左官に向いている人とは? 適性や必要な能力を紹介
左官に向いている性格・適性
技術を高めることに喜びを感じられる人
左官は、高い技術を必要とする専門性の高い職業です。
壁や床に対して均一に材料を塗り拡げるだけでも、かなりハイレベルな技術が必要です。
壁にでこぼこで複雑な模様をつけたり、水はけをよくするため微妙な傾斜をつけるなど、とても難しい作業もあります。
個々の素材ごとにも異なる技術が必要であり、たとえば漆喰壁(しっくいかべ)だけでも、「扇仕上げ」「ハケ仕上げ」「コテ波仕上げ」など、さまざまな技法があります。
左官が身につけなければならない技は、膨大な数があり、現役でいるかぎり腕を磨きつづけなければなりません。
ひとつの道を突き詰めることに喜びを見出せる、職人気質の人が左官に向いているでしょう。
外交的な人より、内向的で自分自身と向き合うのが好きな人のほうが、左官としての適性が強いかもしれません。
粘り強い性格の人
左官の1日は、書類作成などのデスクワークや、取引先との打ち合わせなど、さまざまな業務をおこなう会社員とはちがいます。
左官は、現場仕事に1日のほとんどの時間を費やすためです。
現場仕事も、攪拌機(かくはんき)で材料を練る、練った材料を鏝に乗せて壁に塗りひろげるといったように、同じ動作を黙々と繰り返す「反復作業」が大半です。
左官の仕事は、技術とともに、単純作業をコツコツと続ける根気も必要になるため、粘り強く、忍耐力のある人は、左官としての適性があるでしょう。
左官に求められるさまざまな技能は、どれも一朝一夕で身につくものではありません。
これまでの学生生活や日常生活などで培ってきた根性や忍耐力は、職人として心強い武器となるでしょう。
自分のセンスで勝負したい人
左官は、大工をはじめとする建築関係の仕事のなかでも、仕上げ作業をまかされることが多い職業です。
作業する場所や使用する材料などは、あらかじめ指定されていますが、鏝を使って壁にどんな表情をつけるか、どんなふうに仕上げるかは、各職人の技量やセンスにゆだねられています。
仕上がった壁は、その家で暮らす人や家の前を通りがかる人など、数多くの人の目にふれ続けます。
自分の感性や芸術性を生かした仕事がしたい、自分の手掛けた仕事を見てもらいたいという人は、左官に向いているでしょう。
道を極めた左官職人のなかには、手掛けた壁が建築の枠を超えてアートとして高く評価され、海外で個展を開いた人もいます。
近年は、美大出身者が左官職人になるケースも増えているようです。
芸術的センスを生かせる仕事を目指す人にとって、左官職人もひとつの選択肢でしょう。
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左官に必要なスキル・能力
観察力
世間一般で職人と呼ばれる種類の仕事は、教科書などを読んで知識を増やすのではなく、実作業を通して、現場で腕を磨いていかなければなりません。
材料の配合の加減や微妙な力の入れ具合など、感覚的にコツをつかんでいくことが必要であり、元々の素質などもありますが、技術を身につけるにはかなり時間がかかります。
その際に成長度合いを大きく左右するのは、先輩や親方がどのように作業しているのか、集中して注意深く見つめる観察力です。
実際、職人は口下手な人が多いせいか、「技は目で見て盗め」と指導されるケースが目立ちます。
歴史的知識
左官は、古くから受け継がれてきた日本の伝統文化をになっています。
たとえば、昔から多くの人を魅了してきた瓦と漆喰でつくられた「海鼠壁(なまこかべ)」を塗るのも左官の仕事です。
海鼠壁は、武家屋敷などに用いられた、機能性と美しさを兼ね備えた壁塗り様式のひとつです。
古い町並みに残っている蔵(くら)の壁のような、黒と白の幾何学模様というと、ピンとくるかもしれません。
海鼠壁をはじめ伝統技術は、決してすたれているわけではなく、技術や形を変えて、現代建築にも多く取り入れられています。
歴史的知識や、日本文化に関する理解があれば、自身の左官職人としての仕事にも、自然と深みが増すでしょう。
左官に向いていないのはどんな人?
興味の幅が広い人
世の中には、好奇心旺盛で、いろいろなことに興味や関心のある人のほうが好まれる仕事もたくさんあります。
しかし、左官職人は、「広く浅く」よりは「狭く深く」、ひとつの技術を追及していくことが求められる職業です。
興味の幅が広く、フットワークが軽いことは、本来であれば決して悪いことではないのですが、あまり左官向きの性格とはいえないかもしれません。
同じことのくり返しだと退屈してしまう、飽きっぽいタイプの人は、職人として大成することは難しいでしょう。
体力に自信がない人
左官というと、鏝を使った技術仕事ばかりをイメージするかもしれませんが、セメントを運ぶ、ブロックを積むといった力仕事も多数あります。
「鏝返し」といわれる、鏝に材料を乗せる動作だけでも、材料には多分の水を含んでいるため、見た目以上の重労働です。
まったくの素人が鏝返しをすると、たった数回の動作で腕が上がらなります。
筋力や体力に自信がないという人は、左官の仕事につらさを感じやすいでしょう。
筋力や体力に自信がない人は、左官になる前に身体をきたえておいたほうがよいかもしれません。