宇宙飛行士の募集要項・選抜試験の内容や倍率は?

宇宙飛行士選抜試験の募集要項

応募資格にはどんなものがある?

JAXAの宇宙飛行士選抜試験では、日本国籍を有することなど、複数の応募資格が定められています。

以下では、学歴・職歴、身体的要件についてご紹介します。

学歴と職歴

JAXAの宇宙飛行士選抜試験は、第5回選抜まで、学歴として「4年制大学の自然科学系学部(理学部工学部医学部、歯学部、薬学部、農学部)を卒業すること」が求められていました。

こうしたことから、日本人宇宙飛行士はもともと「理系出身者」中心で、前職は医師研究者航空会社のエンジニア、パイロットなどでした。

しかしながら、2021年、13年ぶりに行われた第6回募集では「理系」の学歴要件が廃止され、学部問わず、文系出身者も応募できるようになっています。

職歴に関しては、3年以上の実務経験を有することが必要とされているため、新卒者は応募できません。

なお、大学院修士課程修了者については1年間、博士課程修了者については3年間の実務経験があるものとみなされます。

身体的要件

身体的要件としては、以下の内容が掲げられています。(※2021年の第6回募集の場合)

  • 身長:149.5-190.5cm
  • 視力:遠距離視力 両眼とも矯正視力1.0以上
  • 色覚:正常(石原式による)
  • 聴力:正常(背後2mの距離で普通の会話可能)

宇宙空間という限定的かつ隔絶された環境で働くために、詳細な基準が設けられています。

また、応募資格としては掲げられていませんが、もし宇宙飛行士として選抜された場合には、基礎訓練時に必要な泳力(水着及び着衣で 75m:25m×3回 、10分間立ち泳ぎ)を習得しなくてはなりません。

アスリートのように突出した身体能力は必要ないものの、水泳などで身体を鍛えておくことが望ましく、また健康面にも人一倍注意を払う必要があります。

宇宙飛行士選抜試験の実施時期は?

JAXA(宇宙航空研究開発機構)では、2020年までに計5回の宇宙飛行士選抜試験が実施されました。

実施は不定期であり、3年間隔で実施されることもあれば、10年ほどの期間が空くこともあります。

実際に、2008年に実施された第5回選抜試験から、2021年の第6回募集までは、約13年もの時間が空いています。

2021年時点にて、JAXAでは7名の宇宙飛行士が在籍しており、日本人宇宙飛行士がフライトに任命されるのがおよそ1年に1人くらいのペースであることを考えると、人員数は7名でほぼ充足しているといえます。

これから宇宙飛行士を目指す人については、現役クルーが引退するのを待たなくてはならないかもしれません。

宇宙飛行士になるには? 必要な学歴や採用条件は?

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宇宙飛行士選抜試験の内容

宇宙飛行士選抜試験は、まず書類選考を行い、ある程度応募者を絞ったうえで、三段階に分けて試験が実施されます。

第5回試験では、すべての選考過程が終了するまで約1年半もかかり、非常に長期にわたって、じっくりと宇宙飛行士としての適性を見極められました。

ちなみに、第5回試験の応募者は963名で、書類選考を通過したのがそのうち230名、一次試験突破者が48名、二次試験突破者が10名、最終三次試験を突破して宇宙飛行士になったのが3名です。

以下では、試験の各段階のおもな内容についてご紹介します。(※試験内容は変更になる可能性があります。最新の情報は、毎回の募集要項をご確認ください)

一次試験

一次試験は、人文科学と社会科学に関する一般教養と、数学化学、物理、生物、地学、および宇宙開発に関する専門知識を問う筆記試験です。

合格基準は約7割とされており、各科目で満点近く得点してもとくにアドバンテージとはならない一方で、どれかひとつでも0点の科目があると不合格となります。

苦手科目があると、宇宙飛行士になった後、その科目の訓練についていけない可能性がありますし、また宇宙空間では、知識の偏りが致命傷になり、重大事故を引き起こす危険性もあるからです。

学生時代から全科目をまんべんなく勉強し、苦手科目をなくすことが試験突破のポイントとなるでしょう。

また、一次試験では、性格的な適性や、精神疾患の有無を確かめるための心理検査もあわせて実施されます。

「ミネソタ多面人格テスト(MMPI)」など、一般にも用いられる検査が実施されます。興味があれば一度受けてみるとよいでしょう。

二次試験

二次試験は面接試験であり、志望動機などを問う一般面接をはじめ、知識を問う専門面接、人格などを問う心理面接、語学力を問う英語面接など、複数回に分けて実施されます。

一般・専門面接ではJAXAの部長・課長クラスの役職者が、心理面接では心理系国家資格をもった専門家が、英語面接では外国人のネイティブスピーカーが面接官となります。

いずれの面接でも、付け焼き刃ではすぐ面接官に見破られてしまいますので、入念な対策が不可欠です。

なかでも、英語面接は頭の痛い受験者も多いかもしれませんが、いきなりネイティブスピーカーとジョークを言い合えるレベルの語学力が求められるわけではありません。

相手の話をきちんと理解し、こちらの話を正確に伝えられる、つまりコミュニケーションできるレベルにあれば、応用力はNASAで自然に身につくだろうと判断され、合格となります。

日本人の場合、インプットは得意でもアウトプットが苦手というケースが目立つため、自己表現力を磨いておくとよいかもしれません。

三次試験

最終となる三次試験は、より実践的な内容となり、宇宙飛行士が実際に行う訓練に近い形式で、さまざまな試験が実施されます。

代表的なのは、外界から隔絶された狭い空間のなかで、1週間にわたって受験者同士で共同生活を送る「閉鎖試験」です。

受験者の動きは24時間モニターで監視され、与えられた課題をこなす様子や、ほかの受験者とコミュニケーションを取る様子などから、協調性や判断力、精神的安定性といった宇宙飛行士としての適性がテストされます。

また、閉鎖試験では、「自分以外の誰と一緒に宇宙に行きたいか」という受験者間の相互評価も実施され、人間関係における立ち位置や、他者に対する観察眼なども試されます。

そのほか、装置の組立や修理、操作などの「運用技量試験」や、泳力試験、現役宇宙飛行士による面接、外部有識者面接、役員面接なども実施され、宇宙飛行士としての資質が総合的に判定されます。

宇宙飛行士選抜試験の倍率

宇宙飛行士選抜試験は、毎回若干名の募集に対して数多くの受験者が殺到し、非常に高倍率となっています。

第1回から第5回までの試験結果をを振り返ってみましょう。

過去の宇宙飛行士選抜試験の結果
  • 第1回:応募者533名、選抜者は毛利衛さん、向井千秋さん、土井隆雄さんの3名、倍率は約177倍
  • 第2回:応募者372名、選抜者は若田光一さん1名、倍率は372倍
  • 第3回:応募者572名、選抜者は野口聡一さん1名、倍率は572倍
  • 第4回:応募者864名、選抜者は古川聡さん、星出彰彦さん、山崎直子さんの3名、倍率は288倍
  • 第5回:応募者963名(過去最高)、選抜者は油井亀美也さん、大西卓哉さん、金井宣茂さんの3名、倍率は321倍

今後についても、ゆうに倍率100倍を超える厳しい競争になるものと予測されます。