「JETRO職員」とは

独立行政法人JETROに勤務する人。日本経済のグローバル化と発展を支援する。
日本の中小企業と海外市場のマッチング、日本への投資を促進するJETROは、グローバル化する経済の中で存在意義を増しています。
JETRO職員としてこうした仕事に関わるには、新卒採用試験か、社会人採用試験を経て、JETROに入構する必要があります。
新卒採用は毎年30名ほど、社会人採用は流動的ですが毎年数名採用となっています。
JETRO職員の給与については、30代前半のモデル年収が500万円前後と、それほど高いとはいえません。
しかし福利厚生の充実や、総合職であれば海外赴任の際の駐在手当といった面で、他企業より優遇されている面もあります。
JETROの役割は、ボーダーレス化が進む日本経済と世界市場にとって非常に重要です。
そのためJETRO職員の重要性は増していくと考えられますが、複雑化するニーズに応えるため、職員全体の専門性のアップ、社会人採用の強化などが必要になっていくともいわれています。
「JETRO職員」の仕事紹介
JETRO職員の仕事内容
日本経済のグローバル化と発展を支援する
JETROは、「独立行政法人日本貿易振興機構」を英語表記した際の略称で、政府の政策や独自の事業を通して、日本経済と国際経済を結びつける役割を担っています。
JETRO職員の業務はさまざまですが、代表的なものとして日本企業の海外展開支援が挙げられます。
中小規模の製造メーカーのなかには、ビジネスを海外に展開したいけれども、十分なノウハウもコネクションもないというところが珍しくありません。
そのような企業に対し、商談会や海外展示会の開催を通じて販路開拓をサポートしたり、海外進出に伴う諸手続きのアドバイスを行うことがJETRO職員の仕事です。
ほかにも、外国企業を誘致して海外からの投資を促進したり、農林水産物を海外にPRしたりと、日本の経済をグローバル化させるための幅広い業務を手掛けています。
JETRO職員の就職先・活躍の場
総合職は世界中で活躍する
JETROは、日本各地の41都道府県、世界中の70か所以上に事務所を展開しています。
全従業員数約1700名のうち、国外に約半数の850名が駐在しており、非常にグローバルな組織といえるでしょう。
なお、JETRO職員は「総合職」と「一般職」のカテゴリがあり、総合職は国内外問わずありとあらゆる地域に勤務する可能性がある一方、一般職については東京と千葉のどちらかが勤務先になります。
総合職の場合は、3年~4年おきに転勤するケースが一般的ですので、世界中を転々とすることになるでしょう。
JETRO職員の1日
扱う業務によりスケジュールも違う
JETROで取り扱っている業務は、大変多岐に渡ります。
そのため、どのような業務を担当しているかによって、1日の業務スケジュールも大きく異なります。
ここでは、一例として国内・海外で働く総合職の1日のスケジュールを紹介します。
<総合職のJETRO職員の1日>
8:30 出勤
9:00 相談受付
12:00 休憩
13:00 情報収集
15:00 インターネット会議
17:00 情報提供
18:00 帰宅
JETRO職員になるには
職員採用試験を受ける
JETRO職員になるには、職員採用試験を受けて採用される必要があります。
新卒採用では、専用サイトからエントリーシートを提出した後、小論文の筆記試験、面接試験(3回程度)、再度筆記試験、最終面接と、幾重にもわたる選考が実施されます。
入構後は、ビジネスマナーなどの新人研修が3週間にわたって実施されるほか、基礎研修、業務実地研修、能力開発講座など、多種多様な教育を受けて、JETRO職員に必要な能力を養います。
JETRO職員の学校・学費
国際経験があると選考に有利
JETROの採用試験に応募するには、総合職については4年制大学卒業以上、一般職は短大卒以上の学歴が必要です。
学部や学科に指定はありませんが、業務と関連性の高い経済学部や商学部、法学部、外国語学部、国際関係学部などで学んでいると有利かもしれません。
職務の専門性が高いことから、近年では大学院まで進学した人の採用人数も増加傾向にあります。
また、留学や海外ボランティアなどで、国際経験を積んでおくと有力なアピール材料になるでしょう。
JETRO職員の資格・試験の難易度
学生時代からの入念な準備が必要
JETROの採用倍率は公表されていませんが、一説には100倍前後といわれています。
非常に高倍率ですが、同じ国際協力を行う独立行政法人のJICAは300倍超という話もありますので、相対的にまだ就職しやすいといえるかもしれません。
合格者の経歴をみれば、東京大学や京都大学、慶応義塾大学など、名のある有名大学出身者が目立つほか、帰国子女だったり、海外留学経験があったりする人も多いようです。
膨大な志願者と争って数少ない内定を勝ち取るには、学生時代をどう過ごすかが非常に重要です。
JETRO職員の給料・年収
業務難易度の割には高給とはいえない
JETROの事業は公共性が高く、準政府機関という扱いであるため、給与体系は公務員に似ています。
人事評価もありますが、基本的には年功序列で棒給表通りに昇級していき、大卒で入構した場合は30代前半で年収500万円前後となります。
決して少ない年収ではありませんが、500万円という数字は残業手当などをすべて合算したものであり、業務の専門性などを勘案すると十分とはいえないかもしれません。
ただし、海外事務所に駐在している期間は、駐在手当のために年収が跳ね上がり、30代前半でも年収は800万円前後に達します。
JETRO職員のやりがい、楽しさ
グローバルに働くことができる
民間企業のなかにも、欧米などの主要先進国に事務所を設けているところはさほど珍しくありませんが、アジアやアフリカなどの発展途上国にまで多数の勤務先がある組織はほとんどありません。
国内外に100か所以上の事務所があり、真の意味でグローバルに働ける点は、JETROならではの魅力といえるでしょう。
国際経験を積極的に積みたい人にとっては、世界のさまざまな国や地域で活躍し、コネクションをつくることができる、うってつけの職場です。
JETRO職員のつらいこと、大変なこと
コンプライアンスが厳しい
独立行政法人であるJETROは、日本政府の代理機関として働くため、とくに高いコンプライアンス(法令遵守)意識が求められます。
たとえ故意でなくても、JETROとして行った業務が取引国の法律に抵触した場合、外交問題に発展しかねません。
しかし、世界中の国のさまざま分野を手掛ける関係上、それらの業務すべてにおいて完璧にコンプライアンスをチェックする苦労は並大抵ではありません。
実際のところ、コンプライアンスに気を遣いすぎるあまり、現場が疲弊しているという声もあるようです。
JETRO職員に向いている人・適性
一つの分野を深堀りできる人
JETROは組織としての方向性が明確に定まっており、国際経験が豊かだったり、政府関係機関にふさわしい法令遵守意識の高い人が職員に向いているのは間違いありません。
ただ、近年では、民間のなかでも海外の事業展開を支援するコンサルタント企業が台頭しており、JETROは独自のカラーと強みを打ち出す必要性に迫られています。
これからのJETRO職員には、それぞれの事業分野の専門性を極め、自信をもって案件を力強く引っ張っていける人が向いているでしょう。
JETRO職員志望動機・目指すきっかけ
JETROでしかできないことを考えるべき
職員採用試験における複数回の面接を突破するために、志望動機は非常に重要です。
それぞれの選考段階では、グループ面接や個別面接が実施されますが、基本的にはエントリーシートに記入した内容を基に質問がなされ、面接官の気になったところを掘り下げられるようです。
JETROの幅広い業務内容を理解したうえで、なぜJICAや他の政府組織でなくJETROなのか、職員になったらどんなことをしたいのか、明確なビジョンを述べられるように準備しておきましょう。
JETRO職員の雇用形態・働き方
インターンシップに参加したほうがよい
JETROは、経済産業省の「国際即戦力育成インターンシップ」事業の実施事業者として指定されており、学生や若手社会人などに対するインターンシップには非常に積極的です。
実際に新興国などに派遣され、現場の第一線で実務に携わることができますので、JETRO職員を目指す人にとっては、職員の働き方を知ると共に、貴重な国際経験を得られるでしょう。
参加するためには選考を受けなければなりませんが、チャレンジしてみる価値は十分にあります。
JETRO職員の勤務時間・休日・生活
勤務時間はある程度選べる
JETRO職員の勤務時間は、1日7時間45分のシフト選択制となっており、8:30~17:15、10:00~18:45など、いくつかの候補のなかから始業時間と終業時間を選べるようになっています。
残業量については各部署によってさまざまですが、1か月の残業時間は上限20時間までと定められており、各職員はなんとかその範囲内で業務を完了させられるように尽力しています。
ただ、地方事務所や海外事務所などでは、限られた人員数で業務をこなす必要があるため、職員一人当たりの負担が大きくなりやすく、サービス残業となるケースもあるようです。
JETRO職員の求人・就職状況・需要
新卒求人数は減少する懸念がある
JETRO職員の採用人数は、総合職で毎年30名前後、一般職で5名前後となっています。
総合職については毎年募集がなされているものの、一般職は年度によってはまったく募集が行われないケースもあります。
現状でも決して多い求人数とはいえませんが、一部では、一般企業での実務経験がない職員が一般企業のコンサルをするという矛盾を指摘する声もあり、今後の求人数については不透明感が残ります。
状況によっては、社会人採用枠が増え、それに反比例して新卒求人数が絞られるかもしれません。
JETRO職員の転職状況・未経験採用
現状の社会人枠は数名程度
JETROでは、社会人採用枠として、総合職、研究職、アドバイザー職が設けられています。
社会人の採用人数は毎年数名程度となっており、職種によっては募集がない年もありますので、JETROのホームページを逐次確認する必要があるでしょう。
転職に必要な条件も具体的に明示されており、30代前半から40代前半であること、国際的な事業を担当できる語学力と、募集する専門分野での4年以上の実務経験があることとされています。
また、期限付きの嘱託職員として、管理業務などのアシスタントを募集するケースもあります。
JETRO職員の現状と将来性・今後の見通し
グローバル化のためにJETROは不可欠
日本の国内市場が縮小傾向にある昨今、中小規模であっても海外展開を目指す企業が増加しており、JETROの存在意義は増しています。
また、JETROは独立行政法人として税金を資金源に活動していますが、日本政府はグローバル化の推進に注力しているため、JETROの事業予算も当面は安定状態を保つでしょう。
新卒採用職員は、民間企業での業務経験がないにも関わらず、民間企業をリードしていかなくてはいけないという難しい立場にあるため、就職後の努力が問われる職業といえます。