左官職人に将来性はある? 現状や需要も紹介

左官の現状

左官は、職業として非常に長い歴史をもち、そのルーツは1000年以上前の平安時代にまでさかのぼるといわれています。

日本の伝統技術の継承者である左官は、建築業界の一職人という以上の、重い意味合いをもつ仕事です。

しかし近年は、左官職人全体の高齢化が進み、体力的な問題から引退する人が相次いでいます。

その一方で、建築業界の職種のひとつである左官は、危険、きつい、汚いといういわゆる「3K」の仕事を嫌う若者が増えていることもあって、新しいなり手が不足しています。

こうしたことから職人の数が急激に減り、伝統ある技術の伝承が危ぶまれているのが、左官の現状です。

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左官の需要

左官の需要は、決して多いとはいえません。

現代では、伝統的な和式の住宅よりも、洋式の住宅のほうがはるかに一般的であり、左官の活躍の場は限られています。

さらに、昨今の建築業界は、コスト至上主義、工期至上主義といった考え方が根強く、できるだけ安く、短い時間で施工することが優先される風潮にあります。

一定の技術をもつ左官職人を雇って、何工程もの作業がかかる塗り壁をつくるよりも、誰でも簡単に貼れる「塗り壁風クロス」を使ったほうが、お金も時間もはるかに節約できるのは明らかです。

こうした時代や環境の変化が、左官職人が減少していく要因となっている面も否定できません。

ただしその一方で、文化を途切れさせないためにも、次世代の職人を育てるべく、積極的に採用活動を実施している工務店や建設会社も数多くあります。

絶対的な需要自体は決して多くないものの、左官を目指す人、つまり供給量も多くありませんので、結果的に需給バランスは取れているといえます。

たとえまったくの未経験者でも、やる気さえあれば働き口を見つけることはさして難しくないでしょう。

左官の将来性

近年になって、左官職人のつくる自然素材の壁は、その価値が見直される動きが強まっています。

工場で大量生産されたクロスなどの内装は、手軽で安いぶん、どうしても画一的になりがちであり、日々多様化していく消費者ニーズに対応することは困難です。

さらに、ホルムアルデヒドをはじめとした、内装や接着剤に含まれる化学製品由来の健康被害、いわゆる「シックハウス症候群」も、メディアでひんぱんに取りあげられています。

多少コストと時間をかけても、職人の手によるあたたかみのある内装にしたい、健康によい自然素材を使った内装にしたいという消費者は、年々増加傾向にあります。

また、漆喰(しっくい)や珪藻土、シラス(火山噴出物)、炭などの自然素材は、素材自体に湿度調節効果や消臭効果、抗菌効果があることがわかり、機能面での価値も再評価されています。

昨今は、一般的な洋室にも、左官職人の塗り壁が取り入れられる事例が増えており、まだまだ左官の需要は根強いといえます。

長い時を経ても生き残ってきた左官技術には、時代に左右されない不変の価値があり、腕の良い左官職人の将来は明るいでしょう。

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左官の今後の活躍の場

今後の左官職人の仕事は、増改築やリフォーム、修繕など、中古住宅の仕事が増えていく見通しです。

人口減少によって、日本の新築住宅需要は徐々に落ち込んでいくことが予測されていますが、その一方では、長年住んだ愛着のある家をリフォームして住み続けたいという人が増えています。

そうしたクライアントは、金銭的なメリットよりも、自身のこだわりや機能性、デザイン面を重視するケースが多いため、中古住宅の仕事は新築住宅よりもむしろ左官職人向きといえるかもしれません。

さまざまな素材を扱えるよう、積極的に新しい知識や技術を吸収し、職人としての腕前を磨き続けていけば、独自の強みを生かして活躍し続けられるでしょう。

また、タイルや屋根の貼付、スプレーによる吹付、型枠づくり、外構施工など、ほかの職種の技術を身につけて、「多能工」として活躍の場を広げる道も考えられます。

左官という非常に高度な技術を身につけられる器用さがあれば、ほかの職人の技術をマスターすることも、それほど難しくはないでしょう。