麻薬取締官の仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介

麻薬取締官の仕事とは

麻薬取締官とは、厚生労働省に所属する国家公務員で、違法な麻薬の流通、またそれに関する犯罪を取り締まる仕事です。

薬物犯罪を取り締まることで、薬物汚染から日本を守ります。

世間では「麻薬Gメン」「マトリ」などと呼ばれることもあります。

この仕事では薬物に関する専門知識が必要となるため、麻薬取締官の約半数は薬剤師の資格を持っています。

警察官とは立場が異なるものの、「特別司法警察職員」としての権限を与えられているため、逮捕行為や状況に応じて武器の所持が認められています。

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麻薬取締官の業務の内容

麻薬とは何?

そもそも「麻薬」とは一体どのようなものなのでしょうか?

麻薬といえば、許されないもの、身体に悪いものといったイメージがありますが、じつは麻薬にもさまざまな種類があり、なかには「医療用」として使われているものも存在します。

たとえば、「あへん」から抽出・精製されるモルヒネはガンの痛み止めとして一般的に使われていますし、同じくコデインという成分は市販の風邪薬にも微量に含まれています。

このようなものは「医療用麻薬」として厚生労働省に認められたもので、その指導と監督の下で使用されています。

一方、問題となるのはこのような正規麻薬以外の不正な麻薬です。

たとえば覚せい剤や大麻、ヘロイン、コカイン、MDMAなどが挙げられます。

日本でも海外から密輸入され、ちょっとした好奇心から手を出した結果、依存してしまい、人格破壊にまで繋がってしまう人もいます。

正しい判断が下せなくなれば殺人などの二次被害が起こる可能性もあるため、直ちに取り締まりが必要です。

また、睡眠薬や精神安定剤などの「向精神薬」の一部も、乱用によって身体に悪影響を及ぼす危険性があることから、日本では取り締まりの対象となっています。

具体的な仕事内容は?

麻薬取締官は、厚生労働大臣の指揮監督を受け、「薬物五法」に違反する罪やそれに付随する薬物犯罪について、刑事訴訟法に基づく特別司法警察員としての職務を行います。

<薬物五法>
(1)麻薬及び向精神薬取締法
(2)大麻取締法
(3)あへん法
(4)覚せい剤取締法
(5)国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等に関する法律(通称:麻薬特例法)

具体的な麻薬取締官の仕事内容は、大きく3つに分けることができます。

違法薬物の取り締まり

一般通報や捜査機関、インターネットなどを通じた情報収集活動をし、薬物犯罪に関する情報を広く集め、違法薬物に関する犯罪の捜査をします。

捜査をもとに、違法薬物の使用者の逮捕および国外から密輸される薬物の取り締まりなどを行います。

これらの一連の業務は、警察や海上保安庁など関連機関と協力して行います。

被疑者が発見された場合には、毛髪を使った専門的な鑑定も行います。

医療麻薬の監督と指導

麻薬には医療で使用することが許可されているものがあります。

そうした麻薬が違法に流通したり不正に使用されることがないように、病院や製薬会社などへ立ち入り検査を行い、医療用麻薬が適切なルートで流通しているか、横流しされていないかなどの監視と不正使用防止のための助言を行っています。

薬物使用の相談と啓発

麻薬は依存性が高く、一度使用すると中断することが困難です。

麻薬取締官は麻薬中毒者やその家族などの相談に応じ、日常生活への復帰をサポートしています。

また、薬物乱用に関する相談業務や各所での講演など啓蒙活動も実施し、違法薬物のない健全な社会の実現に向け日夜を問わず取り組んでいます。

麻薬取締官の役割

麻薬取締官の使命は「薬物汚染のない健全な社会の実現」です。

それを果たすために、おもに3種類の活動を行っています。

違法薬物に係る捜査

刑事訴訟法に基づく特別司法警察員としての職務を行います。

薬物を乱用すると本人の身体がむしばまれるだけでなく、人格破壊によって殺人などの二次犯罪が起こる危険性もあるため、取り締まりは世界共通の課題です。

麻薬取締官は全国でも260人弱と、少数精鋭の部隊です。

しかし、麻薬の密輸入ルートはさまざまであるため、関係機関との連携・協力が欠かせません。

たとえば、空路や海路による出入りを監視する税関や海上保安庁と協力することで、密輸入される薬物の押収を行います。

もちろん、全国各地の都道府県警察との協力も日常的に行われています。

また薬物所持者を発見した際、すぐに逮捕せず「泳がせ捜査」を実施し、犯罪組織の首謀者を逮捕することで一気に関係者を暴くといったことや、麻薬取締官があえて被疑者に近づき内情を掴みとる「おとり捜査」をすることも認められています。

薬物犯罪は表からは見えない場所で行われることが多いため、日ごろの情報収集が非常に大切なものとなります。

小さなことでも、一般からの通報がきっかけで取り締まりに結びつくこともあります。

医療麻薬の監督、指導

国に認められている医療麻薬も、乱用すれば身体に有害なものとなります。

そのため、病院や製薬会社など、麻薬や向精神薬、覚せい剤の取扱関係者に対して定期的に立ち入り検査を行い、不正ルートへの流出や不正使用、不正製造の防止に努めます。

医療用の麻薬に関しては、すべて流通ルートが決まっています。

専用の相談電話を設置することで、家族や友人など、身近で薬物乱用を行っている人がいれば、すぐに相談の連絡ができる仕組みを用意しています。

麻薬や覚せい剤は、一度乱用すると自分の意思でやめることが難しいため、専門家による助言と治療が必須です。

そのため、保健所や医療機関、精神保健福祉センターとも連携し、薬物乱用者が社会復帰できるように努めています。

学校や関係機関での講演活動では薬物乱用の危険性を訴えるとともに、乱用防止に努める活動も積極的に行います。

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麻薬取締官の勤務先の種類

麻薬取締官は、厚生労働省の地方支分部局である地方厚生(支)局に設置されている全国の麻薬取締部に勤務します。

麻薬取締部は、支所や分室を含めて北海道から沖縄まで全国12ヵ所にあります。

<全国の麻薬取締部>

・北海道厚生局 麻薬取締部
・東北厚生局 麻薬取締部
・関東信越厚生局 麻薬取締部
・関東信越厚生局 麻薬取締部 横浜分室
・東海北陸厚生局 麻薬取締部
・近畿厚生局 麻薬取締部
・近畿厚生局 麻薬取締部 神戸分室
・中国四国厚生局 麻薬取締部
・四国厚生支局 麻薬取締部
・九州厚生局 麻薬取締部
・九州厚生局 麻薬取締部 小倉分室
・九州厚生局 沖縄麻薬取締支所

麻薬取締官には「定員」があるため、決められた人数を超えて人員が配置されることはありません。

そのため、基本的には欠員が出るタイミングで採用活動が行われており、最初の配属先は各麻薬取締部の状況によって変わってきます。

国家公務員である麻薬取締官には数年ごとの異動がありますが、とくにこの仕事では薬物犯罪を行う暴力団グループなどに顔を知られないようにするため、かなり頻繁に全国各地への人事異動が行われるようです。

麻薬取締官の仕事の流れ

「麻薬取締官」といっても、犯罪捜査に第一線で関わる人もいれば、不審と思われる薬物の鑑定に専門的に携わる人もおり、仕事内容はさまざまです。

その他、最新の薬物の情報収集にあたったり、医療で使われる麻薬などを取り扱う事業者に対する指導・監督に携わったりする人もおり、おのおのが専門知識を発揮しながら、分担して薬物汚染から日本を守っています。

ひとついえるのは、麻薬取締官が行う捜査の案件は、短時間で終わるものばかりではないということです。

たとえば、麻薬取締官は日ごろからインターネットを使ったり関係者への聞き込みを行ったりして、違法薬物の販売網を調査しています。

綿密な調査活動が行われたうえで、実際に張り込みなどを何日も行って、確かな裏どりができたら取り締まりを行います。

その後も、関係者への聞き込みや取り調べを続けますが、案件によっては何ヵ月、何年にもわたって捜査を行うケースもあります。

もちろん、新しい事案が発生すればそちらの調査にもあたりますので、麻薬取締官は忙しく働く日々を送ることになります。

麻薬取締官と関連した職業

麻薬取締官と似た名称の職業として「麻薬取締員」があります。

麻薬取締官が国家公務員であるのに対し、麻薬取締員は都道府県の職員であり地方公務員の身分になります。

両者とも薬物犯罪の捜査や医療麻薬の不正使用・盗難防止などに携わっていく仕事であり、お互いに連携して働くこともあります。

また、どちらも「特別司法警察職員」としての権限が与えられており、逮捕にあたることができます。

ただし、地方自治体で働く麻薬取締員は、麻薬取締官に比べると捜査をする機会はそこまで多くなく、啓発活動を中心に行っていくとされます。

麻薬取締員は麻薬取締官と違って定員枠もなく、各都道府県の判断によって必要な人数が任命されますが、実際に働いているのはわずか数名程度という都道府県も多いようです。

参考:薬物事犯に関するデータ

薬物事犯の検挙人員

薬物事犯の検挙人員_令2

出所:警察庁 令和3年版 警察白書

覚醒剤密輸入事件の検挙状況の推移

覚醒剤密輸入事件の検挙状況の推移_令2

出所:警察庁 令和3年版 警察白書