電気工事士の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「電気工事士」とは
一般住宅やビル、店舗など、あらゆる建物の電気設備の設計・施工を担当する技術者。
電気工事士とは、一般住宅やビル、店舗、病院、工場など、あらゆる建物の電気設備の設計・施工を行う技術者です。
建物に電気配線や配電盤の据え付けを行ったり、新たな電気設備を追加したりと、ほかの建設作業と連携しながら作業を進めます。
電気工事では専門的な技術が要求され、また危険な作業もあることから、「電気工事士」の国家資格を取得した人だけが行えるものとなっています。
電気工事士資格には「第一種」と「第二種」の2種類があり、第二種が一般住宅や小規模の店舗、第一種がビルや工場といったように、それぞれ手掛けられる業務範囲が異なります。
電気工事会社などに勤務する人の平均年収は400万円〜500万円程度と想定されますが、経験・技術がある人ほど収入は上がりやすく、独立して高収入を得ている人もいます。
電気工事の需要は安定しており、将来性も十分ある仕事といえるでしょう。
しかしながら、一人前になるまでは下積み期間が必要で、現場で地道に技術を身につける努力が求められます。
「電気工事士」の仕事紹介
電気工事士の仕事内容
あらゆる建物や鉄道の電気設備の工事を行う技術者
電気工事士とは、住宅をはじめ、ビルや病院、工場などのあらゆる建物における電気設備の設計・施工を行う技術者のことです。
おもに設計図面に従った電気配線・配管、電気設備・機器の取り付けなどを行いますが、大小さまざまな規模において電気工事は必要となるため、作業内容は多岐にわたります。
また、建物以外では、鉄道(線路や信号、変電設備など)に用いられる電気工事を手掛ける技術者もいます。
現代社会において、もはや電気のない生活は考えることができません。
電気工事士は、わたしたちの生活を支えるライフラインを構築するための工事に携わる、社会的意義の大きな仕事に携わっています。
技術者として経験を積み、より幅広い業務に従事する人も
電気工事士の業務では専門的な知識・技術が要求され、同時に高所での作業がともなうなど、危険な作業に従事する場合があります。
こうしたことから、電気工事に従事するための資格や義務は法律によって厳格に定められており、そのために必要な資格を取得した人のことを「電気工事士」といいます。
人によっては「ボイラー技士」など電気工事士以外の資格をあわせて取得し、ビルの防災センターにて、各種機器の監視や保守点検などの業務に携わる人もいます。
また、電気工事士として経験を積み「電気工事施工管理技士」の資格を取得すれば、電気工事の施工計画を立て、工事現場を監督する仕事もできるようになります。
電気工事士になるには
まずは「第二種電気工事士」資格取得を目指す
電気工事士として働けるのは、国家試験を受けて、電気工事士の資格を取得した人のみとなっています。
そのため、未経験からこの職業に就きたいのなら、まず「第二種電気工事士試験」を受験して、合格を目指しましょう。
この試験には年齢制限がありません。
なお、中学生や高校生が進路を考える場合には、工業高校や高等専門学校、電気系専門学校、大学の工学部などで電気関係の勉強をするのがおすすめです。
これらの学校で指定された電気工学に関する科目を履修すると、第二種電気工事士試験の筆記試験が免除されます。
学校に通わず、独学で勉強して資格取得することも可能ではありますが、学校で電気関連の基礎的な知識・技術を身につけておけば、仕事を始めてからも役立つでしょう。
電気工事士の就職・キャリアパス
電気工事士の代表的な就職先は、電気工事会社です。
第二種の資格を取得した新入社員は、先輩や上司の指導の下、見習いとして働き始めます。
なお、資格を持たずに就職することも可能ではありますが、作業内容は限定されるため、早めに第二種資格を取得するのが望ましいです。
その後、一定の実務経験を積むと、より幅広い電気工事ができるようになる「第一種電気工事士」の資格を取得する人が多いです。
さらに「電気工事施工管理技士」や「電気主任技術者」など上位の資格取得に励んで、仕事の幅を広げていくことができます。
電気工事士の学校・学費
学歴は関係なく、高卒で電気工事会社へ就職する人も多い
電気工事士になるにあたって、学歴はほとんど重視されません。
電気工事士に従事するためには、まず「第二種電気工事士」の試験を受けて資格を取得する必要がありますが、この試験には学歴制限がないため、どのような学歴の人でも受けることが可能です。
ただし、学校で電気関係の勉強ができる学校に通えば、実務でも役立つ知識が学べます。
電気工事士を目指す人におすすめの学校は、工業高校、高等専門学校、電気系専門学校、大学の工学部などです。
なお、第二種電気工事士試験を受ける人は、最終学歴が「高卒」の人も非常に多いことが特徴です。
電気工事士は高い学歴よりも、技術者としてどれだけ専門的な技術を身につけていけるかが重視される職業であるため、早く働きたい人は、高校卒業後すぐに就職を目指すのもよいでしょう。
電気工事士の資格・試験の難易度
「第一種」と「第二種」で手掛けられる工事の規模が異なる
電気工事士は国家資格であり、その種類は「第一種」と「第二種」があります。
それぞれ、手掛けられる工事の規模が異なることが特徴です。
<第一種電気工事士>
第二種電気工事士が行える電気工事に加え、最大電力500キロワット未満の大規模な電気工作物の工事を行うことができます。
<第二種電気工事士>
600ボルト以下で受電する一般家庭用電気工作物に対してのみ、電気工事を行うことができます。
第一種電気工事士の資格を取得すれば、一般住宅や店舗など小規模な工事に加え、ビルや工場など、大きな電気工事まですべて携われるようになります。
第一種の免状交付を受けるには実務経験が必要
電気工事士国家試験は、第一種・第二種ともに、学歴・年齢などの受験資格が設けられていません。
ただし、第一種は試験合格後の免状交付に条件が課されており、「電気工事の実務経験5年以上」もしくは「電気工事士の実務経験3年以上かつ大学または高等専門学校で所定の課程を修め卒業していること」を満たす必要があります。
このため、まずは第二種資格を取って電気工事会社などへ就職し、数年の実務経験を積み、その先に第一種試験を受けるのが一般的なキャリアパスです。
第二種試験はそこまで難しいものではなく、独学でも十分合格可能とされています。
なお、電気工事士の上位資格に位置づけられるものとして、「電気主任技術者」や「電気工事施工管理士」があります。
電気工事士の給料・年収
見習い時代の給料は低めだが、経験を積めば昇給する
厚生労働省の令和2年度賃金構造基本統計調査によると、電気工事士の平均年収は41.7歳で577万円ほどとなっています。
国家資格が必要な技術職ということもあり、民間会社員の平均年収よりはやや高めの水準です。
ただし、いわゆる「技術職」であるため、まだ経験が浅い新人や若手の電気工事士と十分な経験を積んだベテランとでは、大きな収入差が出やすい職業でもあります。
仕事を覚える段階においては、各職場で「見習い」とみなされることも多く、年収は300万円ほどとなることもあるでしょう。
しかし、電気工事士をはじめとした業務関連資格の取得、手掛けられる業務内容、またポジションや役職によって、手当が付いたり、昇給したりするケースが目立ちます。
技術力の高い人材は好待遇で働ける
電気工事の需要が高まっている一方、技術者の高齢化や少子化の影響などによって、電気工事士の人数自体は不足気味です。
そのため、各社はできるだけ待遇面を向上させ、なり手を増やす方向に動いています。
たとえば資格手当を厚くしたり、有給休暇を取得しやすくしたり、直行直帰可としたりするなど、「働きやすさ」をアピールして人材の確保に努めています。
スキルの高い電気工事士はとくに優遇されやすいため、技術力を磨けば大きな収入アップが望めますし、上位資格を取得し人脈を構築することで独立し、さらに高収入を実現することも可能です。
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電気工事士の現状と将来性・今後の見通し
安定した需要があり、新しい分野にも活躍の場が広がる
現在の電気工事業界は、全体として伸びを見せており、追い風の状態にあるといえます。
もともと「電気」はインフラの一種として不可欠なものであり、その工事を専門に手掛ける電気工事士は安定した需要があります。
加えて、昨今は太陽光発電などのエコ製品の普及、電気自動車の拡大に伴う充電施設の増加、オール電化システムの設置ニーズ増大などによって、電気工事士が求められる機会が増えています。
電気工事の多くが電気工事士の有資格者しかできないということも、電気工事士の強みといえるでしょう。
この先も、電気通信関連や防犯関連の設備工事、リフォーム関連の仕事など、伸びていくことが予想される電気工事の分野はいくつも考えられます。
最先端技術に対応できるスキルを身につけるのは大変ですが、自身の努力次第では技術者として高く評価されますし、独立開業して新たな事業を立ち上げることも可能です。
若手も多く求められているため、これから目指す人にもチャンスは存分に残されているといえます。
電気工事士の就職先・活躍の場
電気工事会社を中心に、建設や設備系の会社でも需要がある
世の中の建物の設備・機材のほとんどが電気を使って動いているため、電気工事士の活躍の場は多岐にわたります。
最も代表的な就職先は電気工事会社です。
街の電気店さんから従業員数千人の大企業まで、その規模や事業内容はさまざまです。
また、ひとことで「電気工事」といっても、その具体的な工事内容は非常に幅が広いため、企業ごとにある程度範囲を絞って営業するところが目立ちます。
このほかには、設備施工会社や建設会社、家電メーカー、ビルメンテナンス会社、通信会社などでも、電気工事士が活躍しています。
また、電気関連の事業とは関係のない企業でも、大規模な施設を保有する企業を中心に、自社に専任の電気工事士を抱えるケースもよくあります。
電気工事士の1日
現場に出向いて作業をすることがほとんど
電気工事士は、1日のほとんどすべての時間を、現場での電気工事作業に費やします。
ひとつの現場の工期はそれぞれで、1日のみの数時間で終わる現場もあれば、数ヵ月を要する現場もあります。
常に仕事をする現場の状況をよく把握して、安全に留意しながら、確実に作業を進めていきます。
基本的に作業は日中に行うため、朝は一般的なオフィスワークよりもやや早めとなるぶん、日が暮れる頃には作業を終えることが多いです。
ここでは、電気工事会社に勤務し、一般住宅の電気工事を手掛ける電気工事士のある1日の例を紹介します。
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電気工事士のやりがい、楽しさ
社会を支える重要な仕事に技術者として携わっていけること
電気は、世の中のありとあらゆるところで用いられているインフラのひとつです。
とくに近年は、スマートフォンの普及やオール電化などにより、ますますその重要性が高まっており、わたしたちの生活は、もはや電気なしでは成り立ちません。
そうした社会に対する責任の大きさ、社会貢献度の高さは、電気工事士として働くやりがいにつながります。
また、技術職として自分が身につけた知識・技術を存分に発揮して活躍できることに、誇りをもっている電気工事士は多くいます。
仕事内容も幅広いため、地道に努力を続けて難しい工事を手掛けられるようになると、ますます仕事が楽しくなっていきます。
将来的には「電気工事施工管理技士」の資格を取得して現場監督になる道や、独立・開業する道もあり、多様なキャリアパスを描いていきやすいことも魅力です。
電気工事士のつらいこと、大変なこと
体力的な負担が大きく、現場には厳しさもある
電気工事士の仕事は、現場での工事作業がそのほとんどを占めます。
現場仕事は基本的にどのようなものでもハードですが、とくに電気工事を行う現場は、まだ建設中などで電気が通っていないところが非常に多いです。
つまり、冷房や暖房は使えず、建物が何階建てであろうとエレベータやエスカレータも動かないといったことがよくあります。
暑さ寒さに耐えながら長時間作業をすることや、重い道具や材料を持って移動することは、電気工事士にとってつらいことのひとつです。
ある程度体力に自信がないと、仕事を長期的に続けていくのが難しくなってしまうかもしれません。
また、電気工事士が働く現場は上下関係が厳しいところが多く、とくに新人や若手のうちは、先輩・上司から厳しく叱責されたり怒鳴られたりすることもあるでしょう。
男性が多い職業であるため、独特の人間関係の厳しさになじめずに、思い悩んでしまう人もなかにはいます。
電気工事士に向いている人・適性
電気工事に対する興味が強く、慎重で丁寧に物事を進められる人
電気工事士になると、机に向かって行うデスクワークよりも、現場で手と体を動かしながら作業をする時間のほうが圧倒的に長くなります。
専門的な知識と高度な技術を駆使して働くため、まずは電気工事そのものにどれだけ関心をもてるかが、技術者として成長していくためには大切です。
小さい頃からラジコン模型やパソコンなどの機械いじりが好きだった人、電気関連の設備のしくみに興味がある人は、電気工事士に向いているといえるでしょう。
また、電気工事は作業方法や手順を間違えると、感電や漏電による重大な事故を引き起こす可能性があります。
したがって、安全面には十分過ぎるほど注意して、慎重に物事を進めなくてはなりません。
仕事が早いけれども仕上がりが雑という人よりは、仕事が遅くても几帳面に何度も作業工程を確認する、多少心配性なくらいの人のほうが、電気工事士には向いています。
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電気工事士志望動機・目指すきっかけ
機械いじりが好きで、社会インフラを支えたいという思い
電気工事士を目指すきっかけはさまざまですが、幼い頃からものづくりや機械いじりが好きだった人が多いようです。
模型やプラモデルをつくるのが好きだったり、車やバイクといった機械への関心から、電気工事士を目指していく人が目立ちます。
技術系の職業はさまざまありますが、とくに電気工事士は、わたしたちの生活の基盤となる「電気」を専門にします。
社会インフラを支える貢献度の高い仕事がしたいという思いも、電気工事士の志望動機としてよく聞かれる内容です。
電気工事士は、なるまでの努力ももちろん大切ですが、一人前になるために、長い修業期間を乗り越えなければなりません。
強い意思と目標をもって、目指していくことが非常に大切です。
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電気工事士の雇用形態・働き方
従業員として経験を積んだ後に独立する人もいる
新たに電気工事士になった人のほとんどは、まず電気工事に関連する会社に就職し、その従業員として勤務します。
雇用形態は正社員もしくは契約社員が目立ちます。
正社員の場合は、給料が「月給制」となっていることが多く、スキルや経験に応じて設定された金額が毎月支給されます。
社内教育を受けて徐々に現場経験を積んでいき、順調にステップアップすると、リーダーやマネージャーなど役職につく人も増えていきます。
一方、契約社員は一定期間の定めの中で働きますが、働きぶりが評価されれば、そのまま正社員登用されるケースも少なくありません。
また、十分な専門知識や技術力を備えると独立し、個人で仕事を請け負う人もいます。
独立した電気工事士は、企業と業務委託契約を結び、案件ごとに報酬をもらう形で仕事をしたり、一般住宅のお客さまから直接依頼を受けて作業を行ったりしています。
電気工事士の勤務時間・休日・生活
勤務先によって勤務時間も休日も異なる
電気工事士の勤務時間は、建物の工事を手掛ける場合は、日中に働くことがほとんどです。
朝はやや早めになることもありますが、日が暮れるころには現場作業を終えて会社に戻るか、そのまま家に帰ります。
一方、ビル管理会社で勤務する場合は、日勤だけでなく夜勤が含まれることもあります。
とくに病院や工場など、24時間対応が必要になる施設を管理する場合は、どうしても夜勤の発生頻度が高くなるでしょう。
また、鉄道電気工事を手掛ける場合には、電車が動いている日中には作業できないものが多いため、深夜帯に仕事をすることが多くなります。
休日は、完全週休2日制のところもあれば、日曜日・祝日としているところもあるなど、会社ごとに異なります。
基本的に、電気工事は計画通りに作業を進めるため、長時間の急な残業はさほど発生しません。
ただし、どのような工事を手掛けるのかや、工事の納期によっても状況は大きく変わってくるため、場合によっては激務になることも頭に入れておいたほうがよいでしょう。
電気工事士の求人・就職状況・需要
人手不足の影響もあり、就職状況は良好
電気工事のニーズの高まりによって、電気工事士の求人数は増えています。
就職先として最もメジャーなのは、電気工事会社や建物の設備施工会社です。
日本全国に数多くの工事会社があり、個人経営の小さな業者から巨大資本をもつ電力会社のグループ企業まで、規模の大小も違えば、事業内容もそれぞれ異なります。
まずは自分がどのような場所で、どのような電気工事を手掛けたいのかをイメージして、就職先を探していくとよいでしょう。
続いてビル管理会社でも、電気工事士の求人はよく見られます。
ビル管理会社で働く電気工事士は、委託を受けたビルや商業施設、公共施設、病院などの設備監視や定期点検、故障や修理対応などを行います。
このほか、金属メーカーなど大きな工場をもつ企業に勤務し、自社の設備管理に携わる電気工事士もいます。
さらにはテーマパークの運営企業に就職して、アトラクションのメンテナンスに携わる人もいるなど、電気工事士の就職先はバラエティに富んでいます。
電気工事士の高齢化が進むなか、次の世代を担う若手技術者の育成は業界として重要な課題となっており、就職状況は良好です。
電気工事士の転職状況・未経験採用
転職希望者も歓迎されやすく、未経験でもチャレンジできる
IT化の急速な進展、太陽光発電や電気自動車、オール電化住宅といった新製品の普及などにより、社会全体で電気工事の需要が高まっています。
一方、電気工事士の高齢化が進み、若手のなり手が減少していることもあって、業界として人手不足が課題となっています。
こうしたことから、新卒社員だけでなく、転職希望者を積極的に受け入れる電気工事関連会社は多く見られるようになりました。
国家資格が必要な職業ではありますが、入社時点では無資格かつ実務未経験でもOKという職場は多々あります。
熱意さえあれば、イチから学び、キャリアを築いていくことは十分に可能です。
ただし、電気工事士は転職自体のハードルは低めでも、一人前の技術者になるにはそれなりの時間がかかります。
また、覚えるべきことが多く、現場作業でハードワークとなってくるため、できるだけ若い人材のほうが好まれるのも確かです。
未経験で転職するなら、なるべく20代のうちに決断するのが望ましいといえます。