電気工事士試験の難易度・合格率
電気工事士資格とは
電気工事士は、経済産業省が主管する国家資格です。
国家試験に合格後、都道府県から免状の交付を受けることによって資格が得られます。
電気工事は、電気工事士の有資格者だけに認められた「独占業務」であり、電気工事を行うためには資格取得が必須となっています。
なお、電気工事士資格は、手掛けられる業務範囲の異なる「第一種」と「第二種」の2種類が存在します。
第一種資格保有者は、住宅からビル、工場、商業施設など、さまざまな工事を扱える一方、第二種資格保有者が扱えるのは、一般家庭や店舗を中心とした小さな規模の工事に限定されます。
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電気工事士試験の受験資格
電気工事士試験には年齢や学歴などの制限が一切なく、誰でも受験することが可能です。
ただし、第二種資格については、試験合格後すぐに免状の交付を受けられるのに対し、第一種資格は学歴に応じた3年~5年の実務経験がないと、免状が交付されません。
このため、第一種資格に関しては、試験に合格しても、電気工事士としてのキャリアがなければ資格を使用できないということになります。
未経験者は、いきなり第一種試験に挑むのではなく、まず第二種資格を取得して、その後第一種資格を目指すというステップを踏むケースが一般的です。
電気工事士試験の難易度・勉強時間
第二種電気工事士試験
第二種電気工事士試験は、筆記試験・技能試験の2段階選抜で実施され、双方をパスすると合格となります。
近年の合格率は、筆記試験が60%前後、技能試験が70%前後となっており、受験者全体に対する最終合格率は40%前後で推移しています。
筆記試験は50問すべてマークシート形式の選択問題であり、6割以上の得点で合格となります。
計算問題も出題されますが、工具や器具、部品、配線図記号などの暗記問題だけで合格ラインに到達することも十分可能であり、難易度は低めです。
技能試験については、試験会場の机上で実際に作業することが求められますが、あらかじめ実際の試験で出題される候補問題が公表されているため、市販のキットなどで練習すれば合格可能です。
必要な勉強時間については、筆記試験・技能試験あわせて300時間程度が目安とされています。
2ヵ月~3ヵ月ほどかけて試験対策するケースが一般的ですが、より少ない勉強時間で合格する人も少なくありません。
また、試験は上期と下期の年2回実施されるため、もしも不合格となってしまった場合でも、半年後には再受験することができます。
なお、指定された専門学校などで電気工学に関する科目を履修して卒業した人は、筆記試験が免除され、技能試験だけで合格となります。
第一種電気工事士試験
第一種電気工事士試験も、第二種と同じく、筆記試験と技能試験の2段階選抜で実施されます。
筆記試験の合格率は50%前後、技能試験の合格率は60%前後で、最終合格率は30%ほどとなっており、第二種試験を下回る水準です。
試験形式も第二種とほぼ同じで、筆記試験は四肢択一の選択問題が50問出題され、合格基準は6割以上、技能試験は、あらかじめ公表されている課題に対して試験会場で組立作業に取り組むというスタイルです。
ただし、筆記試験では第二種の範囲に加えて高圧設備に関する内容などが追加され、質・量ともにハイレベルになりますし、実技に求められる技術水準も、第二種よりはるかに上です。
さらに、第二種試験とは違って、試験を受けるチャンスが年1回しかないという点も、難易度が高い要因のひとつといえます。
勉強時間については、第二種試験で勉強したことがどれだけ頭に残っているかによって異なるため一概にはいえませんが、2ヵ月ほどかける人が多いようです。
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独学で電気工事士に合格できる?
電気工事士を独学で目指す人はいる?
電気工事士試験は、学歴などの受験資格が一切定められておらず、誰でも受験可能なものとなっています。
試験問題自体も、そこまでハイレベルではないため、どこの学校にも通わず独学だけで電気工事士を目指す人も大勢います。
なお、この試験では、知識を問う筆記試験だけでなく、実技能力をみる技能試験もあわせて実施されます。
独学だけで挑戦することに不安を感じるという人もいるかもしれません。
ただ、技能試験で課される候補問題は、試験を主催する「一般財団法人電気技術者試験センター」によってあらかじめ公表されているので、市販のキットを購入して、自力で対策することも十分に可能です。
とはいえ、独学で勉強することには、メリットだけでなくデメリットも少なからずありますし、誰もが性格的に独学に向いているわけでもありません。
以下に、独学で挑む場合のポイントを取りまとめましたので、自身の勉強スタイルを決めるうえでの参考にしてください。
独学のメリット
自分のペースで勉強できる
独学の最大のメリットは、勉強する時間帯や場所、1日の勉強量、学習スケジュールなどを、自分で自由に決められることです。
電気工事士の筆記試験は、例年過去の試験と似たような内容が出題されますし、電気理論や工具類の名称、配線図、配線記号など、用語を覚えてさえいれば解けるという問題がほとんどです。
過去問を中心とした演習と、専門用語を暗記する作業が勉強時間の大半を占めるため、学校で足並みを揃えて勉強するより、マイペースに自宅などでコツコツと取り組んだほうが、むしろ勉強が捗るかもしれません。
とくに、社会人やフリーターなどから電気工事士を目指す場合、出勤前の朝方に勉強する、土日にまとめて勉強するなど、自身の生活スタイルに合わせた学習方法を取れるというメリットは、非常に大きいでしょう。
費用がかからない
電気工事士になるための学習方法は、大学や専門学校に進学する、資格予備校に通う、通信講座を受講するなど幅広くありますが、そのいずれも「学費」がかかります。
進学するなら年間100万円前後のまとまったお金が必要になりますし、民間のスクールや通信教育でも10万円~数十万円はかかります。
しかし、独学ならテキスト代や参考書代程度で勉強することが可能ですし、技能試験用キットも、受験当日に使用する工具類も含めてネットで一式2万円弱で販売されています。
学費という観点からみれば、独学というスタイルが圧倒的にお得なのは間違いありません。
独学のデメリット
学校に通えば免除認定が受けられる
電気工事士資格には、「第一種」と「第二種」の2つがありますが、そのうちの入門編となる第二種資格については、大学や専門学校などで電気工学に関する科目を履修して卒業すると、筆記試験が免除されます。
つまり、指定の学校に通えば、筆記試験は自動合格で、技能試験だけ対策すればよいということです。
第二種電気工事士の筆記試験がそこまで難しくないとはいっても、100時間単位の試験勉強が必要になるつため、免除認定によって得られる恩恵は非常に大きいといえます。
独学の場合と比較すると、資格取得にかかる労力は雲泥の差です。
とくに勉強が苦手という人は、合格が不確実である独学の道を選ぶリスクは、かなり高いかもしれません。
モチベーションを保ちにくい
独学における大きなデメリットは、自分の周囲に同じ電気工事士を目指す人が基本的に誰もおらず、一人きりで試験に挑まなければならないということです。
学校に通って電気工事士を目指すなら、すぐ近くに学校の先生や友人がおり、ともに学ぶことができますし、わからないことがあれば教えてもらう、あるいは生徒同士で教え合うことも可能です。
しかし、独学だと、わからないことがあっても質問できる人はいませんし、勉強をさぼっても誰に叱られるわけでもありません。
どこかの時点でつまずくと、モチベーションが続かず、試験勉強自体を途中で投げ出してしまうこともあるかもしれません。
独学者については、誰にいわれなくても自発的に試験勉強を続けられる、強い自制心が不可欠といえます。
そうしたメンタル面にあまり自信のない人については、どこかの学校に通うなどして、半ば強制的に勉強する環境に身を置いたほうがよいでしょう。