宇宙飛行士になるには? 必要な学歴や採用条件は?

宇宙飛行士になるまでの道のり

選抜試験を受けるまで

日本人が宇宙飛行士になるには、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が実施する「宇宙飛行士選抜試験」を受けなければなりません。

ただし、宇宙飛行士に求められるスキルはきわめて高度であり、新卒レベルでは歯が立たないため、試験に応募するにあたっては、研究開発や設計、あるいは専門職などの実務経験が必要になります。

したがって、宇宙飛行士になるには、一般的な職業とは異なり、まずは別の職業を経験しなければなりません。

これまでの合格者の前職は、研究者医師、飛行機のエンジニア、パイロット、航空自衛隊隊員などです。

また、実務経験のほかにも、学歴をはじめ、身長や体重、血圧、視力、聴力、色覚といった身体要件など、細かい応募基準が設けられています。

なお、「虫歯があると宇宙飛行士になれない」という話を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、治療してあれば問題ありません。

ただし、宇宙服を着て船外活動を行う際には、0.3気圧ほどに減圧され、詰め物があると圧力差で空気が入り込む可能性がありますので、宇宙に飛び立つ前には歯科医師の診断を受ける必要があります。

諸条件を満たして選抜試験を受け、見事合格すると、JAXAの職員に採用され、宇宙飛行士としてのキャリアをスタートさせることができます。

選抜試験に受かってから

宇宙飛行士として採用された後は、宇宙という過酷な環境下でミッションをこなすための、さまざまな訓練を積みます。

日本人は、「アスキャンクラス」というNASAの宇宙飛行士候補者と同じクラスで学ぶケースが一般的であり、ヒューストンにあるジョンソン宇宙センターで、アメリカ人と一緒に英語で講義を受けます。

新人の宇宙飛行士は、まず基礎研修と呼ばれる1600時間ほどのカリキュラムを受け、自然科学や宇宙についての専門知識や、各種システムの操作方法、航空機の操縦方法、英語やロシア語などを学びます。

1年半ほどかけて基礎研修を終えると、宇宙飛行士認定書が手渡され、正式な宇宙飛行士として認められます。

その後、アドバンスト訓練と呼ばれる上級のプログラムに進み、ロボットアームの操作訓練や、宇宙服を着用した水中訓練、冬山や海上で行う野外訓練などを行って、スキルや体力、チームワークの強化に努めます。

アドバンスト訓練は、基礎訓練とは異なり、アメリカだけでなく、ロシアやヨーロッパなど、世界中を転々としながら行われます。

座学、シミュレーション訓練、サバイバル訓練など、数多くの厳しい訓練をこなしつつ、宇宙飛行に任命される日を待つことになります。

宇宙飛行士選抜試験の難易度

宇宙飛行士選抜試験は、これまでに不定期に計5回実施され、合わせて11人の宇宙飛行士が誕生しています。

直近に行われた2008年の第5回宇宙飛行士選抜試験をみると、まず書類選考で候補者を絞ったあと、1年半という長期間にわたって、三段階で試験が実施されました。

応募者は963名で、それぞれの段階に進めるのは全体の5分の1から4分の1程度、最終的に三次試験を突破して宇宙飛行士に選抜されたのは3名であり、合格倍率は321倍です。

きわめて狭き門となっていますが、これまでの倍率は178倍から572倍であり、第5回試験だけが突出して高倍率だったわけではありません。

なお、第5回試験が実施されてから既に10年以上経過していますが、その間一度も宇宙飛行士の募集はなく、次回の選抜試験実施時期も未定です。

宇宙飛行士になるための学校の種類

宇宙飛行士選抜試験に応募するには、4年制大学の自然科学系学部(理学部工学部医学部歯学部薬学部農学部)を卒業することが必要です。

選抜試験の倍率を考えれば、できる限り高学歴であることが望ましく、また宇宙開発との関連性が高い学部・学科を選択するとよいでしょう。

これまでの合格者の出身大学は、東京大学や慶応大学といった超難関大学の、工学部航空学科や機械工学科、理学部、医学部などです。

また、大学院まで進学し、修士課程や博士課程まで修了している人も多くいます。

なお、直近では自衛隊出身の油井亀美也さんや金井宣茂さんが宇宙飛行士に選抜されていますので、防衛大学校や防衛医科大学校といった進学先も有力な候補となるでしょう。

宇宙飛行士に向いている人

宇宙飛行士は、きわめて特殊かつ専門性の高い職業ですので、知力、体力、精神力、協調性など、さまざまなスキルを高次元で兼ね備えていることが必要です。

なかでも最も大切な資質といえるのは知的好奇心であり、宇宙飛行士に求められる膨大な知識を身につけるためには、自分の興味のためならどんな努力も惜しまない性格でなくてはなりません。

わからないことをわからないまま放っておけないという知的好奇心旺盛な人は、宇宙飛行士に向いているでしょう。

宇宙飛行士を目指したいけれども、本当に自分が向いているのか今一つ自信がもてないという場合は、「宇宙飛行士模擬訓練体験」に参加してみるとよいかもしれません。

茨城県つくば市にある「筑波宇宙センター」では、一般には馴染みの薄い宇宙飛行士の実務に触れてもらうため、予約制の訓練体験イベントを実施しています。

具体的な模擬訓練の内容は、「宇宙ローバー」という無人探査車の遠隔操作、緊急時の対処方法、船外活動、閉鎖環境における適性検査などです。

これらは宇宙飛行士が行う訓練のほんの一部ですが、実際の訓練を体験することで、自身の将来を具体的に考えるのに非常に役立つでしょう。

詳細については、以下のリンク先を参照してください。

参考:宇宙飛行士模擬訓練・体験
宇宙飛行士に向いている人・適性・必要なスキル

宇宙飛行士のキャリアプラン・キャリアパス

宇宙飛行士としての最初のキャリアの数年間は、すべて上述したような各種訓練に費やされます。

その後、十分に宇宙での業務を遂行できる能力があるとNASAから認定されると、やがて「ISS長期滞在クルー」に任命され、フライトエンジニアなどとして、1回目の宇宙飛行に臨みます。

約半年ほどISSに滞在して、さまざまなミッションをこなし、地球へ帰還した後は、再び地上での業務に従事しながら、次にISS長期滞在クルーに任命される日を待ちます。

キャリアの間に何度宇宙に行けるかは人によってばらばらであり、古川聡さんのように生涯一度きりというケースもあれば、若田光一さんのように6回も宇宙に行き、コマンダー(船長)に就任するケースもあります。

宇宙飛行士を引退した後も、それまでに培ったスキルや経験を生かして、宇宙関連の仕事に携わります。

宇宙飛行士を目指せる年齢は?

JAXAが実施する宇宙飛行士選抜試験には、年齢制限はとくに定められていません。

ただし、宇宙飛行士のミッションは肉体的にも精神的にもきわめてハードであり、宇宙飛行士の平均年齢が34歳であることを考えると、合格できる可能性がある年齢はその前後ということになるでしょう。

NASAも、JAXAと同じく宇宙飛行士に年齢制限を設けていませんが、ヨーロッパの「欧州宇宙機関」は、応募できる年齢を27歳~37歳と規定しています。

適正年齢までに、大学や大学院を卒業して幅広い知識と教養を身につけ、専門職の実務経験を積むためには、学生の時点で明確に宇宙飛行士を目指し、懸命に努力し続けることが必要になるのは間違いありません。

宇宙飛行士は女性でもなれる?

日本では、これまでに向井千秋さん、山崎直子さんの2名の女性が宇宙飛行士に選抜され、宇宙での任務を経験しています。

数としては男性のほうが多いものの、女性でも宇宙飛行士になることは十分可能であり、出産や育児についての環境整備も積極的に進められています。

そうした取り組みは世界的に見て日本は遅れているほうであり、山崎さんは、子育て期間中であった2010年に、NASAで保育サービスを受けながら、ISSへのフライトに臨みました。

JAXAでも、施設内に職員専用の「ほしのこ保育園」を設立するなど、女性の就労環境改善に尽力しています。

2019年には、歴史上初となる、女性宇宙飛行士のみでの船外活動も実施されており、今後も、女性宇宙飛行士は増加していくものと想定されます。

女性でも宇宙飛行士になれる?

NASAの宇宙飛行士になるには?

宇宙飛行士というと、真っ先にNASAを思い浮かべる人も多いかもしれません。

しかし、NASAはアメリカの公的機関であり、そこで働く宇宙飛行士などの正規職員は、すべてアメリカ人です。

そのため、日本人がNASAの宇宙飛行士になるには、日本国籍を離脱し、アメリカ国籍を取得することが必要になります。

アメリカ国籍を取得するには、アメリカ人と結婚する方法など、5つある手段のいずれかで永住権(グリーンカード)を取得し、その数年後に実施される審査をパスしなければなりません。

決して不可能とはいえませんが、これまでに誕生した日本人宇宙飛行士は全員JAXAの所属であり、NASAの宇宙飛行士は歴史上1人もいません。

ただし、NASAには2万人の正規職員のほかに、約15万人の非正規職員もおり、非正規職員については、アメリカ国籍であることは必須ではありません。

日本国籍のままでも、NASAで働くこと自体は可能であり、実際に研究職の契約職員として、NASAで働く日本人もいます。

「どうしてもNASAで働きたい」という場合は、宇宙飛行士とはまた違うかたちで、宇宙開発に関わるという道も考えられるでしょう。