水泳選手の怪我・故障の特徴
オーバーユースによる障害
水泳は、一般に、健康によく、怪我や故障の少ないスポーツとして知られています。
高齢者の運動としても、よく水泳が奨励されますし、他の競技種目でも、トレーニングやリハビリとして水泳を取り入れているチームもあるほどです。
水泳は、たしかに身体への負担の少ないスポーツですが、だからといって、競泳選手に怪我や故障がまったくないわけではありません。
競泳の選手は、10代の頃から1日に何千メートルも泳ぐトレーニングを続けており、オーバーユース(使い過ぎ)による障害を生じることがあります。
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自由形やバタフライに多いスイマーショルダー
水泳選手の障害で目立つものに、「スイマーショルダー」と「ブレスストローカーズニー」があります。
「スイマーショルダー」は、訳すと「水泳肩」です。肩に痛みが出ることで、とりわけ自由形とバタフライの選手に、この症状を訴えるケースが多いです。
クロールやバタフライでは、おもに腕の力で前へ進んでいきます。
腕を回す際、肩甲骨のじん帯と上腕二頭筋の腱がこすれあい、炎症を起こしやすいのです。
その炎症がひどくなると、肩関節に痛みが生じます。
炎症の痛みを防ぐには、まず、陸上トレーニングでチューブなどを使って肩回りの筋肉を鍛えておくこと。
そして普段からストレッチングやマッサージをして、肩回りの筋肉やじん帯、腱を柔らかく保つ努力をすることです。
また、少しでも痛みを感じたら無理せずに肩を休ませ、様子を見ることです。
平泳ぎに多いブレスストローカーズニー
「ブレスストローカーズニー(平泳ぎ膝)」は、平泳ぎの選手が膝を痛める障害です。
とくに近年の主流である「ウィップキック」を使う選手が、膝の内側のじん帯を痛める例が増えています。
平泳ぎでは、もともと、カエルのように、膝を左右に大きく開き、後方へキックして水を蹴る「ウエッジキック」が行われていました。
しかし最近の平泳ぎの選手は、脚を引きつけても、膝を大きくは開きません。
その代わり、わずかに開いた膝を起点にして水を挟むようにキックする「ウィップキック」を行っています。
「ウィップキック」は、「ウエッジキック」に比べて推進力を生みますが、膝により負担がかかります。
そのため、膝回りの筋力や柔軟性がないと、膝の内側のじん帯が炎症を起こしやすいのです。
炎症を防ぐには、長時間の練習を繰り返さないことと、陸上トレーニングで脚の筋肉を鍛えること。
そして、脚の筋肉やじん帯、腱を常に柔らかく保つように努力することです。
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クロールやバタフライ、背泳ぎに多い腰痛
泳ぐことで、自分の体重が腰にかかることはありません。
しかし水泳選手は、小さい頃から1日に何千メートルも泳ぐ過酷なトレーニングを繰り返しています。
そのため、泳ぐときに腰を反らせる癖があると、腰に負担がかかりがちです。
とくにクロールでは、水中で肘を高くして腕をかきます。
そのため、上体が反りやすく、腰にも負担がかかりやすいのです。
この状態で1日に何千メートルも泳ぎ、それを何年も繰り返していると、腰への負担も相当になります。
また、バタフライや背泳ぎでも、その泳法から腰に負担がかかりやいのが特徴です。
過酷な練習を繰り返していると、ついには腰が悲鳴をあげることがあります。
その結果、腰が痛くなったり、腰椎が壊れたり(腰椎分離症)、競技生活にも影響が出るほどの故障を起こす選手がいます。
これを予防するには、腰に負担のかからないフォームを身につけること。
また、腰の筋肉のストレッチやマッサージをして、常に柔らかく保つ努力をすること。
そして少しでも痛みを感じたら、練習を休むと同時に、腰に負担のかからないフォームに修正することです。