市議会議員の仕事とは? 役割や公務員との違いについて解説
議会の会期中は市議会へ出席して議案の審議などを行い、閉会中には次の議会に向けた準備や、選挙対策の活動などを行っていきます。
この記事では、市議会議員の仕事内容や役割を紹介しています。
市議会議員の仕事とは
市議会議員(市議)は、選挙によって選ばれた市民の代表として、条例の制定や予算の作成といった市政に携わる職業です。
具体的な仕事内容は、おおまかに議会の会期中か、閉会中かで分かれます。
会期中は議案の審議や質疑応答、行政の監督など、閉会中は市政報告会や意見交換会の開催、市民生活の調査活動などが主になります。
会期中・閉会中ともに、市民生活をよりよくすべく、市民目線に立ってさまざまな業務を行います。
また、そういった政治活動と並行して、自身の選挙区内で広報活動を行うなど、次回選挙で投票してもらうための選挙対策活動も行います。
近年は若い世代を中心に「政治離れ」が深刻化しており、投票率の低さがニュースになることも増えています。
自らが積極的に情報発信するなどして、市民に対して市政への参加を促すことも、重要な市議の役割といえるでしょう。
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市議会議員は特別職の地方公務員
市議会議員は、身分としては「特別職地方公務員」に分類されます。
任期は地方自治法により「4年」と定められており、つまり、4年ごとの選挙で市民の中から選ばれます。
なお、特別職の地方公務員は、地方公務員法が適用されない職員を指しています。
特別職であるため、一般行政に携わる公務員とは異なり、副業もOKです。
役所の職員は、自治体の公務員試験を受けて採用された人であり、各自治体で定められた条例などにもとづき、配属先でおのおのの担当業務を行います。
一方、市議会議員はあくまでも市民の代表者として選挙で選ばれており、役所の職員以上に、一人ひとりの住民の声を聞きながら市政に関わっていくことが求められます。
なお、役所などの職員として働いていた人が、市議会議員を目指していくケースもあります。
市議会議員の業務の内容
ここからは、市議会議員の具体的な業務内容を紹介します。
業務1.会期中の業務
市議会の平均的な会期は、3月、6月、9月、12月の年4回の定例会と、必要に応じて実施される臨時会です。
定例会と臨時会の日数を合わせると約87日間開催されます。
この会期中の市議は、市議会への出席が業務の中心となり、行政長である市長が提出した議案を審議したり、実施されている行政サービスに関する疑問点や不明点を追及したりします。
ときには市議自らが議案を提出する側となり、質疑に答えることもあります。
市議会の会議時間は原則として朝10時から夕方5時まですが、ときには深夜まで議論が続くこともあります。
なお、こうした市議会の模様は、誰でも議会場で傍聴することができますし、市のホームページから動画視聴することもできます。
業務2.閉会中の業務
閉会中の業務としては、まず議会中にどんな議案が出され、それぞれの問題に対してどのような意見が交わされ、どう対処することになったかという結果を報告・発信する業務が挙げられます。
報告する方法は複数あり、「市政報告会」を開催して直接支援者に話をする方法もあれば、書面にまとめて交付する方法、ホームページやSNSで発信する方法もあります。
それらがひと段落すると、次の議会に向けた準備に入り、行政機関や市民生活を調査して問題点・改善点を探したり、議案の草案を練ったりします。
ときには、ほかの都市で実施された政策を見学するため、遠方まで視察に出かけることもあります。
業務3.選挙対策活動
市議会議員は、上記の業務と並行して、選挙対策活動も随時行っていく必要があります。
一般的な市民にとって、市政はそれほど大きな関心ごとではなく、市議一人一人の顔と名前がわかるという人は、関係者を除けばほとんどいないでしょう。
このため、次回の選挙で自分に投票してもらうために、市議は自身の選挙エリア内に住む有権者に対してPR活動を行っていかなくてはなりません。
代表的な選挙対策活動としては、街頭演説、ビラ配り、懇親会の開催、祭やスポーツ大会といった地域行事への参加、後援者まわりなどが挙げられます。
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市議会議員の役割
市議会議員の役割をひとことで表すなら、「市民の声を市政に反映させること」だといえます。
教育、医療、介護、出産・育児、観光、税、まちづくりなど、私たちの暮らしは市政と密接に関わり合っています。
生活をよりよくしていくために、どんな条例を制定するのか、予算をどう配分していくのかなど、市民の代表としてさまざまなことを話し合い、決議していくことが市議の仕事です。
ただし、近年は若い世代を中心として「政治離れ」が進んでおり、上述のようにそもそも市政に関心がないという人も増えています。
このため、とくに若い市議については、20代や30代といった年齢の近い世代に対して積極的な市政への参加を呼びかけることも、重要な役割のひとつといえるでしょう。
タウンミーティングを開いたり、若い人が集まるカフェでイベントを企画したりと、主体的に交流して市民の声を集めようとしている市議もいます。
市議会議員の勤務先
市議会議員の勤務先は、会期中については基本的に議会場である市役所となります。
自治体によっては、市役所とは別の建物で、官公庁街にある「議会棟」などが議会場となるケースも見られます。
一方、1年の約4分の3を占める閉会中の時期については、自身の「市議会議員事務所」が活動拠点となります。
ただし、会社員や公務員とは違って、出勤する義務があるわけではありません。
毎日決まった時間に出勤するわけではありませんし、そもそも事務所に顔を出すかどうかも自由です。
そういう意味では、市議の活動の場は、個人の裁量に委ねられている部分が非常に大きいといえるでしょう。
市議会議員の仕事の流れ
市議会議員の最も重要な仕事である議案の審議についてのおおまかな流れをご紹介します。
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1.議案提出
まず市長が議案を提出するところから始まります。検討する議題はさまざまな分野におよぶため、市議はテーマごとに設けられた「委員会」に分かれ、それぞれの内容を検討します。
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2.本会議へ
委員会で承認された議案は「本会議」にまわされ、そこで市議会議員全体で最終決定するかどうかを再び話し合います。 -
3.可決されれば通達
可決された議案は行政機関である市役所などに通達され、予算の執行や条例の制定というかたちで私たちの生活に反映されます。 -
4.否決の場合は再検討
本会議で否決された議案は、再び委員会に差し戻されることはなく、その場で却下、廃案となります。その場合、市長は内容を修正して最初から提出し直すか、議案そのものを断念することになります。
市議会議員と関連した職業
市議会議員と似たような立場・役割を持つ職業として、「県議会議員」と「国会議員」、そして「議員秘書」をピックアップします。
市議会議員との仕事内容の違いを知るのに参考にしてみてください。
県議会議員
「県議会議員(県議)」は、県議会に提出された議案を審議し、条例や予算を議決する職業です。
県議会議員と市議会議員は、大きくまとめれば同じ「政治家」であり、基本的な業務内容や仕事の流れはある程度共通しています。
ただし、都道府県と市町村では担当する行政サービスに違いがあり、それぞれの議員が審議する議案も異なります。
市議が私たちの生活に身近な案件を扱うのに対し、県議の扱う議案は、災害対策やインフラ整備、外交など、より大掛かりな案件が中心となります。
国会議員
「国会議員」は、国の立法機関である国会に所属し、法律や国家予算の制定、外国との条約の承認などを行う職業です。
手掛ける案件の規模は市議や県議よりもさらに大きくなり、国家運営に関する重大ごとばかりを扱います。
それだけに、議論にはより慎重を期す必要があるため、国会議員は衆議院議員と参議院議員のふたつに分かれており、同じ案件を独立して審議します。
国会議員になるためには、経験や実績、人脈、資金など、数多くのものが必要になり、当選する難易度は市議や県議よりもはるかに上です。
議員秘書
「議員秘書」は、上記の国会議員をサポートする職業です。
議員秘書の仕事内容は、議員のスケジュール管理や資料作成、政策立案といった政治活動に関することから、身の回りの生活に関する雑用まで、きわめて多岐にわたります。
この議員秘書や市議、県議を足掛かりとして、やがて国会議員へとステップアップしていく人もよく見られます。
なお、議員秘書は法律で労働基準法の適用外とされており、早朝から深夜まで、国政を支えるために非常にハードワークを強いられる職業として知られています。
「市議会議員の仕事」まとめ
市議会議員は、4年に1回の選挙で選ばれ、市民の代表として市政に携わります。
議会の会期中は市議会へ出席して議案の審議などを行いますが、閉会中にも次の議会に向けた準備や選挙対策の活動など、忙しく動き回っています。
一人ひとりの市民の声をしっかりと拾い上げながら、よりよい市政のために邁進することが求められる仕事です。