JICA職員になるには? インターンについても解説
JICA職員になるまでの道のり
新卒者採用
JICA職員になるには、大きく「新卒者採用」「社会人採用」「期限付職員採用」の3通りの応募方法があります。
まずは新卒者採用からみていきましょう。
JICAの新卒者採用では、毎年30〜40名程度を採用します。
まずはエントリーシートやWebテストで選考を行い、そのあとに一次面接・二次面接・小論文を実施します。
それらを通過したあとに実施される最終面接を突破すれば、晴れてJICA職員に合格です。
なお、海外在住の人はSkypeによる面接を受けることも可能です。
社会人採用
社会人採用は不定期となっていますが、近年は毎年のように募集が出されています。
おおまかな採用フローは新卒者採用と同じです。
まずはエントリーシートやWebテストで選考を行い、それらに通過後は一次面接、二次面接、最終面接の流れで選考を行っていきます。
社会人採用の場合は「TOEIC860点相当以上」など、英語力に関する条件が設けられているケースがほとんどです。
期限付職員採用
JICAでは期限付職員採用も不定期に実施されています。
こちらは半年間や1年間など、一定の業務期間をあらかじめ決めたうえで募集を行う方式です。
社会人採用と同様に英語力を求められたり、業務内容に適した特定の資格を持っていることが条件となっていたりするケースが多くみられます。
期限付職員採用の情報は、JICAが運営する国際協力キャリア総合情報サイト「PARTNER」で出されているため、こまめにチェックしておくとよいでしょう。
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JICA職員の資格・難易度
JICA職員に新卒枠で応募する場合、資格に関する条件はとくに設けられていません。
大学や短期大学を卒業、あるいは卒業見込みの人なら、特別な資格は不要で応募できます。
とはいえ、将来的にさまざまな国で仕事をすることを考えれば、最低限の英語力は身につけておくとよいでしょう。
募集要項に英語力に関する記載がないとしても、多数の応募者のなかで選考が行なわれることを考えれば、まったく英語を話せない点が不利に働いてしまう可能性もあるでしょう。
社会人採用や期限付職員採用については、応募資格に英語力に関する記載があったり、特定の資格を取得していることが応募条件となっていたりしますので注意してください。
JICA職員になるための学校の種類
学歴については、短期大学、大学、大学院(修士、博士)のいずれかを卒業、もしくは卒業見込みの人が新卒採用に応募できます。
短期大学には、高等専門学校や専修学校の専門士課程も含まれます。
なお、学部や専攻などは不問であり、海外の学校の卒業者も受験可能です。
出身学部に関しては、国際関係学部や外国語学部が有利といったイメージがありますが、必ずしもそうではありません。
担当するプロジェクトによっては教育学部や農学部などが適している場合もあるため、「入職後にどんな仕事にたずさわりたいのか」をよく考えて学部を選ぶとよいでしょう。
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JICA職員に向いている人
JICAの実施する支援プロジェクトは、日本の省庁関係者や海外の政府関係者、外部の専門家など、数多くの関係者が関わります。
それらの関係者とスムーズにやり取りできるコミュニケーション能力や、全体の状況をみながらプロジェクトを確実に進めていける進捗管理能力を持つ人がJICA職員には向いています。
そのほか、頻繁の海外出張に耐えられるだけの体力を持っていることもJICA職員の必須条件といえるでしょう。
JICA職員のキャリアプラン・キャリアパス
JICAでは職種や勤務地を指定した採用は行っておらず、職員全員が2~4年に1回程度のペースで人事異動を経験します。
勤務場所は本部(東京)、国内(15か所)、海外(約90か所)のいずれかで、海外赴任は必須です。
JICA職員はさまざまな支援プロジェクトに携わるなかで、「国際協力のプロフェッショナル」として求められるマネジメント能力や専門性を磨いていくことが期待されています。
JICA職員を目指せる年齢は?
JICA職員の社会人採用では、入職時点で60歳未満である点が応募条件の一つとなっています。
そのため40代や50代でも問題なく応募はできますが、海外への出張も多いJICAの仕事は、ある程度のスタミナがなければ務まりません。
JICA職員を目指すなら、体力のある若い年代のうちに挑戦するのをおすすめします。
JICA職員は高卒から目指せる?
JICA職員の新卒採用は短期大学、大学、大学院のいずれかを卒業していることが応募条件となっているため、高卒での応募はできません。
社会人採用であれば学歴に関する規定はとくに設けられていないため、最終学歴が高卒であっても応募可能です。
ただし社会人採用の場合は、英語力や国際協力に関連する実務経験などが求められます。
JICA職員は女性でもなれる?
JICAでは女性職員が全体の1/3ほどを占めており、支援プロジェクトの現場でも数多くの女性が活躍しています。
昇進のチャンスも均等に与えられており、女性・男性で仕事に差はないと考えてよいでしょう。
出産や育児に関する制度も充実していることから、近年では育児休業からの復職や子連れでの海外赴任なども増えています。
一方で、頻繁にある海外出張や異動なども男性同様にこなす必要があるため、家庭を持っている場合は家族からの理解が欠かせないでしょう。
JICA職員採用試験の志望動機、面接
志望動機のポイント
「開発途上国のために何かをしていきたい」という考えは、JICA職員を志望する人なら誰しもにあてはまる志望動機といえます。
そのため、「どうしてそう思ったのか」を具体的に、説得力をもって語らなければなりません。
このときに「資源のない日本にとって開発途上国が重要な存在になると思うから」「日本の国際的イメージの向上のため」などの一般的な国際戦略を語ってしまうと、印象は薄いものとなってしまいます。
国際情勢への理解をアピールするだけでなく、自身が国際協力を志した動機を個人的な体験に基づいて伝えられるようにしておきましょう。
面接のポイント
面接で聞かれやすい質問としては、「入職後のキャリアプランをどう考えているか」「あなたの専門分野を生かしてどうJICAに貢献したいのか」「JICAの事業で印象に残っているものはあるか」などが挙げられます。
とっさに適切な回答をするのは難しい質問も多いため、説明会への参加やOB・OG訪問なども行いながら、これらの質問に対する答えをしっかり準備しておきましょう。
社会人採用では、マネジメントや事業プランニングに関するさらに高度な質問をされる可能性もあるため、こちらもJICAの事業内容について十分に予習しておくことが大切です。
ときには「何を言っても否定される」「一つの質問をいつまでも掘り下げて聞かれる」など、ストレス耐性を図るような場面もありますが、その際も物怖じせずに質問に回答していきましょう。
JICAのインターンシップ
JICAインターンシップ・プログラムとは
無償またはそれに近い形で働く代わりに、希望する職業の仕事を一部体験し、雰囲気を直に感じ取れるのがインターンシップ制度です。
JICAにもインターンシップ・プログラムが用意されており、応募資格があるのは、国際協力や開発援助に興味を持つ大学生・大学院生および社会人です。
インターンのポストによっては、一定以上の語学能力を求められる場合もあります。
このように対象が限定されているのは、将来的にJICA専門家や開発コンサルタントなど、幅広い分野での国際協力人材を育てる目的でインターンシップ・プログラムが行われているためです。
おもなインターンポスト
大学生・大学院生向けであれば、本部、国内機関、在外事務所、開発コンサルタントなどがおもなインターンポストです。
たとえば在外事務所でのポストであれば、対象国に滞在しながら、現地事務所でプロジェクトの進行管理にたずさわることができます。
医療関係者向けのポストでは、実際の医療保健分野での技術支援プログラムにインターンとして参加することができます。
実施期間は1か月~6か月間で、配属先の担当者と調整しながら具体的な実施期間を決定します。
インターンシップ・プログラムの探し方
インターンシップの募集は、JICAが運営する国際協力キャリア情報サイト「PARTNER」で見つけられます。
同サイトの「求人・インターン情報」のページ内で、「インターン」という検索条件で絞り込み検索が可能です。
それ以外では、大学のキャリア支援室などにJICAからインターンシップ情報が送られるケースもあります。
インターンシップ中の費用補助
インターンシップ中のJICAによる費用補助は、たとえば「配属ポスト担当者との同行によって発生する移動費」などの少額交通費や国内移動費に限られます。
それ以外はすべて自己負担であり、配属場所までの交通費や、インターンシップ中の宿泊費なども自分自身で用意しなければなりません。
ただし配属先が国内で、JICA国内機関の宿泊施設に空きがある場合には、そちらに有料で宿泊することも可能です。
インターンシップ・プログラムに参加する利点
国際協力事業は、実際の現場に立ってみなければわからないことがたくさんあります。
インターンシップに参加し、頭のなかで思い描いていた内容と現実とのギャップを埋めていくことで、「国際協力のために働くとはどういうことなのか」を肌で感じられるでしょう。
またJICAインターンシップ・プログラムに参加した経験は、新卒者採用でも社会人採用でも、面接時にはアピール材料の一つになるでしょう。
JICA職員を目指すのであれば、ぜひ参加しておきたいプログラムです。
JICA職員の研修ではどんなことを学ぶ?
JICAの多彩な人材育成制度
JICAではさまざまな研修が用意されていますが、それらは業務遂行に必要となる専門知識やマネジメント能力を身につけるために実施されるものです。
新卒採用であれば基本的に社会人経験はないため、まずは仕事に対する意識や考え方の部分から変えていかなくてはなりません。
また社会人枠で入職し、前職では専門性の高い仕事をバリバリこなしていた人でも、国際協力マネジメントの仕事を初めから完璧に行うことはできないでしょう。
JICAの仕事は職員一人ひとりに求められるスキルが高い分、それを補うものとして多彩な人材育成制度が準備されています。
JICAの階層別研修
階層別研修は、職員それぞれのキャリアパスに合わせて実施される研修です。
まずはJICAに入職したての職員を対象に「新入職員導入研修」が行われます。
これは社会人としての基礎知識に加えて、JICAの組織やワークフロー、国際協力事業のイロハなどについて学ぶ研修です。
入職して年数が経ち中堅職員になると、今度は組織のなかでどのような役割を担うべきかを学ぶ「主任調査役・主事研修」が実施されます。
また管理職レベルの職員を対象とした「新任管理職研修」や「執行職研修」なども用意されています。
普段の業務とあわせてこれらの研修に取り組むことで、国際協力の現場で働く人材としての価値をさらに高めていけるでしょう。
JICAのコアスキル・専門能力強化研修
JICAでは「コアスキル・専門能力強化研修」と呼ばれる研修プログラムも用意されています。
このうち「コアスキル研修(JICAアカデミー)」は、財務、会計、調達、法務といったビジネスの基礎的な能力を学べる研修であり、すべての職員が参加可能です。
また「国・地域別援助研究セミナー」では支援対象地域の現状や課題について理解を深め、「課題別セミナー」では事業分野ごとの最新情勢や技術について学びます。
そのほか「マクロ経済研修」「財務分析研修」「事業マネジメント研修」など、さまざまなキャリア開発の機会が提供されています。
JICAの語学研修
JICA職員として働くには英語力が必須であるため、JICAでは英語力を高めるための語学研修も実施されています。
語学研修では英語以外にも、フランス語やスペイン語を学ぶ研修もあります。
その理由は、JICAの支援地域のなかにはアフリカ諸国や中南米諸国も多く、これらの国々ではフランス語やスペイン語が公用語に定められているからです。
またここまで紹介した以外にも、職員が外部のセミナーや通信教育を受ける際の補助制度や、国際機関や民間企業への出向制度なども設けられています。
以上のようにJICAでは手厚い人材育成制度が整っており、「自分を成長させていきたい」と考える向上心の高い人にとって非常に魅力的な環境といえるでしょう。