アニメーターになるには
アニメーターを目指そうと思い立ったものの、どうすればなれるのか悩んでいる人もいるでしょう。
気になるのは、どのような学校へ進めばよいのか、有利になる資格はあるのかといった点ではないでしょうか。
本記事では、アニメーターになるまでの道のりを説明します。
アニメーターになるまでの道のり
アニメーターは、特別な資格や学歴が必要な仕事ではありません。
一番に求められるのは、プロとして仕事をこなせるだけの画力です。
もし十分なスキルが備わっているのであれば、今すぐに仕事を始めることも不可能ではありません。
しかし、ひとくちに画力といってもデッサン力や画面構成力などさまざまなスキルが必要なので、ただ人と比べて絵が上手という程度では務まりません。
画力は独学で向上させることもできますが、多くの人は学校に通いスキルを身につけています。
高校卒業後に入学できる以下のような学校で学べば、アニメーターになるのに必要な基礎的なスキルは身につくでしょう。
- アニメーションの専門学校
- 美術系大学
- アニメーション学科のある大学
その上で、アニメーションの制作会社やスタジオに就職し、アニメーターとしての一歩を踏み出す人が多いです。
20代で正社員への就職・転職
アニメーターの資格・難易度
アニメーターになるために必要な資格は特にありません。
ただし、近年はデジタルやCGを用いてアニメーションを作る機会が増えているため、公益財団法人 画像情報教育振興協会が主催する「CGクリエイター検定」などを取得し実力をアピールする人も多いようです。
こうした検定は専門学校などで取得を奨励している場合もありますので、自分の特技や興味に合わせて取得するとよいでしょう。
参考:CGクリエイター検定(公益財団法人 画像情報教育振興協会)
アニメーターになるための学校の種類
アニメーターの学校といえば、以前はアニメーション系の専門学校に進むのが一般的でしたが、近年は4年制大学でも、アニメーション学科を置く学校が増えてきています。
専門学校は2年制が一般的ですが、なかには1年制や大学同様に4年制で学べる学校もあります。
学校によって雰囲気やカリキュラムは大きく異なるため、よく比較検討することが大切です。
20代で正社員への就職・転職
アニメーターに向いている人
アニメーション制作の現場は非常に過酷です。
特に動画マンは給料も低く、長時間労働が当たり前です。
アニメが好き、絵を描くのが本当に好きで、繰り返しの作業に耐えられる忍耐力と、長時間労働ができる体力のある人でないと続けることが難しい仕事です。
また動画マンから原画マンへと昇格するためには、センスやデッサン力が必要です。
学校などに通い基礎をしっかりと見につけておくほか、現場でも先輩などから学ぶ姿勢を持たなくてはならないでしょう。
アニメーターのキャリアプラン・キャリアパス
アニメーション制作会社などに就職すると、まずは原画と原画の間の絵を描く「動画マン」として仕事がスタートします。
動画マンとしてスキルが認められると原画を描く「原画マン」へとステップアップすることができ、さらに実力がつけば、作画監督へと全体を取り仕切る立場に変わっていきます
アニメーターの働き方・雇用形態
アニメーターの雇用形態
フリーランスが一般的
アニメーターの雇用形態は多くが業務委託(フリーランス)です。収入もどれだけの枚数や本数を描いたかによって決まります。
いわゆる出来高制・歩合制がほとんどで、正社員として勤め固定給を得られる人はほんのわずかです。
また制作会社やプロダクションに所属していたとしても、製作費を抑えるために最低限の基本給+歩合制としているところも多く、企業に所属しているからと言って安定した収入を得られるとは限りません。
不安定な立場に置かれる新人アニメーター
2016年度に行われた「AEYAC 若年層アニメーター生活実態調査」によると、勤務形態では「個人事業主(スタジオ所属)」と回答した人が最も多く68.6%と過半数を占めています。
次いで多いのが「契約社員」の19.0%で「正社員」はわずか7.2%、「個人事業主(自宅作業)」は5.2%となっています。
収入に関しても「完全出来高」が 46.4%で最も多く、次いで「固定給+出来高」の39.3%固定給のみで収入を得ている人は13.3%しかいませんでした。
これにより、新人アニメーターの多くは非正規として働き、さらに作業量が賃金に直結するという非常に不安定な立場であることがわかります。
フルタイムで働きながら十分な賃金を得られていないアニメーターも多く、こうした不安定な雇用形態も日本のアニメ業界の問題といえます。
正社員のアニメーター
アニメーターとして正社員で活躍できる人は、本当に限られた人のみです。
大手の会社では正社員のアニメーターを採用するところもありますが、中小の制作会社やプロダクションの場合はキーとなるアニメーターやキャラクターデザイン、作画監督のようなスキルがある人だけを正社員として雇うところも少なくありません。
ただし、契約社員やフリーランスとして働いていたとしても、実力が認められれば正社員として働けるチャンスはあります。
また、契約している制作会社で直接正社員として採用されるのではなく、他社から引き抜きの声がかかる場合もあります。
契約社員のアニメーター
契約社員のアニメーターは、制作会社やプロダクションに所属し、基本的には社内で仕事をします。
作品ごとに仕事を請け負いますが、仕事量は一定の量が確保されているので、フリーランスとして働くよりは安定した立場です。
しかし、雇用期間が定められているため、延長されなければ働き続けることはできません。
さらに、基本給+出来高制としているところが多く、安定した収入に直結するものではないということを覚悟しておきましょう。
フリーランスのアニメーター
フリーランスのアニメーターの場合、作品ごとではなく各話数ごとに仕事を受けることが多く、制作状況により常に仕事があるとは限りません。
ひとつの仕事は短ければ1週間や数日の場合もあり、ときには1カットごと1日単位で契約することもあります。
多くの場合は制作会社やプロダクションと契約を結んで仕事をしますが、このように細切れの契約が多く実際には契約条件があいまいになっているという問題もあります。
フリーランスの場合は残業代や深夜労働手当なども支給されません。
フリーランスのアニメーターが多い理由
フリーランスで働く人はさまざまな業界にいますが、アニメーターの場合は半数以上がフリーランスであるともいわれています。
アニメーション制作会社は、1つの作品を作るのに長期間かかるため、次の作品をつくるまでに時間が空いてしまい、仕事がない時期が発生します。
仕事のない時期があるアニメーターを正社員で雇うよりはフリーランスとして仕事のある時だけ雇うほうが人件費削減になるのです。
フリーランスのアニメーターのメリット
フリーランスのアニメーターの場合、自分の好きな制作会社や好きな作品を選んで仕事をすることができます。
また、フリーランス全般に言えることですが正社員のように勤務時間や休日などにとらわれず、好きな時間・好きな場所で働くことができます。
仕事が多く締切が迫っているときには徹夜をしたりスケジュールを調整したりして間に合わせなくてはなりません。
しかし、そうではないときは適度に休憩をしたり自分の好きなことをしたりできるのがフリーランスのメリットです。
フリーランスのアニメーターのデメリット
フリーランスのアニメーターの場合、社員のように固定給がもらえるわけではなく仕事ごとに定められた報酬が収入となります。
アニメーターの場合は「1枚あたり○○円」という歩合制が一般的で、会社による社会保険制度などの保証もありません。
一般的な正社員に比べれば不安定な働き方ですが、逆を言えば実力が認められればどんどん仕事を任せられ、収入アップにつながります。
フリーランス集団のスタジオ
同じフリーランスのアニメーターが集まって一緒にスタジオを借りることもあります。
集団でいると普通の組織のようにも見えますが、あくまでも個々がそれぞれ別々に会社と契約しているフリーランス集団です。
基本的にはまったく違う仕事をしていながらも、以下のようなメリットがあり、こうした働き方はアニメーターから人気を集めています。
業界の最新情報を共有
アドバイスをし合える
スタジオに通うことでメリハリのついた生活ができる
アニメーターが独立してフリーランスになるには?
アニメーターが独立してフリーランスとなる場合は、会社の後ろ盾がなくなっても、仕事がもらえるように準備しておかなくてはなりません。
まずはアニメ制作会社に就職しスキル・経験を積む必要があります。
実力が認められ仕事をどんどん任せてもらえるようになれば、制作会社勤務のときよりも収入をアップさせることも可能です。
ただし、この業界はアニメ制作会社やプロダクションに所属することができず、あくまで下請けとしてフリーランスで働いている人も多くいます。
そうした人たちと明確な区別がつけられるスキルが求められます。
アニメーターに必要な画力は? 独学で練習できる?
アニメーターに必要な画力
デッサン力
人・動物・建物・食べ物など、アニメーターは世の中のありとあらゆるものをさまざまな角度から描ける力が必要です。
アニメーターはコマ単位で絵を描いていかなければならないため、普通に生活していては見逃してしまいそうな瞬間も、絵に起こせなければならないのです。
そのためには日ごろから観察力を高めて、気になるものがあればすぐにデッサンをする練習が役立つでしょう。
デッサン力は毎日訓練することで確実に上達しますし、いわゆる「アニメ画」以外のものを描くことも、画力を高めることにつながるといわれています。
クリーンアップ
鉛筆で美しい線を描く「クリーンアップ」ができるようになることも必要です。
クリーンアップとは、粗い線で描かれた原画を清書する作業のことで、動画の仕事を始めたら、まずはこの作業を任されるのが一般的です。
クリーンアップは、作画の工程においてとても重要な要素です。
しかし、ただ線を描くだけといっても原画のニュアンスを崩してはいけませんし、彩色のために線が途切れてはいけないなどの制約があり、慣れるまでには時間がかかります。
レイアウト・パースのスキル
レイアウトやパースに関するスキルも欠かせません。
キャラクターを上手に描けるだけでなく、背景をどう描くか、画面をどのように構成するかは、作画の際の重要な要素となります。
構図に関連する専門書籍などを見ながら、地道に練習することが大切です。
独学でアニメーターになれる?
学歴は関係なし
アニメーターを目指す上では、基本的に学歴を問われません。
有名なアニメーション専門学校や美術系の大学で学んだ経歴があっても、実力がなければバッサリと切られてしまう世界です。
逆に言えば、絵を描くスキルさえあれば独学であろうとアニメーターになることは十分可能といえます。
ただし、制作現場で求められる最低限のスキルを独学で身につけるのは難しいため、独学は人一倍の努力が必要と考えておきましょう。
作品を持ち込む
アニメーターを目指す上で必要な絵のスキルや練習方法については、書籍やインターネットで情報を集めることが可能です。
ただし、自分の描いた絵の良し悪しを客観的に判断するのは非常に難しいものです。
学校に通うメリットのひとつは、独りよがりにならず、人から自分の絵についてアドバイスしてもらえるという点にあります。
もし独学で絵の練習を重ねていくのであれば、一度自分で描いた絵を制作会社やスタジオに持ち込んで、プロに見てもらうのがよいでしょう。
大手制作会社は受け付けていないことがほとんどですが、中小の制作会社やプロダクションであればアニメーターを常時募集している企業もあります。
アニメーターを目指せる年齢は?
アニメーターとして明確な年齢制限はありませんが、高校卒業後に専門学校や大学を卒業し就職するとなると、20代半ばごろまでを採用の目安としている会社が多いようです。
まずは下積みからスタートするため、年をとると収入や体力的につらい面があることも否めません。
また学校に通ってもそれだけで就職できるわけではなく、最終的には自分の画力をアピールして認められる必要があります。
逆を言えばいくら人手不足の制作会社でも、必要最低限の力がなければ雇ってもらえません。
そのため、どの学校に通うのかを考えることも大事ですが、アニメーターになりたいという強い気持ちと、普段からたくさんの絵を描くなどして、技術を向上させる姿勢が欠かせません。
アニメーターになるにはのまとめ
アニメーターに求められるのは、資格や学歴ではなく、プロとして仕事をこなせるだけの画力です。
多くの人は学校に通いスキルを身につけています。
以前はアニメーション系の専門学校に進むのが一般的でしたが、近年は4年制大学でも、アニメーション学科を置く学校が増えてきています。
アニメーション制作会社などに就職すると、まずは原画と原画の間の絵を描く「動画マン」として仕事がスタートし、原画マンを経て作画監督などへとステップアップしていきます。
明確な年齢制限はありませんが、高校卒業後に専門学校や大学を卒業し就職するとなると、20代半ばごろまでを採用の目安としている会社が多いようです。