全国通訳案内士の仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介
全国通訳案内士の役割
訪日した外国人の案内やサポートを行う
全国通訳案内士は国家資格です。
その業務内容に関しては「通訳案内士法」という法律で規定されており、通訳案内士法の条文のひとつには、「報酬を得て、通訳案内(外国人に付き添い、外国語を用いて、旅行に関する案内をすること)を行うことを業とする」と書かれています。
つまり、「日本を訪れた外国人を各地へ案内し、その土地の文化や伝統、生活習慣などを、外国語を使って紹介する」ことが、全国通訳案内士の役割となります。
全国通訳案内士として働くには、試験に合格して都道府県の登録を受ける必要があり、また、高度な外国語能力や日本全国の歴史・地理・文化等の観光に関する知識も求められます。
通訳案内士は、昔の名残で「通訳ガイド」と呼ばれることもあります。
また、2018年の改正通訳案内士法の施行により、全国通訳案内士試験に合格せずとも有償で通訳案内業務を行えるようになりました。
ただし、全国通訳案内士の有資格者は、一定レベルの外国語能力やガイドに関する専門知識・技能を持っていることが証明されます。
通訳との違い
一般的な「通訳」という職業に比べると、「全国通訳案内士」はあまり馴染みがない職業かもしれません。
通訳とは、ある言語を異なる言語に変換(翻訳)し、人に言葉として伝える人のことをいいます。
通訳は、元の言語の意味を可能な限り忠実に訳すことが求められ、「意味を正しく伝える」ということを主眼に置きます。
一方、全国通訳案内士の場合は、その場の状況に応じて自分で話すことを考える必要があります。
たとえば、相手の立場や年齢、日本に来た目的(ビジネスか、観光かなど)、日本に対する理解度などを踏まえ、相手に何を伝えればよいのかをつねに考えながら、ガイドを行います。
全国通訳案内士の仕事の特徴は、「サービス業」としての一面も併せ持っていることです。
目の前のお客様にいかに喜んでもらうのか。これを主眼に置きながら仕事をするのが、通訳案内士です。
もちろん、全国通訳案内士も通訳と同様に高いレベルの語学力が求められますが、全国通訳案内士の場合、個々のガイドの個性がより出やすいといってもよいかもしれません。
日本滞在中のさまざまなサポートも行う
全国通訳案内士は、ただ観光地を案内するのみならず、ときにツアーコンダクターの役割を兼任することもあります。
外国のお客さまは、慣れない日本での生活や移動にさまざまな不安を抱いているものです。
そこで、全国通訳案内士はお客さまの宿泊先や旅程の確認をしたり、買い物についてのアドバイスをしたり、ホテルのチェックインやチェックアウトを代わりに行ったりします。
さらに、病気やケガ、落し物や忘れ物などのアクシデントにも冷静に対応し、お客さまが日本での滞在中に安心して過ごせるよう、さまざまなサポートを行っていきます。
20代で正社員への就職・転職
基本的な仕事の流れ
全国通訳案内士が仕事の依頼を受けると、まず案内する土地や施設を下見に行ったり、情報をまとめるなどの準備をします。
ツアーの日程は、1日から数週間程度までさまざまです。
長期のツアーでは日本全国をまわることもあります。
多くは、当日の朝にホテルのロビーなどでお客さまと待ち合わせをし、ツアーに出発します。
お客さまの数は1~2人と少人数から団体まで、その時によって変わります。
各地をまわりながら、場所の説明や、歴史・日本文化などを外国語で伝え、日本を楽しんでもらうお手伝いをします。
場合によっては空港やホテルまで送迎したり、荷物の管理や宿泊先の手配などの「あっ旋業」も行うことがあります。
全国通訳案内士の活躍の場・就職先
全国通訳案内士が活躍できる場は観光ツアーだけに限りません。
ビジネスの視察や研修、国際会議や各種イベントなどで、お客さまをサポートするコンシェルジュ的な業務に携わることもあります。
さまざまな用事で日本を訪れる人のためのガイドとして、活躍の場は多岐にわたっています。
より幅広い仕事を得るために、全国通訳案内士は知識とスキルのアップに努めています。
フリーランスで働く人が多い
全国通訳案内士は、現状、フリーランスとして働く人が多い職業です。
日本を訪れる外国人が増え、通訳ガイドができる人の需要は高まりを見せいてる一方、残念ながらまだ正社員として就職できる機会はそこまで多くないようです。
現実的には、「国家資格を取得したものの、仕事がほとんどない」という状況で、せっかく身に付けたスキルを落とさないためにボランティアとして活動したり、他の仕事と掛け持ちして働くといった人も多くなっています。
フリーランスで働く場合は、まず「一般社団法人 日本観光通訳協会」に全国通訳案内士として登録し、仕事を斡旋してもらったうえで仕事をします。
具体的な仕事内容はさまざまですが、代表的なのは、観光ツアーに訪れた外国人のガイド役として観光地の文化や歴史を紹介したり、ツアー中のスケジュール確認などのサポートをしたりすることです。
実力をつけると、ビジネスの視察や研修、国際会議、世界規模のイベントなど、よりダイナミックな仕事に挑戦することも可能になります。
旅行会社や旅行代理店に就職する人も
フリーランスで活躍する全国通訳案内士が多い一方、旅行会社や旅行代理店に社員として就職する人もゼロではありません。
近年、とくにアジア圏からの観光客が増加したことによって、中国語や韓国語などで観光ツアーの通訳ガイドができる通訳案内士の需要が高まっています。
このような流れのなか、会社によっては自社で全国通訳案内士の資格を持つ人を雇うケースが、徐々に増え始めているようです。
ただし、観光業界には「繁忙期」と「閑散期」があるため、年間を通して安定した量の仕事があるとは限りません。
そこで、通訳ガイドができる確かなスキルを持つ人は「総合職」として採用され、閑散期には営業や企画など、通訳ガイド以外の仕事をするケースが多くなっているようです。
通訳ガイド以外の仕事をしたくないという人では難しいかもしれませんんが、雇用条件や待遇面のことを考えれば、フリーランスに比べ、企業に就職して働くほうが安心だといえるでしょう。
しかし、フリーランスの場合は実力と経験次第で正社員以上に稼ぐことができたり、さまざまな案件に挑戦しやすいといった良さもあります。