貿易事務になるには? 必要な資格はある?
貿易事務になるには
新卒で目指す場合
貿易事務が活躍できる職場として、商社、メーカー、海運/航空業界、倉庫業者、フォワーダー、通関業者などがあります。
貿易事務には特別な資格は不要ですが、企業によっては「大卒以上」の学歴が求人条件のひとつとなることも多いです。
大企業であれば貿易事務に特化した職種を設けて採用活動を行うことが多いですが、中小企業の場合は一般事務職が貿易事務を兼ねることもあります。
転職で目指す場合
貿易事務の仕事は即戦力が重視されるため、基本的に経験者が有利になります。
すでに社会人として仕事をしており、貿易事務の仕事は未経験だけれど飛び込んでみたい場合、はじめから正社員として貿易事務の仕事に携わるのは少し難しいかもしれません。
ただし、大企業などでは、営業のコミュニケーションサポートをする営業アシスタントと、貿易に関するデスクワークを切り離しているところもあります。
この場合、これまでコミュニケーション能力を生かした調整業務で活躍していれば、未経験でも営業アシスタントのポジションに正社員として採用される可能性はあるでしょう。
未経験からデスクワークを主とする貿易事務を希望しているのであれば、まずは派遣社員として仕事を始め、実務経験を積んだうえで、同じ職場で正社員を目指したり、正社員のポジションに転職したりする道が現実的です。
貿易事務の仕事に役立つ資格・難易度
貿易事務の仕事に就くために、必ず資格が必要というわけではありません。
最近ではグローバル化が進むなかで、貿易実務のニーズが増えてきていることもあり、資格なしでもOKの求人もたくさんあります。
しかし、貿易実務業務は未経験だけれども、貿易事務の仕事に就きたい場合、何かひとつでも能力を証明できる資格があれば、他の受験者よりも頭ひとつ抜き出た存在になれるでしょう。
とくに、未経験者が経験者と同じポジションを争うのであれば、資格は経験不足を補って、採用担当者にいい印象を与えてくれるでしょう。
通関士
「通関士」は、輸出入の際に生じる税関手続きのための資格です。
通関書類の審査と審査後の記名捺印は、通関士資格を持っている人でないため、船舶会社や航空会社の物流部門など、流通業の就職に強い特徴があります。
また、電気機器や自動車メーカーなどで、海外の下請け工場から直接製品の部品などを仕入れるため、通関部署を設けている企業も多いため、重宝される資格といえます。
試験は「通関業法」「関税法、関税定率法その他関税に関する法律及び外国為替及び外国貿易法」「通関書類の作成要領その他通関手続きの実務 」の3科目からなり、各条文を丸暗記する必要もあり、時間をとって勉強しなくてはなりません。
合格率は毎年10%付近と簡単な試験ではなく、計画的な学習が必要です。
貿易実務検定試験
「貿易実務検定試験」は、業界で幅広い層が受験するメジャーな民間資格です。
貿易実務のエキスパートとしての実務・知識を客観的にみることができる資格として人気です。
難易度が一番低いC級から一番高いA級まであります。
C級では貿易実務の基本業務のための一般的な知識が問われ、A級ではケース別に対応できる柔軟性や、専門的な知識が問われます。
商社やメーカーなどで基礎的な貿易実務に携わる場合は、C級から取得してみるといいでしょう。
C級はおおむね50%以上から60%以上の合格率で推移しており、比較的難易度が低くチャレンジしやすいでしょう。
英語系資格
貿易事務に直接関係のある資格ではありませんが、「TOEIC」や「実用英語技能検定」など、ビジネス英語能力を証明する資格を持っていると、アピールポイントになります。
仕事内容によって求められる英語力は大きく異なりますが、海外とのコレポン(連絡調整)業務を任されるのであれば、TOEICスコア735点以上、ペーパーワークが主であれば600点以上が目安とされています。
この点数はあくまで参考値で、点数が高いほどアピール度が大きくなるでしょう。
また、「日商ビジネス英語」は、ビジネスの現場で実際に使われる場面が想定されており、海外貿易や取引業務の知識が問われる内容となっています。
就業前に身に着けておくべき英語レベル3級から、海外取引の実務経験者の英語ビジネスコミュニケーションレベルの1級まであります。
IATA/FIATAディプロマ
「IATA/FIATA」は、世界で受験者数は毎年30,000名を超える、航空貨物業界で働く人むけの国際資格で、日本では「国際航空貨物取扱士資格」と呼ばれています。
航空貨物運送の知識・スキルを保有している証明として、航空会社、航空貨物代理店、航空フォワーダー(利用航空運送事業者、航空混載業者)などへの就職に役立つとされています。
試験はすべて英語で行われ、日常会話レベルの英語力が必要です。
合格率は基礎コースが60%前後、危険物コースが40%前後で、しっかり対策をとれば合格は可能でしょう。
貿易事務になるための学校の種類
貿易事務になるために必要な学歴というのは、その企業ごとに違います。
新卒採用の場合、大手商社や大手メーカーなどには、毎年有名大学の学生が入社を希望するため、高い学歴が必要とされることも多いです。
一方、中小企業の場合や経験者の場合は「学歴不問」で採用することも珍しくなく、高卒で採用され、実務を任せられ活躍する人もいます。
一般的には大学に進学し、卒業しておくと就職の間口が広がり、貿易実務になることができるチャンスも増えます。
特別に有利な学部はありませんが、商学部や経済学部であれば、早いうちから貿易実務や商慣習について学べます。
また貿易実務は英語を使うことが多いため、外国語大学や外国語学部に進学してもよいでしょう。
貿易事務に向いている人
調整能力がある
貿易事務になると、職場や経験年数によっては、見積書や請求書の作成、受発注書類の作成、データ入力、伝票処理などの定型業務のほか、国内の輸送業者の手配や倉庫の確保、国内工場や販売代理店との出荷・納期調整など、関係先との調整業務を任される場合があります。
調整業務を滞りなく進めるためには、関係各所に状況を明確に伝えられる説明能力が不可欠です。
また、必要であれば何かを頼み込んだり、自分が悪くなくても謝ったりと、柔軟なコミュニケーション能力が求められます。
こういったやりとりが苦手な人だと、任される仕事の種類が限られる可能性があります。
事務処理能力が高く、マルチタスクが可能
貿易事務の仕事では、ルーティーンに沿って各所とコミュニケーションをとり、書類を作成し、輸出入に関わる手続きを進めていきます。
複数の取引先をひとりで担当する場合は、企業ごとに異なる手続きを同時に行う場面も出てくるかもしれません。
また、見積書や伝票の作成など、大きな金額が動く書類の作成ではミスは許されませんし、税関手続きで少しでも記載に誤りがあると、スケジュールに影響が出て取引先に迷惑がかかります。
こういったマルチタスクをミスなく正確にこなせる慎重さを持った人が、貿易事務の仕事には向いています。
英語が得意な人
輸出入関連の書類には英語を読んだり、英語で記載したりする必要があるものも多く、また取引先や関係機関の海外の企業と英語でメールのやり取りを行うことも日常的です。
担当する業務によっては、海外企業の担当者に電話で連絡するということはありますが、基本的には英語の聞き取りや会話のスキルよりも、読み書きスキルが求められます。
貿易事務のキャリアプラン・キャリアパス
貿易事務のキャリアプラン
貿易事務は輸入・輸出にかかわる企業において必要不可欠な職種です。
「貿易実務で使う専門用語の理解」「国際物流や書類に関する知識」「読み書きを中心とした基本的な英語力」などがなければ、円滑に業務が進められません。
そのため一般事務などに比べ、専門性が高く、一度経験を積んで貿易実務の知識・スキルを身につければ、次の転職の際にも、貿易取引の流れを理解している「経験者」として優遇されやすくなります。
貿易実務として経験をつんでおけば、出産や育児で現場を離れても、経験がかわれ、職場復帰がしやすくなります。
長期的なキャリア形成がしやすい職種といえます。
貿易事務のキャリアパス
経験を積み、特定分野に強い貿易実務のエキスパートになることもできます。
輸入、輸出物によっては、食品衛生法や植物防疫法、薬事法、国内外の規制といった法律の知識が必要となります。
それらの知識を深めることで、より専門性の高い貿易事務として活躍することができるでしょう。
また貿易事務として働きながら、通関士の資格を取得し、通関士になる人もいます。
海外の工場から直接製品を仕入れている「通関部署」のある企業や流通業などへの転職にも有利になります。
調整力や交渉能力が優れている場合、営業やバイヤーになり、貿易事務の知識を生かしながら別フィールドで活躍することもできるでしょう。
貿易事務を目指せる年齢は?
貿易事務になろうとするならば、商社やメーカーをはじめ海外と貿易をする企業に入社する必要があります。
経験者で転職する場合は、その即戦力を買われる場合が多く、40代での転職も可能です。
しかし未経験で貿易事務を目指す場合は、遅くとも30歳までには何らかの実務に携わっていたいところです。
正社員での採用は狭き門なので、まずは派遣社員などで経験を積んでいくことが大切です。
貿易事務は男性でもなれる?
貿易事務は他の事務職と同様に、女性の割合が高い職種です。
企業や職場により異なりますが6~8割が女性、男性は管理職のみということも珍しくありません。
貿易事務は派遣社員としての採用も多く、正社員に比べ、賃金も安いことから、一般的に家族を養うことが多い男性がつきにくいというのもその一因です。
しかし、男性の貿易事務職がいないわけではありません。
通関士は男性のほうが多いとされているほか、物流業者など男性が多く活躍する業界もあります。