「麻薬取締官」とは

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違法な麻薬の流通と薬物犯罪を取り締まり、特別司法警察官として状況に応じて逮捕を行う。

麻薬取締官は、薬物犯罪を取り締まり、薬物汚染から日本を守る仕事です。

薬物に関する専門知識が必要となるため、麻薬取締官の約半数は薬剤師です。

厚生労働省の国家公務員の身分となりますが、特別司法警察官としての権限を与えられているため、状況に応じて武器の所持が認められています。

麻薬取締役官になるためには、国家公務員試験か薬剤師国家試験に合格することが必要です。

いずれかに該当する場合は、厚生労働省の地方厚生局麻薬取締部の採用試験を受けることができます。

麻薬取締官は日本全体で260人ほどであり、毎年の採用数は若干名です。

麻薬取締官の給与は、国家公務員の行政職の給与に調整額が付与された額になります。

「麻薬取締官」の仕事紹介

麻薬取締官の仕事内容

薬物が絡む犯罪を取り締まる専門職

麻薬取締官は、麻薬の流通など、薬物絡みの犯罪を取り締まり、薬物汚染から人々を守る職業です。

所属は警察庁ではなく厚生労働省になりますが、麻薬取締官は「特別司法警察職員」としての権限も与えられているため、警察官と同じように拳銃を所持することも可能で、逮捕行為も認められています。

具体的な仕事内容としては、違法麻薬や覚せい剤などに関する情報収集や流通経路の捜査、薬物使用者の逮捕、押収された薬物の鑑定、薬物依存者の更生支援などが挙げられます。

また、医療で使用される合法麻薬を管理することも麻薬取締官の仕事であり、病院や製薬会社へ立ち入り検査をしたり、流通ルートを監視したり、不正使用防止のための助言などを行います。

なお、薬物に関する専門知識が必要となるため、麻薬取締役官の約半数は薬剤師の国家資格を持っています。

麻薬取締官の就職先・活躍の場

活躍の場を転々と変えながら働く

麻薬取締官は、厚生労働省の地方厚生局内にある「麻薬取締部」に勤務します。

麻薬取締部は、支所や分室を含めて北海道から沖縄まで全国12か所にありますが、薬物犯罪の発生頻度が高いエリアを管轄する関東信越厚生局や近畿厚生局の配属人数が相対的に多いようです。

また、薬物犯罪を行う暴力団グループなどに顔を知られないようにするため、かなり頻繁に隔地間での人事異動があります。

麻薬取締官として働く以上、引っ越しを繰り返すことは避けられないでしょう。

麻薬取締官の1日

勤務時間はかなりイレギュラー

麻薬取締官は、ほかの事務系の公務員と同じように、基本的には日勤の仕事です。

しかし、薬物事件は24時間365日いつでも発生する可能性があるため、実際のスケジュールはかなり不規則になりがちで、早朝や深夜に働くケースも頻繁にあります。

9:00 出勤
メールチェック、スケジュール確認などを行います。

10:00 情報収集
インターネットを使ったり関係者への聞き込みを行ったりして、違法薬物の販売網などを調べます。

12:00 休憩

13:00 取り調べ
違法薬物を所持していた被疑者に対して、保有目的や取得した経緯などを聞き出します。

15:00 張り込み
薬物の販売が疑われる店舗の前に張り込み、出入り客などを調べます。

22:00 交代
次の張り込み担当者と交代し、帰宅して仮眠を取ります。

麻薬取締官になるには

複数の過程を経る長い道のりを辿る

麻薬取締官になるには、厚生労働省麻薬取締部が行う採用試験に合格し、採用される必要があります。

ただし、この試験には応募資格があり、国家公務員試験一般職試験(大卒程度)の「行政」または「電気・電子・情報」、もしくは薬剤師国家試験のうちのいずれかに合格していることが必要です。

前提条件となる試験に合格し、採用試験にも合格して内定を得ると、さらに厚労省の事務官として一定年数の事務経験を積み、その後に研修を受けて、ようやく麻薬取締官として働くことができます。

麻薬取締官の学校・学費

法学部か薬学部に進学することが望ましい

麻薬取締官を目指すために有効な学歴としては、大きく分けて2つの選択肢があります。

ひとつは大学の法学部に進んで国家公務員試験を受ける道、もうひとつは薬学部に進んで薬剤師国家試験を受ける道です。

国家公務員試験は必ずしも法学部卒である必要はありませんが、業務には法律知識が必須となる関係上、法学部以外の卒業生には2年間の実務研修が課せられるため、法学部生が採用されやすいようです。

薬剤師の有資格者採用については、欠員状況によってはまったく採用がない年もありますので、国家公務員試験ルートのほうが、わずかながらチャンスは大きいかもしれません。

麻薬取締官の資格・試験の難易度

採用人数は少なく、倍率は非常に高い

麻薬取締官の正式な採用倍率は公表されていませんが、採用人数はいずれの地方局でも数名程度にすぎず、少なくとも10倍、年度によっては50倍近くに達していると推定されます。

試験は面接のみですが、法学・薬学の知識のほかに、体力や語学力など、麻薬取締官に必要な資質を総合的に判断されます。

とくに、近年は国際化の影響もあって外国人が絡む事件が多発しているため、英語などが得意であると有力なアピール材料となるでしょう。

受験資格を得るための国家公務員試験、薬剤師国家試験も非常に難関であるため、長期間にわたる努力が必要です。

麻薬取締官の給料・年収

事務系の国家公務員より若干高給

麻薬取締官の給料は、国家公務員行政職の給与体系が適用されます。

行政職は、警察官などの公安職ほど高い給与水準には設定されていませんが、研修を受けて麻薬取締官に任用された時点で、基本給に加えて4%の調整手当がつくため、ほかの行政職公務員よりは高給です。

公務員宿舎が利用できたり、一般の賃貸住宅に住む際には住宅手当が支給されるなど、福利厚生面も充実しており、経済面での不安はないでしょう。

ただし、不規則になりがちな生活、職務の危険性などを勘案すると、割のよい仕事とはいえないかもしれません。

麻薬取締官のやりがい、楽しさ

社会的意義の大きさ

麻薬取締官は、情報収集や聞き込み、事実関係の裏付け、現場への張り込みなど、地道な捜査に長時間を費やします。

そうした長い努力が実を結び、無事に被疑者を逮捕できた際には、安堵と共に、社会を守れたという大きな達成感が得られるようです。

また、麻薬取締官は、薬物犯罪を取り締まるだけでなく、検挙された麻薬中毒者やその家族の相談に応じ、社会復帰をサポートすることも大事な仕事の一つです。

さまざまな側面から、薬物犯罪の削減に取り組む麻薬取締官の仕事は、大きな社会的意義があるといえます。

麻薬取締官のつらいこと、大変なこと

薬物によって壊れた人間を相手にするつらさ

麻薬や覚せい剤などの違法薬物は、人の精神を破壊する恐ろしい作用をもっています。

被疑者を取り調べする際には、思考力や判断力が低下しているために、まともな会話が成立しないことが多々ありますが、常習者や中毒者ともなれば、意思疎通の困難さは並大抵ではありません。

常識の通用しない者と対峙しなければならない点が麻薬取締官の業務の大変さであり、薬物によって壊れた人を見続けなければならないのは非常に重いストレスでもあります。

麻薬取締官に向いている人・適性

どんな状況でも冷静さを失わない人

麻薬中毒者が引き超す事件は、しばしば常人の理解を大きく超えており、常軌を逸した壮絶な現場に遭遇したり、あるいは麻薬取締官自身に危害が及ぶケースもあります。

また、入手経路や背景などを捜査して、麻薬密売組織の一斉摘発、組織の壊滅につなげるため、長期間にわたって組織に潜入する「おとり捜査」を行う場合もあります。

このため、麻薬取締官には、どんなに過酷で困難な状況にあっても、常に冷静な判断力を発揮して正しい行動を選択できる、精神力の強い人が向いているでしょう。

麻薬取締官志望動機・目指すきっかけ

正義感の強い人が多い

麻薬取締官は、犯罪を取り締まるという点においては警察官と共通しており、正義感の強い人が目指すケースが目立ちます。

近年は外国人グループが麻薬密売に絡むケースが増えており、それを取り締まる麻薬取締官自身が危険に晒される可能性も高くなっています。

危険を顧みず職務を遂行するためにも、絶対に犯罪を許さないという強い正義感を持っていることは重要な資質です。

また、業務の専門性に魅力を感じ、薬学などの知識を社会の治安維持のために役立てたいという人も珍しくありません。

麻薬取締官の雇用形態・働き方

麻薬取締官の働き方は刑事に近い激務

麻薬取締官は、行政職の公務員という位置づけではありますが、その実際の働き方は、警察官、なかでも刑事に近いものがあります。

張り込みや尾行などを頻繁に行う関係上、業務時間はきわめて不規則ですし、事件が立て込めば帰宅することもままならず、連日不眠不休で捜査にあたらなくてはなりません。

体力的な厳しさだけでなく、精神的なきつさ、高い危険性も伴う激務であり、一般的にイメージする公務員とは大きくかけ離れているかもしれません。

職務に対する熱意と、違法薬物を根絶したいという断固たる意志がなければ、続けていくことは難しいでしょう。

麻薬取締官の勤務時間・休日・生活

勤務時間や休日は固定しにくい

麻薬取締官の勤務時間は、ほかの国家公務員と同様、1日7時間45分と定められていますが、事務職などのように定時が来たら終わりという仕事ではなく、実際の勤務体系はかなり不規則です。

捜査が長時間に及んだり、不眠不休で張り込みを行うケースは珍しくありませんし、早朝や深夜に被疑者を逮捕したり、密売組織を一斉摘発することもあります。

休日についても、基本的には土日を休みとする週休二日制ですが、薬物事件がいつ発生するかは予測不可能ですので、土曜日や日曜日に働く機会もよくあります。

麻薬取締官の求人・就職状況・需要

求人数は少ないが、近年は微増傾向

麻薬取締部は少数精鋭の組織であり、現職の麻薬取締官は日本全体でも約260人ほどしかいません。

各地方局の採用者数は例年若干名程度であり、全地方局を合計しても毎年15人~30人前後の少ない求人数となっています。

ただ、近年はITの普及で薬物を手に入れる難易度が下がっていること、また脱法ハーブなどの低価格薬物が蔓延していることなどから、薬物犯罪の発生件数自体が増加傾向にあります。

このため、麻薬取締官の求人数も、わずかながら増加傾向にあるようです。

麻薬取締官の転職状況・未経験採用

30歳までなら転職するチャンスがある

麻薬取締官採用試験を受けるための前提となる国家公務員一般職試験(大卒程度)は、30歳未満であることが受験要件の一つとなっています。

また、薬剤師ルートについては、薬剤師国家試験自体に年齢制限はありませんが、同ルートから麻薬取締官採用試験を受けるためには29歳以下であることが必要です。

つまり、いずれの道を経るにせよ、30歳未満でなくては麻薬取締官になることはできません。

逆にいうと、年齢要件を満たしてさえいれば、製薬会社で薬剤師として勤務している人や、一般企業のサラリーマンなどからでも、試験を受けて麻薬取締官になることは可能です。

麻薬取締官の現状と将来性・今後の見通し

薬物犯罪はなくならない

IT技術の進展、スマートフォンの普及などにより、私たちの身の回りでも不正な薬物が簡単に手に入る時代になってしまいました。

年齢を問わず、幅広い世代で薬物中毒に苦しむ人が増えているため、麻薬取締官は違法薬物に手を出す人を一人でも減らそうと、日夜問わず懸命に働いています。

しかし、新たな違法薬物、新たな販売業者の出現は後を絶たず、今後についてもさらなる麻薬取締官の活躍が期待されます。

非常に専門性の高い業務であり、知識も体力も精神力も問われる大変な職業ですが、大きな社会的意義があり、苦労に見合った達成感が得られるでしょう。