アニメーターの仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「アニメーター」とは
絵コンテに従い、アニメーションの基となるキャラクターや背景の絵を細かく描く。
アニメーターとは、アニメ制作会社や制作プロダクションにおいて、アニメーションの基となる1枚1枚の絵を描く人のことです。
アニメーターは、動画の基本となる原画を描く「原画マン」と、原画と原画の間の細かなコマの絵を描く「動画マン」に分かれており、通常、新人は動画から描いて経験を積んでいきます。
アニメーターになるための決まったルートはありませんが、美術系の大学やアニメーター養成のコースがある専門学校でデッサンやデザインの基礎を学び、アニメ制作会社に入社するルートが一般的です。
最近ではソーシャルゲームやスマートフォンアプリでも、アニメーターが活躍する例が増えています。
しかし、業界全体としては人件費が安い海外に作画の仕事を任せる流れが加速し、国内のアニメーターの待遇改善が望まれています。
「アニメーター」の仕事紹介
アニメーターの仕事内容
アニメーションのキャラクターや背景を細かく描いていく
アニメーターとは、おもにアニメーション作品で使われるキャラクターや背景などの動きを、1枚1枚の絵に描いていく人のことです。
アニメーション制作は複数の工程があり、そのうちアニメーターは「作画」と呼ばれる部分を担当します。
アニメーターが描く絵は「原画」と「動画」の2種類があり、原画とはアニメーションの動きの中でポイントとなる絵、動画は原画と原画の間に挟まる絵を指します。
現場では、原画を描く「原画マン」と動画を描く「動画マン」が別々に存在し、新人はまず動画から担当し、キャリアを重ねていくのが一般的です。
動画がしっかり描けるようになると、そのうち原画を任されるようになり、さらに原画マンとしても実力が認められれば「作画監督」といって、原画マンや動画マンのリーダー的な立場の仕事ができるようになります。
現場は分業で作業が進められる
1つのアニメーション制作には、多数のアニメーターが関わることも多くあります。
現場では分業しながら作業を進めますが、同じ作品のなかで別の人が描いたように見えてしまっては困るため、アニメーターたちはすでに用意されている「キャラクター表」や「絵コンテ」を参考にしながら描きます。
そして、最終的な微調整やチェックは作画監督が行います。
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アニメーターになるには
専門学校や大学などで絵の勉強をする人が多い
アニメーターに一番に求められるのは、プロとして仕事をこなせるだけの「画力」です。
画力は独学で向上させることもできますが、一般的には学校に通ってスキルを身につける人がほとんどです。
アニメーションの専門学校や美術系大学、アニメーション学科のある大学に通うことで、アニメーターになるのに必要な基礎的なスキルを習得できます。
専門学校等では単純に上手な絵を描く勉強だけでなく、アニメーション制作で求められること、仕事の流れなども学ぶことができ、より実践的な能力を身につけられます。
現場に入ってからも修業の日々が続く
アニメーターは、アニメーションの制作会社やプロダクションに就職し、キャリアをスタートする人が大半です。
最初は原画と原画の間の絵を描く「動画マン」としての役割を任されます。
その後、十分な力があると認められれば「原画マン」にステップアップし、さらに実力がつけばアニメーター全体を取り仕切る「作画監督」を目指すことができます。
一人前のアニメーターになるまでには時間がかかるため、現場に入ってからも、地道に修業を積む気持ちで仕事に打ち込む姿勢が求められます。
アニメーターの学校・学費
アニメーション系の専門学校に進学する人が多い
アニメーターを目指す人が一般的に通う学校は、アニメーション系の専門学校もしくは美術系の大学です。
アニメーション系の専門学校では「アニメーション科」や「アニメーション映像科」などがあり、アニメーター志望者向けのカリキュラムの下、基礎からみっちりとアニメーションの勉強をすることができます。
演出や制作進行、キャラクターデザインなどまで幅広く学べる学校もあり、卒業後の就職を意識した実践的なスキルを身につけやすいのが特徴です。
学費は年間で100万円~150万円ほどが相場ですが、学校によってまちまちであり、諸経費などが別途かかる場合があります。
美術系の大学に進学する人も
美術系の大学でも、アニメーションに関して学べる学科やコースを置くところは増えています。
大学ではデザインの理論・歴史など、美術に関する知識を幅広く体系的に理解しやすく、一般教養まで総合的に学べる環境があります。
専門学校の多くが2年制なのに対し、大学は4年間かけてじっくりと学び、学生生活を満喫しやすいこともポイントです。
就職先によっては「大卒」の学歴が強みになることもあります。
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アニメーターの資格・試験の難易度
資格よりも画力や経験が問われる世界
アニメーターを目指すうえで、特別な資格は必要ありません。
この職業で最も必要とされるのは「画力」であり、基礎的な画力さえ身につければ、だれでもアニメーターとして踏み出せる可能性があります。
独学でも絵の練習はできますが、自分の描いた絵の良し悪しを客観的に判断するのは難しいです。
できれば学生時代に自分で描いた絵をプロに評価してもらう機会を多く作ることが大切で、独学の場合も、ある程度の自信がついてきたら制作会社やスタジオに持ち込んでみるとよいでしょう。
大手制作会社は受け付けてくれないことが多いですが、中小の会社であれば会ってくれる可能性が高く、熱意やセンスが認められればそこから就職につながることもあります。
アニメーターの給料・年収
歩合制で収入を得ている人が多い
アニメーターはフリーランスとして働く人が多いため、給料は基本的に「歩合制」です。
制作会社やスタジオに所属していてる場合でも、正社員や契約社員でない限りは、月給として安定した給料がもらえない場合が多いです。
たいていの場合は、単価が「1枚あたりいくら」と決められており、収入を上げるにはたくさんの絵を描くしかありません。
仕事をこなせばこなすほど収入は増えますが、新人のうちは多くの仕事が得られず、月に5万円から10万円程度しか稼げない人もいます。
さまざまなデータを基に見ていくと、アニメーター全体の平均年収は250万円~400万円ほどと推定できますが、人によってかなり差がつきやすいのがアニメーターの特徴です。
若手のうちは厳しい生活になる覚悟が必要
アニメーターの雇用条件は厳しいものであり、とくに経験の浅い若手アニメーターは薄給激務の生活になりがちです。
また、フリーランスで働く人が多いため、一般的な会社員のような福利厚生も期待できず、不安定な日々を送る覚悟をもっておくべきでしょう。
ただし、経験を積んで実力が認められれば、状況は少しずつよくなっていきます。
原画を描けるようになり、さらに作画監督にまで上り詰めれば、安定した年収を得られる可能性が高まります。
アニメーターの現状と将来性・今後の見通し
厳しい環境下でも実力を高め続ける努力が求められる
昨今のアニメ業界では、人件費を抑えたいという観点から、動画を描く作業を韓国や中国といった海外に任せるケースが増えています。
その結果、日本の若手アニメーターの育成が滞ってしまい、同時に海外のアニメーターとの競争も激しくなっています。
しかしながら、日本のアニメーションは世界に誇る文化です。
優秀な国内のアニメーターなしでは素晴らしいアニメーションは生まれないため、制作会社のなかには、積極的に若手アニメーターを育てようという動きを見せるところも出てきています。
もともとアニメーターは現場経験を積んで一人前になっていける職業です。
若いうちは給料も低めで、不安定な生活を送る可能性がありますが、あきらめずに地道に実力を高める努力が欠かせません。
昨今ではソーシャルゲームやスマートフォンアプリの制作の場でも、アニメーターのスキルをもつ人材のニーズがあります。
多様な活躍のチャンスをモノにできるように、強い意思や志をもった若者の活躍に期待が寄せられています。
アニメーターの就職先・活躍の場
アニメ制作会社やプロダクションが中心
アニメーターの主要な就職先は、アニメ制作会社やプロダクションが中心です。
大手の制作会社はテレビ局と直でつながっていることが多く、アニメ制作の企画から納品まで、基本的にすべての工程を自社で行っています。
制作工程の全体を見渡しやすい環境であり、著名な作品にも関われるチャンスが多いことから非常に人気があります。
一方、中小規模のアニメ制作会社やプロダクションの数も多いです。
規模が小さめの企業では、大手制作会社から仕事を請け負って制作業務のみを行う、いわゆる「下請け」の会社が多くなります。
大手のように企画には携われない場合が多いですが、絵を描くことに集中してバリバリと作業をこなしていきたい人にはおすすめの面もあります。
このほか、作画のみ・撮影のみといったように、制作工程別に仕事を請け負う専門スタジオも存在します。
アニメーターの1日
雇用形態や勤務スタイルに応じて1日の過ごし方が異なる
制作会社に所属するアニメーターは、会社によって勤務時間が決められている場合もあれば、担当業務に応じて自由な時間に働ける場合もあります。
一方、フリーランスとして働くアニメーターは、決まった勤務時間は設定されないことが多いです。
仕事量や締切を意識しながら、自分で計画的に作業を進めていきます。
ここでは、アニメ制作会社で働くアニメーターの1日を紹介します。
アニメーターのやりがい、楽しさ
自分が関わった絵が作品として世に出ていくこと
アニメーターが喜びを感じるのは、自分が作画に関わった絵が、その後の工程を経て、作品として世に送り出されていくことです。
1枚1枚の絵はほんの小さなものでも、それらが結集してひとつの作品になり、物語として完成することは、やはり大きな充実感があります。
アニメーターになるのはもともとアニメ好きな人が多いからこそ、自分がその作品づくりに関わっていくことに誇りを感じている人も多いです。
また、経験を積んで一人前になると、作品の最後に流れるスタッフロールに自分の名前が載ることもあります。
若手のうちは地味な仕事が多く、実力勝負の厳しい世界ではありますが、有名なアニメーターになることを目指してがんばっている人も大勢います。
アニメーターのつらいこと、大変なこと
画力とスピードの両方が求められ、地道な作業の連続
アニメーターは、一見「好きなことを仕事にしている」「華やかそう」などと思われがちですが、裏では地道な苦労の連続です。
そもそも、アニメーターは自分が好きな絵ではなく、作品のコンセプトや目的に沿った絵を描かなければなりません。
もともと絵を描くことが得意と思っていた人でも、現場には上手なアニメーターがたくさんいるため、何度もやり直しを指示されると、自分の画力に自信をなくしてしまう人もいます。
また、作業スピードも重視されます。
作品づくりは常に締切との戦いですし、給料そのものが歩合制である以上、描くスピードが遅ければ満足のいく収入を得ることができません。
とくに若手アニメーターは厳しい労働環境で働く人も多く、体を壊さないように注意する必要があります。
アニメーターに向いている人・適性
アニメーションが大好きで、描くことを苦にしない人
アニメーターは、アニメーションを見るのが好きなことはもちろん、自分で作品をつくることに興味を持てる人が向いています。
この仕事は想像力を働かせなければならない部分もありますが、それ以上に「単純作業の繰り返し」の要素が大きいです。
とくに新人のうちは単純作業ばかりで、いつしか集中力を失ってしまったり、画力に自信をなくしてしまったりする人も少なくありません。
それでも根気強く、アニメーションに対する情熱をもち続けられるかどうかが、アニメーターとして成長できるかどうかの分かれ道になってきます。
「好きこそ物の上手なれ」という言葉もあるように、好きであることが上達にもつながります。
関連記事アニメーターに向いている人とは? 適性や必要な能力を紹介
アニメーター志望動機・目指すきっかけ
大好きなアニメに関わり続けたい
アニメーターを目指す人の一番の志望動機は、やはり「アニメーションが大好きだから」というものです。
子どもの頃から大好きなアニメがあり、「自分でも人の心を動かす作品に関わりたい」という気持ちでアニメーターを目指す人はたくさんいます。
また、アニメのイラストを描くことが大好きであったことから、その気持ちを仕事につなげたい思いで、アニメ制作の世界に興味をもつ人も多いです。
毎日毎日、ひたすらアニメのキャラクターや背景を描き続けるのは、好きでなくては務まりません。
また画力アップのためには、好き嫌いに関わらず、さまざまなアニメ作品を見ることも大事です。
絵に命を吹き込んで、作品制作の一端を担いたいと考える人には、まさに天職といえる仕事でしょう。
関連記事アニメーターの志望動機と例文・面接で気をつけるべきことは?
アニメーターの雇用形態・働き方
フリーランスの働き方が大半を占める業界
アニメーターは、企業に正社員などとして雇用される人よりも、フリーランスで働く人が圧倒的に多いといわれています。
2016年度に行われた「AEYAC 若年層アニメーター生活実態調査」によれば、アニメーターの勤務形態は「個人事業主(スタジオ所属)」と回答した人が最も多く68.6%でした。
フリーランスのアニメーターは、制作会社と業務委託契約を結んで一定の業務を任され、仕事に応じた報酬を得ます。
制作会社やスタジオに出勤して働く場合でも、その「場所」を使っているだけで、雇用形態はフリーランスということもあります。
そのほか、完全に自宅だけで作業をする人や、フリーランスのアニメーターが何人も集まり、スタジオを借りて一緒に仕事をするような人もいます。
アニメーターの勤務時間・休日・生活
労働時間は非常に長くなりがち
アニメーターの多くはフリーランスとして働いているだけに、勤務時間は厳密に決まってないことが多いです。
収入も「歩合制」となることが多いため、少しでも稼ぎを増やすために長時間労働をしている人も少なくありません。
しかし、動画は1枚あたりの単価が安いために、大量に仕事をこなしても、かろうじて生活できる程度の収入しか得られないケースもあります。
正社員や契約社員として雇用されるアニメーターは、もう少しゆとりのある生活ができる場合もありますが、常に納期に追われて長時間労働になりがちです。
ただし、近年はアニメーターの厳しい賃金制度や労働環境が問題視されることも増えているため、この先、少しずつ状況は改善していくのではないかと考えられています。
アニメーターの求人・就職状況・需要
求人を出す企業は多いが、大手に応募が集まりがち
現在、アニメーターは業界全体として不足しており、求人数自体は決して少ないわけではありません。
ただし、一部の大手制作会社に人気が集中しやすく、大手は非常に倍率が高くなることがあります。
また、いくら人手不足であっても、最低限の画力や、絵に対する基礎的な知識がなければ採用されないことが多いです。
専門学校や大学などでアニメーションの勉強をした経験がある人が好まれますが、たとえ独学でもきちんとしたポートフォリオを作り、仕事を理解する姿勢ができていれば採用のチャンスはあります。
まずは現場に入ってみることも大切
多くの人は、最初から大手制作会社に入り、有名なアニメ作品に関わりたいと考えるものでしょう。
しかし、大手は採用基準も厳しく、志望者の全員が採用されるわけではありません。
アニメーターは、実務経験を通して培ったスキルがその後の評価を高めたり、キャリアに影響したりする要素も大きいため、とにかく早く現場に飛び込んでみるのもひとつの手です。
最初は中小規模の会社に入り、自信をつけたら大手制作会社への転職を目指す道もあります。
アニメーターの転職状況・未経験採用
熱意に加えて画力を示すための準備が必要
アニメーションの制作会社やスタジオでは、常に人手を募集しているところも少なくありません。
しかしながら、そのほとんどが即戦力を必要としており、何の絵も描いたことのない人が「やりたい!」という気持ちだけで、アニメーターに転職するのは厳しいと考えておいたほうがよいでしょう。
新卒者であればまだしも、転職する年齢になると、どうしても何らかの経験をもつ人が歓迎されやすくなっています。
たとえ独学であっても、最低限の画力は事前に身につけておくほうが、スムーズに転職が進みます。
最低限、自分の画力を示せるポートフォリオ(作品集)は準備しておきましょう。
最初から希望の制作会社に入れるのが理想ですが、まずはとにかくアニメ制作の現場に入り、経験を積みながらスキルアップを目指すことも大切です。
アニメーターに必要な画力はどれくらい?
確かなデッサン力やレイアウトのスキルなどが必要
絵を描くことを仕事とするアニメーターには、当然ながら高い画力が求められます。
高い画力といっても、アニメーターは画家のような独創性や個性的なセンス以上に、確かな「デッサン力」が必要です。
人・動物・建物・食べ物など、ありとあらゆるものをさまざまな角度から描ける力を身につければ、アニメーターとして活躍しやすいです。
また、粗い線で描かれた原画を清書するクリーンアップのスキル、そして背景をどう描くか、画面をどのように構成するかといったレイアウトやパースのスキルも重要です。
こうしたアニメーターならではの画力を習得するために、地道に独学で練習を重ねる人もいますし、学校やスクールに通ってプロの指導を受ける人も多いです。