「ツアーコンダクター」とは

ツアーの準備から各種手配をトータルにこなす。ツアーにも同行し、楽しい旅を演出する。
ツアーコンダクター(旅行添乗員)とは、パック旅行や団体旅行に同行し、各種手続きを行ったり、案内をしたりする仕事です。
添乗するツアーが決まると、打ち合わせや下調べなどの事前準備を行います。
ツアーへの同行中は24時間仕事のようなものであり、次の目的地への準備や、ツアー客の要望への応対など、常に何かをしている状態であるため、休む暇はありません。
ほとんどのツアーコンダクターは、派遣会社に所属しており、旅行会社の社員がツアーコンダクターをすることはなくなりつつあります。
旅行業界の競争は厳しく、経費の削減が続く中で、ツアーコンダクターの待遇は厳しい状況です。
年間を通じて定期的に仕事が入るわけではないため、生活が安定しないこともあります。
「ツアーコンダクター」の仕事紹介
ツアーコンダクターの仕事内容
旅程全体を管理する「旅の案内役」
ツアーコンダクターは、パック旅行や団体旅行などのツアーに同行し、そのまとめ役となる仕事です。
添乗員やツアーリーダーとも呼ばれています。
お客さまたちが安全で快適なツアーができるよう、観光スポットの案内やチケット手配、トラブル時の対応など、さまざまなサポートを行います。
旅行会社に所属するツアーコンダクターの場合、営業職も兼ねて社員旅行や修学旅行などの団体旅行をみずから受注することもあります。
旅行全体のスケジュールを把握し、目的地の観光施設やレストラン、ホテルなどと連絡を取り合いながらお客さまに快適でスムーズな旅を提供するのが主な役割です。
ツアー中はあらゆることに対応しなければならないため、気を抜くことができません。
ぬかりない事前準備をし、当日もお客さまを解散場所に無事送り届けるまで集中して業務に臨みます。
ツアーコンダクターの就職先・活躍の場
旅行会社に所属するのが一般的
ツアーコンダクターの主な就職先は旅行会社です。
就職する旅行会社よって、国内旅行や海外旅行を専門としている会社、修学旅行や社員旅行を受注する会社など、扱っているツアー内容はさまざまです。
大手の旅行会社ではパック旅行の添乗だけでなく、会社や学校などへ営業に出向き、団体旅行をみずから受注してツアーの企画から携わることもあります。
旅行会社の他にも経験や実績がある場合は、ツアーコンダクター専門の派遣会社に登録するほか、フリーランスの添乗員として働くことも可能です。
ツアーコンダクターの1日
ツアーによってスケジュールはさまざま
ツアーコンダクターが担当するツアーは多岐に渡るため、仕事内容もさまざまです。
ここでは例として国内の日帰りツアーに添乗する場合の1日をご紹介します。
7:00 出勤
集合場所にてバスの運転手やガイドとツアー内容の打ち合わせを行い、お客さまを出迎える準備をします。
7:30 集合・出発
お客さまが揃ったら挨拶をし、ツアーのスケジュールや注意事項を伝えます。
10:00 観光
バスガイドに観光地の案内を任せる場合は、お客さまが観光している間に昼食場所を確認するなど、ツアーがスムーズに遂行するようサポートを行います。
12:00 昼食
レストランの担当者に挨拶し、食事の個数や滞在時間を確認します。
14:00 観光
フリータイムが設定されているツアーでは事前に集合場所と時間をしっかりと伝えます。
15:30 出発
バス運転手と渋滞状況や到着時間などを確認し、お客さまの様子を気にかけながら到着地へと戻ります。
18:00 到着・解散
解散場所に到着したらお客さまへの挨拶・お見送りを行い、運転手とバスガイドへも挨拶をして業務は終了です。
ツアーコンダクターになるには
旅行会社に就職して資格を取得する
多くのツアーコンダクターは旅行会社に勤務するか、ツアーコンダクター専門の派遣会社に勤めています。
高校や観光系の専門学校、短大や大学を卒業した後に旅行会社へ就職し、ツアーコンダクターの知識を身につけるための研修などに参加します。
ツアーコンダクターの資格を取得するまではサブの添乗員として先輩が添乗するツアーの付き添いをするのが一般的です。
資格の取得後は一人で添乗業務をこなせるようになります。
とはいえ1年目から海外添乗を一人で任されることは少なく、まずは国内ツアーの添乗で経験を積んでいくことになるでしょう。
ツアーコンダクターの学校・学費
学歴は問われないが大手なら大卒程度
高校を卒業していれば就職できる旅行会社も多く、ツアーコンダクターになるために必ず通わなくてはならない学校はありません。
ただし、修学旅行や海外旅行の添乗を扱うような大手の旅行会社は大卒以上を条件としていることもあります。
添乗員の資格は就職後に研修を受けて取得するケースがほとんどのため、就職時の専門知識は必須ではないことが多いです。
とはいえ、観光系の専門学校を卒業している人、観光業への関心が深い人が採用時の面接などで有利になることはあるでしょう。
観光系の専門学校に通う場合、学費は100万円〜130万円(1年)程度です。
ツアーコンダクターの資格・試験の難易度
旅程管理主任者の資格を取得する
ツアーコンダクターとして働くには「国内旅程管理主任者」や「総合旅程管理主任者」という資格が必要です。
「国内旅程管理主任者」は国内のみの添乗、「総合旅程管理主任者」は国内・海外両方の添乗業務が可能となります。
これらの資格は就職後に取得するのが一般的なため、まずは旅行会社などへの就職を目指す必要があります。
もともと観光業に関心のある人なら、研修をきちんと受講して勉強をしてから臨めば試験の難易度はそれほど高く感じないでしょう。
ただし、いずれの資格取得にも添乗の実務経験が必須となります。
ツアーコンダクターの給料・年収
安定収入を得るには正社員採用を目指す
ツアーコンダクターの平均年収の相場は300万円~400万円程度です。
勤務時間が不規則で長時間労働になることも多いため体力を要する仕事ですが、近年は旅行業界の競争が激化しており、経費削減などの流れで給与水準も下がってきています。
派遣社員やフリーランスで働く場合は月給ではなく日当として給与が支払われるケースが多いです。
正社員とは異なり自由に働けるというメリットはありますが、いつも決まった数の仕事を得られるとは限らないため不安定な収入となるでしょう。
ツアーコンダクターとして安定した収入を得るには旅行会社の正社員採用を目指すルートが確実です。
ツアーコンダクターのやりがい、楽しさ
ツアーが無事に終わったときの達成感
旅行全体の行程をとりまとめるツアーコンダクターは、お客さまに旅の思い出と安心を提供するのが使命です。
特に海外旅行の場合、日本とは言葉や文化も異なる場所で過ごすことになるため、トラブルが起こらないよう事前に綿密な準備を行う必要があります。
さらにツアー中には、お客さまに気を配るのはもちろん、現地の運転手やガイド、ホテルやレストランの担当者などとも積極的にコミュニケーションを取らなければなりません。
つねに緊張感が続く仕事のため、担当ツアーが何事もなく終わったときには大きな安堵感に包まれます。
旅行に満足してくれたお客さまに「ありがとう、楽しかったよ」と感謝の意を伝えられたときが最もやりがいを感じる瞬間です。
ツアーコンダクターのつらいこと、大変なこと
身体面・精神面のタフさが求められる
ツアーコンダクターは勤務時間が長く、体力が必要な仕事です。
日帰りの国内ツアーでは出勤が出発時刻前、退社は解散後となるため1日中拘束されることも多いです。
海外添乗ともなれば出発から到着まで24時間近く睡眠をとらずに働き続けることもあります。
海外旅行や知らない土地への国内旅行の場合、添乗員自身も慣れない環境のなかでお客さまをとりまとめなければなりません。
集合場所にバスが来ない、お客さまがはぐれてしまった、夜中に急病人が出るなどのトラブルが発生する可能性はつねにあります。
身体面だけでなく、精神的にもタフな仕事だといえるでしょう。
ツアーコンダクターに向いている人・適性
サービス精神が旺盛で努力ができる人
ツアーコンダクターは快適で安全な旅をお客さまに提供する仕事です。
つねにお客さまに気を配ったり、細かいリクエストに応えたりと、人に喜んでもらうことにやりがいを感じられる人が向いている職業だといえます。
また、旅行全体を管理する立場にあるため、決して自分自身は目立つことがない裏方の役割が求められます。
お客さまの要望に応じたスケジュールの微調整や交通手段・宿泊施設の手配といった地味な業務も多いため、こつこつと努力を重ねられる人にはぴったりな仕事です。
ツアーコンダクター志望動機・目指すきっかけ
とにかく旅行が好きな人が多い
ツアーコンダクターの志望者は旅行好きがほとんどです。
旅行の楽しさを誰よりも知っていることから、同じような経験をお客さまにも提供したいと考えて志望をする人が多いです。
添乗員の資格は入社後に取得できるため、事前に特定の資格や学歴が不要な点も志望者のメリットとなるでしょう。
とはいえ、ツアーコンダクターの仕事は体力勝負です。
旅行が好きというだけでは志望動機として不十分だと判断する旅行会社も多いのが現状です。
ツアーコンダクターの雇用形態・働き方
旅行会社の正社員または派遣会社へ登録
ツアーコンダクターの雇用形態はさまざまです。
添乗員を募集している旅行会社へ入社して正社員として働いている人や、派遣会社に登録をして仕事をもらう人、フリーランスとして働く人が代表的です。
しかし旅行業界の競争が激化している近年では、旅行会社がツアーコンダクターを自社の正社員として雇う例が少なくなっています。
そのため、添乗員の活躍の場は従来の旅行会社から専門の派遣会社へと少しずつ移行をしています。
まれではありますが、経験者であれば添乗員のアルバイト採用を行なっている旅行会社も存在します。
ツアーコンダクターの勤務時間・休日・生活
不規則な勤務時間かつ休日は不定期
ツアーコンダクターの勤務時間はツアー内容によって異なります。
宿泊をともなうツアーや海外旅行を担当する場合は基本的に24時間体制だと考えておくのがよいでしょう。
1日の勤務時間が8時間を超えることも多く、生活は不規則になりがちです。
また、土日祝日やお盆やお正月などの長期休暇にツアーが設定される場合が多いため、休日は必然的に平日や閑散期になります。
プライベートの予定は合わせづらくなりますが、旅行が好きな人であれば閑散期に休暇が取れる点にメリットを感じるでしょう。
ツアーコンダクターの求人・就職状況・需要
旅行会社の正社員から専門の派遣会社へ
個人旅行が主流となりつつある現代では、ひと昔前に比べると旅行会社のツアーを利用する人は少なくなっています。
旅行会社間の競争が激しくなっており、ツアーコンダクターを正社員として採用する企業は減少傾向にあります。
そのため、旅行会社ではまず総合職として正社員を採用し、添乗だけでなく企画や営業、手配などの広範な業務をこなせる人材を求めるケースが多くなっています。
専門の派遣会社では添乗員の募集をしているところもまだまだありますが、即戦力が求められるため経験者が優遇されるでしょう。
ツアーコンダクターの転職状況・未経験採用
未経験者は資格取得可能なルートを選ぶ
ツアーコンダクターは異業種から転職する人も比較的多い職業です。
従来における主な就職先は旅行会社でしたが、近年では派遣会社に登録してツアーごとに仕事の依頼を受けて働く人が増えています。
ただし派遣会社では即戦力が求められることも多く、経験者の転職に有利だといえるでしょう。
添乗業務のみを希望する未経験者を正社員として採用する旅行会社は減少しています。
そのため、未経験の場合は旅行会社の総合職または資格の研修を受けられる派遣会社への採用を目指しましょう。
ツアーコンダクターの現状と将来性・今後の見通し
語学スキルと広汎な知識が求められる
団体ツアーやパック旅行よりも個人旅行が一般的になりつつある現在では、旅行会社間の生き残りをかけた競争が激しくなっているため、ツアーコンダクターの需要も減少傾向にあります。
激務の割には給与面・勤務形態などの待遇が恵まれているとは言いにくく、他の業種へ転職する人も少なくありません。
一方で、熟年層を中心とした海外ツアーの人気は衰えておらず、海外へ同行できる人材が必要とされるケースも増えています。
また、修学旅行や社員旅行といった団体旅行の需要はまだまだ存在しています。
英語や中国語などの外国語のスキルや、添乗だけでなく企画や営業など旅行業務に関する広汎な知識と経験を身につけることができれば高く評価され、ツアーコンダクターとして活躍する機会は今後も増えてくるでしょう。