宇宙飛行士の募集要項・選抜試験の内容や倍率は?

宇宙飛行士選抜試験の募集要項

宇宙飛行士選抜試験では、日本国籍を有することなど、全11項目にわたる応募資格が定められていますが、おもな条件と実施時期は以下の通りです。

学歴と職歴

学歴としては、4年制大学の自然科学系学部(理学部工学部医学部歯学部薬学部農学部)を卒業することが求められます。

また、同分野における、研究、設計、開発、製造、運用などの実務経験が3年以上必要です。

ただし、大学院修士課程修了者については1年間、博士課程修了者については3年間の実務経験があるものとみなされます。

なお、これまでの選抜試験合格者の職歴は、研究者航空会社のエンジニア、パイロット医師、自衛官などです。

身体的要件

身長158cm以上190cm以下、体重50kg以上90kg以下、そのほか、血圧、視力、聴力、色覚など、宇宙空間という限定的かつ隔絶された環境で働くために、詳細な基準が設けられています。

また、水着および着衣において、75m連続で泳げること、10分間立ち泳ぎできることといった、泳力に関する条件も定められています。

アスリートのように突出した身体能力は必要ないものの、水泳などで身体を鍛えておくことが望ましく、また健康面にも人一倍注意を払う必要があります。

求める人物像

日本人としてふさわしい、美しい日本語、日本文化・異文化への造詣、自己の経験を伝える豊かな表現力、人文科学系の教養などを備えていなければならない、とされています。

募集条件としてはかなり曖昧ですが、自身の専門分野だけでなく、広く一般教養を身につける必要があるでしょう。

次回の実施時期

JAXA(宇宙航空研究開発機構)では、これまでに計5回の宇宙飛行士選抜試験が実施されました。

実施は不定期であり、3年間隔で実施されることもあれば、10年ほどの期間が空くこともあります。

直近では、2008年に第5回選抜試験が行われて以降、10年以上実施されておらず、次回の実施時期も未定です。

現在、JAXAでは7名の宇宙飛行士が在籍しており、日本人宇宙飛行士がフライトに任命されるのがおよそ1年に1人くらいのペースであることを考えると、人員数は7名でほぼ充足しているといえます。

これから宇宙飛行士を目指す人については、現役クルーが引退するのを待たなくてはならないかもしれません。

宇宙飛行士になるには? 必要な学歴や採用条件は?

宇宙飛行士選抜試験の内容

宇宙飛行士選抜試験は、まず書類選考を行い、ある程度応募者を絞ったうえで、三段階に分けて試験が実施されます。

前回の第5回試験では、すべての選考過程が終了するまで約1年半もかかり、非常に長期にわたって、じっくりと宇宙飛行士としての適性を見極められました。

ちなみに、第5回試験の応募者は963名で、書類選考を通過したのがそのうち230名、一次試験突破者が48名、二次試験突破者が10名、最終三次試験を突破して宇宙飛行士になったのが3名です。

一次試験

一次試験は、人文科学と社会科学に関する一般教養と、数学化学、物理、生物、地学、および宇宙開発に関する専門知識を問う筆記試験です。

合格基準は約7割とされており、各科目で満点近く得点してもとくにアドバンテージとはならない一方で、どれかひとつでも0点の科目があると不合格となります。

苦手科目があると、宇宙飛行士になった後、その科目の訓練についていけない可能性がありますし、また宇宙空間では、知識の偏りが致命傷になり、重大事故を引き起こす危険性もあるからです。

学生時代から全科目をまんべんなく勉強し、苦手科目をなくすことが試験突破のポイントとなるでしょう。

また、一次試験では、性格的な適性や、精神疾患の有無を確かめるための心理検査も併せて実施されます。

「ミネソタ多面人格テスト(MMPI)」など、一般にも用いられる検査が実施されますので、興味があれば一度受けてみるとよいでしょう。

二次試験

二次試験は面接試験であり、志望動機などを問う一般面接をはじめ、知識を問う専門面接、人格などを問う心理面接、語学力を問う英語面接など、複数回に分けて実施されます。

一般・専門面接ではJAXAの部長・課長クラスの役職者が、心理面接では心理系国家資格をもった専門家が、英語面接では外国人のネイティブスピーカーが面接官となります。

いずれの面接でも、付け焼き刃ではすぐ面接官に見破られてしまいますので、入念な対策が不可欠です。

なかでも、英語面接は頭の痛い受験者も多いかもしれませんが、いきなりネイティブスピーカーとジョークを言い合えるレベルの語学力が求められるわけではありません。

相手の話をきちんと理解し、こちらの話を正確に伝えられる、つまりコミュニケーションできるレベルにあれば、応用力はNASAで自然に身につくだろうと判断され、合格となります。

日本人の場合、インプットは得意でもアウトプットが苦手というケースが目立ちますので、自己表現力を磨いておくとよいかもしれません。

三次試験

最終となる三次試験は、より実践的な内容となり、宇宙飛行士が実際に行う訓練に近い形式で、さまざまな試験が実施されます。

代表的なのは、外界から隔絶された狭い空間のなかで、1週間にわたって受験者同士で共同生活を送る「閉鎖試験」です。

受験者の動きは24時間モニターで監視され、与えられた課題をこなす様子や、ほかの受験者とコミュニケーションを取る様子などから、協調性や判断力、精神的安定性といった宇宙飛行士としての適性がテストされます。

また、閉鎖試験では、「自分以外の誰と一緒に宇宙に行きたいか」という受験者間の相互評価も実施され、人間関係における立ち位置や、他者に対する観察眼なども試されます。

そのほか、装置の組立や修理、操作などの「運用技量試験」や、泳力試験、現役宇宙飛行士による面接、外部有識者面接、役員面接なども実施され、宇宙飛行士としての資質が総合的に判定されます。

宇宙飛行士選抜試験の倍率

宇宙飛行士選抜試験は、毎回若干名の募集に対して数多くの受験者が殺到し、非常に高倍率となっています。

試験結果を第1回から振り返ると、応募者533名に対し、合格者は毛利衛さん、向井千秋さん、土井隆雄さんの3名で、倍率は約177倍でした。

第2回では、応募者372名中、選ばれたのは若田光一さん1人で、倍率は372倍、第3回も同じく、572名の応募者のなか、野口聡一さんただ1人が選ばれ、倍率は572倍でした。

第4回試験では、864名の応募者のうち、古川聡さん、星出彰彦さん、山崎直子さんの3人が選抜され、倍率は288倍となりました。

直近となる第5回試験では、過去最高の963名の応募があり、合格したのは油井亀美也さん、大西卓哉さん、金井宣茂さんの3人で、倍率は321倍でした。

今後についても、ゆうに倍率100倍を超える厳しい競争になるものと予測されます。