ピアニストになるには? プロになる王道ルートは?
ピアニストになるまでの道のり
ピアニストになるために、決まった道のりはありません。
ピアノを志すきっかけも、学ぶ環境も、ピアニストとして認められるきっかけも人それぞれです。
一方、その中でも比較的経験する人の多い、いわゆる「王道ルート」も存在しています。
例えば、音大のピアノ科でピアノを学び、在学中や卒業後に有名なコンクールに挑戦。
入賞するなどして世間に認められ、プロになるというルートなどです。
あるいは、ジャズピアノやスタジオピアニストの場合には、少し異なったルートをたどってプロになる人も多くいます。
ピアノコンクール
もっともピアニストへの道が開かれやすいのは、世界的なコンクールで入賞することです。
世界三大ピアノコンクールと言われるものに、「ショパン国際ピアノコンクール」「チャイコフスキー国際コンクール」「エリザベート王妃国際音楽コンクール」があります。
これらのコンクールは既にプロの演奏家として活躍している人も参加するハイレベルな舞台です。
その分、入賞すれば世界的な注目を集めることができます。
クラシックのピアニストを目指す人たちの多くが、数々のコンクールに出場して、実績と知名度を上げているのです。
ポップス・ジャズピアニストの場合
ポピュラーミュージックやジャズのピアニストを目指す場合も、音大であれ独学であれ、ピアノの演奏経験を積んでいることが前提になります。
実際には小さいころからクラシックピアノを習っている中で、他ジャンルに転向するパターンも多いようです。
またジャズピアノでは、アメリカの名門「バークリー音楽大学」に留学するのも王道の一つです。
卒業後はオーディションを受ける、音楽事務所にデモテープを送るなど、積極的に行動してチャンスをつかみます。
とにかく演奏を評価してもらう場に出て、人脈を広げるのが大切です。
ライブハウスやレストランで演奏しようと思った場合には、それらの店舗に直接応募することになります。
あるいは、既存のミュージシャンに働きかけ、メンバーとして加入するといった方法もあります。
ピアニストにとってのコンテスト・コンクールの意味
さらにレベルアップしたければ、他のピアニストと競い、腕を磨く必要があります。
そのために最適なのがコンクールです。
全国から集まったピアノ上手な人たちと競い合いことは良い刺激になります。
また、コンクールへの入賞を目指して練習するため、実力の向上につながりやすいというポイントもあります。
残念ながら、どんなに練習しても、本番では緊張して失敗してしまうかもしれません。
しかし、それも含めて、ピアニストとして成長していくための大切な経験となります。
将来、プロのピアニストになった際には、さらに大きなステージに立つ機会もあるでしょう。
その時の訓練と思い、いろいろな経験を積んでおくことが大切です。
日本国内のコンクール
国内では、ピアニストがチャレンジできるコンクールが多数開催されています。
ピアニストは実力を証明する方法が限られているため、コンクールの入賞はアピールポイントとなります。
たとえば高校生なら、年齢別で高校生部門を設けているコンクールに参加することができます。
大学生以上であれば、年齢制限のないコンクールに出場して腕試しも良いでしょう。
国内で開かれている主なコンクールは以下の通りです。
- ピティナ・ピアノコンペティション
- ショパン国際ピアノコンクール in ASIA
- 浜松国際ピアノコンクール
- 日本音楽コンクール
- 仙台国際音楽コンクール
- 東京音楽コンクール
- 全日本学生音楽コンクール
- ノーヴイ国際音楽コンクール
- 日本クラシック音楽コンクール
海外のコンクール
日本のコンクールで経験を積んだら、海外のコンクールにもぜひチャレンジしてみてください。
海外のコンクールに出場すれば、世界中から注目されます。
上位に入賞すれば、メディアで大きく扱われますし、帰国後にコンサートを開いたり、CDを出したりすることもできます。
また、世界のピアニストたちとも出会うことができ、視野が広がることは間違いありません。
世界三大ピアノコンクールは以下の3つです。
- ショパン国際ピアノコンクール
- チャイコフスキー国際コンクール
- エリザベート王妃国際音楽コンクール
日本人での主な受賞者は、中村紘子さんや小山 実稚恵さん、横山幸雄さん、上原彩子さんなどで、現在も活躍する有名ピアニストの方々ばかりです。
ほかにも、海外のコンクールはいろいろあります。
- ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール
- ジュネーヴ国際音楽コンクール
- ブゾーニ国際ピアノコンクール
- ロン=ティボー国際コンクール
- リーズ国際ピアノコンクール
- シドニー国際ピアノコンクール
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ピアニストになるための学校
プロのピアニストを目指すためには、まず音大で学ぶという人が多いです。
音大を目指すためには、受験生を指導できる先生に師事することが一般的です。
その先生のもとで、音大受験に特化した内容を学び、技術を身につけるため相当量の練習をすることになります。
楽典の勉強や、ソルフェージュ(聴音・初見歌唱)のレッスンも必須です。
音大に進学してからは、さまざまなコンクールに出場して経験を積みます。
卒業後や在学中に、さらに技術や知識を深めるため、海外留学をする人もいます。
ピアニストになるための練習
ピアニストになるため、そして当然ピアニストになった後も、ピアノの練習は欠かすことができません。
練習内容はピアノを弾くための様々な技巧、音楽的感性を養う内容、表現力を磨く内容など、大変多岐に渡ります。
中でもベーシックな基礎の練習として、次のような内容を多くのピアニストが毎日続けています。
指のストレッチ
ピアニストとして指の動きを鍛えるためには、ピアノを弾いて練習するのが一番です。
しかし、外出中や旅先などピアノがない場所に行くときもあります。
そんなときには、指のストレッチをして柔軟性を高めるとよいでしょう。
もっとも単純なストレッチは、手をぎゅっと握ってから、ゆっくりと開いていく方法です。
力を入れすぎたり、何度もやりすぎたりすると手を傷めますので、無理のない範囲で行いましょう。
ほかにも、指を鍛える体操はいろいろあり、器具を使ってストレッチする方法もあります。
できれば、専門家に相談しながら、自分に合った方法を探してみてください。
ハノンを活用する
一般的に、ピアノの練習用としてはハノン教則本が使われています。
指のトレーニングとしてハノンを弾いてから、曲の練習に入るピアニストもいます。
ただ、指の練習用として何も考えずにだらだらと弾いているだけでは、訓練になりません。指の使い方や手首や腕の動きなどが正しくないと、練習しても逆効果になります。
トレーニングとしてハノンを弾くときには、正しいフォームであるか確認しながら練習してみましょう。
自分の感性を磨く
技術的や肉体的なトレーニングも大切ですが、ピアニストは内面も磨く必要があります。
たとえ超絶技巧の難曲を弾きこなしたとしても、心がない演奏では人を感動させることができません。
一方、感受性が豊かで魅力的な人の演奏は、人の心を動かします。
そのため、ピアニストにとって感性を豊かにすることは、とても大切です。
他の優れたピアニストや演奏家の演奏を聴くことも有効です。
また、思い切って音楽とはまったく関係のない体験を積み重ねることも大変有効です。
本を読んだり、映画や芝居を見たり、旅に出かけたりして、さまざまなことに感動する機会を持つことで、内面が広がり、表現力に深みが増します。
また、常にピアノに向き合いつづけるよりも適度な気分転換になり、軽やかな気持ちで練習を続けることができるでしょう。
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ピアニストに向いている人
ピアニストに必要なものはずばり、ピアノに対する情熱、そして毎日の練習を地道に続けていく精神力です。
これらの要素を兼ね備えている人材が、ピアニストに向いているということができるでしょう。
ピアニストになるため、そしてピアニストであり続けるためには、毎日膨大な量の練習をこなす必要があります。
また、コンクールやコンサートなど、「本番」においてはプレッシャーや不安に打ち勝ち、強い気持ちで自分の最高の演奏を届ける必要があります。
これらを長年継続していくためには、ピアノに対する情熱や愛情、そして継続するための意志の力が必要なのです。
ピアニストの資格
ピアニストになるための資格や免許は存在していません。
自分の技巧を高め、表現力を育て、パフォーマンスで証明していかなければいけない、実力主義的な世界なのです。
多くのピアニストが音大を卒業していたり留学していますが、それすら必須ではありません。
ある意味では、学歴や資格がなくても、自分の実力だけで挑戦することができる職業ということもできます。
他方、他の職業のように客観的に自分の能力を証明してくれる資格がない分、自分で自分を証明し続ける、つまり演奏で観客を魅了し続ける必要がある、過酷な世界という見方もできます。
大手楽器店の検定
ピアニストになるために、必要な資格はありません。
しかし、ピアノに関する資格はいくつかあります。
これらの目的は例えばピアノの演奏力をはかるためであったり、自分の技術力の程度を知るためであったりと様々です。
教室も持っているような大手楽器店では、独自の検定を実施していることがあります。
有名なものでは、例えばヤマハが行っている「ヤマハグレード」という検定試験があります。
子どもから大人まで、またレベルに応じて、さまざまな級に分かれます。
同じくカワイ音楽教室にも「カワイグレード」という検定試験があります。
これらの資格は、その教室でピアノを習っている生徒たちだけでなく、誰でも受検することが可能です。
上級になると、難易度はかなり高く、プロの演奏家や指導者のレベルになります。
これらの楽器店の音楽教室に勤める場合、これらの検定試験に合格することが必須になることもあります。
その他の検定
そのほかにも、ピアノに関する検定はあります。
例えば日本現代音楽芸術協会で実施している「クラシックピアノ検定」や「ポピュラーピアノ検定」、国際的におこなわれている「英国王立音楽検定」や、日本ピアノ教育連盟が主催する「ピアノ教師資格認定試験」などです。
ピアノ指導者の団体として有名な「ピティナ(PTNA)」も、指導者検定を行っています。
また、もっとも一般的な資格は、音大で取得できる教職でしょう。
この資格を取得していると、中学や高校で音楽教師として働くことができます。
資格の目的や、証明してくれる技術範囲は様々ですので、自分に合った資格を選ぶことが大切です。
資格の効力
これらの資格を取得したからといって、必ずピアニストになれたり、ピアノの仕事をするために必要だったりするわけではありません。
そのため、資格の有効性については疑問の声が聞かれることもあります。
しかし、これらの資格を取得することにより、自分の演奏力を試すこともできますし、ピアノ関係の就職の際には、自己アピールの材料となります。
ピアノは、どれだけ演奏経験があっても、コンクールなどで入賞する以外に、その能力を証明するものがあまりないのが現状です。
そういった意味では、民間で行っている検定資格を取得することも有効です。
ピアニストを目指せる年齢は?
ピアノといえば、幼少期から続ける習い事というイメージがあるかもしれません。
実際、ピアニストとして活躍している人の中には、若いうちからピアノに親しみ、研鑽を積んできたという人も少なくありません。
そのため、「小さい時からピアノを習っていなければピアニストにはなれない」と思っている人も少なくないようです。
しかし、必ずしもそうではありません。
中には大人になってからピアノを始め、のちにピアニストとして活動している人もいます。
もちろん、スタートが遅い分、その差を埋めるためには多大な努力も必要です。
しかし、自分の目標を明確にして、練習を積み上げていけば、不可能ではないのです。
最近では動画配信サイトなどを始め、一般の人も自分の演奏を広く発信することができるようになってきています。
これらのツールも上手に使いつつ効果的にセルフプロモーションを行うことで、いわゆる「王道ルート」以外でもピアニストになる可能性は広がりつつあるということもできます。