「青年海外協力隊」とは

世界の途上国に派遣され、ボランティアとして現地の公共事業や社会福祉などの支援を行う。
青年海外協力隊員は、途上国などに派遣され、2年間の任期でボランティアとして勤務します。
日本の持つ高度な技術を人的リソースから途上国に伝えるというのが、青年海外協力隊の役割です。
応募資格は、満20歳から満39歳で日本国籍を持つことで、応募書類を提出し、面接に合格することで青年海外協力隊となることができます。
合格後は派遣される前に語学や業務の知識を修得するために、70日間の厳しい訓練を受ける必要があります。
ボランティアではあるものの、月々の生活費や手当が支給されます。
生活費と手当を総合してみると、だいたい年間100万円〜200万円が支給されます。
ボランティアがキャリアとして認められにくいことや若者の安定志向、少子化などが原因で、青年海外協力隊への応募者は減少の傾向にあります。
「青年海外協力隊」の仕事紹介
青年海外協力隊の仕事内容
発展途上国でボランティアとして活動する
青年海外協力隊は、国際協力機構(JICA)ボランティアプログラムのひとつで、発展途上国でボランティアとして活動する人たちのことをいいます。
コミュニティ開発、教員補助、スポーツ指導員、農業指導員など、ニーズに応じて多種多様な職種として活動する人がいますが、とくにエネルギーや農林水産など、理工学系の職種の需要が多くなっています。
日本で培った専門技術を、途上国の行政執行機関(県庁・市役所など)や各種学校で発揮することができます。
青年海外協力隊の就職先・活躍の場
課題が多い国での活動が中心
青年海外協力隊員の派遣地域は、アジア・アフリカ・中南米・大洋州・中東の国々となります。
発展途上国への支援を目的としているプログラムのため、たとえば対象地域の中にあっても、すでに先進国かそれに近い発展を遂げている国への派遣はまったくないか、あっても少数です。
わかりやすくいうと、貧しく課題が多い国が青年海外協力隊の活動地域となります。
また日本との関係性が深い国や、国交を強化したい国への派遣が多いことが特徴です。
青年海外協力隊の1日
派遣先や職種によって生活は異なる
青年海外協力隊には、さまざまな派遣先があり、職種も多岐にわたっています。
そのため、同じ青年海外協力隊の隊員でも、人によって生活はまったく異なるものになります。
ここでは、南米地域にてコミュニティ開発に携わる隊員のある1日の例を紹介します。
<青年海外協力隊(コミュニティ開発)のある1日>
6:30 起床・朝食をとる
8:00 バスに乗って活動をする村へ向かう
9:00 村の住民の農作業のお手伝い
13:00 昼食(持参したサンドイッチやフルーツ)
14:00 村の住人に家庭環境や困りごとをインタビュー
15:00 子どもたちと交流
18:00 帰宅・夕食
20:00 自由時間(日本の友人や家族に連絡など)
23:30 翌日の活動に向けて早めに就寝
青年海外協力隊になるには
年齢制限などの応募資格がある
青年海外協力隊の応募資格は、満20歳から満39歳で日本国籍を持つこととされています。
応募書類を提出し、面接に合格することで青年海外協力隊となることができます。
さまざまな職種の募集があり、大学での専門分野、社会人になってからの職務経験が活かせる職種を選べば、採用試験の際に有利になるでしょう。
青年海外協力隊員として派遣される前には70日間の訓練が行われ、語学や業務の知識を学びます。
青年海外協力隊の学校・学費
学歴の要件は職種によって異なる
青年海外協力隊には応募に際して年齢制限がありますが、学歴の要件については職種によって異なります。
修士課程前期修了以上、大学卒業以上、短期大学卒業以上、専門学校卒業以上、高校卒業以上、あるいはとくに指定のないものまでさまざまです。
そのため、特別な学校を出ていなくても青年海外協力隊に入ることは不可能ではありません。
エネルギーや鉱工業、農林水産など、理工学系部門における職種の募集がやや多く見受けられるため、その分野で専門性を持っていると有利になることがあるかもしれません。
青年海外協力隊の資格・試験の難易度
専門技術や資格が求められる職種もある
青年海外協力隊は、さまざまな職種で募集がかけられており、専門技術や知識を必要とする職種では、ほとんどがその分野の免許所持を応募条件に挙げています。
また「社会人経験○年」「実務経験○年」など、実際にその業務に関わった経歴を重視する職種も多くあります。
応募に際して必要な英語力は「中学卒業程度(英検3級もしくはTOEICスコア330点)に設定されており、合格後の派遣前訓練において語学力を高めていきます。
青年海外協力隊の給料・年収
生活費や手当は支給される
青年海外協力隊員はボランティアとして業務にあたりますが、「支援」という名目で月々の生活費や手当がJICAから支給されます。
生活費は派遣国によって異なりますが、1ヶ月285~755米ドルほどです。
この他に、日本の本人口座に月々55000円が手当として振り込まれます。
手当の額面は派遣国に関わらず一律です。
生活費と手当を総合してみると、おおむね年収は100万円~200万円の範囲となります。
派遣先から斡旋される住居費の支払いは必要なく、業務に関わる日本と派遣先の往復交通費は全額支給されます。
青年海外協力隊のやりがい、楽しさ
人生において貴重な経験が得られる
青年海外協力隊として活動する大きなやりがいは、何よりも自分の人生において、貴重な時間と体験を得ることができるところだといえるでしょう。
ビジネスでも観光でもなく、国際貢献として発展途上国に入りこむ経験は、誰しもできるものではありません。
日本を飛び出ることで視野が広がりますし、多様な人とのコミュニケーションをとりながら自分自身を成長させることができます。
青年海外協力隊の2年間が、自分の人生観を大きく変えるかもしれません。
青年海外協力隊のつらいこと、大変なこと
貧しい国で慣れない生活をする苦労も
青年海外協力隊として派遣される国は発展途上国であるため、電気も水道もまったく通っていない僻地の可能性があります。
生活習慣や衛生状態も日本とはまったく異なる環境の中で暮らすのは、想像しているよりもずっと大変です。
とくに最初は現地の言葉もうまく理解できず、コミュニケーションが思うようにとれなくてもどかしさを感じるかもしれません。
派遣先に溶け込み、生活が充実してくるまでは、孤独に耐えられる精神的なタフさが重要になってくるでしょう。
青年海外協力隊に向いている人・適性
生活面での不便さや変化も楽しめる人
青年海外協力隊の活動地域は、日本よりもずっと貧しく、生活環境が不便であることがほとんどです。
そのため、そうした不便に耐えられる人、むしろ普段では体験できない環境を楽しめるくらいの人が、青年海外協力隊には向いています。
そして、現地では多様な考え方や価値観を持つ人たちとコミュニケーションをとりながら活動するため、柔軟性があり、良い意味で自分を変化させることを怖がらないタイプの人に適しているといえます。
青年海外協力隊志望動機・目指すきっかけ
国際的なボランティア活動に関心がある
青年海外協力隊で活動するきっかけとしては、もともと海外が好きだったり、貧しい国の人たちを助けたいという思いがあったという人が多いようです。
一般の青年海外協力隊は若いうちしか応募できないプログラムとなっているため、学生時代など早い段階で青年海外協力隊としての経験を積み、そこで得たものをその先の人生にも生かしていきたいと考える人もいます。
いずれにしても、「人のために力を尽くしたい」という思いがあり、それを日本国内だけではなく、世界に目を向けて行いたいと考える人が、青年海外協力隊として活動しています。
青年海外協力隊の雇用形態・働き方
国内での一般的な働き方とは大きく異なる
青年海外協力隊は、政府開発援助(ODA)の一環として行われるボランティア事業であり、会社に雇用される社員などとはまったく別の形となります。
あくまでも「自発的参加の精神」に基づき行われてるものですが、スムーズな活動のために、JICAによって現地生活費の支給、住居の提供、各種手当など、さまざまな活動のサポートがあります。
なお、派遣中のボランティアは「海外居住者」扱いとなり、任意で国民年金に加入することになります。
日本国内で働くのとは異なるケースが多いため、詳しくはJICAのウェブサイトなどを通じてよく確認しておく必要があります。
青年海外協力隊の勤務時間・休日・生活
派遣先によって生活は変わる
青年海外協力隊員は、基本的に派遣先の職場のスケジュールに基づいて勤務します。
派遣先によっては、季節によって仕事量に波がある場合があります。
活動の休みについても派遣先によって異なりますが、1年に20日間、派遣国の外に出ることができます。
ただし派遣エリアによっては、派遣国よりも治安の悪い周辺国には入国できないというルールがあります。
加えて、旅行先と日程詳細を前もってJICAに提出する必要があるなど、さまざまな制限が設けられています。
青年海外協力隊の求人・就職状況・需要
募集職種に貢献できる能力があるかどうか
青年海外協力隊は定期的な募集が行われていますが、応募すれば必ず合格できるというものではありません。
合格率は職種によって違いがあり、全体の合格率は毎年2.5倍程度となっています。
合格のためには、募集職種の要件に対して自分の持つ経験やスキルがマッチングできるかどうかが重要ですし、ボランティア活動に貢献できる能力があることをアピールする必要があります。
理系や経済学の知識、社会人経験がある人は、有利になりやすいとされています。
青年海外協力隊の転職状況・未経験採用
未経験から青年海外協力隊になる人が大半
青年海外協力隊は、二度目、三度目と派遣される人もいますが、多くの隊員は初めての派遣となっています。
つまり、ほとんどの人が未経験から青年海外協力隊として活動するということです。
なかにはすでに社会人として働いている人が会社を辞め、青年海外協力隊に応募して派遣される人もいます。
社会人経験の中で培ってきたスキルや知識は、青年海外協力隊の職種によっては存分に生かすことができるため、自身の目指すキャリアを考えながら応募するとよいでしょう。
青年海外協力隊の現状と将来性・今後の見通し
有意義な国際協力活動として評価されている
青年海外協力隊は有意義な国際協力活動として、何十年もの歴史を持つボランティアプログラムです。
一時期よりも応募者は減少傾向にあるといわれますが、募集職種をより具体的で実践的なものにすることで、応募者の任期終了後のキャリア形成を考慮する傾向も見られます。
実際、職種によっては学校で学んできたり、仕事の専門分野に関する知識・スキルを思う存分に発揮することができます。
単なるボランティア活動で終わらせないためにも、自分が青年海外協力隊としてどのような活動をし、何を目指したいのかを明確にして応募することが重要だといえるでしょう。