリストの大変さやお客さまの声をよく知っているからこそ、管理職としても重宝される存在になれるでしょう。
独立開業をする場合
独立開業には保健所の許可が必要ですが、スペースや設備も大きなものは不要なため、自宅の一部をサロンとして、自分のライフスタイル、体力に合わせて働くアイリストもいます。
さらに経営に長けているアイリストの場合、従業員を雇用し、複数のサロンを展開することもあります。
しかし、どちらも集客が上手に行かない場合、売上がたたず、サロン存続が厳しくなります。
流行の変化が激しい美容業界でオーナーとして生きていくためには、SNSや情報サイトを使った情報の収集や発信も大切になります。
自分のサロンを持ちたいと思っている人は、独立支援制度などがあるサロンで技術を磨くと同時に経営ノウハウなどを学ぶといいでしょう。
講師になる場合
加齢に伴い、視力が落ち、細かい作業が思うようにできなくなった場合、講師としてアイリストの仕事に携わる道もあります。
サロン勤務とかけもちしながら働く講師もいるなか、講師のみで生計をたてるアイリストもいます。
体調の問題で1日何人ものお客様を相手にするのが辛い場合も、講師としてなら今までの技術や経験を活かしながら、十分働ける場合もあります。
「優秀な後進を育てたい」「業界全体の技術力を上げたい」という思いがある人には、やりがいのある働き方でしょう。