盲導犬訓練士の仕事内容・なるには
盲導犬訓練士の仕事とは
盲導犬訓練士とは、視覚障害者が使用する犬を訓練する人のことです。
ただし「盲導犬訓練士」という国家資格があるわけではなく、盲導犬育成団体で研修を受けた職員が、審査を受けて認定された場合に「盲導犬訓練士」になることができます。
「盲導犬訓練士」になった人は、さらに勉強を重ね、視覚障害者と盲導犬が一緒に歩く訓練をサポートする「盲導犬歩行指導員」を目指します。
また、盲導犬訓練士は犬の訓練以外にも、盲導犬たちの日常の世話、盲導犬ユーザーのフォローや問い合わせなどの業務を担当します。
まさに視覚障害者の方々の暮らしを支えている重要な役割を果たしているといえるでしょう。
さらに、盲導犬をリタイアした犬や、盲導犬に向かないと判断されたキャリアチェンジ犬の飼育を希望するボランティアとの橋渡しなども行っています。
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盲導犬訓練士の業務の内容
「盲導犬訓練士」と「盲導犬歩行指導員」の業務・役割は重なる部分も多いため、ここでは両者を合わせた業務内容を紹介します。
盲導犬訓練士の仕事とは?
盲導犬訓練士のうち、盲導犬と視覚障害者の方に関わる業務には次のようなものがあります。
・視覚障害者と歩くための盲導犬の訓練
・盲導犬の世話
・犬舎の掃除
・視覚障害者と盲導犬に歩き方を指導
・盲導犬が引退するまで盲導犬ユーザーへのフォローアップ
・視覚障害者からの問い合わせ対応
・体験歩行会や説明会の実施
など
このように幅広い業務があります。
盲導犬ユーザーは視覚障害のある方なので、障害者の心理学や、眼科学など目の病気についての勉強も必要です。
訓練では目に見える情報に頼らず、言葉だけで伝わるような創意工夫をしながら、視覚障害者が盲導犬と一緒に安全に暮らせるようにサポートしていきます。
盲導犬訓練士に付随する業務
盲導犬訓練士のその他の業務として、盲導犬に向かないとキャリアチェンジが決まった「キャリアチェンジ犬」や、盲導犬を引退した「リタイア犬」をボランティアの方に引き渡すことが挙げられます。
また、繁殖犬の交配や管理、1歳までの子犬を育ててくれる「パピーウォーカー」への育成方法の指導、盲導犬を広めるための広報、そのほか事務作業や報告書作成といったデスクワークもあります。
なお、盲導犬は、日本盲導犬協会から視覚障害者の方へ「無償貸与」という形をとっているため、盲導犬訓練士も施設で働くことが大前提です。
「警察犬訓練士」などほかのドッグトレーナーのように、独立したり個人で開業したりすることは基本的にできません。
盲導犬訓練士の役割
盲導犬訓練士の役割は、「見えない」または「見えづらい」ことで歩くのが難しいと感じる方と盲導犬との出会いをサポートし、自立と社会参加に貢献することです。
盲導犬の訓練は約1年とされており、目の不自由な人が安全に歩けるように、その犬の特徴に合わせてトレーニングしていきます。
一人前の盲導犬に育ったら、盲導犬貸与を希望する視覚障害者の方との歩行指導がスタートします。
一方、盲導犬歩行指導員は歩き方だけでなく、エサの上げ方やトイレ、ブラッシングなど犬の世話の基本も指導し、自宅に戻ってからスムーズに生活ができるようにサポートします。
ユーザーは大学生の若い方から、年配の方までさまざまなので、言葉だけでうまく伝わるようにケースバイケースの創意工夫が欠かせません。
4週間の共同訓練、1・3・6・12ヵ月目、さらに年1回の定期アップでフォローアップを行うことで、盲導犬が10歳で引退するまで、よいパートナーになれるようにサポートしていきます。
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盲導犬訓練士の勤務先の種類
盲導犬訓練士の勤務先は、国家公安員会から指定を受けた盲導犬育成団体に限られます。
以下の通り全国に11団体、14施設あります。
・北海道盲導犬協会
・東日本盲導犬協会
・日本盲導犬協会 日本盲導犬総合センター
・日本盲導犬協会 神奈川訓練センター
・日本盲導犬協会 仙台訓練センター
・日本盲導犬協会 島根あさひ訓練センター
・アイメイト協会
・中部盲導犬協会
・日本ライトハウス 盲導犬訓練所
・関西盲導犬協会 盲導犬総合訓練センター
・兵庫盲導犬協会
・九州盲導犬協会 総合訓練センター
・日補助犬協会 横浜訓練センター
・全国盲導犬協会
盲導犬訓練士は全国に70名ほどしかおらず、どの施設でも定期的に採用は行われていません。
欠員が出たときに不定期で募集していますが、希望者も多く、採用は狭き門といえるでしょう。
盲導犬訓練士の仕事の流れ
盲導犬訓練士の仕事は、施設によっても異なりますが、朝番と夜当番に分かれています。
朝番の職員は、朝礼前の6時30分頃から犬の食事と排泄の世話を行います。
ほかのスタッフが出勤したら、朝礼や申し送りで情報共有をし、1日がスタートします。
午前中に盲導犬の訓練をし、昼休憩を挟んでから、さらに訓練を再開します。
訓練の合間には、盲導犬ユーザーの視覚障害者の方やボランティアへの電話連絡や問い合わせ対応、報告書作成、訓練報告や繁殖の共有会議など業務が盛りだくさんです。
朝番スタッフは18時頃に業務終了となりますが、夜番スタッフはさらに残って20時頃に犬のごはん、排泄、犬舎の清掃を行い仕事を終えます。
盲導犬訓練士になるまでの道のり
盲導犬訓練士になるには、全国に14ある盲導犬育成施設の職員になることが必須条件です。
学歴や性別は不問とされる場合が多いため誰でも目指すことができますが、不定期採用で希望者も多く、入所自体簡単なことではありません。
職員になるための条件は施設によって異なるため、詳しくは団体に問い合わせるか、公式サイトを確認しておきましょう。
入所後は、「犬の訓練技術及び犬に関する知識」「視覚障害および法律に関する知識」「視覚障害者の歩行に関する技術及び知識」「盲導犬の歩行指導に関する技術及び知識」など幅広い知識を身につける必要があります。
合わせて訓練や指導技術を身につけながら、盲導犬訓練士になるまでに3年間、盲導犬歩行指導員はその後2年間の養成期間を過ごします。
最終的に養成期間を人格や能力がふさわしいと判断された人だけが、「盲導犬訓練士」や「盲導犬歩行指導員」として認定され、盲導犬訓練士になることができます。
盲導犬訓練士の資格・難易度
盲導犬訓練士には、国家資格はありません。
施設に入所し、研修を受けた職員が必要な能力や素質があると判断された場合に「盲導犬訓練士」になることができます。
個別に認定している施設もありますが、「NPO法人全国盲導犬施設連合会」に加盟している8団体では、資格審査員が審査をし、合格した人だけが「盲導犬訓練士」と認定されます。
実際、日本全国にいる盲導犬訓練士は70名ほどしかいないため、その難易度の高さがわかるでしょう。
盲導犬訓練士になるための学校の種類
盲導犬訓練士になるための専門学校などはありません。
学歴や性別も不問ですが、一般的には「高卒以上」で目指せると考えておくとよいでしょう。
大学や短大、専門学校に進む場合は、盲導犬訓練士の業務内容との関連性も高い「福祉学」「社会福祉学」「言語聴覚学」などを専攻するとよいでしょう。
視覚障害者の気持ちを理解するための知識が身につき、盲導犬訓練士として活躍するときに役立つはずです。
また、施設の入所に有利になるとは限りませんが、学校の長期休暇などを利用して、施設でボランティアをすることもおすすめします。
訓練をすることはできなくても、犬舎の掃除などをしながら訓練士の働きぶりを間近に見ることができる、貴重なチャンスといえるでしょう。
盲導犬訓練士に向いている人
盲導犬訓練士に向いているのは、まず犬が大好きな人です。
さらに犬や盲導犬ユーザーとの信頼関係を作ることができる、愛情深さや思いやり、高いコミュニケーション能力も求められます。
盲導犬を訓練できるのは1年ほどであるため、1歳まで育ててくれたパピーウォーカーさんからその犬の特徴や性格などを聞き出すことが、訓練の質を高めるポイントになります。
また目の不自由な方とのコミュニケーションは、視覚に頼らず行う必要があるため、言葉だけのやり取りを高める必要があります。
創意工夫する臨機応変さや、柔軟な対応力も、大切な素質といえるでしょう。
盲導犬訓練士のキャリアプラン・キャリアパス
盲導犬育成施設に入所し、必要な知識やスキルを身につけながら、3年間の養成期間のうちに「盲導犬訓練士」の認定を目指します。
その後、盲導犬ユーザーと盲導犬が一緒に歩く指導をするための「盲導犬歩行指導員」として、視覚障害者へのサポートを行えるようになることがを目指します。
一人前になっても、盲導犬と視覚障害者の相性や悩みはそれぞれ異なるため、その都度知識や対応能力を身につける、努力が必要になります。
40代になると、マネジメント業務や後輩育成などの人材教育に携わることもあるでしょう。
なお、盲導犬訓練士は、盲導犬自体が「貸与」という形をとる性質上、施設の職員として働くことが大前提で、転職や独立という道はありません。
しかし、盲導犬訓練士として、その道一本でプロを目指せる職業です。
盲導犬訓練士を目指せる年齢は?
盲導犬訓練士を目指せる年齢の条件は、施設によって異なります。
「18歳以上で上限なし」のところもあれば、上限が設けられているところもあるようなので、受ける際には応募要項は必ず確認しましょう。
盲導犬訓練士になるまでに3年、盲導犬歩行指導員になるまでにさらに2年と育成期間も長いため、なるべく若いうちから目指せるとよいかもしれません。
盲導犬訓練士はの業務では、訓練はもちろん、犬舎の掃除など体力のいる業務が多いことから、心身ともに健康なことも大切な条件です。
盲導犬訓練士は高卒から目指せる?
盲導犬訓練士は、学歴不問とされているため高卒から目指すことができます。
ただし採用は定期的に行われておらず、欠員が出た場合に募集がかかります。
タイミングによっては、「待ち」の時間が長くなることも考えられるので注意が必要です。
高卒で盲導犬訓練士を目指す場合は、就職までの待機期間に進学をする、あるいはボランティアや視覚障害に関する勉強をするなど、盲導犬訓練士としての準備をしておくとよいでしょう。
盲導犬訓練士は女性でもなれる?
盲導犬訓練士の採用は性別不問であり、もちろん女性でもなることができます。
盲導犬ユーザーの中にも女性はいらっしゃいますし、女性ならではの細やかな配慮やコミュニケーションが取れることは強みになるはずです。
ただし訓練施設に入所すると、職員は男女関係なく、体力仕事もこなさなければいけない点は知っておきましょう。
とはいえ、これまでにも多くの女性盲導犬訓練士の先輩が活躍しているため、女性でも臆することなく訓練士を目指せます。