自動車整備士の需要・現状と将来性

自動車整備士の現状

人手不足が深刻化

いま現在、自動車整備士は人手が大きく不足しています。

「日本自動車整備振興会連合会」が平成26年に行った実態調査結果によると、約5割もの整備現場で整備士が不足しており、そのうち約1割の整備現場に関しては、事業に支障をきたすほど整備士が不足している状況のようです。

国としても整備士不足は今後の日本の課題として考えており、平成26年には国土交通省により「自動車整備人材確保・育成推進協議会」が設立され、国と自動車関係団体とが一体となり、整備士を目指す人材の確保や育成を図る活動を進めています。

そうした対策も進んではいるものの、それでもなお、人手不足は解消されていないのが現状のようです。

人手不足が進む理由

自動車整備士の不足には、以下の3つのことが影響していると考えられています。

<自動車整備士不足の主な理由>
1.若者の車離れ
2.少子化
3.職業の選択肢の多様化

とくに「若者の車離れ」の影響はやはり大きいようです。

かつてのように、自動車が若者の生活や文化の一部となっていた時代ではなくなり、車に興味をもつ若者は減ってきており、車の免許すら持たない若者も目立つようになってきました。

そうした中、自動車の整備を本業にしようとする若者も、おのずと減ってきているのが現状のようです。

自動車整備士の需要

人手不足により求人は恵まれている

自動車整備士が不足していることにより、募集をしても埋まらない求人が増えてきていますので、整備士側にとっては「売り手市場」となり、有利な状況にあります。

通年に渡り、常に自動車整備士の中途採用を行っているディーラーなどもありますので、時期関係なく求人は見つけやすいでしょう。

新卒の場合は、昨今の景気回復も影響してか、毎年40~50名の整備士を新卒採用している大手ディーラーも増えてきています。

未経験者向けの求人も多い

人手不足の影響から、整備士経験者はもちろんのこと、これから整備士を目指す人であっても欲しいという会社は増えています。

とくに中小のディーラーや地方のディーラーなどであれば、「完全未経験OK」「整備士資格不問」といった条件の求人を出している会社が目立ちます。

そのような未経験向けの求人であれば、行える仕事の範囲は狭くなりますが、経験や資格がなくとも、整備士の職に就くこと自体はできます。

まずは未経験・未資格でチャレンジし、業務経験を積んだのちに、整備士資格を取るというのも一つのキャリアルートです。

求人を出していないが人手が欲しい職場もある

自動車整備士の就職先は、「ディーラー」や「カー用品店」だけでなく、昔ながらの「整備工場」や「町工場」も選択肢となってきます。

むしろ数として多いのは整備工場・町工場の方であり、全国に何万もの工場が存在します。

また、整備工場・町工場の大半は従業員10名以下の小さな工場が多く、人手が足りないけれど、資金的な問題で求人が出せずにいる工場も多いようです。

そのように人手が欲しいにも関わらず、採用活動を行えない工場もありますので、近所の整備工場などに直接相談すれば、たとえ求人を出していなくても選考を行ってくれることもあるでしょう。

自動車整備士の将来性

当面は仕事が確保されている

「若者の車離れ」は進んではいるものの、車が減っているという訳ではなく、むしろ日本全体の自動車保有数は毎年緩やかに増加中です。

「一般財団法人 自動車検査登録情報協会」によれば、直近平成31年の全国の自動車保有数は約8170万台となり、「過去最高台数」を記録しています。

一方で、この莫大な数の車たちを整備する自動車整備士の方は人手が不足していますので、今後も当面の間は安定した需要があり、仕事が確保されている職業といえるでしょう。

ただし、さらに先の未来には、少子高齢化による自動車保有数の減少、また後述する「CASE」時代の到来による自動車概念の変化により、いずれは今のような整備士の仕事は減っていく恐れはあります。

「CASE」によって自動車の概念が変わる

昨今、自動車業界において注目されているのが「CASE(ケース)」というワードです。

CASEとは、コネクテッド(Connected)、自動運転(Autonomous)、カーシェアリング&カーサービス(Shared & Services)、電気自動車(Electric)の頭文字から成り、今後の自動車業界を指し示す重要なワードです。

今現在、自動車は100年に一度の大変革の時代に入っており、このCASEが今後の自動車を大きく変えるともいわれています。

将来的には、自動運転が当たり前となったり、車は所有するものではなく複数人でシェアする扱われ方となったり、自動車そのものの概念や在り方が大きく変わるともいわれています。

そうなった時には、自動車整備士の働き方もこれまでと大きく変わる可能性があります。

今後は先端技術に強い整備士が求められる

自動車の技術の方も、年々進化しています。

「ハイブリッドカー」はもとより、今後は「電気自動車(EV)」も本格的に普及していくと予想されています。

従来のガソリン車と、ハイブリッドカーや電気自動車などに代表される次世代タイプの車では、エンジンや燃料系統の構造などが大きく異なり、さらに車体全体を電子制御している車種も多いため、デジタル面の智識も必要になってきます。

今後はそのような次世代の自動車を相手にする機会も増えてきますので、現役として第一線で活躍していくには、先端技術の勉強も必要になってくるでしょう。

自動車整備士の今後の活躍の場

多様化が進み、整備以外の業務で活躍する将来も

将来的に、少子高齢化やCASEの影響によって整備の仕事が減った場合、整備工場の多くは、これまでのように自動車の整備業一本ではなく、さまざまな自動車関連の事業を展開し、生存を図る流れになるとも予想されています。

生存戦略のため、カーシェアリング業・カーリース業・ロードサービス業・中古車売買業・自動車保険セールス業など、多角的に事業を展開する整備工場も増えてくる可能性があり、そうなると整備士であれども、自動車整備以外の業務を任されることもおのずと増えてくるでしょう。

ニッチ分野に特化した整備士として活躍する

多角的に事業を展開する整備工場が増える一方で、特定のニッチ分野に特化し生存を図る整備工場も増えてくるといわれています。

たとえば、「スポーツカーや高級車に特化した整備工場」、「クラシックカーに特化した整備工場」、「電気自動車や自動運転車など次世代自動車に特化した整備工場」など、個性をウリとした整備工場も増えてくる可能性があります。

そのような職場で働く場合は、ニッチ分野に特化した、より濃く専門的な整備技術が求められてくるでしょう。