電気工事士の仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介

電気工事士の仕事とは

電気工事士とは、住宅や店舗、事務所、工場、病院、公共施設など、ありとあらゆる建物において、電気設備の設計・施工を手掛ける技術者のことです。

ビルなどを新築する際は、外の電柱から電線を建物内に引き込んで、各部屋に配線したり、配電盤を設置したりします。

また、既存の建物に対しては、故障した部分の修理や新たな配線の追加、またコンセントや照明、エアコンを増設などを行います。

工事するだけでなく、大規模なビルや商業施設に常駐して、エレベータやエスカレータ、変電設備、防災設備などのメンテナンスを行うこともあります。

このような電気周りの作業は危険がともなうため、電気工事士として働くには、試験を受けて国家資格を取得することが必要です。

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電気工事士の業務の内容

電気工事業務

電気工事士のおもな仕事は電気工事ですが、電気工事はおおまかに「建設電気工事」と「鉄道電気工事」に分けることができます。

建設電気工事には、外の電線を建物内に引き込む外線配線工事や、電源からVVFケーブルと呼ばれる配線を天井や壁に張り巡らせ、コンセントやスイッチと接続する屋内配線工事、空調設備工事などがあります。

一般家庭の工事を手掛けることもあれば、ビルや工場といった施設の工事を手掛けることもあり、ある程度大掛かりな工事になると、場合によっては工事前の設計作業から携わります。

一方、鉄道電気工事では、線路や信号、変電設備、踏切、駅の改札やモニター、通信システムなど、一般の建物ではなく、鉄道に用いられるさまざまな設備の工事を行います。

鉄道電気工事は、鉄道が走っている日中の時間帯に作業することは基本的になく、一般の人が寝静まっている深夜帯に行われるケースが大半を占めます。

なお、鉄道電気工事を行えるのは、厳しい基準をクリアした一部の電気工事会社のみであり、ほとんどの電気工事士は鉄道電気工事ではなく、前述の建設電気工事に従事しています。

電気工事以外の業務

電気工事士には、電気工事以外の業務も多数あります。

その代表例が「ビル管理」です。

各施設の防災センターに常駐し、自動ドアやエレベータ、エスカレータ、空調設備、ボイラーといった各種機器の監視と保守点検、電球や蛍光灯、エアコンフィルターといった消耗品類の交換作業などを行います。

こうした業務を行うためには、「ボイラー技士」など、電気工事士以外の資格が必要になるケースも多いです。

また、電気工事の現場において、仮説電柱を立てるための穴掘りやペンキ塗り、セメント補修など、電気工事とは直接関係のない仕事まで行うこともあります。

電気工事士の役割

電気工事士の役割は、その業務内容によって、さまざまなことがいえます。

・新築の建物をつくる電気工事士の役割:建築士大工、職人、内装工事業者などとチームを組んで、設計段階からアイディアを練り、新しい建物に命を吹き込んでいくこと

・既存の建物を手掛ける電気工事士の役割:クライアントやその建物の居住者の目線に立って、建物を使用する人の暮らしがより便利に、より豊かになるためのお手伝いをすること

・鉄道電気工事を手掛ける電気工事士の役割:万一にも事故を起こすことのないよう、電車本体や駅舎、踏切などの各種電気設備を点検したり修理したりすることで、数多くの利用者の人命を守ること

手掛ける仕事がなんであれ、電気は、私たちの生活にとって不可欠なインフラのひとつです。

電気工事を手掛ける電気工事士は、きわめて大きな社会的役割を担っている職業といえるでしょう。

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電気工事士の勤務先・有名な企業

電気工事は、社会のあらゆるところに需要があるため、電気工事士の勤務先も多岐にわたっています。

最も代表的な勤務先は電気工事会社ですが、各社ともある程度請け負う工事の分野・範囲を絞っているのが特徴です。

事業規模も大小差があり、街の電気店もあれば、従業員数千人の大企業もあります。

有名どころとしては、関東地方中心に総合電気設備を扱う「関電工」、関西電力子会社の「きんでん」、九州電力グループの「九電工」、東北電力グループの「ユアテック」などが挙げられます。

電気工事会社以外では、設備施工会社や建設会社、家電メーカー、ビルメンテナンス会社、通信会社なども、電気工事士の勤務先の一例です。

さらに、大規模な施設を保有する上場クラスの企業では、自社で専任の電気工事士を抱えるケースもよくあります。

工業系メーカーやインフラ企業、一風変わったところではテーマパークなどで活躍する人もいます。

電気工事士の仕事の流れ

電気工事を行う場合の電気工事士の仕事は、契約企業や個人顧客から工事依頼を受注するところから始まります。

まずは現場を下見したり、設計図面を参照したりして、どのような工事が必要なのか、問題点はどこかといったことを確認し、配線などの部材や機器類を手配し、工事スケジュールを組みます。

工事当日は、ほかの電気工事士や外部業者などと連携しながら、安全に配慮しつつ、丁寧に作業を進めます。

すべての工事が終わったら、実際に通電させて、照明が点灯する、機械が動作するなど、問題なく電気が使用できることをクライアント立ち合いの下で確認し、事務所に戻ります。

後日、完了報告書や請求書などを作成・送付すると、電気工事士の一連の業務は完了となります。

電気工事士と関連した職業

電気工事施工管理技士

電気工事施工管理技士」は、電気工事についての「施工計画」を立案し、工事が予定通りに、かつ安全に進むよう、工事現場を監督する仕事です。

ある程度の規模の大きな工事では、電気工事士は、電気工事施工管理技士の指示の下で作業に従事することになります。

電気工事施工管理技士になるには、実務経験を積んだ後に国家試験を受けることが必要ですが、電気工事士がキャリアアップのために取得することもよくあります。

なお、施工管理技士は、これまで電気工事、建築、土木、菅工事、建設機械、造園の6種類でしたが、令和元年に電気通信工事が追加されて、計7種類となりました。

電気工事士は、キャリアによっては、電気工事施工管理技士ではなく、電気通信施工管理技士を目指したほうがよいケースも生じてくると思われます。

電気工事施工管理技士の仕事

計装士

計装士の「計」は計測機器、「装」は装備を表し、計測機器や制御機器、中央監視装置などの取り付け工事、およびそれら計測機器の運転操作を行う仕事です。

それらの機械と電気設備を電線ケーブルで結ぶ配線工事を行う際には、計装士が設計を、電気工事士が実作業を担当します。

計装士のおもな勤務先は、鉄鋼、化学、石油、電気メーカーなどの大規模工場であり、同じ電気業界の職業であるものの、電気工事士よりも保守管理業務の比重がかなり大きくなります。

電気通信主任技術者

電気通信主任技術者は、NTTや3大携帯電話キャリアをはじめとする電気通信事業者に勤め、自社の電気通信ネットワークの工事をしたり、運用状況を監督したりする仕事です。

急激な社会全体のIT化の波を受けて、電気通信主任技術者の需要は近年大きく伸びており、電気工事士から電話通信主任技術者にキャリアチェンジするケースもよく見られます。

電気通信主任技術者になるには、合格率20%前後の難関国家試験をパスすることが必要です。

ただ、電気工事士は電気工事関係の基礎知識があるぶん、ほかの受験者よりかなり有利といえます。

電気工事士が独立・開業するには?

独立して働く電気工事士の仕事内容

電気工事士の仕事では、電気や設備についてのさまざまな知識が求められてきます。

感電や漏電といった事故の危険性も高いため、手掛けられるのは、電気工事士の国家資格保有者に限られています。

また、電気工事の種類は非常に豊富であり、作業内容ごとに異なるスキルや経験が求められますし、関連する国家資格も複数あります。

つまり、電気工事士は資格取得に励んだり、自身の専門性を磨いたりすることで「ほかの人にはできないこと」を増やしやすい職業といえるでしょう。

それは同時に、独立しやすい職業であることを意味しています。

このため、企業に勤めるのではなく、フリーランスとして個人で各現場を請け負う人や、スタッフを雇用して自身の電気工事会社を立ち上げる人も大勢います。

なかには、大勢の電気工事士を従えて手広く事業を展開し、すご腕経営者として活躍している人もいます。

ただし、その場合の仕事内容は、電気工事士としての実務に加えて、営業活動や広告宣伝活動、経費管理、労務管理など企業経営全般に多岐にわたるため、さまざまな能力を兼ね備えていることが必要です。

独立・開業までのキャリアパス

たとえ「第二種電気工事士」の国家資格があったところで、実務経験ゼロで独立が成功する可能性はほとんどありません。

このため、独立を志している場合であっても、まずは電気工事会社などに就職し、見習いからキャリアを積んでいくことが必要です。

数年程度の期間をかけて、さまざまな現場を経験するとともに、工事を依頼してくれるクライアントとのパイプを構築しましょう。

あわせて、請け負える工事内容をできる限り拡げるため、「第一種電気工事士」をはじめとした上位資格の取得にも励むべきです。

決してあせらず、実力、コネクション、資格など、すべての準備が整ってから満を持して独立・開業することが大切です。

なお、独立時には、電気工事業法に基づいて、各都道府県に「登録電気工事業者」として登録する手続きを行わなければなりません。

さらに、事業を安定させるためには、各電気工事工業組合に加盟して講習などを受け、電力会社の「指定業者認定」を申請することも必要です。

電気工事士が独立するメリット・デメリット

電気工事士が独立するメリットとしては、仕事の自由度が大きく上がることが挙げられます。

個人で働き、自身の得意な工事、興味のある工事だけを請け負うこともできますし、多くのスタッフを束ねて、大規模な工事を請け負うこともできます。

やり方次第では、雇われ時代では望めなかったような高収入を稼ぐこともできるかもしれません。

一方、独立するデメリットは、上述したとおり、電気工事以外のさまざまな仕事も基本的に自分で行わなければならないことです。

会社に勤めていれば、経費精算や税金、社会保険などは会社に任せて、自分は作業だけに集中することができますが、独立していると、そうした付帯作業もすべて自分で処理しなくてはなりません。

さらに、仕事を取ってくるための営業活動も必要です。

人付き合いなどが苦手だと、腕があっても仕事がまわってこないという事態も十分に想定されます。

独立には、たしかに魅力的な側面も数多くありますが、同時に高いリスクもつきまといますので、きちんと自身の能力や適性などを見極めて、慎重に判断するべきでしょう。

独立して働く電気工事士の給料・年収

独立して働く電気工事士の給料は、自身の実力や、個人・法人といった経営形態などによって差が大きくなりますが、およそ年収500万円~600万円が相場とされています。

電気工事士全体の平均年収が約480万円であることを考えると、さまざまなリスクを抱えるぶん、高収入を得やすいようです。

営業手腕や経営手腕に秀でている人のなかには、年収1000万円以上に達しているケースもみられます。

ただし、誰もが成功できるわけはありませんし、とくに独立直後から軌道に乗るまでの数年間は、どんな人であっても経済的にかなり苦しくなりがちです。

当面は、預貯金だけで生活できるよう、資金的に余裕をもった状態で独立することが望ましいでしょう。