宇宙飛行士の需要・現状と将来性

宇宙飛行士の現状

「きぼう」の完成で、日本の宇宙開発事業は大きく発展

1992年、日本人初の宇宙飛行士である毛利衛さんは、スペースシャトル・エンデバー号に乗り込み、宇宙に飛び立ちました。

毛利さんは、科学実験のスペシャリストとして、船内で数多くの宇宙実験を行い、地球上の日本人に大きな感動と希望を与えました。

それから四半世紀以上が経過し、時代とともに、日本人宇宙飛行士の現状も大きく変化しています。

最も明確な変化は、2009年に国際宇宙ステーション(ISS)内の実験棟「きぼう」の完成でしょう。

「きぼう」ができたことにより、毛利さんの時代とは違って、より大きな空間で、長期的計画に基づいた実験を行えるようになりました。

日本人コマンダー(船長)の活躍が続く

2010年代以降は、アメリカやロシアに出遅れていた日本の宇宙開発事業は大きく前進し、日本人宇宙飛行士の地位も、世界トップの宇宙飛行士と肩を並べるところまで大きく向上しています。

2014年の第39次ISS長期滞在においては、若田光一さんが日本人で初となるコマンダー(船長)に任命され、他国の宇宙飛行士をけん引するリーダーとして、その責務をまっとうしました。

2021年の第65次ISS長期滞在では、日本人2人目のISS船長として星出彰彦さんのコマンダーに就任し、現在も日本人宇宙飛行士は大きな活躍を続けています。

→参考:JAXA宇宙飛行士

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宇宙飛行士の需要

現状、日本人宇宙飛行士のおもなミッションは、ISSのメンテナンスと各種宇宙実験、観測などです。

しかしながら、ISSには定員があり、同時に6名までしか滞在できません

そのわずか6つの席を、アメリカ、ロシア、カナダ、およびフランスやドイツといった欧州各国の宇宙飛行士と分け合わなくてはならないため、どうしても宇宙飛行士の需要は限られます。

JAXAには2021年時点で7名の宇宙飛行士が在籍していますが、その7名さえフライトを順番待ちしている状態です。

新規の宇宙飛行士を募集する宇宙飛行士選抜試験も定期的に実施されるわけではなく、2021年、ようやく13年ぶりの募集が行われました。

「宇宙飛行士になりたい」と思っても、ちょうどよいタイミングで募集がかけられるかどうかはわかりません。

これから宇宙飛行士を目指す人については、世代交代などによって席が空くのを、辛抱強く待たなければならない可能性が高いでしょう。

宇宙飛行士の将来性

宇宙関連産業の市場規模は、年平均10%を超える速度で急激に拡大しており、2040年にはグローバルで1兆ドル以上に成長することが予測されています。

宇宙開発は、国家規模の一大事業のひとつです。

国の科学技術力を高めていくために、また国際的な立場を失わないためにも、日本がJAXA運営などの宇宙事業から撤退することはあり得ません

その一方で、高齢化に伴う社会保障費用の増大などもあって、日本の国家財政はひっ迫しており、すぐに国民の利益に直結するわけではない宇宙開発事業に投入できる税金は限られています。

今後についても、短期のうちに宇宙飛行士が大幅に増員される見通しは見込みづらい状況です。

2021年に13年ぶりに行われている募集も、採用予定人数は「若干名」となっています。

ただし、宇宙飛行士はきわめて少数精鋭であるからこそ、職業上の価値や将来性が保証されているともいえます。

見事に宇宙飛行士となれれば、キャリアのなかで数度宇宙に行く機会が得られますし、引退後も培ったスキルや経験を生かして、重要な宇宙関連事業に携わることができるでしょう。

→参考:総務省 長期的な宇宙ビジネス市場規模の試算

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宇宙飛行士の今後の活躍の場

宇宙開発に民間企業が参入

中長期的にみれば、宇宙飛行士の活躍の場は、民間に広く拡大していく見通しです。

現状の民間の宇宙関連産業は、放送用の静止衛星や、自動車のリモートセンシング用の低軌道衛星など、無人ロケットの打ち上げ事業が主です。

しかし、開発競争が盛んになることで、技術の進歩とともに大幅にコストダウンが進み、宇宙飛行士を乗せた有人ロケットの打ち上げ事業も、民間企業が参入できるようになると予想されています。

宇宙開発の先進国であるアメリカでは、「スペースX社」をはじめとして数多くの民間企業が盛んにロケット開発を行っていますし、アメリカ政府は、ロケットどころかISS自体の民営化も検討しています。

宇宙はもっと身近になっていくと考えられる

2021年12月には、「日本人として民間初の宇宙飛行」を行い、国際宇宙ステーション(ISS)に12日間滞在した実業家・前澤友作さんのニュースが話題を集めました。

まだまだ宇宙は気軽に行ける場ではないものの、将来的には、一般人が頻繁に宇宙観光するようになる可能性も十分に考えられます。

同時に、宇宙飛行士という職業も、たとえば飛行機の「パイロット」などのように、私たちにとってより身近な存在になっていくでしょう。

→参考:内閣府 宇宙開発利用の現状及び課題