パン職人が開業・独立するには?
パン屋を開業するまでのキャリアパス
パン職人になるには資格や学歴は必要ありません。
また開業するにあたり、実務経験が何年以上必要などという制約もありません。
そのため、自分の技術に自信があれば、すぐにでもパン屋を開業することも可能です。
しかし一般的には、どこかのお店に勤務し、パン職人としての腕を磨きながら開業に向けて準備をしていく人が多いです。
将来、独立開業をしたい場合は、勤務するお店もその観点で選ぶとよいでしょう。
たとえば個人店は人手が少なく仕事量が多くなりがちな一方、分業化されていないため、製パンの全体像が見やすく、実力がつきやすいです。
またオーナーとの距離も近いため、経営について学べるというメリットもあります。
他にも独立開業を応援し、フランチャイズ制度を導入する大手パンチェーンもあります。
ノウハウやスキルを教えてもらえるほか、仕入れルート確保をしてくれるため、経験が浅くても自分の店がもちやすいとされます。
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開業資金の調達
パン職人として働いている人の多くが、「いつかは自分の店を持ちたい!」と願っています。
しかし、実際に個人でパン屋を開業するのはとても大変なことなのです。
その理由として、パン屋を開くためには多額の開業資金が必要だということがあります。
パン屋の開業を考えている人は、早いうちから計画的に十分な資金を貯めておきましょう。
物件を借りた場合
物件を借りてパン屋を開業する場合、ターゲット層が明確になり、自分のコンセプトにあった店舗を作りやすくなります。
駅近や住宅街のなかなど、集客のしやすさも魅力ですが、開業資金が高くなります。
たとえば東京23区内で20坪程度の物件を借りた場合、敷金礼金、家賃、運転資金などを合算すると1500万円ほどかかるケースもあります。
都内でなくても、家賃や大型設備を導入することを考えると、開業資金は数百万以上かかると覚悟しておく必要があります。
自宅でネット通販をする場合
最近多いのが、ネットショップとして、パン屋を開業する方法です。
自宅のキッチンとシンクやコンロを分ける必要があるため、リフォーム費用は必要となりますが、店舗賃貸料がかからないので、比較的低資金で開業することが可能です。
そして礼金、保証金などの初期費用がかからないので、開業資金は200万円前後と物件をかりる場合よりも抑えられます。
開業までに必要なもの
資格
食品衛生責任者
パン職人になるために必要な資格はありませんが、パン屋を開業にあたり絶対に必要な資格が食品衛生責任者です。
パン屋に限らず、食品関係の営業をするには、許可施設ごとに食品衛生責任者を設置しなければならないことが条例により定められているからです。
ただし、栄養士や調理師資格がある人は既に食品衛生に関する知識があるとみなされ、免除されます。
経営者でなく従業員であっても、食品衛生責任者が1名いれば大丈夫です。
しかし、従業員が食品衛生責任者の場合、もしその人が辞めてしまった場合、営業そのものができなくなるため経営者自身が持っておくのが確実です。
食品衛生責任者は各都道府県が行う養成講習会を6時間以上受講することで取得できます。
費用は1万円前後で、講習会も月に複数回実施されていて有効期限もないため、将来パン屋を開業したいという人は取得しておくのもよいでしょう。
講習会は都道府県ごとに行われますが、平成9年以降に取得した資格については全国で通用します。
パン製造技能士など
パン職人として必須の資格ではありませんが、パン製造技能士資格を取得しておく人が多いです。
パン製造技能士はパン製造の専門的知識や技術を評価されるため、合格すれば自分のスキルの証明にもなります。
ほかにもパンコーディネーターやパンシェルジュ検定を取得し、SNSを活用した集客に役立てる人もいます。
許可関連
菓子製造業許可
食パンも菓子パンも法律上の分類は「菓子」になるため、パンを製造し、販売するためには菓子製造業許可が必要です。
菓子製造業許可を得るためには、管轄の保健所に営業許可申請を行い、基準に適合した製造施設を作ることが必要です。
工事が始まる前に保健所に申請をし、その設計でいいかどうか確認する必要があります。
改装が必要になることもあるため、事前にどのような業態のパン屋にするのを決め、事前相談を保健所にしておくのがよいでしょう。
飲食店営業許可
パン屋を開業するとき、多くの場合で必須となるのが、保健所による飲食店営業許可です。
たとえば、多くのパン屋がサンドイッチを販売していますが、サンドイッチはパンではなくお弁当の分類に入ります。
サンドウィッチなどのお弁当を製造販売するときには、飲食店営業許可を得なくてはなりません。
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開業のメリット・デメリット
メリット
自分の店を持つことで、自分の方針に合った自分が売りたいパンを作り、販売することが出来ます。
たとえば、地域の食材を使ったパン屋、アレルギーに配慮したパン屋など、パン作りにかける自分の思いをお客さまに伝えやすくなります。
またパン職人として店に勤務する場合は定年がある企業やお店が多いですが、自分のお店ならば定年はありません。
気力と体力がある限り生涯現役として活躍し、お客さまにパンを届けることが可能です。
デメリット
開業のデメリットとしては、経営の難しさが挙げられます。
小麦などの原材料は高騰しているため、パンの利益率はそんなによくありません。
パン職人としての腕がよく、パンにかける強い想いがあっても、経営者としての手腕がなく、他店との差別化ができていない場合、店の存続自体が危ぶまれることもあります。
パン屋の開業には数百万以上の開業資金を投入していることが多く、リスクは高いでしょう。
ただおいしいパンを提供するのではなく、どう利益を上げていくか、経費削減方法など中長期目線で戦略的に経営することが重要です。
開業にあたっては、経営ノウハウを学び、事業計画をよく練り、出店地域の競合分析を行うという準備をしておきましょう。
開業した場合の年収
パン屋を営む人の年収は、店によって大きく異なります。
SNSで話題となり、メディアに取り上げられたり、多店舗展開をしたりしているようなパン屋であれば、年収が1,000万円を超えることもあります。
しかし、平均としては350万円程度とされています。
朝早くから働き、肉体的にもハードな仕事であることや開業資金にお金がかかることを考えると、決して割がいいとはいえません。
パンにかける熱い思い、愛情がないと続けられない仕事といえるでしょう。