宇宙飛行士の仕事内容

宇宙飛行士の仕事とは

宇宙飛行士は、国際宇宙ステーション(ISS)の維持管理や、大気圏外でのさまざまな実験、観測などの作業を行って、宇宙開発に貢献する仕事です。

日本人宇宙飛行士のおもな仕事は、ISS内にある日本の実験棟「きぼう」の運用とメンテナンスですが、宇宙での仕事だけでなく、各種訓練やデスクワーク、研究開発など、地上施設での仕事も多数あります。

また、講演会を開催したり、テレビなどのメディアに出演したりして、宇宙飛行士の仕事内容や宇宙開発の重要性などを、一般の人々に分かりやすく伝えることも大事な仕事です。

宇宙飛行士になるには、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が実施する宇宙飛行士選抜試験を受け、合格することが必要ですが、同試験の実施は不定期であるうえ、採用倍率はゆうに100倍を超える超難関です。

試験を突破するには、自然科学に関する専門知識、専門職の実務経験、英語やロシア語などの語学力、身体的能力、協調性やリーダーシップなど、複数のスキルを高次元で兼ね備えなくてはならないでしょう。

宇宙飛行士の業務の内容

宇宙空間における業務

かつての日本の宇宙飛行士は、アメリカが開発した再使用可能輸送機「スペースシャトル」に同乗し、船内において短時間でできる実験作業や、ISSの建設作業を手掛けるケースがほとんどでした。

しかし、2009年に「きぼう」が完成して以降は、より広大なスペースで、より長期的な計画に基づいた各種作業を手掛けられるようになり、現在の日本人宇宙飛行士は、ISSに長期滞在して多様な業務に従事しています。

具体的には、宇宙空間における各種データの測定、無重力下・真空下でしかできない実験と研究、ロボットアームを用いたISSの維持管理作業などが挙げられます。

必要があれば、宇宙服を着用して宇宙空間に出て、実験装置の設置・交換や施設の修理作業など、船外での活動を行うこともあります。

地上における業務

上述したような宇宙での任務を任されるのは、通常3年~4年に1度程度であり、長ければ10年に1度というケースもあります。

このため、宇宙飛行士の仕事は、時間からすれば、地上での業務がキャリアの大半を占めます。

地上業務は、宇宙での業務以上に多岐にわたりますが、宇宙空間で作業を行うための訓練をはじめ、研究内容の企画立案や実験装置の開発といったデスクワーク、他国の機関との情報共有などがあります。

また、ほかの宇宙飛行士が宇宙空間での任務を行っている間は、地上スタッフの一員としてその活動をサポートします。

さらに、宇宙から帰還した後には、宇宙での体験や宇宙の魅力、宇宙開発の大切さなどを一般の人々に広く伝えるため、小中学校などでの講演会活動や、テレビなどのメディア出演も行います。

宇宙飛行士の役割

科学技術がこれだけ発展した現代にあっても、宇宙にはまだまだ数多くの謎が残されています。

ビッグバンが発生したメカニズム、生命の起源、ブラックホールの正体、「ダークマター」と呼ばれる暗黒物質など、正確なところは未だ何もわかっていません。

それらの謎を解明するためには、宇宙空間における観測作業や実験を何度となく繰り返して、膨大な量のデータをコツコツと収集し、長い時間をかけて分析していかなければなりません。

宇宙飛行士は、エンジニアなどの技術者や、各分野の科学者、専門家たちからなる宇宙研究チームの一員として、宇宙の真相に迫ることがその役割です。

そうした仕事が、科学技術のさらなる進歩や、これまでになかった新製品や新技術の開発につながり、ひいては私たちの生活をより豊かにすることに役立ちます。

そういった意味では、宇宙飛行士は、人類の進歩に貢献する壮大な役割を担っている職業といえるでしょう。

宇宙飛行士の勤務先・有名な企業

世界規模でみた勤務先

宇宙飛行士の勤務先というと、まず真っ先にNASAという略称でおなじみの「アメリカ航空宇宙局」が思い浮かぶ人も多いかもしれません。

日本人がNASAで働くことも不可能ではありませんが、基本的にアメリカでの学歴や研究実績などが必要になるうえ、世界中から優れた人材が集まりますので、就職難易度はきわめて高いといえます。

これまでの歴史を振り返っても、研究者やエンジニアとしてNASAの職員になった日本人はいますが、宇宙飛行士として採用された事例はありません。

ほかにも、世界の宇宙開発をリードするロシアの「ロスコスモス」や、ヨーロッパ各国が参加する「欧州宇宙機関」などが有名企業として挙げられます。

日本の勤務先

日本には、それら各国の宇宙開発機関と肩を並べる組織として、宇宙航空研究開発機構、通称JAXAがあります。

フィクションの世界では、他国の宇宙機関から宇宙飛行士になる話もありますが、現状、日本人が宇宙飛行士を目指すなら、JAXAが実施する宇宙飛行士選抜試験を受ける方法が唯一のルートです。

JAXAは、前身のNASDA(宇宙開発事業団)時代から含めて、これまで通算で5回の宇宙飛行士選抜試験を実施しており、日本人初の宇宙飛行士である毛利衛さんをはじめ、計11人の宇宙飛行士を輩出しています。

毛利さんや、その後に続く女性初の日本人宇宙飛行士である向井千秋さん、初めて船外活動を行った土井隆雄さんらの活躍を鮮明に記憶している人も多いでしょう。

現在でも、若田光一さんや野口聡一さんなど、7名の宇宙飛行士がJAXAに在籍しており、日本人宇宙飛行士は、およそ1年に1人のペースで、ISSでのミッションに従事しています。

参考:JAXA宇宙飛行士

宇宙飛行士の仕事の流れ

普段の宇宙飛行士は、いずれ宇宙飛行を任命される日に備えて、地上でさまざまなトレーニングを積みます。

システム操作訓練、航空機やロボットアームの操縦訓練、宇宙服を着た巨大プールでの作業訓練、冬山登山などの野外訓練などを行って、宇宙という過酷な環境で活動できるスキルを身につけます。

やがてISSでのミッションに任命されると、アメリカのスペースシャトルやロシアのソユーズ宇宙船に乗り込んで宇宙へ飛び立ち、およそ半年間ほどISSに滞在して、計画に基づいた作業をこなします。

すべてのスケジュールを終えると、同時期に任期を終える他国の宇宙飛行士とともに宇宙船に乗り込み、地球へと帰還します。

帰還後は、再び地上での業務をこなしながら、次のミッションに任命されるのを待つことになります。

宇宙飛行士と関連した職業

運用管制官

運用管制官は、ミッションコントロールセンターと呼ばれる管制室から、ロケットやISSを監視し、運行状況をチェックしたり、必要な情報を送ったり、機器を遠隔で制御したりして、宇宙飛行士を補佐する仕事です。

宇宙空間での機器トラブルは、即座に生命の危機に直結しますので、宇宙飛行士が宇宙空間に滞在する間は、運用管制官の24時間体制のサポートが不可欠です。

運用管制官になるには、JAXAの友人宇宙開発部門に採用されるか、宇宙事業を行う民間企業に就職し、運用管制の仕事を手掛ける技術者となることが必要です。

天体物理学者

天体物理学者は、恒星や銀河、星間物質などにおける、光度、密度、温度、化学組成といった物理的性質を研究する職業であり、宇宙物理学者や、天文学者と呼ばれることもあります。

天体物理学者は、普段は所属する大学院や研究機関において研究作業を行ったり、学生に向けて講義を行ったりしますが、宇宙飛行士を含む宇宙研究チームの一員として、企画立案や助言を行うこともあります。

天体物理学の分野は、長年研究しても、目に見える成果が上がるケースはまれですので、脚光を浴びることなく、ひたすら地道な研究を続ける忍耐力が求められます。

宇宙開発エンジニア(宇宙開発技術者)

宇宙開発エンジニアは、ロケットや宇宙ステーション、人工衛星、宇宙服などに用いる資材や機材を開発・生産する職業です。

宇宙開発を手掛けるエンジニアのなかには、JAXAの研究開発部門で働く人もいれば、メーカーや通信事業会社の研究職として働く人もいます。

また、2009年に東大阪市の製造業者が共同でロケットを打ち上げた事例のように、中小企業でエンジニアとして働きながら、宇宙開発事業に携わる人もいます。